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実数と有理数の違いは?無理数とは?

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数学を学ぶ中で、実数、有理数、無理数という3つの概念は非常に重要です。これらは密接に関連していますが、それぞれ明確な違いがあります。

「有理数と実数って何が違うの?」「無理数ってどんな数?」「√2はなぜ無理数なの?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。これらの違いを正しく理解することは、数学の基礎を固める上で欠かせません。

本記事では、実数と有理数の関係から、無理数の定義と性質、具体例まで、これらの数の体系を体系的に解説していきます。数の分類をしっかり理解したい方は、ぜひ最後までお読みください。

有理数とは何か

それではまず、有理数の定義から詳しく見ていきます。

有理数の定義

有理数とは、2つの整数の比で表すことができる数のことです。

一般にp/q(pとqは整数、q≠0)という形で表される数を有理数と呼びます。記号ℚで表され、これは英語のQuotient(商)に由来しているのです。

有理数の定義

有理数ℚ = {p/q | p、qは整数、q≠0}

分数で表せる数

「有理」という言葉は「理にかなっている」という意味ではありません。ラテン語のratio(比)が語源で、「比率で表せる数」という意味なのです。

有理数には様々な形があります。分数の形だけでなく、整数も有理数に含まれます。なぜなら整数nはn/1という分数で表せるからです。

有理数の例

  • 分数:1/2、3/4、-5/3
  • 整数:2=2/1、-3=-3/1、0=0/1
  • 有限小数:0.5=1/2、0.25=1/4
  • 循環小数:0.333…=1/3

有理数を小数で表すと、必ず有限小数か循環小数になります。これは有理数の重要な特徴です。

有限小数とは小数点以下が有限で終わる小数で、0.5や0.25などです。循環小数とは特定の数字の並びが無限に繰り返される小数で、0.333…(1/3)や0.142857142857…(1/7)などが該当します。

有理数に含まれる数の種類

有理数には、いくつかの重要な部分集合が含まれます。

数の種類 定義 有理数か
自然数 1から始まる正の整数 1, 2, 3, 4
整数 正・0・負の整数 -2, 0, 5
分数 p/q形式 1/2, -3/4
有限小数 小数が終わる 0.5, 2.75
循環小数 繰り返しがある 0.333…

つまり自然数⊂整数⊂有理数という包含関係が成り立ちます。すべての整数は有理数であり、すべての自然数も有理数なのです。

0.5は1/2、0.25は1/4というように、すべての有限小数は分数で表せます。したがって有限小数も有理数です。

循環小数も実は分数で表せます。例えば0.333…は1/3、0.666…は2/3です。循環する部分を見つければ、計算により分数に変換できるのです。

有理数は日常生活で最も頻繁に使う数です。長さ1.5m、重さ2.3kg、時間3.5秒といった値は、すべて有理数で表現できます。

有理数の性質

有理数には、いくつかの重要な数学的性質があります。

まず有理数は稠密です。任意の2つの有理数の間には、必ず別の有理数が存在します。どんなに近い2つの有理数を選んでも、その間にまだ無限の有理数があるのです。

稠密性の例

1/2と1/3の間には、5/12や7/18などが存在

0.1と0.2の間には、0.15や0.17などが無限に存在

また有理数同士の四則演算の結果は、常に有理数になります(0で割る場合を除く)。

有理数の演算の閉じ性

  • 1/2 + 1/3 = 5/6(有理数)
  • 2/3 – 1/4 = 5/12(有理数)
  • 3/4 × 2/5 = 3/10(有理数)
  • 1/2 ÷ 1/3 = 3/2(有理数)

この性質を「演算について閉じている」と言います。有理数の世界の中で四則演算を行っても、外に出ることがないのです。

しかし平方根を取ると、有理数から飛び出すことがあります。√4=2は有理数ですが、√2は有理数ではありません。これが次に説明する無理数なのです。

無理数とは何か

続いては、無理数について詳しく確認していきましょう。

無理数の定義

無理数とは、有理数ではない実数のことです。つまり分数では表せない実数を指します。

小数で表すと、循環しない無限小数になるのが特徴です。どこまで計算しても、同じパターンが繰り返されることなく、延々と続いていくのです。

無理数の定義

無理数 = 実数 - 有理数

= 分数で表せない実数

= 循環しない無限小数

「無理」という言葉から「理屈に合わない数」と誤解されがちですが、これは正しくありません。英語ではirrational numberと言い、「比率で表せない数」という意味です。rational(有理の)にir(否定)が付いた形なのです。

無理数は実数の一部であり、数直線上に確かに位置を持ちます。存在しない数ではなく、れっきとした数学的対象です。

記号としては、無理数全体を表す専用の記号はありません。実数ℝから有理数ℚを除いたものとして、ℝ\ℚと表記されることがあります。

代表的な無理数

最も有名な無理数をいくつか見てみましょう。

よく知られた無理数

  • √2 ≈ 1.41421356…(√2の2乗は2)
  • √3 ≈ 1.73205080…(√3の2乗は3)
  • √5 ≈ 2.23606797…(黄金比に関係)
  • π ≈ 3.14159265…(円周率)
  • e ≈ 2.71828182…(自然対数の底)

