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 ばね定数とヤング率の関係は?計算式も!(縦弾性係数・横弾性係数・断面積・長さ・材料力学など)

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ばねの性質を理解する上で、材料の弾性特性は欠かせない要素です。同じ形状のばねでも、材料が異なればばね定数は大きく変わってきます。

この材料固有の性質を表すのがヤング率(縦弾性係数)や横弾性係数です。これらの弾性係数とばね定数には、明確な数学的関係があり、材料力学の基本原理から導き出せるでしょう。

本記事では、ばね定数とヤング率・横弾性係数の関係を詳しく解説していきます。材料特性がばね定数にどう影響するか、計算式の導出過程、そして実際の設計への応用まで、体系的に理解を深めていきましょう。

ばね定数は材料の弾性係数に比例する

それではまず、ばね定数と材料の弾性特性の基本的な関係について解説していきます。

ヤング率(縦弾性係数)とは何か

ヤング率(Young’s modulus)は、材料の「引張・圧縮方向の変形しにくさ」を表す物性値です。別名を縦弾性係数とも呼びます。

【ヤング率の定義】

E = σ / ε

E:ヤング率(N/m²、Pa)

σ:応力(引張または圧縮応力)(N/m²)

ε:ひずみ(変形量/元の長さ)(無次元)

ヤング率が大きい材料ほど、同じ応力でも変形しにくい、つまり硬い材料ということになります。これは材料固有の値であり、形状には依存しません。

代表的な材料のヤング率を見てみましょう。

材料 ヤング率 E (GPa) 特徴
鋼(鉄) 206 最も一般的な構造材料
ステンレス鋼 193〜200 耐食性に優れる
アルミニウム 69 軽量、鋼の約1/3
チタン 110 高強度・軽量
130 導電性が高い

鋼のヤング率206 GPaという値は、1 mm²の断面積に206,000 Nの力を加えると、元の長さに対して0.1%伸びることを意味しているのです。

横弾性係数(せん断弾性係数)とは

一方、横弾性係数(せん断弾性係数、剛性率)は、材料の「ねじれやせん断変形に対する抵抗」を表します。記号Gで表されることが多いでしょう。

【横弾性係数の定義】

G = τ / γ

G:横弾性係数(N/m²、Pa)

τ:せん断応力(N/m²)

γ:せん断ひずみ(rad)

ヤング率Eと横弾性係数Gには、ポアソン比νを介した理論的な関係があります。

G = E / (2(1 + ν))

ν:ポアソン比(多くの金属で約0.3)

鋼の場合、ν ≈ 0.3とすると:

G = 206 / (2 × 1.3) ≈ 79 GPa

となります。一般に、横弾性係数はヤング率の約0.4倍程度の値になるでしょう。

材料 ヤング率 E (GPa) 横弾性係数 G (GPa)
206 79〜84
ステンレス鋼 193〜200 69〜79
アルミニウム 69 26
チタン 110 42

コイルばねではねじれが主要な変形モードとなるため、横弾性係数Gがばね定数を決定する重要なパラメータになります。

引張ばねと圧縮ばねでの違い

ばねの種類によって、ばね定数に影響する弾性係数が異なることに注意が必要です。

引張ばねや圧縮ばね(コイルばね):

– 主にねじり変形が生じる
横弾性係数Gが支配的
– k ∝ G

板ばね、片持ちばね:

– 主に曲げ変形が生じる
ヤング率Eが支配的
– k ∝ E

引張コイルばねの場合、素線に加わる応力は主にねじり応力です。外見上は引張方向に荷重がかかっているように見えますが、コイル状に巻かれた素線自体はねじられているのです。

したがって、コイルばねのばね定数を計算する際には横弾性係数Gを使い、板ばねではヤング率Eを使うという使い分けが必要でしょう。

ばね定数の計算式と弾性係数

続いては、各種ばねにおけるばね定数の計算式と、弾性係数の関わり方を確認していきます。

コイルばねのばね定数計算式

圧縮コイルばね(引張コイルばねも同様)のばね定数は、以下の式で計算されます。

【圧縮コイルばねのばね定数】

k = Gd⁴ / (8D³n)

G:横弾性係数(N/mm²)

d:素線径(mm)

