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ブリキとスチールの違いは?アルミや鉄やスズとは?【成分】

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ブリキとスチール、どちらも金属製品として日常生活で目にする機会が多い素材ですが、その違いを正確に説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。さらに、アルミや鉄、スズなど、似たような金属素材が数多く存在するため、混同されることも珍しくありません。

特に缶詰や容器、建材などでは、これらの金属が用途に応じて使い分けられています。しかし、見た目が似ているため、どれがどの素材なのか判別が難しいこともあります。それぞれの金属の成分や構造を理解することで、なぜその素材が選ばれているのかが分かるようになります。

本記事では、ブリキとスチールの違いを中心に、アルミや鉄、スズといった関連する金属素材との比較も含めて詳しく解説します。成分や構造、特徴の違いから、具体的な用途まで、わかりやすくご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

ブリキとは何か

それではまず、ブリキについて解説していきます。

ブリキの成分と構造

ブリキとは、鉄の板にスズ(錫)をめっきした複合材料

です。単一の金属ではなく、複数の金属を組み合わせた素材であることが重要なポイントです。

ブリキの基本構成・芯材:鉄(Fe)または低炭素鋼
・表面被覆:スズ(Sn)
・構造:鉄板の両面にスズめっきを施した3層構造
・めっき層の厚さ:約0.0001〜0.001mm(非常に薄い)
・鉄板の厚さ:約0.15〜0.5mm

ブリキの成分は、質量比で約99%以上が鉄、残りの1%未満がスズ

という構成になっています。スズめっき層は非常に薄いため、重量的にはほとんどが鉄です。

ブリキという名称は、オランダ語の「blik」が語源とされ、江戸時代に日本に伝わりました。英語では「tin plate(ティンプレート)」と呼ばれ、スズ(tin)でめっきされた板(plate)という意味を持ちます。

ブリキの特徴と性質

ブリキは、鉄とスズの特性を組み合わせた独特の性質を持っています。

特徴 詳細 メリット
耐食性 スズめっきが鉄を保護 傷がなければ錆びにくい
無毒性 スズは人体に無害 食品容器に使用可能
はんだ付け性 スズははんだの主成分 密封加工が容易
加工性 薄くても強度がある 複雑な形状に成形可能
外観 銀白色の光沢 美しく、印刷適性が良い
磁性 磁石に吸着する リサイクル時に選別可能
ブリキの最大の特徴は、スズめっきによる食品安全性です。スズは無毒であり、食品に触れても有害な物質が溶け出しません。この性質により、ブリキは缶詰の素材として世界中で使用されています。

ただし、ブリキにも弱点があります。めっき層に傷がつくと、そこから鉄が露出し、急速に錆が進行する「孔食」という現象が起こりやすくなります。

ブリキの主な用途

ブリキは、その特性を活かして様々な製品に使用されています。

ブリキの主な用途1. 缶詰・飲料缶
食品缶詰、コーヒー缶、お茶の缶など。食品安全性とはんだ付けのしやすさから最適です。

2. 菓子缶・ギフト缶
クッキー缶、チョコレート缶など。美しい光沢と印刷適性の良さが活かされています。

3. おもちゃ
ブリキのロボット、自動車など。昭和レトロな玩具として人気があります。

4. 小型容器
バケツ、じょうろ、ペール缶など。室内使用に適しています。

5. 王冠(瓶の蓋)
ビールや炭酸飲料の王冠。薄くても強度があり、加工しやすい特性が活かされています。

世界中で年間数千億個もの缶詰がブリキで製造されており、食品保存において欠かせない素材

となっています。

スチール(鉄鋼)とは何か

続いては、スチール(鉄鋼)について確認していきます。

スチールの成分と種類

スチール(steel)とは、鉄に炭素を0.02〜2.1%程度含ませた合金

のことで、日本語では「鋼(はがね)」または「鉄鋼」と呼ばれます。

スチールの基本成分・主成分:鉄(Fe)98〜99.98%
・炭素(C):0.02〜2.1%
・その他:ケイ素、マンガン、リンなどの微量元素

炭素含有量によって、性質が大きく変わります。

スチールは炭素含有量によって、いくつかの種類に分類されます。

種類 炭素含有量 特徴 用途例
低炭素鋼(軟鋼) 0.02〜0.3% 柔らかく加工しやすい 自動車ボディ、建材
中炭素鋼 0.3〜0.6% 強度と靭性のバランス 機械部品、軸
高炭素鋼 0.6〜2.1% 非常に硬い 刃物、工具、バネ

