電子部品の設計や材料選定を行う際、「この材料の誘電率はどのくらいだろう?」と調べたくなる場面は多いでしょう。
誘電率(比誘電率)の値は材料によって大きく異なり、設計する部品や回路の性能に直接影響します。
材料別の誘電率(比誘電率)を一覧で把握しておくことは、電気工学・電子工学・材料工学の実務において非常に有用なリファレンス知識です。
本記事では、誘電率の一覧表として材料別の値を詳しく解説していきます。
比誘電率一覧・絶縁材料・セラミック・プラスチック・数値比較といったキーワードを軸に、さまざまな材料カテゴリの誘電率データをわかりやすく整理してお伝えします。
ぜひ設計や学習の参考資料としてご活用ください。
材料別比誘電率一覧の全体像と読み方
それではまず、材料別比誘電率一覧の全体像と、その読み方・活用方法について解説していきます。
比誘電率(εr)は真空を1として各材料の誘電率を相対的に示した無次元の値であり、値が大きいほど電界に対して強く分極する(電気エネルギーを蓄えやすい)材料といえます。
材料の比誘電率は測定条件(周波数・温度)によって変化するため、一覧表の数値は標準的な条件(室温・1kHz〜1MHzの範囲)でのおおよその値として参照することが基本です。
実際の設計では必ずメーカーのデータシートや実測値を確認する習慣を持つことが重要です。
以下に主要な材料カテゴリ別の比誘電率の概括的な範囲を示します。
| 材料カテゴリ | 比誘電率の範囲(εr) | 代表的な材料 |
|---|---|---|
| 気体・真空 | 1.0〜1.01 | 真空、空気、窒素 |
| 非極性プラスチック | 2.0〜2.5 | ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン(PTFE) |
| 一般プラスチック・ポリマー | 2.5〜5.0 | ポリスチレン、PET、ナイロン、エポキシ |
| ガラス・石英系 | 3.7〜10 | 石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス |
| 一般セラミック・無機材料 | 5〜30 | アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素 |
| 半導体材料 | 11〜15 | シリコン、ゲルマニウム、GaAs |
| 高誘電率セラミック | 100〜10,000以上 | チタン酸バリウム(BaTiO₃)、チタン酸鉛(PbTiO₃) |
| 水・液体 | 2〜80 | 純水(約80)、エタノール(約25)、油(約2〜5) |
この概括から、材料のカテゴリによって比誘電率が1から10,000以上まで幅広く分布していることがわかります。
比誘電率の値の大きさによって電子部品・回路の設計アプローチが大きく変わるため、材料カテゴリ別の傾向を把握しておくことが設計の出発点となります。
比誘電率一覧の活用場面
比誘電率一覧が実際にどのような場面で活用されるかを確認しておきましょう。
コンデンサの誘電体材料選定では、必要な静電容量・耐電圧・温度安定性・使用周波数に応じて最適な比誘電率の材料を選びます。
プリント基板(PCB)の材料選定では、信号の伝播速度・インピーダンス・高周波損失に影響する比誘電率を考慮して基板材料を選定します。
アンテナ設計では、アンテナ周辺の誘電体の比誘電率が共振周波数や放射効率に影響するため、正確な値の把握が必要です。
絶縁材料の選定では、高電圧機器における絶縁体の比誘電率が電界分布に影響するため、電気的強度と合わせた選定が求められます。
材料の同定・品質管理においても、比誘電率の実測値が規格値内にあるかを確認することが品質保証の一環となります。
測定条件と誘電率値の関係
比誘電率の一覧値を正しく活用するには、測定条件の影響を理解しておく必要があります。
周波数の影響としては、多くの材料で周波数が高くなると比誘電率が低下します。
たとえば、純水の比誘電率は低周波(1kHz)では約80ですが、マイクロ波帯(10GHz)では約40まで低下します。
温度の影響としては、多くの材料で温度上昇とともに比誘電率が変化します。