√2は最初に発見された無理数です。古代ギリシャの数学者ピタゴラス学派が、正方形の対角線の長さを研究する中で発見しました。

1辺の長さが1の正方形の対角線の長さは√2です。しかしこれをどう頑張っても、整数の比では表せません。当時の数学者たちは、この発見に大きな衝撃を受けたと言われています。

円周率πは、円の円周と直径の比です。3.14と近似されることが多いですが、実際には無限に続く小数で、循環もしません。コンピュータで数兆桁まで計算されていますが、規則性は見つかっていないのです。

無理数 由来・特徴
√2 1.414… 最初に発見された無理数
π 3.141… 円周率、幾何学で重要
e 2.718… 自然対数の底、微積分で重要
黄金比φ 1.618… (1+√5)/2、自然界に多く現れる

自然対数の底eは、複利計算や微積分学で極めて重要な定数です。y=e^xという指数関数は、微分しても自分自身になるという特別な性質を持ちます。

黄金比φは、美しい比率として古くから知られています。自然界の螺旋構造や、美術作品の構図などに現れるのです。

無理数であることの証明

ある数が無理数であることは、どのように証明するのでしょうか。

最も有名なのが√2が無理数であることの証明です。背理法という論法を使います。

√2が無理数であることの証明(概略)

1. √2が有理数と仮定する

2. すると√2=p/q(既約分数)と表せる

3. 両辺を2乗すると、2=p²/q²

4. 整理するとp²=2q²

5. これよりpは偶数となる(p=2kとおける)

6. 代入すると4k²=2q²、つまりq²=2k²

7. よってqも偶数となる

8. pもqも偶数なら既約分数ではない(矛盾)

9. したがって√2は有理数ではない(無理数)

この証明は、√2が有理数だと仮定すると矛盾が生じることを示しています。したがって最初の仮定が間違っており、√2は無理数でなければならないのです。

一般に、素数の平方根は無理数です。√2、√3、√5、√7などはすべて無理数になります。

一方で√4=2、√9=3のように、平方数の平方根は有理数(整数)です。すべての平方根が無理数というわけではないことに注意しましょう。

πやeが無理数であることの証明は、√2よりも高度な数学を必要とします。しかしこれらも厳密に証明されており、無理数であることが確定しているのです。

実数と有理数の関係

それでは、実数と有理数がどのような関係にあるか見ていきましょう。

実数は有理数と無理数の和

実数は、有理数と無理数を合わせたものです。

すべての実数は、有理数か無理数のどちらか一方に必ず分類されます。有理数でも無理数でもない実数は存在しないのです。

実数の分解

実数ℝ = 有理数ℚ ∪ 無理数

任意の実数は、有理数または無理数

数直線で考えると分かりやすいでしょう。数直線上のすべての点が実数に対応します。そのうち一部の点が有理数で、残りの点が無理数なのです。

興味深いことに、数直線上では無理数の方が圧倒的に多いのです。有理数は「まばら」に分布しており、無理数は「びっしり」と詰まっています。

分類 記号 含まれる数
実数 すべての数直線上の点
有理数 1/2, 3, 0.333…
無理数 ℝ\ℚ √2, π, e

実数という大きな集合の中に、有理数という部分集合があります。つまり有理数⊂実数という包含関係です。すべての有理数は実数ですが、すべての実数が有理数というわけではありません。

実数から有理数を除いた残りが無理数です。実数\有理数=無理数という関係が成り立ちます。

実数と有理数の決定的な違い

実数と有理数の最も大きな違いは、無理数を含むかどうかです。

有理数は分数で表せる数だけを含みます。一方で実数は、分数で表せる数(有理数)に加えて、分数で表せない数(無理数)も含むのです。

実数と有理数の比較

有理数ℚ:分数で表せる数のみ

実数ℝ:分数で表せる数+表せない数

もう一つの重要な違いは完備性です。

有理数には「穴」があります。例えば√2に限りなく近づく有理数の列を考えると、その極限は√2ですが、√2自体は有理数ではありません。有理数の列の極限が、有理数の外に出てしまうのです。

一方で実数には穴がありません。実数の列の極限は必ず実数になります。これを完備性と呼び、実数の重要な性質なのです。

性質 有理数ℚ 実数ℝ
分数で表せる すべて○ 一部のみ○
稠密性
完備性 ×
可算性 可算無限 非可算無限

有理数は可算無限個存在します。つまり1番目、2番目、3番目…と番号を付けて数え上げることが理論的には可能なのです。

しかし実数は非可算無限個存在します。どんな方法を使っても、すべての実数に番号を付けて数え上げることはできません。実数の無限は、有理数の無限よりも「大きい」無限なのです。