さらに、スチールには特殊な性質を持たせるために、他の元素を添加した「合金鋼」も多数存在します。代表的なものがステンレス鋼(クロムやニッケルを添加)です。

スチールの特徴と性質

スチールは、純鉄に比べて優れた特性を持つ素材です。

スチールの主な特徴1. 高強度
炭素の添加により、純鉄よりも硬く、強度が向上します。炭素含有量が増えるほど硬くなりますが、逆に脆くなる傾向もあります。

2. 加工性
低炭素鋼は柔軟性があり、プレス加工や溶接が容易です。自動車や家電製品のボディに広く使用されています。

3. 熱処理可能
焼入れ・焼戻しなどの熱処理により、硬さや靭性を調整できます。

4. 経済性
大量生産が可能で、比較的安価に入手できます。

スチールは炭素含有量によって性質が変わるため、用途に応じて最適な組成のスチールが選択されます。

スチールの主な用途

スチールは、現代社会のあらゆる分野で使用されている基幹材料です。

スチールの主な用途1. 建築・土木
鉄骨、鉄筋、H型鋼、鋼管など。ビルや橋梁の骨組みに使用されます。

2. 自動車
車体、エンジン部品、シャーシなど。軽量化と高強度化が進んでいます。

3. 家電製品
洗濯機、冷蔵庫の筐体など。プレス加工された薄板が使われます。

4. 機械・工具
歯車、軸、刃物、工具など。高炭素鋼や合金鋼が使用されます。

5. 容器・パイプ
配管、タンク、ドラム缶など。様々な形状に加工されます。

世界で年間約19億トンものスチールが生産されており、最も大量に使用されている金属材料

です。

ブリキとスチールの違い

続いては、ブリキとスチールの違いを確認していきます。

成分・構造の違い

ブリキとスチールの最も基本的な違いは、表面処理の有無です。

成分・構造の比較ブリキ:
・芯材は低炭素鋼(スチールの一種)
・表面にスズめっきを施した複合材料
・成分:鉄+炭素(0.02〜0.3%)+スズ(表面のみ)

スチール:
・鉄と炭素の合金
・表面処理なし(または別の処理)
・成分:鉄+炭素(0.02〜2.1%)

実は、ブリキの芯材もスチール(低炭素鋼)です。つまり、ブリキとは「スチールにスズめっきを施したもの」と言えます。両者の違いは、表面にスズめっきがあるかどうかという点にあります。
項目 ブリキ スチール
芯材 低炭素鋼(スチール) 鉄+炭素
表面処理 スズめっき なし(またはその他)
錆びやすさ 錆びにくい(めっきが完全な場合) 錆びやすい
食品安全性 ◎ スズは無害 △ 直接接触は避ける
外観 銀白色の光沢 灰色(表面処理次第)

表面処理の有無

ブリキとスチールの違いを理解する上で、表面処理の概念が重要です。

スチール(鉄鋼)は錆びやすいため、用途に応じて様々な表面処理が施されます。ブリキは、その表面処理の一つとして「スズめっき」を施したものです。

スチールの主な表面処理1. スズめっき → ブリキ
食品容器用。無毒で、はんだ付けしやすい。

2. 亜鉛めっき → トタン、ガルバナイズド鋼板
建材用。犠牲防食作用により耐久性が高い。

3. クロムめっき → クロムメッキ鋼板
装飾・耐食用。美しい光沢があり、硬い。

4. 塗装・樹脂コーティング
様々な色や機能を付与できる。

5. 無処理(黒皮鋼板)
構造材など、錆が問題にならない用途。

つまり、「ブリキ」は「スチール」の一種であり、スズめっきという特定の表面処理を施したスチール製品と理解するのが正確です。

用途や使い分けの違い

ブリキとスチール(無処理または他の処理)は、それぞれ異なる用途で使い分けられています。

ブリキが選ばれる用途・缶詰など食品容器
・菓子缶などギフト容器
・小型の屋内用容器
・装飾品

理由:食品安全性、はんだ付け性、美観

スチール(他の処理)が選ばれる用途

・建築構造材(無処理や塗装)
・自動車ボディ(防錆塗装)
・機械部品(無処理や焼入れ)
・屋根材(亜鉛めっき=トタン)

