日常生活や仕事で様々なものの厚みを表す際、mm、μ、t、uなど、色々な単位や表記方法を目にすることがあります。紙の厚さを表すときの単位は何か、金属板の厚さに使われる「t」とは何か、フィルムの厚さに出てくる「μ」や「u」はどう違うのか、混乱してしまうことも多いのではないでしょうか。
実は、厚みを表す単位にはいくつかの種類があり、対象物や業界によって使い分けられています。基本的な長さの単位から、特殊な表記方法まで、それぞれに意味と使い方があります。
この記事では、厚みの基本的な単位であるミリメートルやマイクロメートルから、紙業界特有の表記方法、板厚を表すt、そしてμとuの関係まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。換算表も用意していますので、ぜひ最後までお読みください。
厚みの基本的な単位
それではまず、厚みを表す基本的な単位について解説していきます。
ミリメートル(mm)とは
厚みを表す最も一般的な単位がミリメートル(millimeter、記号:mm)です。
ミリメートルは、メートル(m)の1000分の1の長さです。
1 mm = 0.001 m = 10⁻³ m
日常生活で扱う多くの物体の厚みは、ミリメートル単位で表されます。例えば、
ダンボール:3〜5 mm
ガラス板:3〜10 mm
スマートフォン:7〜9 mm
コピー用紙:約0.1 mm
クレジットカード:約0.76 mm
ミリメートルは直感的にわかりやすい単位であり、定規やノギスで測定できる範囲の厚さを表すのに適しています。
「厚さ5ミリ」と言えば、多くの人が大体のサイズをイメージできるでしょう。建築、製造、日用品など、幅広い分野で使われる標準的な単位です。
マイクロメートル(μm、μ)とは
より薄いものの厚さを表すのに使われるのが、マイクロメートル(micrometer、記号:μm)です。ミクロンとも呼ばれます。
マイクロメートルは、メートルの100万分の1の長さです。
1 μm = 0.000001 m = 10⁻⁶ m
1 μm = 0.001 mm
ミリメートルとの関係では、
1 mm = 1000 μm
となります。
マイクロメートルは、非常に薄いものの厚さを表すのに使われます。例えば、
食品用ラップフィルム:10〜20 μm
人間の髪の毛:50〜100 μm
アルミホイル:10〜20 μm
細胞の大きさ:10〜100 μm
赤血球:約7 μm
記号「μ」はギリシャ文字のミュー(mu)で、「micro(マイクロ)」を表す接頭辞です。非常に小さいスケールを扱う精密な分野で使われます。
ナノメートル(nm)とは
さらに小さいスケールでは、ナノメートル(nanometer、記号:nm)が使われます。
ナノメートルは、メートルの10億分の1の長さです。
1 nm = 0.000000001 m = 10⁻⁹ m
1 nm = 0.001 μm
マイクロメートルとの関係では、
1 μm = 1000 nm
となります。
ナノメートルは、原子や分子のレベルの厚さを表すのに使われます。例えば、
半導体の回路線幅:5〜7 nm(最先端技術)
DNAの二重らせんの幅:約2 nm
可視光の波長:400〜700 nm
酸化膜の厚さ:数nm〜数十nm
| 単位 | メートルとの関係 | 主な用途 |
|---|---|---|
| mm(ミリメートル) | 1 mm = 10⁻³ m | 一般的な厚さ |
| μm(マイクロメートル) | 1 μm = 10⁻⁶ m | 薄いフィルム、細胞 |
| nm(ナノメートル) | 1 nm = 10⁻⁹ m | 分子、半導体 |
これらの単位は、対象物のスケールに応じて使い分けられます。
紙の厚みの単位と表記
続いては、紙の厚みを表す特殊な単位や表記方法について確認していきます。
紙の厚さの測り方
紙の厚さは通常、ミリメートル(mm)またはマイクロメートル(μm)で表されます。
一般的なコピー用紙(上質紙64g/m²)の厚さは、約0.08〜0.09 mm、つまり80〜90 μmです。
名刺用紙:約0.18〜0.22 mm(180〜220 μm)
ハガキ:約0.18〜0.23 mm(180〜230 μm)
厚口のコート紙:約0.13 mm(130 μm)
薄口のコート紙:約0.08 mm(80 μm)
紙の厚さは、マイクロメーター(測定器)を使って測定されます。ただし、紙は柔らかいため、測定圧力によって値が変わることがあります。