この違いは、実数が有理数よりも豊かで完全な数の体系であることを示しています。

実数における有理数の役割

有理数は実数の中で特別な役割を果たします。

どんな実数も、有理数でいくらでも近似できるのです。例えばπ≈3.14159…という無理数は、3、3.1、3.14、3.141、3.1415…という有理数列で近似できます。

無理数の有理数近似

√2 ≈ 1.4、1.41、1.414、1.4142…

π ≈ 3、3.1、3.14、3.141、3.1415…

e ≈ 2.7、2.71、2.718、2.7182…

コンピュータで実数を扱う際、実際には有理数(正確には有限小数)で近似しています。πそのものを正確に保存することはできませんが、πに非常に近い有理数を使って計算するのです。

測定値も同様です。長さを測って「√2メートル」という値が得られることはありません。実際には1.414メートルのように、有限小数(有理数)として記録されます。

このように有理数は、無理数を含む実数全体を近似的に扱うための、実用的な道具なのです。

一方で理論的には、無理数の存在が実数を完全なものにしています。有理数だけでは穴だらけだった数直線を、無理数が埋めることで連続的な実数直線が完成するわけです。

有理数と無理数は、実数という体系の中で互いに補完し合う関係にあると言えるでしょう。

有理数と無理数の見分け方

続いては、ある数が有理数か無理数かを判定する方法を見ていきましょう。

小数表示による判定

数が小数で表されている場合、その形から有理数か無理数かを判定できます。

有限小数または循環小数なら有理数、循環しない無限小数なら無理数です。

小数表示での判定

  • 有限小数(例:0.5、2.75)→ 有理数
  • 循環小数(例:0.333…、0.142857142857…)→ 有理数
  • 循環しない無限小数(例:1.41421…、3.14159…)→ 無理数
小数表示 判定
1/2 0.5(有限) 有理数
1/3 0.333…(循環) 有理数
√2 1.41421…(非循環) 無理数
π 3.14159…(非循環) 無理数

ただし注意が必要なのは、小数が循環しているかどうかを確認するには、相当な桁数を見る必要がある場合があることです。

例えば1/7=0.142857142857…は、6桁ごとに同じパターンが繰り返されます。最初の数桁だけ見ても、循環に気づかないかもしれません。

理論的には、分数を小数に直せば必ず有限小数か循環小数になります。しかし実際に計算して確認するのは大変な場合もあるのです。

平方根による判定

平方根の形で表されている数の判定方法を見てみましょう。

平方数の平方根は有理数、そうでない正の整数の平方根は無理数です。

平方根の判定

  • √1=1(有理数、整数)
  • √4=2(有理数、整数)
  • √9=3(有理数、整数)
  • √16=4(有理数、整数)
  • √2(無理数、2は平方数でない)
  • √3(無理数、3は平方数でない)
  • √5(無理数、5は平方数でない)

平方数とは、ある整数の2乗で表せる数です。1=1²、4=2²、9=3²、16=4²、25=5²などが平方数になります。

平方数の平方根は整数になるため、有理数です。一方で平方数でない正の整数の平方根は、すべて無理数なのです。

平方数か 平方根 判定
4 ○(2²) √4=2 有理数
5 × √5≈2.236… 無理数
9 ○(3²) √9=3 有理数
10 × √10≈3.162… 無理数

また√(4/9)=2/3のように、有理数の平方根が有理数になる場合もあります。分子分母がともに平方数なら、その平方根は有理数です。

逆に√2/3のように、無理数を含む式は無理数になります。有理数と無理数を足したり掛けたりした結果は、通常無理数になるのです。

特殊な数の判定

いくつかの有名な定数が有理数か無理数かを確認しましょう。

有名な数の分類

  • π(円周率):無理数(証明済み)
  • e(自然対数の底):無理数(証明済み)
  • 黄金比 (1+√5)/2:無理数(√5が無理数だから)
  • ln2(2の自然対数):無理数(証明済み)
  • √2:無理数(古典的証明あり)

πとeは単に無理数なだけでなく、超越数という特別な無理数です。超越数とは、どんな整数係数の多項式の解にもならない数のことです。

√2は無理数ですが、x²-2=0という多項式の解になります。このような無理数を代数的無理数と呼びます。

一方でπは、どんな整数係数の多項式方程式を作っても、その解にはなりません。超越数は代数的無理数よりも「超越した」存在なのです。

判定が難しい数もあります。例えばπ+eやπ×eが有理数か無理数かは、まだ証明されていません。また0.12345678910111213…(自然数を順に並べた小数)は無理数であることが証明されています。

数の有理性・無理性の判定は、時に非常に深い数学を必要とする問題なのです。

まとめ

本記事では、実数と有理数の違い、無理数の定義と性質について詳しく解説しました。

有理数は分数で表せる数で、実数は有理数と無理数を合わせたものです。無理数は分数で表せない実数であり、√2やπなどが代表例です。小数表示では、有限小数または循環小数なら有理数、循環しない無限小数なら無理数と判定できます。

実数は有理数と無理数が補完し合うことで完全な数の体系を形成しています。この分類を正しく理解することで、数学の理解が深まるでしょう。