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ベルヌーイの定理・法則・公式・導出をわかりやすく解説!【飛行機:圧力損失:例題】

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流体力学の基礎として、ベルヌーイの定理は非常に重要な原理です。飛行機が飛ぶ理由や水道管の水圧変化など、身の回りの多くの現象を説明できる定理なのです。

「ベルヌーイの定理って何?」「公式はどう導出するの?」「飛行機とどう関係があるの?」「圧力損失って何?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。

本記事では、ベルヌーイの定理の基本から公式の導出、飛行機への応用、具体的な例題まで、わかりやすく解説していきます。流体力学の基礎を理解したい方は、ぜひ参考にしてください。

ベルヌーイの定理とは何か

それではまず、ベルヌーイの定理の基本的な概念から見ていきます。

ベルヌーイの定理の基本概念

ベルヌーイの定理とは、流体の速度と圧力の関係を表す法則です。

簡単に言えば、「流体の速度が速いところでは圧力が低く、速度が遅いところでは圧力が高い」という関係を数式で表したものになります。

ベルヌーイの定理の基本原理

流体の速度が増加すると圧力が減少する

流体の速度が減少すると圧力が増加する

エネルギー保存則から導かれる

この定理は、18世紀のスイスの数学者ダニエル・ベルヌーイによって発見されました。彼は流体の運動を研究する中で、速度と圧力の間に逆の関係があることを見出したのです。

ベルヌーイの定理は、次の3つのエネルギーの合計が一定であることを表しています。

流体の持つ3つのエネルギー

  • 運動エネルギー:流体の速度による
  • 圧力エネルギー:流体の圧力による
  • 位置エネルギー:流体の高さによる
エネルギーの種類 関係する物理量
運動エネルギー 速度v (1/2)ρv²
圧力エネルギー 圧力P P
位置エネルギー 高さh ρgh

これらのエネルギーの和が、流体が流れる経路のどの地点でも一定に保たれるというのがベルヌーイの定理の本質です。

一つのエネルギーが増えれば、他のエネルギーが減ることで、全体のバランスが保たれるのです。

ベルヌーイの定理と法則の違い

「ベルヌーイの定理」と「ベルヌーイの法則」という2つの呼び方がありますが、実は同じものを指しています。

一般的に物理学では、「定理」は数学的に証明されたもの、「法則」は実験的に確認されたものという使い分けがありますが、ベルヌーイの場合は両方の性質を持っているため、どちらの呼び方も使われるのです。

呼び方の違い

  • ベルヌーイの定理:数学的導出を強調
  • ベルヌーイの法則:物理法則としての性質を強調
  • ベルヌーイの原理:基本原理としての側面を強調

英語では”Bernoulli’s principle”または”Bernoulli’s theorem”と呼ばれ、どちらも広く使われています。

本記事では「ベルヌーイの定理」という呼び方を主に使いますが、法則や原理と呼んでも同じ内容を指すことを理解しておきましょう。

重要なのは名称ではなく、流体の速度と圧力の関係を表すという本質的な内容です。

ベルヌーイの定理の適用条件

ベルヌーイの定理は、すべての流体に対して常に成り立つわけではありません。いくつかの条件が必要です。

ベルヌーイの定理が成り立つ条件

  • 定常流:時間によって流れが変化しない
  • 非圧縮性流体:密度が一定
  • 非粘性流体:摩擦や粘性がない
  • 流線に沿った運動:流体が滑らかに流れる

定常流とは、流体の速度や圧力が時間によって変化しない流れのことです。蛇口から一定の速度で水が流れ続けているような状態を指します。

非圧縮性とは、流体の密度が変化しないことを意味します。水のような液体はほぼ非圧縮性ですが、空気のような気体は高速になると圧縮性が問題になることがあります。

条件 意味 実際の例
定常流 時間変化なし 安定した水の流れ
非圧縮性 密度一定 水、低速の空気
非粘性 摩擦なし 理想化された流体
流線運動 滑らかな流れ 層流状態

実際の流体では、これらの条件が完全に満たされることは稀です。特に粘性は現実の流体には必ず存在します。

しかし多くの場合、ベルヌーイの定理は近似的に成り立ち、実用上十分な精度で現象を説明できるのです。

条件から外れる場合でも、補正項を加えることで実際の流れを記述できます。完全な理想流体でなくても、ベルヌーイの定理は流体力学の基礎として重要な役割を果たしているのです。

ベルヌーイの定理の公式と導出

続いては、ベルヌーイの定理の公式と、その導出方法を確認していきましょう。

ベルヌーイの定理の公式

ベルヌーイの定理は、次の式で表されます。

ベルヌーイの定理の公式

P + (1/2)ρv² + ρgh = 一定

P:圧力(Pa)

