Excelで売上データを分析する際、各商品や部門が全体に占める割合を把握することは非常に重要です。
どの商品が売上の何パーセントを占めているのか、どの地域が最も貢献しているのか、各カテゴリの比率はどうなっているのかなど、売上構成比を正確に計算して可視化することで、ビジネスの強みや改善点が明確になり、戦略的な意思決定が可能になります。
しかし、構成比の計算は一見シンプルに見えて、実は注意すべきポイントがいくつかあります。絶対参照を使わないと数式をコピーしたときに参照先がずれてしまう、パーセント表示の書式設定を間違えると数値が正しく表示されない、円グラフで構成比を表現する際のラベル設定など、細かな技術が必要です。
Excelには売上構成比を効率的に計算・表示するための機能が豊富に用意されています。
基本的な除算と絶対参照による計算、パーセンテージ書式の適用、円グラフや帯グラフによる視覚化、ピボットテーブルによる動的な構成比分析など、目的に応じて最適な方法が異なります。
本記事では、売上構成比・比率の基本的な計算方法から、関数を使った効率的な算出、グラフによる分かりやすい表現、実務で役立つ応用テクニックまで、詳しく解説します。
売上データを効果的に分析したい方は、ぜひ最後までお読みください。
ポイントは
・構成比は「個別の値÷合計値」で計算し、絶対参照($)を使う
・パーセント表示は「セルの書式設定」またはホームタブの「%」ボタン
・円グラフを使えば構成比を視覚的に分かりやすく表現できる
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
売上構成比の基本的な計算方法
それではまず、売上構成比を計算する基本的な方法を確認していきます。
構成比の計算式と絶対参照
売上構成比は、各項目の売上÷全体の合計売上で計算します。
例えば、A列に商品名、B列に売上金額が入っていて、B2からB6に各商品の売上、B7に合計が入っている場合を考えます。
C2セルに構成比を計算する数式「=B2/$B$7」と入力します。
ここで重要なのが、合計のセル(B7)に絶対参照「$B$7」を使うことです。
絶対参照を使わずに「=B2/B7」と入力してC3以降にコピーすると、分母の参照先が「B8」「B9」とずれてしまい、正しい構成比が計算できません。
「$B$7」と絶対参照にすることで、数式をコピーしても常にB7セル(合計)を参照し続けます。
構成比計算の基本構造
個別の値
合計値
構成比
| A列(商品名) | B列(売上) | C列(構成比の数式) | C列(結果) |
|---|---|---|---|
| 商品A | 500,000 | =B2/$B$7 | 0.25 |
| 商品B | 800,000 | =B3/$B$7 | 0.40 |
| 商品C | 300,000 | =B4/$B$7 | 0.15 |
| 商品D | 400,000 | =B5/$B$7 | 0.20 |
| 合計 | 2,000,000 | – | – |

パーセント表示に変換する
構成比を計算すると、最初は小数点形式(0.25など)で表示されます。
これをパーセント表示(25%)に変換する方法は複数あります。
最も簡単な方法は、構成比が入っているセル範囲(C2:C5など)を選択し、ホームタブの「数値」グループにある「%」(パーセントスタイル)ボタンをクリックすることです。

これで一瞬で「25%」「40%」のようなパーセント表示に変わります。

より細かい設定をしたい場合は、セルを右クリックして「セルの書式設定」を選択します。
「表示形式」タブで「パーセンテージ」を選び、小数点以下の桁数を指定できます。
デフォルトは小数点以下0桁ですが、「25.5%」のように小数点を表示したい場合は桁数を1以上に設定します。
または、数式自体に「*100」を含めて「=(B2/$B$7)*100」とし、セルに「%」を後付けする方法もありますが、書式設定を使う方が一般的で管理しやすいです。
パーセント表示の方法
方法1
「%」ボタン
(最も簡単)
方法2
セルの書式設定→
パーセンテージ
方法3
(非推奨)
構成比の合計を確認する
構成比を計算した後、すべての項目の構成比を合計すると100%(または1.00)になるはずです。
これは計算が正しく行われているかを確認する重要なチェックポイントです。
C列に構成比を計算した場合、その下のセル(例:C7)に「=SUM(C2:C5)」と入力して合計を計算します。
結果が1.00(パーセント表示なら100%)になっていれば、計算は正確です。
もし99%や101%のように100%からずれている場合、いくつかの原因が考えられます。
四捨五入の影響で微妙にずれることもありますが、大きくずれている場合は、絶対参照を使っていない、一部の項目を計算に含めていない、合計値が間違っているなどの可能性があります。
特に、構成比をパーセント表示で小数点以下0桁にしている場合、「25%」「40%」「15%」「20%」と表示されていても、実際の値は「0.2475」「0.4023」などの細かい数値で、合計は100.0%にならないことがあります。
売上構成比の計算は、ビジネス分析の基本中の基本です。
