電気設備の安全管理において、地絡電流は重要な概念の一つです。
しかし、地絡電流とは具体的にどのような電流なのか、また似たような用語である短絡電流との違いについて、正確に理解している方は多くないかもしれません。
地絡電流を理解することは、電気事故の防止や適切な保護装置の選定において極めて重要です。また、電気工事や保守点検において、地絡電流の大きさを正しく計算できることは、安全で効率的な電気設備の運用に直結します。
このような背景もありこの記事では、地絡電流の基本的な概念から、短絡電流との違い、さらには地絡電流の流れ方や計算方法について、専門知識がない方にもわかりやすく解説していきます。
それでは詳しくみていきます!
※そもそもの地絡についてはこちらで解説のため、併せてチェックしてみてください♪

地絡電流とは?意味を簡単に解説!
それではまず、地絡電流とは何かについて詳しく解説していきます。
地絡電流とは、電気回路において地絡故障が発生した際に流れる電流のことを指します。
地絡故障とは、本来電気が流れるべき導線から、絶縁破壊などにより電気が大地に向かって漏れてしまう現象です。この時に大地に向かって流れる電流が地絡電流となります。
通常の電気回路では、電源から負荷に向かって電流が流れ、再び電源に戻るという閉回路を形成しています。しかし、地絡が発生すると、電流の一部または全部が意図しない経路である大地を通って流れることになります。
地絡電流の特徴
地絡電流の特徴として、以下の点が挙げられます。
・異常電流である
地絡電流は正常な運転状態では流れない異常な電流です。そのため、検出されると速やかに回路を遮断する必要があります。
・大地を通って流れる
地絡電流は大地という非常に大きな導体を通って流れるため、その経路や抵抗値を正確に把握することが困難な場合があります。
・火災や感電の原因となる
地絡電流が流れ続けると、発熱により火災が発生したり、人が電気設備に触れた際に感電事故を引き起こしたりする危険性があります。
地絡電流が発生する主な原因には、絶縁材料の経年劣化、物理的な損傷、湿気や汚損による絶縁性能の低下、過電圧による絶縁破壊などがあります。
これらの原因により絶縁が破れると、電位差によって地絡電流が発生します。
地絡電流の大きさは、地絡が発生した箇所の電圧レベル、接地抵抗の大きさ、回路のインピーダンスなどによって決まります。高圧回路では比較的小さな地絡電流でも危険ですが、低圧回路では大きな地絡電流が流れる可能性があります。
地絡電流と短絡電流の違いは?
続いては、地絡電流と短絡電流の違いについて確認していきます。
地絡電流と短絡電流は、どちらも電気回路の異常時に流れる電流ですが、その発生メカニズムや特性には大きな違いがあります。
短絡電流とは、電気回路において異なる電位を持つ導体同士が直接接触することで発生する大電流のことです。例えば、プラス線とマイナス線が直接接触した場合や、三相回路の異なる相同士が接触した場合に流れる電流が短絡電流です。
地絡電流と短絡電流の主な違いを以下に整理します。
地絡電流と短絡電流の主な違いを以下の表に整理します。
項目 | 地絡電流 | 短絡電流 |
---|---|---|
電流の流れる経路 | 電気回路から大地に向かって流れ、大地を通って電源に戻る | 回路内の導体間を直接流れ、大地を経由しない |
電流の大きさ | 大地の抵抗や接地抵抗の影響を受けるため、比較的小さい | 回路内の抵抗が極めて小さいため、非常に大きな電流が流れる |
検出方法 | 漏電遮断器や接地故障継電器などの専用保護装置 | 過電流継電器や回路遮断器 |
主な影響 | 感電事故や漏電火災の原因となり、人身に対する危険性が高い | 電気設備の破損や火災の原因となる |
発生頻度 | 絶縁劣化による地絡が日常的に発生しやすく、頻度が高い | 地絡故障よりも発生頻度は低い |
また、両者が同時に発生する場合もあります。地絡から始まった故障が進展して短絡に至るケースや、短絡故障によって生じたアークが大地に到達して地絡を併発するケースなどがあります。
電気設備の保護を考える際は、地絡電流と短絡電流の両方に対して適切な対策を講じる必要があります。
地絡電流の流れ方や計算方法や大きさは?
続いては、地絡電流の具体的な流れ方と計算方法について確認していきます。
地絡電流の流れ方は、電気回路の接地方式によって大きく異なります。代表的な接地方式における地絡電流の流れ方を説明します。
・非接地系統での地絡電流
非接地系統では、電源の中性点が大地に接地されていません。この場合、一線地絡が発生しても地絡電流は非常に小さく、主に対地静電容量を通じて流れます。そのため、地絡が発生しても電力供給を継続できる利点があります。
・直接接地系統での地絡電流
直接接地系統では、電源の中性点が直接大地に接地されています。地絡が発生すると、地絡点から大地を通り、電源の接地点に戻る経路で大きな地絡電流が流れます。
・抵抗接地系統での地絡電流
抵抗接地系統では、電源の中性点が抵抗を介して接地されています。地絡電流の大きさは接地抵抗の値によって制限されます。
地絡電流の求め方
地絡電流の計算方法について説明します。最も基本的な計算式は以下の通りです。
地絡電流(A)= 地絡点の電圧(V)÷ 地絡回路の全抵抗(Ω)
ここで地絡回路の全抵抗は、接地抵抗、大地抵抗、導体抵抗などの合計値となります。
具体的な計算例を示します。単相100V回路で地絡が発生し、接地抵抗が10Ω、その他の抵抗が5Ωの場合、地絡電流は次のように計算されます。
地絡電流 = 100V ÷(10Ω + 5Ω)= 100V ÷ 15Ω = 6.67A
三相回路の場合は、地絡の種類(一線地絡、二線地絡、三線地絡)によって計算方法が異なります。一線地絡の場合、相電圧を用いて計算し、二線地絡や三線地絡の場合は線間電圧を考慮した計算が必要になります。
地絡電流の大きさに影響する要因
地絡電流の大きさに影響する要因には以下があります。
・電圧レベル
高圧回路ほど大きな地絡電流が流れる可能性があります。
・接地方式
直接接地系統では大きな地絡電流が、非接地系統では小さな地絡電流が流れます。
・接地抵抗
接地抵抗が小さいほど大きな地絡電流が流れます。
・土壌の状態
土壌の湿度や性質によって大地抵抗が変化し、地絡電流の大きさに影響します。
正確な地絡電流の計算には、これらの要因を総合的に考慮する必要がありますね。
まとめ 地絡電流の求め方・流れ方・大きさは?わかりやすく解説
この記事では地絡電流とは?短絡電流との違いや流れ方・計算方法(求め方)・大きさは?わかりやすく解説について解説しました。
地絡電流について理解を深め、さらに快適な生活を送っていきましょう!