理由:強度、加工性、コスト

ブリキと鉄の違い

続いては、ブリキと鉄の違いを確認していきます。

鉄とは何か

鉄(Fe)は、元素記号Fe、原子番号26の金属元素

です。地殻中に豊富に存在し、人類が最も多く利用している金属です。

鉄の分類1. 純鉄
炭素含有量が0.02%以下の鉄。柔らかく、実用材料としてはほとんど使われません。

2. 鋼(スチール)
炭素含有量が0.02〜2.1%の鉄。最も広く使われる形態です。

3. 鋳鉄
炭素含有量が2.1%以上の鉄。鋳物に使用されます。

日常会話で「鉄」と言う場合、実際には「鋼(スチール)」を指していることがほとんどです。純鉄は柔らかすぎて実用的ではないため、ほぼすべての鉄製品は炭素を含んだ鋼です。

ブリキは鉄の一種なのか

ブリキは、鉄(厳密にはスチール)を芯材とし、表面にスズめっきを施した複合材料

です。

ブリキと鉄の関係ブリキは「鉄の一種」というよりも、「鉄(スチール)を加工した製品」と理解するのが正確です。ちょうど、塗装した鉄板を「塗装鉄板」と呼ぶのと同じように、スズめっきした鉄板を「ブリキ」と呼びます。

ブリキの約99%以上は鉄ですが、表面のスズめっきにより、性質が変化しています。そのため、単なる「鉄」とは区別されます。

純鉄とブリキの違い

純鉄とブリキは、成分も構造も大きく異なります。

項目 純鉄 ブリキ
成分 鉄99.98%以上 鉄+炭素+スズ(表面)
硬さ 非常に柔らかい 適度な硬さ
耐食性 錆びやすい 錆びにくい
用途 研究、電磁石の芯材 缶詰、容器
価格 高価 比較的安価

純鉄は工業的にはほとんど使われず、主に研究用途や特殊な用途(電磁石の芯など)に限定されます。

ブリキとアルミの違い

続いては、ブリキとアルミの違いを確認していきます。

アルミニウムの成分と特徴

アルミニウム(Al)は、元素記号Al、原子番号13の金属元素

で、軽量かつ耐食性に優れた素材です。

アルミニウムの主な特徴1. 軽量
比重2.70で、鉄(7.87)の約1/3の重さ

2. 耐食性
表面に酸化皮膜を形成し、錆びにくい

3. 熱伝導性
熱をよく伝え、放熱性に優れる

4. 加工性
柔らかく、薄く延ばしたり複雑な形状に成形できる

5. リサイクル性
再生に必要なエネルギーが少ない

アルミニウムは単体で使われることもありますが、強度を高めるためにマグネシウムやマンガンなどを添加したアルミ合金として使われることが多くあります。

重さや強度の違い

ブリキとアルミニウムの最も大きな違いは、重さと強度です。

特性 ブリキ アルミニウム
比重 7.85 2.70
引張強度 300〜500 MPa 90〜300 MPa(純アルミ〜合金)
磁性 磁石に吸着する 磁石に吸着しない
熱伝導率 約80 W/(m·K) 約237 W/(m·K)
価格 比較的安価 やや高価

