微分を学ぶ上で、様々な記号が登場します。dy/dx、f’(x)、∂など、それぞれ異なる記号が使われますが、これらは文脈や用途によって使い分けられています。
記号の意味を正しく理解することで、微分の本質的な理解が深まるでしょう。
この記事では、微分で使われる記号について、その意味や読み方、使い分けを詳しく解説していきます。d、∂、δ、Δの違いや、dxの意味、表記方法のルールまで、微分記号を完全にマスターしていきましょう。
基本的な微分の記号と読み方
それではまず、最も基本的な微分の記号について解説していきます。
dy/dxの記号と意味
dy/dx
は、ライプニッツ記法と呼ばれる最も一般的な微分の記号です。
読み方は「ディー・ワイ・ディー・エックス」または「ディー・ワイ over ディー・エックス」です。この記号は、yをxで微分したもの、つまりyのxに関する導関数を表すのです。
【dy/dxの意味】
dy/dx:yのxに関する微分
d:微分を表す記号(differential)
dx:xの微小変化量
dy:yの微小変化量
dy/dxは、「xが微小量dxだけ変化したとき、yがどれだけ変化するか(dy)の割合」を表していると理解できます。分数の形をしていますが、実際には極限操作を経た導関数を表す記号でしょう。
f'(x)の記号と意味
f’(x)
は、プライム記法(ラグランジュ記法)と呼ばれる微分の記号です。
読み方は「エフ・プライム・エックス」または「エフ・ダッシュ・エックス」です。この記号は、関数f(x)の導関数を表すのです。
2階微分はf”(x)(エフ・ダブルプライム)、3階微分はf”'(x)(エフ・トリプルプライム)と表記します。4階以降はf⁽⁴⁾(x)のように括弧付きの上付き数字を使うことが多いでしょう。
d/dxの微分演算子
d/dx
は、微分演算子を表す記号です。
読み方は「ディー・バイ・ディー・エックス」です。これは関数に作用して、その関数をxで微分する操作を表します。
【微分演算子の使用例】
d/dx(x²) = 2x
d/dx(sin x) = cos x
d/dx(eˣ) = eˣ
d/dx[f(x)]のように、角括弧や丸括弧の中に関数を書いて使用します。この記法は、何をxで微分するのかが明確になる利点があるでしょう。
| 記号 | 読み方 | 意味 | 記法の名称 |
|---|---|---|---|
| dy/dx | ディー・ワイ・ディー・エックス | yのxに関する導関数 | ライプニッツ記法 |
| f'(x) | エフ・プライム・エックス | f(x)の導関数 | ラグランジュ記法 |
| d/dx | ディー・バイ・ディー・エックス | xで微分する演算子 | 微分演算子 |
高階微分の記号
続いては、2階微分以上の高階微分の記号について確認していきます。
2階微分の記号
2階微分(微分を2回行う)を表す記号には、いくつかの表記法があります。
ライプニッツ記法では、d²y/dx²と表記します。読み方は「ディー・ツー・ワイ・ディー・エックス・スクエアド」です。
ラグランジュ記法では、f”(x)(エフ・ダブルプライム・エックス)と表記します。
【2階微分の表記】
ライプニッツ記法:d²y/dx²
ラグランジュ記法:f”(x)
ニュートン記法:ÿ(時間微分の場合)
d²y/dx²のdの右肩にある2は、微分を2回行うことを示しています。dx²は(dx)²を意味し、「dxの2乗」ではなく記号としての表記です。
n階微分の一般表記
n階微分(n回微分する)の表記も見ていきましょう。
ライプニッツ記法では、dⁿy/dxⁿと表記します。読み方は「ディー・エヌ・ワイ・ディー・エックス・ツー・ザ・エヌ」です。
ラグランジュ記法では、f⁽ⁿ⁾(x)(エフ・エヌ・オブ・エックス)と表記します。括弧付きの上付き文字を使うのです。
ニュートン記法(ドット記法)
時間tに関する微分では、ニュートン記法が使われることがあります。
1階微分は変数の上にドットを1つ付けて表します。例えば、位置xの時間微分(速度)はẋ(エックス・ドット)と表記するのです。
2階微分はドットを2つ付けて、ẍ(エックス・ダブルドット)と表記します。加速度を表す際によく使われるでしょう。
| 階数 | ライプニッツ記法 | ラグランジュ記法 | ニュートン記法 |
|---|---|---|---|
| 1階 | dy/dx | f'(x) | ẋ |
| 2階 | d²y/dx² | f”(x) | ẍ |
| 3階 | d³y/dx³ | f”'(x) | (あまり使用しない) |
| n階 | dⁿy/dxⁿ | f⁽ⁿ⁾(x) | – |
