アンペールの法則は電磁気学の試験や演習で頻繁に出題される重要な法則です。
理論を理解しているつもりでも、実際に計算問題を解こうとすると「アンペール閉路はどう選べばいいの?」「電流の符号はどう決める?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
アンペールの法則の例題と解法は?計算問題の解き方を詳しく解説(直線電流:円形コイル:ソレノイド:磁場の求め方:演習問題など)というテーマで、本記事では具体的な数値を使った例題を豊富に取り上げ、解法の手順をひとつひとつ丁寧に説明します。
直線電流、円形コイル、ソレノイドという代表的な三つのケースをカバーし、磁場の求め方から演習問題まで幅広く解説しますので、ぜひ問題を解きながら読み進めてみてください。
アンペールの法則の問題を解くための基本ステップ
それではまず、アンペールの法則の問題を解くための基本ステップについて解説していきます。
どんな問題に対しても共通して使えるアプローチを身につけることが、計算問題を解く近道です。
アンペールの法則の問題を解く基本ステップ
ステップ1:問題の対称性を確認する
ステップ2:対称性に合ったアンペール閉路を選ぶ
ステップ3:閉路を貫く電流 I_enc を求める
ステップ4:∮ B · dl を計算する(対称性により B を閉路の外に出す)
ステップ5:アンペールの法則 ∮ B · dl = μ₀ I_enc を使って B を求める
このステップの中でとくに重要なのがステップ1とステップ2です。
対称性の把握とアンペール閉路の選択が問題の難易度を大きく左右します。
対称性が高い問題では、閉路上で B の大きさが一定になり、dl との角度も一定になるため、積分が格段に簡単になります。
逆に対称性が低い問題では、アンペールの法則は使いにくく、ビオ-サバールの法則を用いる必要があります。
アンペール閉路の選び方のコツ
アンペール閉路の選び方には、いくつかの重要なコツがあります。
まず、磁場の方向に沿った経路を選ぶことです。
磁場とdlが平行であれば、B · dl = B dl と内積が最大になり、計算が簡単になります。
次に、閉路上で磁場の大きさが一定になるよう選びます。
無限長直線電流なら同心円、ソレノイドなら長方形などが典型的な選択です。
また、磁場が求めたい点を通るように閉路を設定することも大切です。
閉路の形状を変えてもアンペールの法則は成立しますが、計算の簡単さが大きく変わります。
電流の符号と右ねじの法則
アンペールの法則では電流の符号(正負)が重要です。
符号は右ねじの法則で決まります。
アンペール閉路の向きを右ねじの回転方向とすると、ねじが進む方向の電流が正(+)、逆方向の電流が負(-)になります。
例:アンペール閉路を反時計回りに設定した場合
・右ねじの法則より、ねじが進む方向は紙面手前から奥へ
・紙面手前から奥へ向かう電流I₁は正:+I₁
・紙面奥から手前へ向かう電流I₂は負:-I₂
・I_enc = I₁ – I₂
複数の電流が存在する場合も、それぞれの符号を丁寧に判定して I_enc を計算します。
よくあるミスとその防ぎ方
アンペールの法則の計算でよくあるミスをまとめておきましょう。
| よくあるミス | 防ぎ方 |
|---|---|
| アンペール閉路の外の電流もI_encに含めてしまう | I_encは閉路を貫く電流のみであることを確認する |
| 電流の符号を間違える | 右ねじの法則を丁寧に適用する |
| 対称性がない問題にアンペールの法則を使う | まず対称性を確認し、なければビオ-サバールを使う |
| μ₀の値を間違える | μ₀ = 4π×10⁻⁷ T·m/A をしっかり暗記する |
| 線積分でBを経路の外に出し忘れる | 対称性により B一定であることを明示してから計算する |
直線電流の磁場を求める例題と解法
続いては、直線電流の磁場を求める例題と解法を確認していきます。
最も基本的かつ頻出のケースですので、解法の流れをしっかりとマスターしましょう。
基本例題:無限長直線電流による磁場
例題1
真空中で、10Aの電流が流れる無限に長い直線導線がある。この導線から5cmの距離における磁束密度Bの大きさを求めよ。
(μ₀ = 4π×10⁻⁷ T·m/A)
【解法】
ステップ1:対称性の確認
無限長直線電流は軸対称性を持つため、同じ距離にある点での磁場の大きさはすべて等しくなります。
ステップ2:アンペール閉路の選択
導線を中心とした半径r = 0.05mの円を閉路Cとして選びます。
ステップ3:I_encの確認