ρ:流体の密度(kg/m³)

v:流速(m/s)

g:重力加速度(9.8 m/s²)

h:高さ(m)

この式は、流体が流れる経路のどの地点でも、左辺の値が同じになることを示しています。

2つの地点AとBでこの式を適用すると、次のように書けます。

2地点でのベルヌーイの式

P₁ + (1/2)ρv₁² + ρgh₁ = P₂ + (1/2)ρv₂² + ρgh₂

各項の物理的な意味を確認しましょう。

名称 意味 単位
P 静圧 流体の圧力 Pa(パスカル)
(1/2)ρv² 動圧 流体の運動による圧力 Pa
ρgh 位置水頭 高さによる圧力 Pa

(1/2)ρv²の項は動圧と呼ばれ、流体の運動エネルギーに対応します。速度が速いほど、この項は大きくなるのです。

ρghの項は位置水頭と呼ばれ、高さによる位置エネルギーに対応します。高い位置ほど、この項が大きくなります。

水平な管(h₁=h₂)の場合、式は簡略化されます。

水平管でのベルヌーイの式

P₁ + (1/2)ρv₁² = P₂ + (1/2)ρv₂²

この簡略版は、多くの実用的な問題で使われます。

エネルギー保存則からの導出

ベルヌーイの定理は、エネルギー保存則から導出できます。

流体の微小部分に着目し、その単位体積あたりのエネルギーを考えましょう。

導出の考え方

1. 流体の微小部分の運動を考える

2. 仕事とエネルギーの関係を適用

3. 単位体積あたりのエネルギーを計算

4. エネルギー保存則を適用

流体の単位体積あたりのエネルギーは、次の3つから構成されます。

運動エネルギー密度:(1/2)ρv²

これは流体の速度vによる運動エネルギーを、単位体積あたりで表したものです。

圧力エネルギー密度:P

圧力Pも、単位体積あたりのエネルギーの次元を持っています。Pa=N/m²=J/m³という関係があるのです。

位置エネルギー密度:ρgh

高さhにある流体の単位体積あたりの位置エネルギーです。

エネルギー保存則

(1/2)ρv² + P + ρgh = 一定

各項がすべてエネルギー密度(J/m³)の次元を持つ

この式は、流体が外部から仕事を受けず、摩擦による損失もない場合に、全エネルギーが保存されることを表しています。

エネルギー保存則という普遍的な原理から、ベルヌーイの定理が導かれるわけです。

運動方程式からの導出

より厳密には、流体の運動方程式(オイラー方程式)からベルヌーイの定理を導出できます。

流体の微小要素に働く力を考え、ニュートンの運動方程式を適用します。

オイラー方程式

ρ(∂v/∂t + v・∇v) = -∇P – ρg∇h

定常流(∂v/∂t = 0)の場合、この式を流線に沿って積分すると、ベルヌーイの式が得られます。

詳細な数学的導出は複雑ですが、基本的な考え方は次の通りです。

ステップ 内容
1 流体要素に働く圧力差を考える
2 重力による力を考える
3 ニュートンの運動方程式を適用
4 流線に沿って積分
5 ベルヌーイの式を得る

流体要素が流れに沿って移動するとき、圧力差と重力が仕事をします。その仕事が運動エネルギーの変化に等しいという関係から、ベルヌーイの式が導かれるのです。

この導出により、ベルヌーイの定理が単なる経験則ではなく、力学の基本原理から導かれる厳密な定理であることが分かります。

実用的には簡単な形の公式を使えば十分ですが、背景にある物理原理を理解することで、適用範囲や限界も理解できるようになるでしょう。

飛行機への応用

それでは、ベルヌーイの定理が飛行機の飛行原理とどう関係するか見ていきましょう。

翼に働く揚力の原理

飛行機が飛べる理由は、翼に働く揚力にあります。そしてこの揚力の発生に、ベルヌーイの定理が関係しているのです。

飛行機の翼は、上面が膨らんだ流線型の形状をしています。この形状により、翼の上面と下面で空気の流れる速度が異なるのです。

翼周りの空気の流れ

  • 上面:空気の流速が速い
  • 下面:空気の流速が遅い
  • ベルヌーイの定理により:速い→圧力低、遅い→圧力高
  • 結果:下から上への力(揚力)が発生