D:コイル平均径(mm)

n:有効巻数

この式から、ばね定数kは横弾性係数Gに比例することが分かります。つまり、材料の横弾性係数が2倍になれば、他の条件が同じならばね定数も2倍になるのです。

計算例を見てみましょう。

【計算例1:鋼製コイルばね】

G = 80,000 N/mm²

d = 2.0 mm

D = 20 mm

n = 10 巻

k = (80,000 × 2⁴) / (8 × 20³ × 10)

k = (80,000 × 16) / (8 × 8,000 × 10)

k = 1,280,000 / 640,000 = 2.0 N/mm

同じ形状でアルミニウム製にした場合:

【計算例2:アルミニウム製コイルばね】

G = 26,000 N/mm²(鋼の約1/3)

その他の条件は同じ

k = (26,000 × 16) / 640,000

k = 416,000 / 640,000 ≈ 0.65 N/mm

アルミニウムの横弾性係数は鋼の約1/3なので、ばね定数も約1/3になることが確認できました。同じ形状でも材料を変えるだけで、ばねの硬さは大きく変わるのです。

板ばねのばね定数計算式

板ばねや片持ちばねでは、曲げ変形が支配的なため、ヤング率Eを使います。

【片持ち板ばねのばね定数】

k = (3EI) / L³

E:ヤング率(N/mm²)

I:断面2次モーメント(mm⁴)

L:ばねの長さ(mm)

長方形断面の場合、断面2次モーメントは:

I = bh³ / 12

(b:幅、h:厚さ)

したがって:

k = (Ebh³) / (4L³)

計算例:

【計算例:鋼製片持ち板ばね】

E = 206,000 N/mm²

b = 10 mm(幅)

h = 1 mm(厚さ)

L = 50 mm(長さ)

k = (206,000 × 10 × 1³) / (4 × 50³)

k = 2,060,000 / 500,000 = 4.12 N/mm

板ばねのばね定数は、厚さの3乗、長さの3乗に強く依存することが特徴です。わずかな寸法変化でばね定数が大きく変わるため、設計時には注意が必要でしょう。

棒状ばね(軸方向変形)の計算式

棒を軸方向に引っ張ったり圧縮したりする場合、ばねとして機能します。これは最もシンプルなばねの形態です。

【軸方向変形のばね定数】

k = EA / L

E:ヤング率(N/mm²)

A:断面積(mm²)

L:棒の長さ(mm)

この式は、フックの法則と材料力学の基本式から直接導けます。

導出過程:

1. 応力-ひずみ関係: σ = Eε
2. 応力の定義: σ = F/A
3. ひずみの定義: ε = δ/L
4. これらを組み合わせると: F = (EA/L)δ

したがって、k = EA/L となるわけです。

計算例:

【計算例:鋼棒のばね定数】

E = 206,000 N/mm²

直径 10 mm(断面積 A = 78.5 mm²)

長さ L = 100 mm

k = (206,000 × 78.5) / 100

k = 161,710 N/mm ≈ 161.7 kN/mm

軸方向変形のばね定数は非常に大きく、棒は「非常に硬いばね」として機能することが分かります。これは、ボルト締結の解析などで重要になる考え方です。

材料選定とばね定数の関係

ここでは、実際の設計において材料をどう選ぶべきか、弾性係数の観点から見ていきましょう。

材料による弾性係数の比較

代表的なばね材料の弾性係数を比較してみます。

材料 ヤング率
E (GPa)
横弾性係数
G (GPa)
相対剛性
(鋼=1)
ピアノ線(鋼) 206 80〜84 1.00
硬鋼線 206 78〜84 0.98〜1.00
ステンレス鋼(SUS304) 193 69〜79 0.87〜0.99
リン青銅 110〜130 40〜45 0.50〜0.56
ベリリウム銅 130 48 0.60
チタン合金 110 42 0.53

この表から、鋼系材料が最も高い弾性係数を持つことが分かります。同じ形状でより硬いばねを作りたい場合、鋼系材料が有利でしょう。

逆に、銅系材料やチタンは弾性係数が低いため、同じ形状なら鋼の半分程度のばね定数になります。

材料選定の考え方

実際の設計では、弾性係数だけでなく、様々な要求特性を考慮して材料を選定します。

【材料選定の主要考慮事項】

1. 必要なばね定数(弾性係数で決まる)

2. 許容応力と疲労強度

3. 耐食性・耐熱性

4. 導電性・磁性

5. コスト

6. 加工性

用途別の材料選定例:

用途 推奨材料 選定理由
一般的なばね 硬鋼線、ピアノ線 高弾性係数、低コスト
耐食性が必要 ステンレス鋼 錆びにくい、屋外使用可
導電性が必要 リン青銅、ベリリウム銅 電気接点、スイッチ用
高温環境 インコネル、ニッケル合金 高温での特性劣化が小
軽量化が必要 チタン合金 比強度が高い

