三角関数の微分は、高校数学から大学の数学まで幅広く登場する重要なテーマです。
とくにsin・cos・tanの微分公式は、入試問題でも頻出であり、暗記だけでなく導出方法まで理解しておくと応用力が大きく変わってきます。
公式を丸暗記しているだけだと、少しひねられた問題や証明問題に対応できないことも多いでしょう。
この記事では、微分の三角関数の公式について、結論となる公式一覧から、加法定理や極限を使った導出方法、さらに実際の計算例までまとめて解説していきます。
sinxやcosx、tanxの微分がなぜそうなるのか、根拠を持って説明できるようになることを目指しましょう。
数式が多く出てきますが、ひとつずつ丁寧に確認していけば決して難しい内容ではありません。
それでは早速、微分の三角関数の公式について見ていきましょう。
微分の三角関数の公式は?結論から一覧で確認
それではまず、微分の三角関数の公式について、結論から解説していきます。
先に答えを知っておくことで、後半の導出方法もスムーズに理解できるようになるはずです。
三角関数の微分でまず覚えておきたいのは、sinx・cosx・tanxの三つの基本公式です。
sinxを微分するとcosxになります。
cosxを微分するとマイナスsinxになります。
tanxを微分すると1割るcosxの二乗になります。
この三つの公式が、三角関数の微分のすべての基礎です。
| 関数 | 微分後の式 | 備考 |
|---|---|---|
| sinx | cosx | 符号は変化しない |
| cosx | マイナスsinx | 符号がマイナスになる点に注意 |
| tanx | 1/cos二乗x | 商の微分公式から導出される |
sinの微分公式
sinxを微分するとcosxになる、というのが結論です。
この関係はプラスの符号のまま変化しない点が特徴でしょう。
グラフでイメージすると、サインカーブの傾きがちょうどコサインカーブの形になっていることがわかります。
暗記だけでも使える公式ですが、なぜそうなるのかは後述の章で詳しく導出していきます。
cosの微分公式
cosxを微分するとマイナスsinxになります。
sinの微分と違い、符号が反転する点が最大のポイントでしょう。
ここを見落として符号ミスをする受験生は非常に多いです。
マイナスがつくかどうか、常に意識しておく必要があります。
tanの微分公式
tanxを微分すると1割るcosx二乗、つまり1/cos二乗xになります。
この公式はsecx二乗と表記されることもあります。
tanxはsinx割るcosxという分数の形をしているため、商の微分公式を使って導出できる形です。
詳しい導出は後ほどしっかり確認していきましょう。
三角関数の微分公式を導出する前に知っておきたい基礎知識
続いては、導出方法を理解するために必要な基礎知識を確認していきます。
公式の丸暗記から一歩進んで、証明の流れを追うためには、いくつかの前提知識が欠かせません。
とくに微分の定義・加法定理・極限の公式という三つが土台になります。
微分の定義とは
微分係数は、関数の変化の割合の極限として定義されます。
関数f(x)の導関数は次のように定義されます。
f′(x)=limのh→0のときの(f(x+h)-f(x))/h
この定義式に、sinxやcosxをそのまま当てはめることで、三角関数の微分公式を導くことができます。
つまり導出のスタート地点は、いつもこの極限の式でしょう。
ここを理解していないと、加法定理を使う理由がわからなくなってしまいます。
三角関数の加法定理の復習
導出の途中でどうしても必要になるのが、加法定理です。
sin(x+h)=sinx・cosh+cosx・sinh
cos(x+h)=cosx・cosh-sinx・sinh
この二つの式を覚えていないと、微分の定義式を展開することができません。
加法定理は三角関数の微分だけでなく、積分や合成関数の分野でも頻繁に使われる公式です。
この機会にセットで覚え直しておくと良いでしょう。
極限の公式(sinx割るxの極限)
導出の最後の決め手になるのが、有名な極限公式です。
xが0に近づくときのsinx割るxの極限は1になります。
xが0に近づくときの(cosx-1)割るxの極限は0になります。
この二つの極限は、はさみうちの原理を使って証明されることが一般的です。
証明自体は高校数学の範囲を超える部分もありますが、結果だけはしっかり覚えておく必要があります。
この極限公式さえ押さえておけば、sinxとcosxの微分の導出はほぼ完成したようなものでしょう。
sinxの微分公式の導出方法
続いては、実際にsinxの微分公式を導出する流れを確認していきます。
手順を追って見ていけば、決して複雑な計算ではないことがわかるはずです。
定義に沿った導出手順
まずは微分の定義式に、f(x)=sinxを当てはめます。
(sinx)′=limのh→0のときの(sin(x+h)-sinx)/h
この時点ではまだ、分子にsin(x+h)という形が残ったままです。
ここから加法定理を使って展開していく必要があります。
加法定理を使った変形
先ほどの加法定理を使って、sin(x+h)を展開していきましょう。
sin(x+h)=sinx・cosh+cosx・sinh
これを代入すると、分子は(sinx・cosh+cosx・sinh-sinx)/hとなります。
sinxでくくれる部分と、sinhでくくれる部分に分けて整理するのがポイントです。
式を整理すると、sinx・(cosh-1)/h+cosx・(sinh/h)という形になります。
極限計算による証明の完成
ここで先ほど紹介した極限公式を使います。
hが0に近づくとき、(cosh-1)/hは0に近づき、sinh/hは1に近づくのでした。
結果として、sinx・0+cosx・1という式になります。