アルミニウムはブリキの約1/3の重さで、軽量化が求められる用途に最適

です。一方、ブリキは強度が高く、薄くても丈夫な容器が作れます。

缶詰での使い分け

缶詰の容器として、ブリキとアルミニウムは用途によって使い分けられています。

ブリキ缶が使われる製品・食品缶詰(果物、魚、肉など)
・コーヒー缶、お茶の缶
・菓子缶

理由:はんだ付けで密封できる、強度が高い、食品に対して安定

アルミ缶が使われる製品

・炭酸飲料缶
・ビール缶
・ジュース缶

理由:軽量、開けやすい、リサイクルしやすい

飲料缶は1960年代からアルミ缶への移行が進みました。軽量で輸送コストが削減でき、プルトップ(イージーオープン)構造が可能なためです。一方、長期保存が必要な食品缶詰は、密封性と強度の高いブリキが今でも主流です。

磁石がつくかどうかで、ブリキ缶とアルミ缶を簡単に見分けられます。

磁石に吸着するのがブリキ缶、吸着しないのがアルミ缶です。

ブリキとスズの関係

続いては、ブリキとスズの関係を確認していきます。

スズ(錫)とは何か

スズ(錫、Sn)は、元素記号Sn、原子番号50の金属元素

です。古代から人類に利用されてきた金属の一つで、青銅(銅とスズの合金)の原料としても有名です。

スズの主な特徴1. 柔らかい
非常に柔らかく、簡単に変形する

2. 融点が低い
232℃で溶ける(鉄は1538℃)

3. 無毒性
人体に無害で、食品に触れても安全

4. 耐食性
空気中で安定した酸化皮膜を形成

5. 美しい光沢
銀白色の美しい金属光沢を持つ

スズは単体では柔らかすぎて構造材には向きませんが、めっき材料やはんだ、合金の原料として重要な役割を果たしています。

ブリキにおけるスズの役割

ブリキにおいて、スズめっき層は複数の重要な役割を担っています。

スズめっきの役割1. 防錆保護
スズが鉄を覆い、空気や水分から遮断することで、鉄の酸化(錆)を防ぎます。

2. 食品安全性
スズは無毒なため、食品に直接触れても安全です。食品缶詰に不可欠な特性です。

3. はんだ付け性
スズははんだ(スズと鉛または銀の合金)の主成分のため、容易にはんだ付けできます。缶詰の密封に利用されます。

4. 美観
銀白色の美しい光沢があり、印刷適性も良好です。

スズめっき層はわずか0.0001〜0.001mm程度の薄さですが、これらの重要な機能を果たしています。

スズ単体とブリキの違い

スズ単体とブリキは、構造も用途も全く異なります。

項目 スズ単体 ブリキ
成分 スズ100% 鉄(芯)+スズ(表面)
硬さ 非常に柔らかい 鉄並みに硬い
強度 低い 高い
価格 高価 比較的安価
用途 はんだ、合金材料 缶詰、容器
磁性 磁石に吸着しない 磁石に吸着する
スズ単体の主な用途・はんだ(電子機器の接合)
・青銅の原料(銅とスズの合金)
・めっき材料(ブリキなど)
・合金添加剤
・スズ箔(高級包装材)

ブリキは、スズの良い特性(耐食性、無毒性)と鉄の良い特性(強度、安価)を組み合わせた、優れた複合材料

と言えます。

まとめ  ブリキと鉄の違いは?アルミやスズとの違い・成分

本記事では、ブリキとスチールの違いを中心に、アルミや鉄、スズといった関連金属との比較について詳しく解説しました。

ブリキは鉄にスズをめっきした複合材料で、その芯材は低炭素鋼(スチール)です。スチールは鉄に炭素を加えた合金で、ブリキはそのスチールに表面処理を施したものと理解できます。つまり、ブリキとスチールの違いは、スズめっきという表面処理の有無にあります。

アルミニウムはブリキの約1/3の軽さで、缶飲料などに使われますが、食品缶詰にははんだ付けが可能で強度の高いブリキが今でも主流です。スズはブリキの表面を覆うめっき材料として重要な役割を果たしており、食品安全性と防錆性を実現しています。

それぞれの金属は、成分や構造の違いにより異なる特性を持ち、用途に応じて最適なものが選択されています。これらの違いを理解することで、身の回りの金属製品がなぜその素材で作られているのか、その理由が見えてくるはずです。