化学反応や物理変化を理解する上で、ギブズエネルギー(自由エネルギー)は極めて重要な概念です。
ギブズエネルギーの正負の値は、反応が自発的に進行するかどうかを判断する重要な指標となります。
結論として
・ギブズエネルギーがマイナス(負)の場合は反応が自発的に進行し、
・プラス(正)の場合は反応が非自発的となり、
・0の場合は平衡状態
を示します。
これらの関係を正しく理解することで、化学反応の進行方向や平衡状態を予測することができるようになります。
本記事では、ギブズエネルギーの正負それぞれの意味と、変化との関係について詳しく解説していきます。
ギブズエネルギーが負(マイナス)とは?変化との関係も解説!
それではまず、ギブズエネルギーが負(マイナス)の場合について解説していきます。
ギブズエネルギー変化(ΔG)が負の値を示すとき、これは反応が自発的に進行することを意味します。言い換えると、系は自然にエネルギーの低い状態へと移行しようとする傾向があるということです。
具体的な例として、水の凍結反応を考えてみましょう。
0℃以下の温度では、液体の水が氷に変化する際のギブズエネルギー変化は負の値となります。
これは、この条件下で水が自然に氷へと変化することを示しています。
また、燃焼反応も典型的な例です。
メタンの燃焼反応(CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O)では、ギブズエネルギー変化が大きな負の値を示すため、この反応は室温で自発的に進行します。
ギブズエネルギーが負になる要因としては、以下の2つが挙げられます
エンタルピー変化(ΔH)が負:反応によって熱が放出される発熱反応の場合
エントロピー変化(ΔS)が正:反応によって系の無秩序度が増加する場合
で表されるため、
ΔHが負でΔSが正の場合、ΔGは確実に負の値となります。

ギブズエネルギーが0とは?変化との関係も解説!
続いては、ギブズエネルギーが0の場合を確認していきます。
ギブズエネルギー変化(ΔG)が0になるとき、系は平衡状態にあることを示します。
この状態では、正反応と逆反応の速度が等しくなり、見かけ上反応が停止したように見えます。
平衡状態の特徴として、以下の点が挙げられます
反応の進行が見かけ上停止:正反応と逆反応が同じ速度で進行するため
濃度の変化がない:各成分の濃度が一定に保たれる
エネルギー的に最も安定:系が最も安定した状態にある
身近な例
身近な例として、液体と気体の平衡を考えてみましょう。
密閉容器内の水と水蒸気が平衡状態にあるとき、蒸発と凝縮の速度が等しくなり、ギブズエネルギー変化は0となります。
化学反応においても、可逆反応では最終的に平衡状態に達します。
例えば、エステル化反応では
RCOOH + R’OH ⇌ RCOOR’ + H₂O
この反応が平衡に達したとき、ΔG = 0となり、それ以上反応は進行しません。
平衡定数(K)とギブズエネルギーの間には、
ΔG° = -RT ln K の関係があります。
ΔG = 0のとき、この関係式から平衡定数を求めることができます。
ギブズエネルギーがプラスとは?変化との関係も解説!
続いては、ギブズエネルギーがプラス(正)の場合について確認していきます。
ギブズエネルギー変化(ΔG)が正の値を示すとき、その反応は非自発的であることを意味します。
つまり、外部からエネルギーを供給しない限り、反応は進行しません。
非自発的反応の特徴として、以下が挙げられます
自然には進行しない:そのままの条件では反応が起こらない
エネルギー供給が必要:電気エネルギーや熱エネルギーなどの外部エネルギーが必要
熱力学的に不利:生成物の方がエネルギー的に不安定
例
典型的な例として、水の電気分解があります。
2H₂O → 2H₂ + O₂ の反応では、ギブズエネルギー変化が正の値となるため、
電気エネルギーを供給しなければこの反応は進行しません。
また、光合成も非自発的反応の例です
6CO₂ + 6H₂O → C₆H₁₂O₆ + 6O₂
この反応は太陽光エネルギーを利用することで進行が可能になります。
工業的には、非自発的反応を進行させるために様々な方法が用いられますね!
温度の変更:高温にすることでΔGを負にする
圧力の調整:圧力を変えて反応を有利にする
触媒の使用:活性化エネルギーを下げる
カップリング反応:自発的反応と組み合わせる
ギブズエネルギーが正になる要因としては:
エンタルピー変化が大きな正の値:吸熱反応の場合
エントロピー変化が負:系の無秩序度が減少する場合
これらの条件が重なると、ΔG = ΔH – TΔS の式においてΔGが正となります。
まとめ ギブズエネルギーが0や正(マイナスやプラス)とは?変化との関係も解説!
最後に、ギブズエネルギーの正負と変化の関係についてまとめていきます。
ギブズエネルギー変化の正負は、反応の進行方向を決定する重要な指標です
ΔG < 0(負):反応は自発的に進行します。
系はより安定な状態へと自然に移行し、外部からのエネルギー供給は不要です。
燃焼反応や結晶化反応などが典型例となります。
ΔG = 0:系は平衡状態にあります。
正反応と逆反応の速度が等しく、見かけ上反応は停止しています。
この状態では各成分の濃度が一定に保たれます。
ΔG > 0(正):反応は非自発的です。
外部からエネルギーを供給しない限り反応は進行せず、
電気分解や光合成などがこれに該当します。
これらの関係を理解することで、化学反応の予測や制御が可能になります。
また、工業プロセスや生物学的反応の理解にも役立ちます。
ギブズエネルギーの概念は、
ΔG = ΔH – TΔS の基本式を中心として、
エンタルピー変化とエントロピー変化の両方を考慮した総合的な指標です。
温度や圧力などの条件を変えることで、
ギブズエネルギー変化の正負を制御し、
望ましい反応を進行させることができるのです。