紙業界では、厚さを直接表す代わりに、重量で紙の種類を区別することも多いです。
斤量(きんりょう)と厚みの関係
紙の業界では、斤量(きんりょう)という概念が使われます。
斤量とは、1平方メートル(m²)あたりの紙の重量をグラム(g)で表したものです。単位はg/m²です。
一般的なコピー用紙:64 g/m²
上質紙:55〜135 g/m²
コート紙:73〜157 g/m²
板紙(ダンボールなど):300〜1200 g/m²
斤量が大きいほど、通常は紙が厚くなります。ただし、紙の密度(かさ高さ)によって、同じ斤量でも厚さが異なることがあります。
おおよその関係として、
上質紙の場合:斤量(g/m²)× 約1.3〜1.5 = 厚さ(μm)
例えば、64 g/m²の上質紙なら、
64 × 1.3 ≈ 83 μm ≈ 0.083 mm
となります。
斤量(g/m²)が大きい → 厚い紙
同じ斤量でも密度が違えば厚さは異なる
実際の厚さは測定器で測る
斤量は、紙を注文する際の重要な指標となります。
連量と厚さの表記方法
紙業界では、連量(れんりょう)という単位も使われます。
連量とは、一定のサイズの紙1000枚(1連)の重量をキログラム(kg)で表したものです。サイズによって基準が異なります。
四六判(788 mm × 1091 mm):最も一般的な基準
菊判(636 mm × 939 mm)
A判(625 mm × 880 mm)
B判(765 mm × 1085 mm)
例えば、「四六判 70 kg」という表記は、四六判サイズの紙1000枚の重量が70 kgであることを意味します。
連量と斤量の換算は、紙のサイズによって決まります。四六判の場合、
斤量(g/m²)= 連量(kg)× 1000 ÷ 0.859
連量(kg)= 斤量(g/m²)× 0.859 ÷ 1000
例:四六判 70 kgの紙の斤量は?
斤量 = 70 × 1000 ÷ 0.859 ≈ 81.5 g/m²
紙の厚さを表す際は、直接的に mm や μm で表記する方法と、間接的に斤量や連量で表す方法があります。
t(ティー)という単位の意味
続いては、板厚を表すtという表記について見ていきます。
板厚を表すt(thickness)
金属板や樹脂板の厚さを表す際、t(ティー)という記号がよく使われます。
tは英語の「thickness(厚さ)」の頭文字で、板厚を表す記号として定着しています。
例えば、
t = 1.0 mm:厚さ1.0ミリメートル
t = 0.5:厚さ0.5ミリメートル
t2.0:厚さ2.0ミリメートル
「t」の後に数値を書くことで、板の厚さを簡潔に表現できます。単位が省略されている場合、通常はミリメートル(mm)を意味します。
この表記は、図面や仕様書、製品カタログなどで頻繁に使われます。製造業や建築業界では標準的な表記方法です。
tの使われ方と具体例
t表記の具体的な使用例を見ていきましょう。
鉄板:t = 1.6 mm、t = 3.2 mm、t = 6.0 mm
ステンレス板:t = 0.5 mm、t = 1.0 mm、t = 2.0 mm
アルミ板:t = 1.0 mm、t = 1.5 mm、t = 3.0 mm
アクリル板:t = 2 mm、t = 3 mm、t = 5 mm
図面上では、「SPCC t1.6」(冷間圧延鋼板 厚さ1.6mm)のように、材質と板厚を併記します。
「t」を使うことで、一目で板厚を識別できる利点があります。長さや幅と区別しやすく、誤読を防げます。
建築図面では、壁の厚さや床の厚さを表す際にも使われます。
コンクリート壁:t = 150(厚さ150mm)
石膏ボード:t = 12.5(厚さ12.5mm)
他の厚み表記との違い
t表記と他の厚み表記の違いを整理しましょう。
t表記は、主に板材の厚さを表す際に使われ、図面や仕様書での略記として便利です。単位は通常mm。
直接的な単位表記(0.5 mm、100 μmなど)は、正確で誤解がなく、あらゆる場面で使えます。
φ(ファイ)は直径を表す記号で、厚さには使いません。φ10は直径10mmを意味します。
□(角)は正方形の一辺を表す記号です。□50は50mm角を意味します。
| 表記 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| t | 板厚(thickness) | t = 1.6 mm |
| φ | 直径(diameter) | φ10 mm |
| □ | 正方形の一辺 | □50 mm |
