二酸化炭素の三重点とは?温度と圧力の条件も!(CO2:-56.6℃:5.17気圧:ドライアイス:昇華など)
「なぜドライアイスは溶けずに直接気体になるのか」「二酸化炭素に液体の状態はあるのか」「二酸化炭素の三重点とはどのような条件なのか」という疑問をお持ちの方は、化学・熱力学を学んでいる方から日常的な好奇心を持つ方まで幅広くいらっしゃいます。
二酸化炭素(CO₂)の三重点は固体・液体・気体の三相が共存できる唯一の温度と圧力の組み合わせであり、その条件が日常的な大気圧を大きく上回ることがドライアイスの昇華という身近な現象の原因です。
本記事では、二酸化炭素の三重点の温度と圧力の値、相図上での位置と意味、ドライアイスとの関係、超臨界CO₂の産業応用まで詳しく解説します。
二酸化炭素の三重点の温度と圧力は?値の結論
それではまず、二酸化炭素の三重点の温度と圧力の値について解説していきます。
二酸化炭素(CO₂)の三重点の値は、温度が−56.6℃(216.55K)・圧力が約517.95kPa(5.117気圧・5.17atm)です。
大気圧(101.325kPa・1気圧)の約5倍以上の圧力が必要であることが、CO₂の特性を理解するうえで最も重要なポイントです。
二酸化炭素の三重点の正確な値
【二酸化炭素(CO₂)の三重点の値】
三重点温度:−56.6℃(正確には−56.558℃)= 216.592 K
三重点圧力:517.95 kPa ≒ 5.117 atm(気圧)≒ 5.17 bar
比較:大気圧 = 101.325 kPa(1気圧)
三重点圧力は大気圧の約5.1倍です
水の三重点(0.01℃・0.611kPa)と比較してCO₂の三重点圧力は約848倍も高い値です
この「三重点圧力が大気圧より高い」という特性が、常温・常圧(1気圧)では液体CO₂が存在できず固体(ドライアイス)が直接気体に昇華する根本的な理由です。
CO₂の相図と三重点の位置
CO₂の相図(P-T図)では三重点は固相(ドライアイス)・液相(液体CO₂)・気相(CO₂ガス)の3本の境界線が交わる点として表されます。
三重点(−56.6℃・5.17atm)から右上方向に延びる「液相と気相の境界線(蒸気圧曲線)」は臨界点(31.1℃・73.8atm)で終わります。
臨界点以上では液体と気体の区別がなくなる超臨界状態になり、CO₂は超臨界状態(超臨界CO₂)で独特の溶解・拡散特性を発揮して産業応用に使われています。
三重点より低い圧力(大気圧)でのCO₂の挙動
CO₂の三重点圧力(約5.17気圧)より低い大気圧(1気圧)の条件では、相図上でCO₂は固体と気体の領域のみが存在し、液体の領域は存在しません。
そのため大気圧下では温度を上げてもドライアイス(固体CO₂)は液体にならず直接気体(CO₂ガス)に変化します。
この昇華温度(大気圧での昇華点)は約−78.5℃(−78.5℃で1気圧の昇華圧を持つ)です。
ドライアイスと二酸化炭素の三重点の関係
続いては、身近な存在であるドライアイスと二酸化炭素の三重点の関係について確認していきます。
ドライアイスの「溶けずに直接気体になる」という性質は、CO₂の三重点の特性から直接導かれます。
ドライアイスが昇華する理由
ドライアイスは固体の二酸化炭素(CO₂の固相)です。
常温・常圧(室温・大気圧1気圧)はCO₂の三重点圧力(約5.17気圧)を大きく下回る条件であるため、相図上でドライアイス(固相)は液相の領域を通過することなく直接気相(CO₂ガス)の領域に相変化します。
ドライアイスの昇華温度は約−78.5℃(大気圧1気圧)であり、これより温度が上がると気体CO₂になります。
ドライアイスが「冷たい霧」を発生させるのは、昇華したCO₂ガスが周囲の空気を急冷して水分が凝結するためです。
液体CO₂が存在する条件
液体CO₂が存在するためには、CO₂の三重点圧力(約5.17気圧)以上かつ臨界圧力(73.8気圧)以下の圧力と、三重点温度(−56.6℃)以上かつ臨界温度(31.1℃)以下の温度が必要です。
液体CO₂は高圧容器(CO₂ボンベ・消火器など)の中に存在しており、CO₂消火器を振ると液体CO₂がボンベ内で揺れる音が聞こえるのはこのためです。
液体CO₂は冷却剤・洗浄溶媒・工業的な超臨界CO₂製造の前段階として使われています。