この閉路を貫く電流は導線の電流のみで、I_enc = 10A です。
ステップ4:∮ B · dl の計算
対称性により、閉路上でBの大きさは一定で経路に沿った接線方向を向くため、
∮ B · dl = B × 2πr = B × 2π × 0.05
ステップ5:アンペールの法則を適用
B × 2π × 0.05 = μ₀ × 10
B = (μ₀ × 10) / (2π × 0.05)
B = (4π×10⁻⁷ × 10) / (2π × 0.05)
B = (4π×10⁻⁶) / (0.1π)
B = 4×10⁻⁵ T = 40 μT
この値は地球の磁場(約50μT)と同じオーダーであり、日常的な電流で発生する磁場の強さの目安として覚えておくと便利です。
応用例題:導線内部の磁場(体積電流分布)
例題2
半径aの円形断面を持つ無限長導線に、断面に均一に分布した電流Iが流れている。導線の内部(r < a)および外部(r > a)の磁束密度Bを求めよ。
【解法:外部(r > a)】
閉路として半径rの円を選ぶと、I_enc = I(全電流)なので、
B = μ₀I / (2πr) (r > a)
これは点状の導線と同じ形です。
【解法:内部(r < a)】
均一な電流分布より、半径rの円内を流れる電流は面積の比で決まります。
I_enc = I × (πr² / πa²) = I × (r²/a²)
∮ B · dl = B × 2πr = μ₀ × I(r²/a²)
∴ B = μ₀Ir / (2πa²) (r < a)
この結果を図示すると、磁場は導線内部ではrに比例して増加し、表面(r=a)で最大値μ₀I/(2πa)となり、外部ではrに反比例して減少することがわかります。
二本の平行導線が作る磁場の例題
例題3
2cmの間隔で平行に置かれた2本の無限長導線に、それぞれ逆向きに5Aの電流が流れている。2本の導線を結ぶ直線の中点における合成磁場の大きさを求めよ。
【解法】
各導線から中点までの距離r = 1cm = 0.01mです。
それぞれの導線が中点に作る磁場の大きさは等しく、
B₁ = B₂ = μ₀I / (2πr) = (4π×10⁻⁷ × 5) / (2π × 0.01) = 10⁻⁴ T = 100 μT
電流が逆向きのため、2つの磁場は中点で同じ方向を向きます(右ねじの法則で確認)。
合成磁場:B = B₁ + B₂ = 200 μT
円形コイルの磁場を求める例題と解法
続いては、円形コイルの磁場を求める例題と解法を確認していきます。
円形コイルはアンペールの法則よりもビオ-サバールの法則を用いる場面が多いですが、コイルの中心での磁場は覚えておくべき重要な結果です。
円形コイルの中心磁場の基本例題
例題4
半径20cmの円形コイルに3Aの電流が流れている。コイルの中心における磁束密度Bを求めよ。
【解法】
円形コイルの中心での磁場の公式を使います。
B = μ₀I / (2a)
a = 0.20m、I = 3A を代入:
B = (4π×10⁻⁷ × 3) / (2 × 0.20)
B = (12π×10⁻⁷) / 0.40
B = 30π×10⁻⁷ ≈ 9.42×10⁻⁶ T ≈ 9.42 μT
この公式 B = μ₀I/(2a) は、円形コイルの中心磁場を求める最重要公式として必ず覚えておきましょう。
N巻き円形コイルの中心磁場
例題5
半径10cmのコイルを100回巻いたものに2Aの電流を流す。中心における磁束密度Bを求めよ。
【解法】
N巻きのコイルでは、各ループが中心に作る磁場が重ね合わさるため、1巻きの場合のN倍になります。
B = N × μ₀I / (2a)
N = 100、I = 2A、a = 0.10m を代入:
B = 100 × (4π×10⁻⁷ × 2) / (2 × 0.10)
B = 100 × (8π×10⁻⁷) / 0.20
B = 100 × 4π×10⁻⁶
B = 400π×10⁻⁶ ≈ 1.26×10⁻³ T ≈ 1.26 mT
円形コイルの軸上の磁場の例題
例題6
半径15cmの円形コイルに4Aの電流が流れている。コイルの中心軸上で、中心から20cmの点における磁束密度Bを求めよ。
【解法】
軸上の磁場の公式を使います。
B = μ₀Ia² / [2(a² + z²)^{3/2}]
a = 0.15m、z = 0.20m、I = 4A を代入:
a² = 0.0225 m²
z² = 0.0400 m²
a² + z² = 0.0625 m²
(a² + z²)^{3/2} = (0.0625)^{3/2} = 0.015625 m³
