電子回路を設計するうえで「電圧を分けて使いたい」という場面は頻繁に登場します。
例えば5Vの電源から3.3Vや2.5Vを作り出したい場合に活躍するのが「分圧回路」と呼ばれる手法です。
本記事では、電圧分圧の意味・計算方法・回路の仕組み・実際の設計への応用まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。
電圧分圧とは直列抵抗で電源電圧を比例配分する手法
それではまず、電圧分圧の基本的な仕組みと概念について解説していきます。
電圧分圧(分圧)とは、2つ以上の抵抗を直列に接続し、それぞれの抵抗値の比率に応じて電源電圧を配分する手法のことです。
最もシンプルな分圧回路は2本の抵抗をGNDと電源の間に直列につなぎ、その中点から目的の電圧を取り出す構成です。
抵抗の値を変えることで出力電圧を自由に設定できるため、多くの電子回路に応用されています。
分圧回路の基本公式
Vout = Vin × R2 ÷ (R1 + R2)
R1:電源側(上側)の抵抗
R2:GND側(下側)の抵抗
出力電圧はR1とR2の比率だけで決まります。
分圧の原理とオームの法則の関係
分圧回路の動作はオームの法則と直列回路の電圧分配の法則から導かれます。
R1とR2の直列回路に電圧Vinをかけると、流れる電流I = Vin / (R1 + R2)になります。
R2の両端電圧はV = I × R2 = Vin × R2 / (R1 + R2)となり、これが分圧の公式の導出です。
抵抗の比率で電圧が配分されるというシンプルな原理が、分圧回路の使いやすさの源です。
分圧回路の具体的な計算例
計算例1:5Vから3.3Vを作る分圧回路
Vout = Vin × R2 ÷ (R1 + R2)
3.3 = 5 × R2 ÷ (R1 + R2)
R2 ÷ (R1 + R2) = 3.3 ÷ 5 = 0.66
R1:R2 = 0.34:0.66 ≈ 1.7:3.3
例:R1 = 17kΩ、R2 = 33kΩ(E24系列の組み合わせ)
確認:5 × 33 ÷ (17+33) = 165 ÷ 50 = 3.3V ✓
抵抗値の選び方のポイント
分圧回路の抵抗値は、負荷電流と比較して十分に小さい電流が分圧回路に流れるように設計する必要があります。
一般的には負荷電流の10倍以上の電流が分圧抵抗に流れるように設計すると、負荷の影響が小さくなります。
低消費電力が求められる電池駆動回路では、分圧抵抗に流れる電流を最小限に抑えるため、高い抵抗値を選ぶことが重要です。
分圧回路の応用例
続いては、分圧回路が実際にどのような場面で活用されているかを確認していきます。
マイコンのAD入力への電圧レベル変換
マイコン(Arduino・STM32等)のAD(アナログ・デジタル)変換入力は通常3.3Vや5Vが最大入力電圧です。
12Vのセンサー出力などをAD入力に接続する場合、分圧回路でレベルを下げる必要があります。
分圧回路はマイコンと高電圧センサーのインターフェースとして非常に広く使われる基本回路です。
バッテリー電圧モニタリングへの応用
リポバッテリー(4.2V)やリン酸鉄リチウムバッテリー(3.6V)の電圧をマイコンの入力範囲内に収めるために分圧回路を使います。
測定値から実際の電圧を逆算するには、測定電圧 × (R1 + R2) / R2という計算を行います。
オーディオ回路での音量調整(ポテンショメーター)
可変抵抗器(ポテンショメーター)は分圧回路の可変版であり、音量調整・明るさ調整・位置センサーなどに広く使われます。
ポテンショメーターのつまみを回すことでR1とR2の比率が変化し、出力電圧が連続的に変化します。
分圧回路設計上の注意点
続いては、分圧回路を設計するうえで注意すべきポイントを確認していきます。
負荷効果の影響
分圧回路の出力に負荷を接続すると、負荷の抵抗がR2と並列になるため、実際の出力電圧が計算値より低くなります。
この現象を「負荷効果」と呼び、負荷抵抗が分圧抵抗より小さいほど影響が大きくなります。
分圧回路の後段にオペアンプのボルテージフォロワを接続することで、負荷効果を無視できる高インピーダンス出力が実現できます。
消費電力の計算
分圧回路は常に電流を消費するため、消費電力 P = Vin² / (R1 + R2)の計算で電力消費を把握する必要があります。
抵抗値が低いほど消費電力が増大するため、電池駆動機器では高抵抗値(数十kΩ〜数百kΩ)の使用が基本です。
抵抗の許容誤差による出力電圧のばらつき
市販の抵抗には製造誤差(±1%〜±5%)があり、分圧回路の出力電圧も同様に誤差が生じます。
精度が求められる基準電圧の生成には、誤差が小さい精密抵抗(±0.1%以下)や専用の基準電圧IC(レファレンス)の使用が推奨されます。
まとめ
本記事では、電圧分圧の意味・計算公式・回路の仕組み・応用例・設計上の注意点について解説しました。
分圧回路はVout = Vin × R2 / (R1 + R2)という公式で出力電圧を計算でき、抵抗の比率で自由に電圧を設定できる非常に実用的な手法です。
負荷効果・消費電力・抵抗の誤差などの設計上の注意点を把握したうえで活用することで、安定した分圧回路が実現します。
マイコンのAD入力・バッテリー監視・音量調整など、分圧回路は電子回路のあらゆる場面に登場する基本中の基本です。
電圧分圧の公式と設計のコツをしっかり身につけ、実践的な電子回路設計に活かしていきましょう。