各商品やカテゴリが全体に占める割合を把握することで、主力商品の特定、売上の偏り、リスクの集中度などが明確になります。
絶対参照の使用は、Excelで構成比を計算する際の最重要ポイントです。
「$B$7」のように行と列の両方に「$」を付けることで、数式をコピーしても参照先が固定されます。
F4キーを押すと、相対参照→絶対参照→行のみ絶対→列のみ絶対と切り替わるので、覚えておくと便利です。
また、構成比の合計が100%になることを確認する習慣をつけることで、計算ミスを早期に発見できます。
特に、手動で一部の数値を変更した場合や、データを追加・削除した場合は、必ず再確認しましょう。
関数を使った構成比の効率的な計算
続いては、関数を活用してより効率的に構成比を計算する方法を確認していきます。
SUM関数で動的に合計を参照
合計値を固定のセルに入力する代わりに、SUM関数を直接数式に組み込むことも可能です。
「=B2/SUM($B$2:$B$5)」のように、分母にSUM関数を使えば、B7セルに合計を別途計算する必要がありません。
この方法の利点は、データの範囲が変わっても数式内で完結している点です。
ただし、合計値を別のセルに表示している場合は、そちらを参照する方が分かりやすく、メンテナンスもしやすいです。
また、構成比の計算で使う合計と、表示用の合計が異なるセルにあると、データの整合性が取りにくくなるため、通常は合計セルを参照する方法が推奨されます。
| 方法 | 数式例 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 合計セル参照 | =B2/$B$7 | シンプル、分かりやすい | 合計セルが必要 |
| SUM関数組み込み | =B2/SUM($B$2:$B$5) | 合計セル不要 | 数式が長くなる |
| SUMIF組み込み | =B2/SUMIF(条件範囲,条件,合計範囲) | 条件付き集計可能 | 複雑になりやすい |
TEXT関数で表示を整える
構成比をパーセント表示にしつつ、他の文字列と結合したい場合、TEXT関数を使います。
例えば、「商品A: 25%」のように商品名と構成比を一つのセルに表示したい場合、「=A2&”: “&TEXT(B2/$B$7,”0%”)」という数式を使います。
TEXT関数は数値を指定した書式の文字列に変換する関数で、第2引数に「”0%”」を指定することでパーセント表示になります。
「”0.0%”」とすれば「25.5%」のように小数点以下1桁まで表示され、「”0.00%”」なら2桁まで表示されます。
この方法は、レポート作成やプレゼンテーション資料で、説明文と数値を一体化させたい場合に便利です。
ただし、TEXT関数で変換した値は文字列になるため、その後の計算には使用できない点に注意が必要です。
TEXT関数による表示例
整数表示
→ 25%
小数点1桁
→ 25.5%
小数点2桁
→ 25.48%
条件付き構成比の計算
特定の条件を満たす項目だけで構成比を計算したい場合、SUMIF関数やSUMIFS関数を組み合わせます。
例えば、商品カテゴリが「電化製品」のものだけで構成比を計算する場合を考えます。
「=B2/SUMIF($A$2:$A$10,”電化製品”,$B$2:$B$10)」のように、分母にSUMIF関数を使います。
これにより、「電化製品」カテゴリ内での各商品の構成比が計算できます。
全体に占める構成比ではなく、特定グループ内での構成比を知りたい場合に有用です。
さらに複雑な条件の場合は、SUMIFS関数を使って複数の条件を指定できます。
「=B2/SUMIFS($C$2:$C$100,$A$2:$A$100,”電化製品”,$D$2:$D$100,”2024年”)」のように、カテゴリと年度の両方を条件にすることも可能です。
関数を活用した構成比の計算は、複雑な分析や動的なレポート作成に威力を発揮します。
特に、データが頻繁に更新される環境では、SUM関数を組み込むことで、自動的に最新の合計値を参照して構成比が更新されます。
TEXT関数は、プレゼンテーション資料やダッシュボードで、見た目を整えるために非常に有用です。
ただし、TEXT関数で作成した値は文字列なので、後から計算に使用できなくなります。
計算用のセルと表示用のセルを分けて管理することをおすすめします。
条件付き構成比は、セグメント分析やカテゴリ別の詳細分析で活躍します。
全体の構成比とカテゴリ内の構成比を両方計算することで、より多角的な分析が可能になります。
グラフで構成比を視覚化する方法
続いては、計算した構成比をグラフで分かりやすく表現する方法を確認していきます。
円グラフで構成比を表現
構成比を視覚的に表現する最も一般的な方法は、円グラフを使うことです。
商品名と売上金額の範囲(A1:B5など)を選択し、「挿入」タブ→「円グラフまたはドーナツグラフの挿入」→「2-D円」を選択します。
円グラフが作成され、各商品が円の一部として表示され、その大きさが構成比に対応します。

グラフをクリックして「グラフ要素」ボタン(+マーク)から「データラベル」を追加し、「その他のデータラベルオプション」で「パーセンテージ」を選択します。
