Excelで縦書きの文書や表を作成する際、ハイフン(ー)や括弧()などの記号が横向きのまま表示されてしまい、見た目が不自然になることがあります。
例えば、「コーヒー」を縦書きにすると、伸ばし棒が横向きのまま表示され、「サービス(無料)」と入力すると括弧が横向きになってしまいます。
これは、全角のハイフンや括弧などの一部の記号が、縦書き時に自動的に回転せず、横書きの状態を維持するという仕様によるものです。
この問題を放置すると、縦書き文書の見栄えが悪くなり、特に印刷物やプレゼンテーション資料では非常に目立ってしまいます。
縦書きでの記号の表示問題は、文字の種類や入力方法によって発生するため、適切な対処法を知っておく必要があります。
縦書き用の記号に置き換える、代替文字を使用する、書式設定で回転させる、関数で括弧を追加するなど、複数のアプローチがあります。
また、そもそも縦書きに適した記号を最初から使用することで、問題を未然に防ぐこともできます。
本記事では、縦書き時にハイフンや括弧が横向きになってしまう原因から、具体的な解決方法、関数を使って括弧を自動的に追加する方法、さらには縦書き文書全般の最適化テクニックまで、実務で即活用できる情報を網羅的に解説します。
縦書きの文書作成で困っている方は、ぜひ最後までお読いください。
ポイントは
・縦書き用の記号(|や︱など)に置き換えることで自然な表示になる
・フォントによって縦書き時の記号の挙動が異なる
・関数を使えば括弧を自動的に両端に追加できる
です。
それでは詳しく見ていきましょう。
縦書き時にハイフンや括弧が横向きになる原因
それではまず、なぜ縦書きにしたときに特定の記号が横向きのまま表示されるのか、その原因を確認していきます。
全角記号の縦書き時の挙動
Excelで縦書き設定にした際、全角のハイフン「ー」や括弧「()」などの一部の記号は、自動的に90度回転せず、横向きのまま表示されます。
これは、Unicode文字コードにおいて、これらの記号が「横書き専用」または「方向を持たない」文字として定義されているためです。
縦書きにしても文字の向きが変わらず、横書きの状態を維持してしまいます。
例えば、「サービス」という言葉を縦書きにすると、「サ」「|」「ビ」「ス」のように縦に並びますが、全角ハイフン「ー」を使った「サービス」では、伸ばし棒が横向きのまま表示されます。
同様に、「無料(税込)」と入力して縦書きにすると、括弧が横向きになり、非常に読みにくい表示になります。
この問題は、Excel特有のものではなく、Word、PowerPointなど、Microsoft Office全般で発生します。
※2024以降のverでは仕様としてこの問題が解決しています
縦書き時の記号表示の問題
問題のある表示
「コ
ー
ヒ
ー」
→ ーが横向き
「無料(税込)」
→ ()が横向き
理想的な表示
「コ
|
ヒ
|」
→ |が縦向き
「無料︵税込︶」
→ ︵︶が縦向き
問題が発生する主な記号一覧
縦書き時に横向きのまま表示されやすい記号には、以下のようなものがあります。
長音記号(ー)、ハイフン(-)、マイナス(−)、波ダッシュ(〜)、丸括弧(())、角括弧([])、中括弧({})、山括弧(<>)などです。
これらの記号は、キーボードから通常の方法で入力すると、縦書き時に問題が発生する可能性が高いです。
特に長音記号「ー」は、カタカナ語で頻繁に使用されるため、縦書き文書では最も問題になりやすい記号です。
「コーヒー」「サービス」「メニュー」など、日常的に使用する言葉のほとんどに含まれるため、対処法を知っておくことが重要です。
また、括弧類も注釈や補足説明で頻繁に使用されるため、縦書き文書では適切な代替手段を用意する必要があります。
| 記号の種類 | 通常の記号 | 縦書き時の問題 | 代替記号 |
|---|---|---|---|
| 長音記号 | ー | 横向きのまま | |(全角縦線) |
| 丸括弧 | () | 横向きのまま | ︵︶(縦書き用括弧) |
| 角括弧 | [] | 横向きのまま | ︻︼(縦書き用角括弧) |
| 波ダッシュ | 〜 | 横向きのまま | ︱(縦書き用ダッシュ) |
| ハイフン | – | 横向きのまま | |または︱ |
フォントによる表示の違い
縦書き時の記号の挙動は、使用しているフォントによっても異なります。
一部の日本語フォント(游ゴシック、游明朝、メイリオなど)は、縦書きに対応した記号を持っており、自動的に適切な向きに調整されることがあります。
しかし、MS Pゴシック、MSゴシック、Arialなどのフォントでは、縦書き対応が不完全で、記号が横向きのまま表示されやすいです。
フォントを変更することで問題が解決する場合もありますが、すべての記号が完璧に対応しているフォントは少ないため、根本的な解決にはなりません。
また、組織や文書のスタイルガイドで特定のフォントが指定されている場合、自由にフォントを変更できないこともあります。
したがって、フォントに依存せず、記号そのものを縦書き対応の文字に置き換える方法が最も確実です。
縦書き時の記号の問題は、日本語の縦書き文化と、コンピュータの文字コード体系の間の齟齬から生じています。
従来の日本語の縦書きでは、伸ばし棒は縦向きの「|」、括弧も縦書き専用の形状が使われていました。
しかし、コンピュータでは横書きが標準となり、多くの記号が横書き用に設計されています。
Unicodeには縦書き用の記号も定義されていますが、通常のキーボード入力では入力できないため、意識的に変換や置換を行う必要があります。
この問題を理解することで、適切な対処法を選択できるようになります。
