電気工学や物理学において、電気抵抗率は材料の電気的特性を表す重要な物理量の一つです。
電気抵抗率を理解することで、導体や半導体、絶縁体の特性を定量的に評価でき、電気回路の設計や材料選択において適切な判断をすることができます。
また、電気抵抗率は温度によって変化する性質があり、特に金属材料では温度依存性が顕著に現れます。
この記事では、電気抵抗率の基本概念から公式、単位、求め方、さらには金属の一覧表や温度依存性について詳しく解説していきます。
また、混同しやすい電気伝導率や導電率との違いについても説明し、これらの概念を正しく理解できるよう分かりやすくお伝えします。
電気抵抗率とは?公式や単位・求め方などを解説
それではまず電気抵抗率の基本的な概念について解説していきます。
電気抵抗率(electrical resistivity)とは、材料固有の電気の流れにくさを表す物理量です。
記号はρ(ロー)で表され、単位はΩ・m(オーム・メートル)が使用されます。
電気抵抗率は、材料の種類によって決まる固有の値であり、その材料がどの程度電流を流しにくいかを示しています。
電気抵抗率の公式は以下のように表されます
ρ = R × A / L
ここで、
ρ:電気抵抗率(Ω・m)
R:電気抵抗(Ω)
A:導体の断面積(m²)
L:導体の長さ(m)
この公式から分かるように、電気抵抗率は電気抵抗、断面積、長さの関係から求めることができます。
電気抵抗率の値が小さいほど電気を通しやすく、値が大きいほど電気を通しにくい材料ということになります。
実際の測定では、一定の形状の試料に電流を流し、その際の電圧と電流の関係から電気抵抗を求め、上記の公式を用いて電気抵抗率を算出します。
この値は材料選択において重要な指標となり、導線材料には電気抵抗率の小さい材料を、絶縁材料には電気抵抗率の大きい材料を選択することが基本となります。
電気抵抗率の金属の一覧
続いては電気抵抗率の金属一覧を確認していきます。
主要な金属の電気抵抗率(20℃における値)を以下に示します
主要な金属の電気抵抗率(20℃における値)を以下に示します:
金属名 | 記号 | 電気抵抗率(20℃) | 特徴・用途 |
---|---|---|---|
銀 | Ag | 1.59 × 10⁻⁸ Ω・m | 最も導電性が良いが高価 |
銅 | Cu | 1.68 × 10⁻⁸ Ω・m | 電線材料として最も一般的 |
金 | Au | 2.44 × 10⁻⁸ Ω・m | 腐食しにくく電子部品に使用 |
アルミニウム | Al | 2.82 × 10⁻⁸ Ω・m | 軽量で送電線に使用 |
亜鉛 | Zn | 5.90 × 10⁻⁸ Ω・m | メッキ材料として使用 |
ニッケル | Ni | 6.99 × 10⁻⁸ Ω・m | 合金材料として使用 |
鉄 | Fe | 9.71 × 10⁻⁸ Ω・m | 構造材料、磁性材料 |
白金 | Pt | 1.06 × 10⁻⁷ Ω・m | 高温用途、触媒 |
スズ | Sn | 1.09 × 10⁻⁷ Ω・m | はんだ材料 |
鉛 | Pb | 2.06 × 10⁻⁷ Ω・m | 電池電極材料 |
この一覧から分かるように、一般的な金属の中では銀が最も電気抵抗率が小さく、最も電気を通しやすい金属です。
しかし、銀は高価なため、実用的には銅が電線材料として広く使用されています。
アルミニウムも軽量で電気抵抗率が比較的小さいため、送電線などに利用されています。
一方、鉄は構造材料としては優秀ですが、電気抵抗率が銅の約6倍と大きいため、電気配線材料としては不適切です。
これらの値は材料選択の重要な指標となり、用途に応じて最適な金属を選択する際の基準となります。
電気抵抗率の金属の温度依存性は?
続いては電気抵抗率の温度依存性を確認していきます。
金属の電気抵抗率は温度によって変化する特性があり、一般的に温度が上昇すると電気抵抗率も増加します。
この現象は、温度上昇により金属内部の原子の熱振動が活発になり、自由電子の移動が妨げられることが原因です。
金属の電気抵抗率の温度依存性は、以下の近似式で表されます
ρ(T) = ρ₀
ここで、
- ρ(T):温度Tにおける電気抵抗率
- ρ₀:基準温度T₀における電気抵抗率
- α:温度係数(1/K)
- T:測定温度
- T₀:基準温度(通常20℃)
主要金属の温度係数(20℃基準)は以下の通りです
- 銅:3.93 × 10⁻³ /K
- アルミニウム:4.29 × 10⁻³ /K
- 鉄:6.51 × 10⁻³ /K
- 銀:3.80 × 10⁻³ /K
この温度依存性は、電気機器の設計において重要ですね。
例えば、夏場の高温時には電線の抵抗が増加し、電力損失が大きくなるため、適切な容量設計が必要です。
また、精密測定においては温度補正を行うことで、より正確な値を得ることができます。
この特性を利用して、金属の温度を電気抵抗の変化から測定する測温抵抗体も実用化されています。
電気抵抗率と電気伝導率・導電率との違い
続いては電気抵抗率と電気伝導率・導電率との違いを確認していきます。
電気抵抗率と電気伝導率(導電率)は、材料の電気的性質を表す物理量ですが、互いに逆数の関係にあります。
電気伝導率(導電率)
- 記号:σ(シグマ)
- 単位:S/m(ジーメンス毎メートル)
- 意味:電気の流しやすさを表す
電気抵抗率と電気伝導率の関係は以下の式で表されます
σ = 1/ρ
つまり、電気抵抗率が小さい材料ほど電気伝導率は大きくなり、電気をよく通すことを意味します。
使い分けの例
- 電気抵抗率:絶縁材料の評価(大きい値が良い)
- 電気伝導率:導体材料の評価(大きい値が良い)
例えば、銅の場合:
- 電気抵抗率:1.68 × 10⁻⁸ Ω・m
- 電気伝導率:5.95 × 10⁷ S/m
どちらを使用するかは、その材料をどのような用途で評価するかによって決まります。
導体材料を評価する際は電気伝導率を用い、絶縁材料を評価する際は電気抵抗率を用いることが一般的です。
この概念の違いを理解することで、材料特性をより適切に評価し、用途に応じた最適な材料選択が可能になります。
まとめ 電気抵抗率の金属の温度依存性や単位・求め方・記号も解説!電気伝導率・導電率との違いも
電気抵抗率は材料固有の重要な電気的特性であり、記号ρ、単位Ω・mで表される物理量です。
電気抵抗率などの扱いになれ、さらに快適な生活を送っていきましょう!