翼の上面では空気が速く流れるため、ベルヌーイの定理により圧力が低くなります。下面では空気がゆっくり流れるため、圧力が高くなるのです。

この圧力差により、翼には下から上への力、つまり揚力が働きます。

揚力の発生メカニズム

1. 翼の形状により上面の流速が速くなる

2. ベルヌーイの定理により上面の圧力が下がる

3. 下面との圧力差が生じる

4. 圧力差により揚力が発生

位置 流速 圧力 結果
翼上面 速い 低い 上向きに吸い上げられる
翼下面 遅い 高い 上向きに押し上げられる

揚力Lは、次の式で表されます。

L = (1/2)ρv²SCL

ここでρは空気の密度、vは飛行速度、Sは翼面積、CLは揚力係数です。

揚力係数CLは翼の形状や迎え角(翼と気流のなす角)によって決まります。

ベルヌーイの定理は、この揚力発生の物理的な説明の一部を提供しているのです。

翼型と流速分布

飛行機の翼の断面形状を翼型(エアフォイル)と呼びます。

翼型の設計は航空工学の重要な分野で、様々な形状が開発されてきました。基本的な翼型は、上面が膨らみ、下面がほぼ平坦な形をしています。

翼型の特徴

  • 前縁:丸みを帯びた翼の前端
  • 上面(背面):膨らんだ曲面
  • 下面(腹面):比較的平坦
  • 後縁:尖った翼の後端
  • キャンバー:上下面の曲率の差

翼周りの空気の流れをシミュレーションすると、上面で流速が速くなることが確認できます。

翼の前縁で分かれた空気の流れは、上面を通る経路の方が距離が長くなります。同じ時間で後縁に到達するため、上面の空気は速く流れる必要があるのです。

翼型パラメータ 効果
キャンバー(反り) 大きいほど揚力増
厚さ 適度な厚さで揚力最大
迎え角 大きいほど揚力増(限度あり)

迎え角を大きくすると揚力は増加しますが、ある角度を超えると気流が翼から剥離し、揚力が急激に失われます。これを失速(ストール)と呼び、飛行機にとって危険な状態です。

現代の航空機設計では、コンピュータシミュレーションを使って翼周りの流れを詳細に解析し、最適な翼型を設計しています。

ベルヌーイの定理は、この複雑な流れの理解の基礎となっているのです。

ベルヌーイの定理の限界と補足理論

実は、飛行機の揚力発生をベルヌーイの定理だけで完全に説明することはできません。

ベルヌーイの定理は重要な役割を果たしますが、循環理論運動量理論といった他の理論も必要なのです。

揚力発生の複合的な説明

  • ベルヌーイの定理:圧力差の説明
  • 循環理論:翼周りの循環流の効果
  • 運動量理論:空気の下向き運動量変化
  • ニュートンの第三法則:作用反作用

翼が空気を下向きに押し下げる(ダウンウォッシュ)ことで、反作用として翼が上向きの力を受けるという説明も正しいのです。

揚力の総合的理解

圧力差の観点:上下面の圧力差による力

運動量の観点:空気の運動量変化による反力

これらは同じ現象の異なる見方

理論 着目点 説明内容
ベルヌーイ 圧力と速度 流速差による圧力差
循環 渦と循環 翼周りの循環流
運動量 空気の運動 ダウンウォッシュの反力

実際の航空機設計では、これらすべての理論を組み合わせて、複雑な流れを解析します。

ベルヌーイの定理は、その基礎となる重要な原理の一つなのです。初学者が揚力の概念を理解する入り口として、ベルヌーイの定理は非常に有用と言えるでしょう。

飛行機が飛ぶという日常的な現象の背後に、このような深い物理原理が隠されていることは、科学の面白さを示す良い例です。

圧力損失と実用例題

続いては、ベルヌーイの定理を使った圧力損失の計算と、実用的な例題を見ていきましょう。

圧力損失とは

実際の流体では、管を流れる際に圧力損失が発生します。

圧力損失とは、流体が管を流れる際に、摩擦や乱流によってエネルギーが失われ、圧力が低下する現象です。

圧力損失の原因

  • 管壁との摩擦:粘性による損失
  • 管の曲がり:流れの方向変化
  • 管径の変化:急な拡大や縮小
  • バルブや継手:流路の障害物

理想的な流体(非粘性)では圧力損失はありませんが、実際の流体では必ず損失が生じます。

ベルヌーイの定理に圧力損失の項を加えると、次のようになります。

圧力損失を考慮したベルヌーイの式

P₁ + (1/2)ρv₁² + ρgh₁ = P₂ + (1/2)ρv₂² + ρgh₂ + ΔP損失

ΔP損失:圧力損失

損失の種類 原因 対策
摩擦損失 管壁との摩擦 管を太くする、滑らかにする
形状損失 急な断面変化 緩やかな変化にする
曲がり損失 流れの方向転換 曲率半径を大きくする

