対数を学習していると、「負の数の対数」について疑問を持つことがあるでしょう。特に「logマイナス1」すなわちlog(-1)は、実数の範囲では定義できないと習いますが、では数学的にはどう扱われるのでしょうか。
この記事では、logマイナス1の意味と計算方法について、実数の範囲での制限から複素数での拡張まで詳しく解説していきます。
なぜ実数では定義できないのか、複素対数ではどうなるのか、その背景を理解することで対数への理解が深まりますので、ぜひ最後までご覧ください。
logマイナス1が実数で定義されない理由
それではまず、log(-1)が実数の範囲で定義されない理由について解説していきます。
対数の定義と真数条件
対数の定義を復習しましょう。
対数の定義:
a^y = x ⇔ log_a(x) = y
真数条件:x > 0
つまり、対数の中身(真数)は正の数でなければならない
この真数条件により、log(-1)は実数の範囲では定義されないのです。
なぜ真数は正でなければならないか
真数条件の理由を、指数関数から考えてみましょう。
底a > 0, a ≠ 1のとき:
a^y(yが任意の実数)は常に正の値
例:
2^3 = 8 > 0
2^0 = 1 > 0
2^(-2) = 0.25 > 0
10^5 = 100000 > 0
10^(-3) = 0.001 > 0
正の数を何乗しても、結果は必ず正の数になります。したがって、a^y = xを満たすxは必ず正でなければなりません。
log(-1)を求めようとすると
実際にlog(-1)を求めようとすると、どうなるか見てみましょう。
log₁₀(-1) = y とすると
10^y = -1 となるはず
しかし:
10のどんな実数乗も正の数にしかならない
10^y > 0(すべての実数yに対して)
よって、10^y = -1を満たす実数yは存在しない
このように、方程式を満たす実数解が存在しないため、実数の範囲ではlog(-1)は定義できないのです。
複素対数としてのlog(-1)
続いては、複素数の範囲に拡張したときのlog(-1)について確認していきます。
複素対数の導入
複素数の範囲では、負の数の対数を定義することができます。
複素対数(自然対数)として:
ln(-1) = iπ
ここで、iは虚数単位(i² = -1)、πは円周率
この結果は、オイラーの公式から導かれます。
オイラーの公式
オイラーの公式は、指数関数と三角関数を結びつける美しい関係式です。
オイラーの公式:
e^(iθ) = cos(θ) + i sin(θ)
特に、θ = πのとき:
e^(iπ) = cos(π) + i sin(π)
= -1 + i × 0
= -1
つまり、e^(iπ) = -1が成り立つのです。
ln(-1)の導出
e^(iπ) = -1から、対数を導出してみましょう。
e^(iπ) = -1
両辺の自然対数をとると:
ln(e^(iπ)) = ln(-1)
iπ × ln(e) = ln(-1) ※対数の累乗の性質
iπ × 1 = ln(-1) ※ln(e) = 1
よって、ln(-1) = iπ
この結果、ln(-1) = πi ≈ 3.14159iという純虚数が得られます。
複素対数の多価性
実は、複素対数には注意すべき性質があります。
複素対数は多価関数である
ln(-1) = πi + 2nπi (nは整数)
= (2n+1)πi
これは、e^(i(π + 2nπ)) = -1が任意の整数nで成り立つためです。通常は主値としてn = 0の場合、つまりln(-1) = πiを採用します。
他の負の数の対数
続いては、-1以外の負の数の対数についても確認していきます。
一般的な負の数の複素対数
任意の負の実数-xに対する複素対数を考えましょう。
x > 0のとき、-xの複素対数は:
ln(-x) = ln(x) + πi
例:
ln(-2) = ln(2) + πi ≈ 0.693 + 3.14159i
ln(-5) = ln(5) + πi ≈ 1.609 + 3.14159i
ln(-10) = ln(10) + πi ≈ 2.303 + 3.14159i
負の数の対数は、対応する正の数の対数に πi を加えた形になります。
常用対数での表現
常用対数(底10)で表すこともできます。
log₁₀(-1)を複素数で表すと:
底の変換公式より:
log₁₀(-1) = ln(-1) / ln(10)
= πi / ln(10)
≈ 3.14159i / 2.303
≈ 1.364i
常用対数でも、純虚数の値が得られることが分かるでしょう。
計算例の整理
様々な負の数の複素対数を表にまとめてみます。
| 真数 | ln(自然対数) | log₁₀(常用対数) |
|---|---|---|
| -1 | πi ≈ 3.142i | ≈ 1.364i |
| -2 | 0.693 + 3.142i | 0.301 + 1.364i |
| -10 | 2.303 + 3.142i | 1 + 1.364i |
| -100 | 4.605 + 3.142i | 2 + 1.364i |
すべて虚数部分がπiまたはその定数倍になっていることが確認できます。
実用上の注意点と応用
続いては、負の数の対数を扱う際の注意点と、実際の応用場面を確認していきます。
実数計算での扱い
通常の実数計算では、負の数の対数はエラーとなります。
実数の範囲での対数計算:
・log(-1):定義されない(エラー)
・log(-x)(x > 0):定義されない(エラー)
・電卓や表計算ソフトでは「エラー」または「数学的エラー」と表示される
高校数学までの範囲では、負の数の対数は考えないのが原則です。
絶対値を使った対処法
実用的な対処法として、絶対値を使う方法があります。
負の数xに対して:
ln|x| を計算する
例:
x = -5のとき
ln|x| = ln|-5| = ln(5) ≈ 1.609
これにより、実数の結果が得られます。ただし、元の数が負であったという情報は失われることに注意しましょう。
複素解析での応用
複素対数は、高度な数学や工学で重要な役割を果たします。
| 応用分野 | 用途 |
|---|---|
| 複素解析 | 複素関数論の基礎 |
| 電気工学 | 交流回路の解析 |
| 量子力学 | 波動関数の表現 |
| 信号処理 | フーリエ変換 |
特に工学分野では、負の数の対数を複素数として扱うことが頻繁にあります。
プログラミングでの扱い
プログラミング言語によって、負の数の対数の扱いが異なります。
【Python(実数)】
import math
math.log(-1) # エラー:ValueError
【Python(複素数)】
import cmath
cmath.log(-1) # 結果:3.141592653589793j
【JavaScript】
Math.log(-1) # 結果:NaN(Not a Number)
複素数に対応した関数を使えば、ln(-1) = πi が計算できることが分かります。
まとめ
この記事では、logマイナス1について詳しく解説してきました。
実数の範囲では、log(-1)は定義されません。これは、正の数を何乗しても負の数にならないという指数関数の性質に由来します。真数条件x > 0により、対数の中身は必ず正でなければならないのです。
しかし、複素数の範囲に拡張すると、ln(-1) = πi として定義できます。これはオイラーの公式e^(iπ) = -1から導かれる美しい結果でしょう。一般に、負の実数-xの対数はln(-x) = ln(x) + πi という形になります。
通常の計算では負の数の対数はエラーとなりますが、複素解析や工学では重要な概念として扱われます。実数と複素数での違いを理解することで、対数のより深い理解が得られることでしょう。
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