| L | 長さ(length) | L = 100 mm |
これらの記号を正しく理解することで、図面や仕様書を正確に読み取れます。
μ(ミクロン)とu表記について
続いては、μとuの関係について確認していきます。
μとuの関係
フィルムや薄膜の厚さを表す際、μ(ミュー)またはuという表記を見ることがあります。
正式には、マイクロメートルの単位記号はμmです。μはギリシャ文字のミューで、マイクロ(10⁻⁶)を表す接頭辞です。
しかし、ギリシャ文字μが入力しにくい環境では、代わりにアルファベットのuを使うことがあります。
μm = um(便宜的な表記)
または、単に「μ」「u」だけで、マイクロメートルを意味することもあります。
例:
50μのフィルム = 50 μmのフィルム
100uのフィルム = 100 μmのフィルム
厳密には「μm」と表記すべきですが、業界や現場では「μ」「u」の略記が慣習的に使われています。
フィルムや薄膜での使用例
μやu表記は、特にフィルム業界や包装業界で頻繁に使われます。
ポリエチレンフィルム:
厚手:100μ(0.1 mm)
中厚:50μ(0.05 mm)
薄手:20μ(0.02 mm)
ラミネートフィルム:
一般的:100μ(0.1 mm)
厚手:150μ(0.15 mm)
食品包装フィルム:
一般的:15〜30μ
農業用フィルム:
ハウス用:100〜200μ
マルチフィルム:20〜30μ
カタログや仕様書では、「厚さ50μ」「50ミクロン」「50 μm」などの表記が混在していますが、すべて同じ意味です。
製品選択の際は、厚さが用途に適しているかを確認することが重要です。
単位の使い分けと換算表
厚みの単位を使い分けるポイントをまとめます。
mm(ミリメートル)を使う場面:
一般的な厚さ(0.1 mm以上)
板材、ガラス、プラスチック板
直感的にわかりやすい範囲
μm、μ、u(マイクロメートル)を使う場面:
薄いフィルム(0.001〜0.5 mm程度)
包装材、ラップ、薄膜
精密な厚さが重要な場合
nm(ナノメートル)を使う場面:
半導体、コーティング
非常に薄い膜(数十nm〜数百nm)
科学技術分野
換算表を用意しました。
| mm | μm(μ、u) | nm |
|---|---|---|
| 1 mm | 1000 μm | 1,000,000 nm |
| 0.1 mm | 100 μm | 100,000 nm |
| 0.05 mm | 50 μm | 50,000 nm |
| 0.01 mm | 10 μm | 10,000 nm |
| 0.001 mm | 1 μm | 1,000 nm |
換算のコツは、
mm → μm:1000倍(小数点を3桁右へ)
μm → mm:1000分の1(小数点を3桁左へ)
μm → nm:1000倍(小数点を3桁右へ)
1 mm = 1000 μm = 1,000,000 nm
1 μm = 0.001 mm = 1000 nm
「50μ」は「50 μm」と同じ意味
t表記は主に板材で使う(単位はmm)
これらの換算を覚えておけば、どんな厚み表記にも対応できます。
まとめ 紙の厚さの単位は?タオルや鉄板なども
厚みの単位について、基本的な単位から特殊な表記方法まで詳しく解説してきました。
厚みを表す基本単位は、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル)、nm(ナノメートル)です。1 mm = 1000 μm = 1,000,000 nmという関係があり、対象物のスケールに応じて使い分けられます。
紙の厚さは、直接的にmmやμmで表す方法と、間接的に斤量(g/m²)や連量(kg)で表す方法があります。斤量が大きいほど通常は厚い紙ですが、密度によって厚さは変わります。
t(ティー)は板厚を表す記号で、thickness(厚さ)の頭文字です。図面や仕様書で「t = 1.6 mm」のように使われ、製造業や建築業界で標準的な表記方法です。
μ(ミュー)とu(ユー)は、どちらもマイクロメートルを表す略記として使われます。正式にはμmですが、入力の都合でumやu、μだけで表記されることもあります。フィルム業界では「50μのフィルム」のような表現が一般的です。
これらの単位や表記を理解することで、製品仕様や図面を正確に読み取り、適切な材料選択や仕様決定ができるようになります。業界や用途によって表記方法が異なることを理解し、状況に応じて使い分けましょう!