B = (4π×10⁻⁷ × 4 × 0.0225) / (2 × 0.015625)
B = (4π×10⁻⁷ × 0.09) / 0.03125
B ≈ 3.62×10⁻⁶ T ≈ 3.62 μT
ソレノイドと複合問題の例題と解法
続いては、ソレノイドと複合問題の例題と解法を確認していきます。
ソレノイドはアンペールの法則が最も威力を発揮するケースのひとつで、試験でも頻出です。
ソレノイドの内部磁場を求める基本例題
例題7
全長40cm、巻き数800回のソレノイドに2.5Aの電流を流す。ソレノイド内部の磁束密度Bを求めよ。
【解法】
まず単位長さあたりの巻き数nを求めます。
n = 800 / 0.40 = 2000 turns/m
B = μ₀nI = 4π×10⁻⁷ × 2000 × 2.5
B = 4π×10⁻⁷ × 5000
B = 2π×10⁻³ ≈ 6.28×10⁻³ T ≈ 6.28 mT
このようにソレノイドの内部磁場は、全長や半径に関係なくnとIだけで決まるという非常にシンプルな結果になります。
ソレノイドの磁束密度と巻き数の関係(応用例題)
例題8
内部磁束密度を0.1Tにするためには、電流5Aのソレノイドで単位長さあたり何回巻く必要があるか求めよ。
【解法】
B = μ₀nI より、n = B / (μ₀I)
n = 0.1 / (4π×10⁻⁷ × 5)
n = 0.1 / (2π×10⁻⁶)
n = 10⁻¹ / (2π×10⁻⁶)
n ≈ 15915 turns/m ≈ 1.59×10⁴ turns/m
1cm(0.01m)あたりに換算すると約159回巻きとなります。
これはMRIなどの高磁場機器で用いられる超伝導ソレノイドの設計に関係する計算です。
同軸ケーブルの磁場を求める演習問題
例題9(演習問題)
内側の導線(半径a=1mm)に電流I₁=3Aが流れ、同軸の外側の導体管(内半径b=5mm、外半径c=6mm)に逆向きに電流I₂=3Aが均一に流れる同軸ケーブルがある。以下の各領域での磁束密度Bを求めよ。
(1)r < a (2)a < r < b (3)b < r < c (4)r > c
【解法】
各領域で半径rの円をアンペール閉路として使います。
(1)r < a(内側導線の内部):
I_enc = I₁(r²/a²) = 3(r/0.001)²
B = μ₀I₁r / (2πa²) = μ₀×3×r / (2π×10⁻⁶)
(2)a < r < b(導体間の絶縁部):
I_enc = I₁ = 3A
B = μ₀×3 / (2πr) = 6×10⁻⁷/r [T]
(3)b < r < c(外側導体管内部):
外側導体を流れる電流の一部が加わる(逆向きなので減算)
I_enc = I₁ – I₂×(r²-b²)/(c²-b²)
(4)r > c(全体の外側):
I_enc = I₁ + (-I₂) = 3 – 3 = 0
∴ B = 0
領域(4)でBが0になることは、同軸ケーブルが外部に磁場を漏らさないという実用上非常に重要な性質を示しています。
これが同軸ケーブルが信号伝送に広く使われる理由のひとつです。
| 問題タイプ | アンペール閉路 | 主な公式 | 適用条件 |
|---|---|---|---|
| 無限長直線電流 | 同心円(半径r) | B = μ₀I/(2πr) | 軸対称・無限長 |
| 体積電流(内部) | 同心円(半径r<a) | B = μ₀Ir/(2πa²) | 均一電流分布 |
| 円形コイル中心 | (ビオ-サバール使用) | B = μ₀I/(2a) | 中心のみ |
| ソレノイド内部 | 長方形(軸平行辺L) | B = μ₀nI | 無限長・均一巻き |
| トロイダルコイル | 同心円(半径R) | B = μ₀NI/(2πR) | トーラス内部のみ |
まとめ
本記事では、アンペールの法則の例題と解法として、直線電流・円形コイル・ソレノイドの計算問題を詳しく解説しました。
問題を解く際は、まず対称性を確認し、適切なアンペール閉路を選ぶことが最大のポイントです。
無限長直線電流では同心円、ソレノイドでは長方形の閉路が定番の選択となります。
円形コイルはビオ-サバールの法則を使う場面が多いですが、中心での公式 B = μ₀I/(2a) は必ず覚えておきましょう。
ソレノイドの内部磁場 B = μ₀nI は、サイズによらずnとIだけで決まるシンプルかつ重要な公式です。
同軸ケーブルのような複合問題では、各領域ごとにI_encを丁寧に計算することが解法の鍵となります。
繰り返し演習することで解法の流れが自然と身につくので、ぜひ様々な問題に挑戦してみてください。