圧力損失は、配管設計や流体機械の設計において重要な考慮事項です。

ポンプで水を送る場合、圧力損失を補うために必要な圧力を計算し、適切なポンプを選定する必要があります。

圧力損失が大きいと、エネルギーの無駄が生じ、効率が悪くなるのです。

例題1:水道管の流速と圧力

ベルヌーイの定理を使った基本的な例題を解いてみましょう。

例題1

水平な水道管があり、断面積が10cm²の部分Aと、5cm²の部分Bがあります。部分Aでの水の流速が2m/s、圧力が300kPaのとき、部分Bでの流速と圧力を求めなさい。(水の密度ρ=1000kg/m³)

解答:

まず連続の式から、部分Bの流速を求めます。

連続の式

A₁v₁ = A₂v₂

10 × 2 = 5 × v₂

v₂ = 4 m/s

次にベルヌーイの式を使います。水平管なのでh₁=h₂です。

ベルヌーイの式

P₁ + (1/2)ρv₁² = P₂ + (1/2)ρv₂²

300000 + (1/2)×1000×2² = P₂ + (1/2)×1000×4²

300000 + 2000 = P₂ + 8000

P₂ = 294000 Pa = 294 kPa

部分 断面積 流速 圧力
A 10 cm² 2 m/s 300 kPa
B 5 cm² 4 m/s 294 kPa

断面積が小さくなると流速が増加し、圧力が減少することが確認できました。これがベルヌーイの定理の示す関係です。

例題2:高低差のある配管

高低差がある場合の例題も見てみましょう。

例題2

水が地上から10m高い屋上のタンクに供給されます。地上での水の圧力が400kPa、流速が3m/sのとき、屋上での圧力と流速を求めなさい。配管の断面積は一定とします。(ρ=1000kg/m³、g=9.8m/s²)

解答:

断面積が一定なので、連続の式よりv₁=v₂=3m/sです。

ベルヌーイの式を適用します。

計算

P₁ + (1/2)ρv₁² + ρgh₁ = P₂ + (1/2)ρv₂² + ρgh₂

h₁=0、h₂=10m、v₁=v₂なので

P₁ = P₂ + ρgh₂

400000 = P₂ + 1000×9.8×10

400000 = P₂ + 98000

P₂ = 302000 Pa = 302 kPa

位置 高さ 流速 圧力
地上 0 m 3 m/s 400 kPa
屋上 10 m 3 m/s 302 kPa

高さが10m上がると、圧力が約98kPa(約1気圧)減少することが分かりました。

これは位置エネルギーの増加分が、圧力エネルギーの減少で補われることを示しています。

例題3:ベンチュリ管

ベンチュリ管は、ベルヌーイの定理を応用した流量計です。

例題3

ベンチュリ管で、入口の直径が10cm、喉部の直径が5cmです。入口と喉部の圧力差が20kPaのとき、流量を求めなさい。(ρ=1000kg/m³)

解答:

断面積を計算します。

A₁ = π(0.05)² = 0.00785 m²

A₂ = π(0.025)² = 0.00196 m²

連続の式:A₁v₁ = A₂v₂より

v₂ = (A₁/A₂)v₁ = 4v₁

ベルヌーイの式(水平管):

P₁ + (1/2)ρv₁² = P₂ + (1/2)ρv₂²

P₁ – P₂ = (1/2)ρ(v₂² – v₁²)

20000 = (1/2)×1000×(16v₁² – v₁²)

20000 = 500×15v₁²

v₁² = 2.67

v₁ = 1.63 m/s

流量 Q = A₁v₁ = 0.00785 × 1.63 = 0.0128 m³/s = 12.8 L/s

答え

流量:約12.8リットル/秒

このようにベルヌーイの定理は、流量測定にも応用されています。

まとめ ベルヌーイの公式・導出をわかりやすく解説!【飛行機:圧力損失:例題】

本記事では、ベルヌーイの定理の基本から公式の導出、飛行機への応用、圧力損失を考慮した例題まで、詳しく解説しました。

ベルヌーイの定理は流体の速度と圧力の関係を表し、P+(1/2)ρv²+ρgh=一定という式で表されます。飛行機の翼では上下面の流速差により圧力差が生じ揚力が発生し、実際の流体では摩擦による圧力損失を考慮する必要があります。

この定理を理解することで、流体力学の基礎が身につき、様々な実用問題に応用できるようになるでしょう。基礎をしっかり固めて、さらなる学習を進めていってください。