チタン酸バリウム(BaTiO₃)はキュリー温度(約120℃)付近で比誘電率が急激に増大するという特殊な温度特性を持ちます。
水分の影響も見逃せません。プラスチックなどの材料は吸湿によって比誘電率が変化するため、使用環境の湿度条件も考慮が必要です。
一覧表の数値はあくまで参考値として用い、実設計では必ず使用条件での実測値またはメーカーデータシートを確認することが鉄則です。
プラスチック・ポリマー材料の比誘電率詳細
続いては、プラスチック・ポリマー材料の比誘電率について詳しく確認していきます。
プラスチック類は電子機器の筐体・絶縁部品・基板材料・ケーブル被覆など多様な用途で使われており、その誘電特性は設計に大きく影響します。
非極性プラスチックの比誘電率
非極性プラスチックは分子構造に電気的偏りが少ないため、比誘電率が低い特徴を持ちます。
| 材料名 | 比誘電率(εr) | tan δ(1MHz) | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| PTFE(ポリテトラフルオロエチレン・テフロン) | 2.1 | 0.0002以下 | 高周波基板、同軸ケーブル絶縁 |
| ポリプロピレン(PP) | 2.2〜2.3 | 0.0003〜0.0005 | フィルムコンデンサ、高周波絶縁 |
| ポリエチレン(PE) | 2.25〜2.35 | 0.0002〜0.0004 | ケーブル絶縁材、高周波用絶縁 |
| ポリスチレン(PS) | 2.4〜2.7 | 0.0002〜0.001 | 低損失絶縁材、高周波フィルター |
PTFEは比誘電率が最も低いプラスチックのひとつであり、誘電損失も極めて小さいため、高周波回路の絶縁材や低損失同軸ケーブルの誘電体として最高クラスの性能を発揮します。
ポリプロピレンはフィルムコンデンサの誘電体として優れた損失特性を持ち、オーディオ機器や高周波電源回路に多く採用されています。
極性プラスチック・エンジニアリングプラスチックの比誘電率
極性基を持つプラスチックや機械的特性に優れたエンジニアリングプラスチックは、非極性プラスチックより比誘電率が高い傾向にあります。
| 材料名 | 比誘電率(εr) | 主な用途 |
|---|---|---|
| PET(ポリエチレンテレフタレート) | 3.0〜3.5 | フィルムコンデンサ、包装材 |
| PPS(ポリフェニレンサルファイド) | 2.9〜3.1 | 高温フィルムコンデンサ、電子部品ハウジング |
| ポリカーボネート(PC) | 2.9〜3.0 | 光学部品、電子機器筐体 |
| エポキシ樹脂(汎用品) | 3.5〜5.0 | FR-4基板、封止材、接着剤 |
| ナイロン66(PA66、乾燥状態) | 3.5〜4.5 | コネクタハウジング、機械部品 |
エポキシ系のFR-4基板(比誘電率約4.3〜4.8)は一般的なプリント基板の標準材料であり、コストと特性のバランスから最も広く使われています。
ナイロン系材料は吸湿によって比誘電率が大きく変化するため、高精度が要求される回路への適用では湿度管理が必要です。
特殊高性能プラスチックの比誘電率
高周波・高温・高信頼性が要求される用途向けの特殊プラスチック材料の比誘電率も確認しておきましょう。
液晶ポリマー(LCP)は比誘電率約2.9〜3.0で誘電損失も小さく、5Gミリ波対応の高周波基板・アンテナ基板として注目されています。
ポリイミド(PI)は比誘電率約3.4〜3.5で高温安定性に優れており、フレキシブルプリント基板(FPC)や航空宇宙機器の絶縁材として使われています。
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)は比誘電率約2.4〜2.7と低く、高速デジタル通信基板への応用が進んでいます。
5G通信・高速デジタル機器の進展に伴い、低誘電率かつ低損失の特殊プラスチック材料への需要が急速に高まっているのが現在のトレンドです。
セラミック・無機材料の比誘電率詳細
続いては、セラミックおよび無機材料の比誘電率について詳しく確認していきます。
