油は、様々な分野で潤滑剤、熱媒体、食用油として使用される重要な液体材料です。
これらの特性から、機械工学、熱工学、食品産業など様々な分野で使用されています。
しかし、熱伝導性については水や他の液体とどのような違いがあるのでしょうか。
このような背景もあり、この記事では、油の熱伝導率とその単位、温度依存性、水や他の液体材料との比較について詳しく解説します。
油の熱伝導特性を理解し、適材適所で活用していきましょう!
油の熱伝導率と単位【W/(m·K)やkcal/(m·h·℃)など】
まずは、油の熱伝導率の値と一般的な単位を確認しましょう。
熱伝導率とは、物質の熱伝導性能を表す物性値で、単位面積あたり、単位時間あたり、温度勾配1 K/mで伝わる熱量を表します。
熱伝導率が高いほど、熱を速く伝えることができます(^^)/
代表的な油の熱伝導率(常温常圧付近)は以下の通りです。
油の種類 | 熱伝導率 (W/(m·K)) | 熱伝導率 (kcal/(m·h·℃)) |
---|---|---|
鉱物油(エンジンオイル) | 0.12〜0.15 | 0.10〜0.13 |
植物油(大豆油) | 0.16〜0.18 | 0.14〜0.15 |
植物油(オリーブオイル) | 0.17〜0.19 | 0.15〜0.16 |
シリコーンオイル | 0.10〜0.16 | 0.09〜0.14 |
変圧器油 | 0.11〜0.13 | 0.09〜0.11 |
熱媒体油 | 0.10〜0.14 | 0.09〜0.12 |
ここで、1 W = 0.86 kcal/hであることを利用して、各単位の値を相互に変換できます。
油の熱伝導率は、その種類や組成によって若干異なりますが、一般的に0.10〜0.19 W/(m·K)程度の比較的狭い範囲に収まることがわかります。植物油は鉱物油やシリコーンオイルよりもやや高い熱伝導率を示す傾向があります。
油の熱伝導率の温度依存性
油の熱伝導率は温度によって変化します。
以下は、様々な温度での代表的な油の熱伝導率を示した表です。
油の種類 | 温度 (K) | 温度 (℃) | 熱伝導率 (W/(m·K)) |
---|---|---|---|
鉱物油(エンジンオイル) | 273 | 0 | 0.15 |
298 | 25 | 0.14 | |
323 | 50 | 0.13 | |
373 | 100 | 0.12 | |
423 | 150 | 0.11 | |
植物油(大豆油) | 273 | 0 | 0.19 |
298 | 25 | 0.17 | |
323 | 50 | 0.16 | |
373 | 100 | 0.14 | |
423 | 150 | 0.12 |
簡単に整理しますと、油の熱伝導率は温度上昇とともに低下する傾向があります。
これは多くの液体に共通する特性で、温度上昇に伴い分子間距離が増大することで分子間の熱エネルギー伝達効率が低下するためです。
鉱物油(エンジンオイル)では0℃から150℃の範囲で熱伝導率が約27%低下し、植物油(大豆油)では同じ温度範囲で約37%低下していることがわかります。
しかし、油の粘度は温度上昇とともに大きく低下するため、実際の熱伝達においては対流による熱移動が活発になり、システム全体の熱伝達効率は向上することがあります。
特に強制対流系では、温度上昇による粘度低下の効果が熱伝導率低下の効果を上回ることが多いです。
このため、熱媒体としての油の性能評価には、熱伝導率だけでなく、粘度や比熱容量なども含めた総合的な検討が必要です。
水や他の液体材料との比較
油の熱伝導率を水や他の代表的な液体材料と比較してみましょう:
液体材料 | 熱伝導率 (W/(m·K)) at 25℃ |
---|---|
液体金属(水銀) | 8.3 |
液体ナトリウム | 73.0 |
水 | 0.60 |
エチレングリコール | 0.26 |
グリセリン | 0.28 |
エタノール | 0.17 |
植物油(オリーブオイル) | 0.17 |
植物油(大豆油) | 0.17 |
鉱物油(エンジンオイル) | 0.14 |
シリコーンオイル | 0.13 |
空気(参考) | 0.026 |
整理しますと以下の通りです!
油の熱伝導率は、水と比較すると約1/3〜1/4程度とかなり低い値です。水は他の一般的な液体と比較して特に高い熱伝導率を持っており、これは水分子間の水素結合による熱エネルギーの効率的な伝達に起因しています。
液体金属(水銀、ナトリウムなど)は極めて高い熱伝導率を示し、油の数十倍から数百倍の値となっています。これは金属結合中の自由電子による熱エネルギーの効率的な伝達によるものです。液体ナトリウムは原子力発電所の熱媒体として使用されることがあり、その優れた熱伝導特性が活用されています。
エチレングリコールやグリセリンは水と油の中間的な熱伝導率を示し、冷却液として使用される際には水との混合比によって熱伝導特性を調整できます。エタノールは油と同程度の熱伝導率を持ちますが、揮発性や引火性の点で用途が限られます。
一般的に油は熱伝導率が低いため、熱を素早く伝える必要がある用途には不向きな面があります。しかし、油は高い沸点と低い凝固点を持ち、化学的に安定しており、優れた絶縁性を持つため、特定の用途では重要な熱媒体となります。例えば変圧器油は電気絶縁性と熱媒体としての二重の役割を果たしています。また、高温熱媒体油は300℃以上の高温域でも使用できるため、金属加工や化学プロセスなどで利用されています。
まとめ 油の熱伝導率の温度依存性は?水や他の液体との比較も!
本記事では、油の熱伝導率とその単位、温度依存性、そして水や他の液体材料との比較について詳しく解説しました。
油は0.10〜0.19 W/(m·K)程度の比較的低い熱伝導率を持ち、水の約1/3〜1/4程度の熱伝導性を示します。
温度上昇とともに熱伝導率は低下しますが、同時に粘度も低下するため、実際の熱伝達システムでは対流による熱移動が活発になることもあります。
油の熱伝導率は液体材料の中では低い方ですが、高い沸点、低い凝固点、化学的安定性、優れた絶縁性などの特性と組み合わせることで、特定の用途では重要な熱媒体として利用されています。
用途に応じて油の種類や特性を適切に選択し、その特徴を活かした熱管理を行うことが重要です!