偏微分の記号∂と全微分の記号d
続いては、多変数関数で使われる偏微分の記号について確認していきます。
偏微分記号∂の意味
∂
(ラウンドディー、デル)は、偏微分を表す記号です。
読み方は「パーシャル」または「デル」です。多変数関数において、1つの変数だけで微分し、他の変数を定数として扱う操作を表すのです。
【偏微分の表記】
∂f/∂x:fをxで偏微分(yは定数扱い)
∂z/∂x:zをxで偏微分
∂²f/∂x²:fをxで2回偏微分
∂²f/∂x∂y:fをまずyで、次にxで偏微分
例えば、f(x, y) = x²y³という関数を考えます。∂f/∂x = 2xy³(yを定数として微分)、∂f/∂y = 3x²y²(xを定数として微分)となるでしょう。
dと∂の使い分け
dと∂の違いを明確に理解しておきましょう。
dは、1変数関数の微分または全微分を表します。変数が1つしかない場合、またはすべての変数の変化を考慮する場合に使うのです。
一方、∂は、多変数関数において特定の1変数だけで微分する偏微分を表します。他の変数は定数として扱います。
【dと∂の使い分け】
1変数関数 y = f(x):dy/dx(dを使用)
多変数関数 z = f(x, y):∂z/∂x、∂z/∂y(∂を使用)
全微分:dz = (∂z/∂x)dx + (∂z/∂y)dy(dと∂の両方)
全微分の表記
全微分は、すべての変数の変化を考慮した微分です。
z = f(x, y)の全微分は、dz = (∂f/∂x)dx + (∂f/∂y)dyと表されます。これは、xとyの微小変化dx、dyによって、zがどれだけ変化するかを表すのです。
全微分にはdを使い、偏微分係数にはを使うという組み合わせになります。この表記により、全体の変化と部分的な変化が区別できるでしょう。
| 記号 | 名称 | 使用場面 | 意味 |
|---|---|---|---|
| d | ディー | 1変数微分、全微分 | 微分、微小変化 |
| ∂ | パーシャル、デル | 偏微分 | 特定変数での微分 |
その他の微分関連記号
続いては、微分に関連するその他の記号について確認していきます。
Δ(デルタ)の意味
Δ
(デルタ)は、有限な変化量を表す記号です。
Δx(デルタ・エックス)は「xの変化量」を意味します。微分のdxが「微小な変化量」を表すのに対し、Δxは有限の大きさを持つ変化量です。
【Δとdの違い】
Δx:xの有限変化量(x₂ – x₁など)
dx:xの微小変化量(極限での無限小)
平均変化率:Δy/Δx
瞬間変化率(微分係数):dy/dx = lim[Δx→0] Δy/Δx
微分は、Δx→0の極限を取ることで、平均変化率Δy/Δxから瞬間変化率dy/dxへと移行する操作と理解できるでしょう。
δ(小文字デルタ)の意味
δ
(小文字デルタ)は、変分や微小量を表す記号として使われます。
変分法ではδを使って、関数の微小な変化を表します。また、デルタ関数δ(x)(ディラックのデルタ関数)など、特殊な用途でも使われるのです。
一般的な微分計算では∂やdほど頻繁には登場しませんが、高度な数学や物理学では重要な記号でしょう。
∇(ナブラ)の記号
∇
(ナブラ、デル)は、ベクトル微分演算子を表す記号です。
読み方は「ナブラ」または「デル」です。3次元空間での勾配(gradient)、発散(divergence)、回転(rotation)などを表す際に使われます。
【ナブラの使用例】
勾配:∇f(スカラー場の勾配)
発散:∇·F(ベクトル場の発散)
回転:∇×F(ベクトル場の回転)
ナブラは大学レベルのベクトル解析で学ぶ内容ですが、微分の拡張概念として重要な記号です。
| 記号 | 読み方 | 意味 | 使用分野 |
|---|---|---|---|
| Δ | デルタ | 有限変化量 | 基礎数学 |
| δ | 小文字デルタ | 変分、微小量 | 変分法、物理学 |
| ∇ | ナブラ、デル | ベクトル微分演算子 | ベクトル解析 |
まとめ
微分の記号について、その意味や読み方、使い分けを詳しく解説してきました。
基本的な微分記号には、dy/dx(ライプニッツ記法)とf'(x)(ラグランジュ記法)があります。前者は変化率の割合として直感的で、後者は導関数を簡潔に表せるという特徴があるでしょう。
高階微分ではd²y/dx²やf”(x)を使い、多変数関数では偏微分記号∂を使用します。dは1変数微分や全微分に、∂は偏微分に使うという使い分けが重要です。
Δは有限変化量、δは変分、∇はベクトル微分演算子を表します。それぞれの記号が持つ意味と用途を理解することで、微分に関する数式をより深く理解できるようになるはずです。