例えば、電子機器のスイッチ用ばねでは、導電性が必須なためリン青銅が使われます。この場合、弾性係数は鋼の半分程度ですが、形状を調整することでばね定数を確保するのです。

温度による弾性係数の変化

弾性係数は温度によって変化します。一般に、温度が上昇すると弾性係数は低下し、ばね定数も小さくなるでしょう。

鋼の場合:

20℃ → 100℃で約3%低下

20℃ → 200℃で約7%低下

20℃ → 300℃で約12%低下

高温環境で使用するばねでは、この温度依存性を考慮した設計が必要です。

【高温用ばねの設計配慮】

1. 使用温度での弾性係数を使って計算

2. 温度変化によるばね定数の変動を見込む

3. 必要に応じて高温用材料を選定

4. クリープ(時間経過での変形)も考慮

例えば、エンジンのバルブスプリングは高温環境で使用されるため、常温でのばね定数よりも硬く設計されています。使用温度での弾性係数低下を見込んで、必要なばね定数を確保するわけです。

実際の設計計算例

最後に、弾性係数を考慮した実際のばね設計計算を見ていきましょう。

要求仕様からの材料選定

以下の要求仕様を満たすコイルばねを設計します。

【設計要求】

・ばね定数:k = 5 N/mm

・コイル平均径:D = 20 mm(スペース制約)

・有効巻数:n = 8巻(長さ制約)

・耐食性が必要(屋外使用)

まず、ステンレス鋼(G = 70,000 N/mm²)を選定します。

必要な素線径dを計算:

k = Gd⁴ / (8D³n)

5 = 70,000 × d⁴ / (8 × 20³ × 8)

5 = 70,000 × d⁴ / 51,200

d⁴ = 5 × 51,200 / 70,000 = 3.657

d = 1.37 mm

標準線径から d = 1.4 mm を選択すると:

k = (70,000 × 1.4⁴) / 51,200

k = (70,000 × 3.84) / 51,200

k = 268,800 / 51,200 ≈ 5.25 N/mm

要求仕様(5 N/mm)に対して約5%高いですが、許容範囲内でしょう。

材料変更による影響

もし材料をリン青銅(G = 42,000 N/mm²)に変更した場合:

同じ寸法(d = 1.4 mm)での計算

k = (42,000 × 3.84) / 51,200

k = 161,280 / 51,200 ≈ 3.15 N/mm

弾性係数が60%(42,000/70,000)になったため、ばね定数も60%に低下しました。

リン青銅で k = 5 N/mm を実現するには、素線径を太くする必要があります:

d⁴ = 5 × 51,200 / 42,000 = 6.10

d = 1.57 mm

標準線径 d = 1.6 mm を選ぶと、所定のばね定数が得られるでしょう。

設計の最適化

弾性係数の異なる材料で同じばね定数を実現する場合、寸法の調整が必要になります。

弾性係数が低い材料を使う場合:

→ 素線径を太くする(4乗で効く)

→ コイル径を小さくする(3乗で効く)

→ 有効巻数を減らす

ただし、各調整には制約があります:

– 素線径を太くすると応力が増加し、疲労強度が低下する可能性
– コイル径を小さくするとスペース的に有利だが、座屈しやすくなる
– 有効巻数を減らすと全長は短くなるが、変形範囲が制限される

複数の要求を満たす最適解を見つけることが、設計者の重要な仕事なのです。

実際には、専用の設計ソフトウェアやスプレッドシートを使って、様々なパラメータの組み合わせを試行し、最適な設計を見つけることが多いでしょう。

まとめ

ばね定数は、材料の弾性係数に比例します。コイルばねでは横弾性係数G、板ばねではヤング率Eが、ばね定数を決定する重要なパラメータです。

代表的なばね材料である鋼の横弾性係数は約80 GPaであり、これを基準に他の材料を比較できます。ステンレス鋼は鋼とほぼ同等、リン青銅やチタンは約半分程度の弾性係数を持つでしょう。

実際の設計では、必要なばね定数だけでなく、耐食性、導電性、コストなども考慮して材料を選定します。弾性係数の異なる材料を使う場合は、素線径やコイル径などの形状パラメータを調整することで、所定のばね定数を実現できるのです。

材料の弾性特性を理解し、計算式を正しく使いこなすことが、効果的なばね設計の基礎となるでしょう。