これはつまりcosxそのものです。
したがって(sinx)′=cosxという公式が完成します。
加法定理と極限公式さえ使えれば、意外とシンプルに証明できることがわかるでしょう。
この流れは記述式の証明問題としても出題されることがあるため、一度は自分の手で書いてみることをおすすめします。
cosxの微分公式の導出方法
続いては、cosxの微分公式の導出方法を確認していきます。
基本的な流れはsinxのときとほとんど同じでしょう。
定義式からのスタート
同じように、微分の定義式にf(x)=cosxを当てはめます。
(cosx)′=limのh→0のときの(cos(x+h)-cosx)/h
ここでもやはり、cos(x+h)を展開する必要が出てきます。
加法定理による展開
加法定理を使って、cos(x+h)を展開しましょう。
cos(x+h)=cosx・cosh-sinx・sinh
これを代入すると、分子は(cosx・cosh-sinx・sinh-cosx)/hとなります。
cosxでくくれる部分と、sinxでくくれる部分に整理するのがコツです。
整理すると、cosx・(cosh-1)/h-sinx・(sinh/h)という式になります。
極限計算とcosの微分公式の確定
ここでも先ほどの極限公式を利用します。
hが0に近づくと、(cosh-1)/hは0、sinh/hは1に近づくのでした。
結果として、cosx・0-sinx・1という式が残ります。
これはマイナスsinxそのものです。
したがって(cosx)′=マイナスsinxという公式が導かれます。
符号がマイナスになる理由が、この加法定理の展開の中にしっかり隠れていることがわかったのではないでしょうか。
丸暗記だけでは気づきにくい部分なので、証明の流れごと理解しておくと安心です。
tanxの微分公式の導出方法
続いては、tanxの微分公式の導出方法を確認していきます。
ここまでのsinxとcosxの結果を使うことで、比較的スムーズに導けるでしょう。
tanxをsinxとcosxの商として考える
tanxは、そもそもsinx割るcosxという分数の形で定義されています。
この形のまま微分しようとすると、単純なかけ算の公式だけでは対応できません。
そこで登場するのが、商の微分公式です。
商の微分公式の適用
商の微分公式は、次のような形をしています。
(f/g)′=(f′・g-f・g′)/g二乗
ここにf=sinx、g=cosxを当てはめてみましょう。
(tanx)′=(cosx・cosx-sinx・(マイナスsinx))/cosx二乗
分子を整理すると、cosx二乗+sinx二乗という形になります。
1割るcosx二乗への整理
ここで思い出したいのが、三角関数の相互関係の公式です。
sinx二乗+cosx二乗は常に1になります。
これを分子に当てはめると、分子はそのまま1になります。
したがって(tanx)′=1/cosx二乗という公式が完成します。
この結果はsecx二乗と表記されることもあるため、教科書によって表記が違っても慌てないようにしましょう。
tanxの微分は、sinxとcosxの結果を組み合わせるだけで導ける、応用しやすい公式といえるでしょう。
三角関数の微分公式を使った計算例と応用
続いては、実際の問題を使って三角関数の微分公式の使い方を確認していきます。
公式そのものを覚えていても、実際の計算に使えなければ意味がありません。
基本問題での計算練習
まずはシンプルな例から見ていきましょう。
y=3sinxを微分すると、y′=3cosxになります。
y=2cosxを微分すると、y′=マイナス2sinxになります。
y=tanx+1を微分すると、y′=1/cosx二乗になります。
係数がついている場合は、その係数をそのまま残して微分すればよいだけです。
足し算や引き算で結ばれている場合も、それぞれの項を別々に微分するだけで対応できます。
合成関数の微分との組み合わせ
三角関数の中身がxそのものではなく、2xや3x+1のような式になっている場合はどうでしょうか。
この場合は、合成関数の微分公式を組み合わせる必要があります。
y=sin(2x)を微分すると、y′=2cos(2x)になります。
y=cos(3x+1)を微分すると、y′=マイナス3sin(3x+1)になります。
外側の三角関数を微分したあとに、内側の式を微分した結果を掛け算する、という手順を忘れないようにしましょう。
この組み合わせは入試問題でも非常によく出題される形式です。
高次導関数や積分との関係
三角関数は、何度微分しても三角関数のまま残るという珍しい性質を持っています。
sinxを4回微分すると、もとのsinxに戻ってくることをご存知でしょうか。
この周期性は、物理の振動や波の問題でもよく利用される重要な性質です。
また、微分の逆の操作である積分も、この公式をそのまま逆向きに使うことで計算できます。
微分と積分はセットで理解しておくと、より応用範囲が広がるでしょう。
まとめ
今回は、微分の三角関数の公式について、結論から導出方法まで詳しく解説してきました。
sinxを微分するとcosx、cosxを微分するとマイナスsinx、tanxを微分すると1割るcosx二乗になる、というのが基本の公式です。
これらの公式は、微分の定義式に加法定理と極限公式を組み合わせることで、しっかりと証明できることがわかりました。
tanxについては、sinxとcosxの結果を商の微分公式に当てはめることで導出できます。
公式を暗記するだけでなく、なぜその形になるのかという背景まで理解しておくと、応用問題や証明問題にも柔軟に対応できるようになるでしょう。
合成関数との組み合わせや高次導関数の性質も含めて、ぜひ繰り返し練習してみてください。
この記事が、三角関数の微分の理解を深める一助になれば幸いです。