セラミックは電子部品に広く使われており、比誘電率の範囲も非常に広いのが特徴です。
一般セラミックの比誘電率
電子機器の絶縁材・基板材料・パッケージ材料として使われる一般的なセラミックの比誘電率を確認しましょう。
| セラミック材料 | 比誘電率(εr) | 主な用途 |
|---|---|---|
| アルミナ(Al₂O₃) | 9〜10 | IC基板、電子部品パッケージ、絶縁碍子 |
| 窒化アルミニウム(AlN) | 8〜9 | 高熱伝導基板、パワーデバイスパッケージ |
| 窒化ケイ素(Si₃N₄) | 7〜8 | 半導体絶縁膜、高温部品 |
| 二酸化ケイ素(SiO₂) | 3.9〜4.5 | 半導体ゲート絶縁膜、光ファイバー |
| ジルコニア(ZrO₂) | 20〜25 | センサー、固体電解質、High-k絶縁膜 |
| チタニア(TiO₂) | 約85〜170 | 高誘電率コンデンサ材料、光触媒 |
アルミナは優れた絶縁性・耐熱性・機械的強度を持ち、比誘電率約9〜10という値は高周波回路基板や電子部品パッケージに適した特性です。
ジルコニア(ZrO₂)はSiO₂より高い比誘電率を持つHigh-k絶縁材料として、次世代半導体デバイスのゲート絶縁膜への応用が研究されている有望材料です。
高誘電率セラミック(強誘電体)の比誘電率
コンデンサや圧電素子として使われる高誘電率セラミック材料の比誘電率を確認しましょう。
| 材料名 | 比誘電率(εr) | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| チタン酸バリウム(BaTiO₃) | 1,000〜15,000 | MLCC(積層セラミックコンデンサ)、圧電素子 |
| チタン酸鉛(PbTiO₃) | 約200〜300 | 圧電センサー、アクチュエータ |
| PZT(チタン酸ジルコン酸鉛) | 200〜5,000 | 圧電デバイス(超音波・センサー・MEMS) |
| チタン酸ストロンチウム(SrTiO₃) | 約300(室温) | マイクロ波デバイス、調整可能コンデンサ |
| ハフニウム酸化物(HfO₂) | 約25 | 最先端半導体ゲート絶縁膜(Intel採用) |
チタン酸バリウム(BaTiO₃)は電子部品用セラミックの中で最も広く使われる高誘電率材料であり、比誘電率が1,000〜15,000という幅広い範囲を示すのは、組成・焼結条件・温度によって特性が大きく変化するためです。
ハフニウム酸化物(HfO₂)は比誘電率こそ約25と突出して高くはないものの、SiO₂の3.9と比べて十分に高く、かつ優れた熱安定性と薄膜形成の容易さからIntelなどの先端半導体プロセスで採用されています。
ガラス・光学材料の比誘電率
ガラスや光学材料の比誘電率も電子・光学分野の設計で参照されることがあります。
石英ガラス(SiO₂)の比誘電率は約3.7〜3.9で、温度安定性が高く高周波損失も小さいため、高精度な回路基板や光ファイバーの素材として優れた特性を示します。
ホウケイ酸ガラス(パイレックスガラス)は比誘電率約4.6〜5.0で、化学的安定性と耐熱性に優れ、実験器具から電子部品封止まで幅広く使用されています。
ソーダライムガラス(一般的な板ガラス)は比誘電率約6〜8で、アルカリイオンを含むため誘電損失が比較的大きく、高周波応用には不向きです。
ガラスの比誘電率は組成(含有する金属酸化物の種類と割合)によって大きく変化するため、特殊用途のガラス材料を選定する際は組成と誘電特性の関係を把握することが重要です。
絶縁材料・液体・その他材料の比誘電率
続いては、絶縁材料・液体・その他の材料における比誘電率について確認していきます。
電気絶縁材料の選定において比誘電率は電界分布に影響する重要なパラメーターであり、高電圧機器の設計では特に慎重に考慮する必要があります。
電気絶縁材料の比誘電率比較
高電圧機器・電力ケーブル・モーターなどに使われる電気絶縁材料の比誘電率を比較してみましょう。
| 絶縁材料 | 比誘電率(εr) | 用途 |
|---|---|---|
| 空気(大気) | 約1.0006 | 気中絶縁(スイッチギアなど) |