ドライアイスの製造と取り扱い
ドライアイスは液体CO₂を急激に減圧することで固体化させて製造されます。
液体CO₂をノズルから大気中に放出すると、一部が昇華(気化)してその冷却効果で残りが固体CO₂(ドライアイスの粉雪状)になります。
ドライアイスの取り扱いでは素手で触れると低温火傷(−78.5℃)のリスクがあること、密閉容器での使用はCO₂ガスの蓄積による爆発リスクがあることに注意が必要です。
超臨界CO₂と二酸化炭素の相図
続いては、超臨界CO₂の特性と産業応用について確認していきます。
二酸化炭素は臨界点(31.1℃・73.8気圧)を超えると「超臨界流体」という特別な状態になり、独特の性質を発揮します。
超臨界CO₂の特性
| 特性 | 超臨界CO₂の値の目安 | 液体との比較 |
|---|---|---|
| 密度 | 0.2〜0.9 g/cm³(条件による) | 液体CO₂に近い密度を持つ |
| 粘度 | 気体に近い低粘度 | 液体より約10〜100倍低い |
| 拡散係数 | 液体より数十〜百倍高い | 物質移動が速い |
| 表面張力 | ゼロ(気液界面なし) | 微細な空間への浸透が容易 |
超臨界CO₂は「液体の溶解力と気体の拡散性を兼ね備えた理想的な溶媒」として食品・医薬品・半導体・化粧品などの分野で幅広く利用されています。
超臨界CO₂の産業応用
超臨界CO₂の代表的な産業応用として、デカフェコーヒーの製造(コーヒー豆からカフェインを選択的に抽出)・ホップからの苦み成分抽出・医薬品の超臨界乾燥・半導体洗浄・環境に優しいクリーニング溶媒などが挙げられます。
超臨界CO₂はノンハロゲン・不燃・無毒・無溶媒残留という特長から、環境規制への対応としても注目されています。
CO₂の地球環境・温室効果との関係
CO₂の三重点・相図の理解は地球の気候科学・惑星科学でも重要です。
火星の大気はほぼCO₂で構成されており、大気圧が約0.006気圧(610Pa)と非常に低いため、CO₂の三重点圧力(約5.17気圧)を大きく下回っています。
そのため火星では液体CO₂は存在せず、固体のCO₂(ドライアイスの極冠)が直接昇華・凝華することが惑星環境の重要な要素となっています。
二酸化炭素の三重点に関するよくある疑問
続いては、CO₂の三重点に関するよくある疑問を確認していきます。
CO₂ボンベの内部状態
一般的なCO₂ボンベ(炭酸ガスボンベ・消火器)の内部は液体CO₂と気体CO₂が共存した状態です。
常温(約20〜25℃)でのCO₂の蒸気圧は約5.7〜6.4MPaであり、ボンベ内はこの高圧を保つことで液体CO₂が存在しています。
CO₂ボンベの残量は内部圧力だけでは正確に判断できない(液体がある間は圧力がほぼ一定)ため、重量計測で残量を確認することが正確な管理方法です。
ドライアイスと水のアイスの違い
ドライアイス(固体CO₂)と通常の氷(固体H₂O)の違いは、三重点圧力の差に由来します。
水の三重点圧力は約0.006気圧(大気圧より低い)であるため、大気圧下で氷は液体(水)に溶けます。
CO₂の三重点圧力は約5.17気圧(大気圧より高い)であるため、大気圧下でドライアイスは液体にならず直接気体に昇華します。
炭酸水・炭酸飲料とCO₂の相変化
炭酸飲料は高圧下でCO₂を水に溶解させたものです。
瓶・缶を開封すると内部圧力が大気圧まで下がり、溶解していたCO₂が気泡として出てきます。
炭酸飲料のCO₂は固体・液体CO₂とは異なる「溶存CO₂(水和したCO₂・炭酸H₂CO₃)」の状態であり、三重点とは直接関係しない現象です。
まとめ
本記事では、二酸化炭素(CO₂)の三重点の温度(−56.6℃・216.55K)と圧力(約5.17気圧・517.95kPa)の値、相図上での位置と意味、ドライアイスが昇華する理由、液体CO₂の存在条件、超臨界CO₂の特性と産業応用まで幅広く解説しました。
CO₂の三重点圧力が大気圧の約5倍であることが、常温・常圧ではドライアイスが液体にならず直接気体になる「昇華」の根本的な理由であり、CO₂の相図を理解する最重要ポイントです。
超臨界CO₂は食品・医薬品・半導体製造など幅広い産業で活躍する「グリーンな溶媒」として注目されており、CO₂の相変化の知識がその応用を理解する基礎となります。