これにより、各セグメントに構成比がパーセントで表示されます。
「値」と「パーセンテージ」の両方を表示することもでき、「商品A (500,000 / 25%)」のような表示も可能です。
円グラフは、全体に対する各項目の割合を直感的に理解できるため、プレゼンテーションや報告書で頻繁に使用されます。
円グラフの作成手順
商品名と売上の
範囲を選択
挿入→円グラフ
を選択
データラベルに
パーセンテージ追加
| グラフの種類 | 適した用途 | メリット |
|---|---|---|
| 円グラフ | 全体の構成比 | 直感的、分かりやすい |
| ドーナツグラフ | 複数系列の構成比 | 中央に情報を追加可能 |
| 100%積み上げ横棒 | 複数グループの比較 | グループ間の比較が容易 |
| ツリーマップ | 階層的な構成比 | 大量の項目も表示可能 |
100%積み上げグラフで比較
複数の期間やカテゴリの構成比を比較したい場合、100%積み上げ横棒グラフが効果的です。
例えば、2023年と2024年の商品別売上構成比を比較する場合を考えます。
データ範囲(商品名、2023年売上、2024年売上)を選択し、「挿入」タブ→「横棒グラフ」→「100%積み上げ横棒」を選択します。
各年の棒が同じ長さ(100%)で表示され、その中で各商品が占める割合が色分けされます。
これにより、年ごとの構成比の変化が一目で分かります。
「商品Aの構成比が昨年より増えている」「商品Cの比率が減少している」といった傾向が視覚的に把握できます。
100%積み上げグラフは、時系列での構成比の変化や、複数グループの構成比を横並びで比較する際に非常に有用です。
ツリーマップで階層的な構成比
項目数が多い場合や、階層構造を持つデータの構成比を表現したい場合、ツリーマップが適しています。
ツリーマップは、四角形の大きさで各項目の構成比を表現するグラフです。
データ範囲を選択し、「挿入」タブ→「階層グラフの挿入」→「ツリーマップ」を選択します。
各項目が四角形として表示され、その面積が売上や構成比に比例します。
円グラフでは項目が多すぎると見にくくなりますが、ツリーマップなら10個以上の項目でも効果的に表示できます。
また、カテゴリと商品の2階層構造になっている場合、大きな四角形の中に小さな四角形が配置され、階層関係も表現できます。
色の濃淡や配色を工夫することで、さらに情報量の多い可視化が可能です。
グラフによる構成比の可視化は、数値だけでは伝わりにくい情報を直感的に理解できるようにします。
円グラフは最もポピュラーで分かりやすいですが、項目数が多い場合(7つ以上)は、小さなセグメントが見づらくなります。
その場合は、上位5項目を個別に表示し、残りを「その他」としてまとめる方法が効果的です。
100%積み上げグラフは、時系列での変化や複数グループの比較に優れています。
月次の売上構成比の推移、地域別の商品構成比の違いなど、比較分析が必要な場面で活躍します。
グラフを作成する際は、色使いにも注意しましょう。
類似した商品には類似した色を使う、主力商品には目立つ色を使う、背景と十分なコントラストを確保するなど、視認性を高める工夫が重要です。
まとめ エクセルで売り上げ構成比・比率の求め方(関数やグラフ化)
エクセルで売上構成比・比率を求める方法をまとめると
・基本的な計算方法:「=B2/$B$7」のように個別の値を合計で割る、合計セルは絶対参照($B$7)を使うことが必須、数式をコピーしても参照先が固定される、ホームタブの「%」ボタンでパーセント表示に変換、構成比の合計が100%になることを確認
・関数を活用した計算:「=B2/SUM($B$2:$B$5)」でSUM関数を直接組み込み、TEXT関数で「=TEXT(B2/$B$7,”0%”)」とパーセント表示の文字列に変換、SUMIF関数で「=B2/SUMIF($A$2:$A$10,”条件”,$B$2:$B$10)」と条件付き構成比を計算
・円グラフによる可視化:商品名と売上の範囲を選択→「挿入」→「円グラフ」、データラベルで「パーセンテージ」を追加、各セグメントに構成比が表示される、ドーナツグラフでも同様の表現が可能
・100%積み上げグラフ:複数期間や複数グループの構成比を比較、「挿入」→「横棒グラフ」→「100%積み上げ横棒」、時系列での構成比の変化が分かりやすい、グループ間の違いを視覚的に比較
・ツリーマップ:項目数が多い場合に適している、四角形の大きさで構成比を表現、「挿入」→「階層グラフ」→「ツリーマップ」、階層構造も表現できる
これらの方法を用途に応じて使い分けることで、効果的な売上分析が実現できます。
シンプルな計算には基本の除算と絶対参照、レポート作成にはTEXT関数、プレゼンテーションには円グラフや積み上げグラフが適しています。
ただし、構成比の計算と表示には注意が必要です。
絶対参照を忘れると数式コピー時に参照先がずれて誤った結果になり、小数点の丸め処理で合計が100%からわずかにずれることがあるため、重要な資料では必ず合計を確認することが重要です。
Excelの売上構成比計算テクニックを適切に活用して、説得力のあるデータ分析と効果的なプレゼンテーションを実現していきましょう!