| 六フッ化硫黄(SF₆ガス) | 約1.002 | GIS(ガス絶縁開閉装置) |
| 鉱物油(絶縁油) | 約2.1〜2.3 | 変圧器・コンデンサ絶縁油 |
| 架橋ポリエチレン(XLPE) | 約2.3 | 高電圧ケーブル絶縁材 |
| エポキシ樹脂(高電圧用) | 約3.5〜4.5 | 変圧器・スイッチギア封止材 |
| 磁器(高電圧用) | 約5〜7 | 送電線碍子、高電圧絶縁体 |
高電圧機器の絶縁設計では、複数の絶縁材料が組み合わさった複合絶縁構造が使われることが多く、各材料の比誘電率の違いが境界面での電界集中を引き起こすことがあるため、材料の組み合わせにおける誘電率の整合性が重要な設計課題となります。
液体材料の比誘電率
液体材料の比誘電率は、化学分析・センサー技術・食品工学・医療などの分野で重要なパラメーターです。
純水(H₂O)の比誘電率は約80(25℃、1kHz)と非常に高く、水分子の強い双極子モーメントによる配向分極が主な要因です。
エタノールの比誘電率は約24、メタノールは約33、アセトンは約20〜21であり、これらの溶媒の誘電率の違いが化学反応速度・溶解性・化学平衡に影響します。
シリコーンオイルは比誘電率約2.7〜3.0で熱安定性に優れ、高電圧機器の絶縁・冷却液体として使われています。
変圧器油(鉱物油)は比誘電率約2.2で、絶縁性能と熱伝導性のバランスから変圧器の絶縁・冷却材として長年使用されてきました。
半導体・特殊材料の比誘電率
電子デバイスに使われる半導体材料・特殊材料の比誘電率も整理しておきましょう。
| 材料名 | 比誘電率(εr) | 用途・特徴 |
|---|---|---|
| シリコン(Si) | 11.7 | 半導体デバイスの基本材料 |
| ゲルマニウム(Ge) | 16.2 | 赤外線光学部品、高速トランジスタ |
| ガリウムヒ素(GaAs) | 12.9 | 高周波・光電子デバイス |
| 窒化ガリウム(GaN) | 8.9〜9.5 | パワーデバイス、高周波デバイス |
| 炭化ケイ素(SiC) | 9.7〜10.2 | パワー半導体デバイス |
| ダイヤモンド | 5.5〜5.7 | 高熱伝導絶縁基板、超高周波デバイス |
シリコン(Si)の比誘電率11.7は半導体デバイス設計の基礎定数のひとつであり、MOSトランジスタのゲート絶縁膜設計においてシリコン本体との比誘電率の比率が重要な役割を持ちます。
GaN・SiCなどのワイドバンドギャップ半導体は電気自動車や再生可能エネルギー向けのパワーデバイスとして急速に普及しており、これらの材料の比誘電率を正確に把握することが高性能パワーデバイス設計の基礎となります。
材料別比誘電率の実用的な選択指針として、最低誘電率が必要な場合(高周波低損失)はPTFE・ポリプロピレン・ポリエチレン(εr:2.1〜2.3)、一般的な基板材料としてはFR-4エポキシ(εr:4.3〜4.8)、大容量コンデンサにはチタン酸バリウム系セラミック(εr:1,000〜15,000)、半導体絶縁膜にはSiO₂(εr:3.9)またはHfO₂(εr:25)が代表的な選択肢となります。
まとめ
本記事では、誘電率の一覧表として、比誘電率一覧・絶縁材料・セラミック・プラスチック・数値比較をテーマに、材料別の値を詳しく解説してきました。
材料の比誘電率は真空・空気(約1)から高誘電率セラミック(10,000以上)まで非常に広い範囲にわたっており、材料の化学組成・分子構造・結晶構造がその値を決定します。
プラスチック類は非極性品で比誘電率2〜2.5、極性品・エンジニアリングプラスチックで3〜5程度の範囲にあり、高周波低損失が求められる場合はPTFEやポリプロピレンが最適な選択肢となります。
セラミックは一般品(アルミナ等)で5〜30、強誘電体系(チタン酸バリウム等)では1,000〜15,000以上という極めて広い範囲をカバーしており、用途に応じた材料選定が重要です。
比誘電率の値は測定周波数・温度・湿度によって変化するため、実際の設計では必ず使用条件に合ったデータシートの値を参照するようにしましょう。
本記事の一覧データを参考に、電子部品設計・回路設計・材料選定にお役立てください。