電気設備の設計や電気工事において「電圧降下」という概念は非常に重要です。
配線が長くなるほど電圧が下がり、機器が正常に動作しなくなるトラブルが起きやすくなります。
本記事では、電圧降下の意味・原因・計算公式・許容範囲・内線規程の基準について、わかりやすく丁寧に解説していきます。
電圧降下とは配線の抵抗によって電圧が低下する現象
それではまず、電圧降下の基本的な意味と発生の仕組みについて解説していきます。
電圧降下(電圧ドロップ)とは、電流が導体(配線・抵抗・素子)を流れる際に、その抵抗によって電圧が低下する現象のことです。
オームの法則V = IRの通り、配線に抵抗Rがあり電流Iが流れると、V = I × Rの電圧降下が生じます。
電源から負荷までの配線が長いほど、または電流が大きいほど、電圧降下は大きくなります。
電圧降下の基本公式
電圧降下(V) = 電流(A) × 配線の抵抗(Ω)
単相2線式の場合:ΔV = 2 × I × R × L(往復分)
ΔV:電圧降下(V)、I:電流(A)、R:単位長さあたりの抵抗(Ω/m)、L:配線長(m)
電圧降下が起きる原因
電圧降下の主な原因は、電線・ケーブルそのものが持つ電気抵抗です。
銅線は良導体ですが、長さが長くなれば抵抗値は増加し、断面積が小さければ抵抗値はさらに大きくなります。
また接続部の接触抵抗・スイッチやブレーカーの内部抵抗・コネクタの抵抗なども電圧降下の原因となります。
電圧降下はあらゆる実際の電気回路で避けられない現象であり、設計段階での適切な対策が不可欠です。
電圧降下が機器に与える影響
電圧降下が大きいと、負荷機器に供給される電圧が定格電圧より低くなります。
モーターでは回転数低下・起動トルク不足、照明では光束(明るさ)の低下、電子機器では誤動作・リセットなどの問題が発生することがあります。
特に起動電流が大きい機器(エアコン・電動工具など)では起動時の電圧降下が顕著に現れるため注意が必要でしょう。
電圧降下の計算例
電圧降下の計算例
条件:単相2線式、電流10A、配線長50m、電線の抵抗0.018Ω/m(2.5mm²銅線)
片道抵抗 = 0.018 × 50 = 0.9Ω
往復抵抗 = 0.9 × 2 = 1.8Ω
電圧降下 ΔV = 10A × 1.8Ω = 18V
電源電圧が100Vなら負荷側電圧は 100 – 18 = 82V となります。
電圧降下の許容範囲と内線規程の基準
続いては、電気設備における電圧降下の許容範囲と内線規程の定めについて確認していきます。
内線規程における電圧降下の許容値
日本の内線規程(JEAC 8001)では、低圧電路の電圧降下について次のような基準が設けられています。
| 引込線の有無 | 幹線の電圧降下 | 分岐回路の電圧降下 | 合計許容値 |
|---|---|---|---|
| 引込線あり | 2%以下 | 2%以下 | 4%以下 |
| 引込線なし | — | — | 2%以下 |
| 幹線が60m以下 | 3%以下 | 2%以下 | 5%以下 |
100V回路で2%の許容電圧降下は2V、4%では4Vが上限となるため、設計段階での電圧降下計算は電気工事の必須作業です。
電圧降下率の計算方法
電圧降下率(%)は次の式で求めることができます。
電圧降下率の計算
電圧降下率(%) = 電圧降下(V) ÷ 電源電圧(V) × 100
例:100V回路で3Vの電圧降下が生じた場合
電圧降下率 = 3 ÷ 100 × 100 = 3%
電圧降下を減らすための設計対策
電圧降下を許容範囲内に収めるための主な対策としては、電線の断面積を大きくする(太い電線を使う)・配線ルートを短くする・電圧を高くして電流を下げるという方法があります。
電線の断面積を2倍にすると抵抗値が半分になり、電圧降下も半分に低減できます。
三相電路の電圧降下計算
続いては、工場や大型施設で使われる三相電路の電圧降下計算を確認していきます。
三相3線式の電圧降下公式
三相3線式の電圧降下は単相2線式とは異なる計算式を使います。
三相3線式の電圧降下公式
ΔV = √3 × I × R × L
√3(≒1.732)は三相電力の相電圧と線間電圧の変換係数です。
単相2線式の2倍ではなく√3倍になる点に注意が必要です。
力率(cosφ)を考慮した電圧降下計算
実際のモーター負荷などは力率が1未満であり、力率を考慮した精密な電圧降下計算が必要です。
一般式は ΔV = I(R cosφ + X sinφ)× L × 線路係数 という形になります。
電気設備設計の実務では、専用の電圧降下計算ソフトや計算書を使って正確な値を求めることが標準的です。
まとめ
本記事では、電圧降下の意味・発生の仕組み・計算方法・許容範囲・内線規程の基準について解説しました。
電圧降下はΔV = I × R × L(配線方式に応じた係数を乗じる)の公式で計算でき、内線規程では幹線と分岐回路の合計で4〜5%以内が目安です。
電線の断面積を大きくする・配線を短くするという対策が基本的な電圧降下低減の手段です。
電圧降下の計算を正確に行い、機器が安定して動作できる電気設備の設計を実践していきましょう。