縦書き用の記号に置き換える基本的な解決方法
続いては、横向きになってしまう記号を、縦書きに適した記号に置き換える具体的な方法を確認していきます。
長音記号を縦線に置き換える
最も一般的な対処法は、長音記号「ー」を全角の縦線「|」に置き換えることです。
縦線「|」は、縦書き時には横向きの棒として表示され、視覚的に長音記号と同じ効果が得られます。
置き換えには、検索と置換機能を使用すると効率的です。
具体的な手順は次の通りです。
1. 対象のセル範囲を選択
2. Ctrl+Hキーで「検索と置換」ダイアログを開く
3. 「検索する文字列」に「ー」を入力
4. 「置換後の文字列」に「|」を入力(Shift+¥キーで入力可能)
5. 「すべて置換」をクリック
この操作により、選択範囲内のすべての長音記号が縦線に置き換えられます。
縦書き設定にすると、縦線が横向きの棒として表示され、自然な長音記号として機能します。
ただし、横書きの状態では縦線が表示されるため、横書きと縦書きを混在させる場合は注意が必要です。
検索と置換による記号の一括変換
| 検索する文字列 | 置換後の文字列 | 効果 |
|---|---|---|
| ー | | | 長音記号を縦線に変換 |
| ( | ︵ | 左括弧を縦書き用に変換 |
| ) | ︶ | 右括弧を縦書き用に変換 |
| [ | ︻ | 左角括弧を縦書き用に変換 |
| ] | ︼ | 右角括弧を縦書き用に変換 |
括弧を縦書き用の記号に変換する
括弧についても、縦書き専用の括弧記号に置き換えることで問題が解決します。
通常の丸括弧「()」を、縦書き用の「︵︶」に変換します。
これらの記号は、IMEの記号入力や文字コード入力で入力できます。
縦書き用括弧の入力方法:
1. IMEの「きごう」変換で括弧一覧から選択
2. 文字コード入力:左括弧「︵」はFE35、右括弧「︶」はFE36をIMEパッドで入力
3. または、検索と置換で一括変換
検索と置換を使う場合、「(」を「︵」に、「)」を「︶」に置き換えます。
この方法により、縦書き時に括弧が自然に縦向きで表示されます。
角括弧の場合は「[」→「︻」、「]」→「︼」に変換します。
その他の記号の代替文字
ハイフンやダッシュなどの記号についても、縦書き用の代替文字が存在します。
波ダッシュ「〜」は縦書き用ダッシュ「︱」に、三点リーダー「…」は縦書き用の「︙」に置き換えることができます。
ただし、これらの記号は使用頻度が比較的低いため、必要に応じて置き換えを検討します。
また、数字やアルファベットを縦書き文書に含める場合、全角文字を使用することで、縦書き時にも自然に表示されます。
半角文字は縦書き時に横向きのまま表示されることが多いため、「A」ではなく「A」、「1」ではなく「1」のように全角で入力します。
ただし、数字については縦中横(たてちゅうよこ)機能を使う方法もあります。
| 元の記号 | 入力方法 | 縦書き用記号 | 入力方法 |
|---|---|---|---|
| ー | キーボード直接入力 | | | Shift+¥ |
| ( | キーボード直接入力 | ︵ | IME記号入力またはFE35 |
| ) | キーボード直接入力 | ︶ | IME記号入力またはFE36 |
| 〜 | キーボード直接入力 | ︱ | IME記号入力 |
縦書き用の記号に置き換える方法は、最も確実で推奨される対処法ですが、注意点もあります。
横書きと縦書きを頻繁に切り替える文書では、記号を置き換えると横書き時に不自然な表示になる可能性があります。
また、データをコピーして他のアプリケーションに貼り付ける際、縦書き用記号が正しく表示されない場合もあります。
したがって、完全に縦書き専用の文書であることが明確な場合に、この方法を適用することが推奨されます。
データの互換性が重要な場合は、後述する関数による括弧追加など、別の方法を検討してください。
関数を使って括弧を自動的に追加する方法
それでは、元のデータを変更せずに、表示時だけ括弧を追加する方法を確認していきます。
CONCATENATE関数またはテキスト結合演算子を使う
元のセルのデータを変更せずに、表示用のセルで括弧を追加する場合、CONCATENATE関数またはアンパサンド(&)を使った文字列結合が有効です。
例えば、A1セルに「税込」という文字列があり、これを「︵税込︶」と括弧付きで表示したい場合、B1セルに次のような数式を入力します。
「=CONCATENATE(“︵”,A1,”︶”)」
または
「=”︵”&A1&”︶”」
どちらの数式も同じ結果になり、B1セルには「︵税込︶」と表示されます。
縦書き用の括弧「︵︶」を使用しているため、縦書き設定にすると自然に縦向きの括弧として表示されます。
この方法のメリットは、元のA1セルのデータは変更されず、表示用のB1セルだけに括弧が追加される点です。
関数による括弧の自動追加
元データ(A1)
数式(B1)
結果
TEXT関数で書式と括弧を同時に設定
数値データに括弧を追加する場合、TEXT関数を使って書式設定と括弧追加を同時に行うことができます。
例えば、A1セルに「1000」という数値があり、これを「︵1,000︶」と表示したい場合、次の数式を使います。
「=”︵”&TEXT(A1,”#,##0″)&”︶”」
この数式は、A1セルの数値を桁区切りのカンマ付き形式に変換してから、両端に縦書き用括弧を追加します。
結果は「︵1,000︶」となり、縦書き設定にすると縦向きの括弧で数値が囲まれます。
TEXT関数を使うことで、数値の書式設定も自由に行えるため、「︵¥1,000︶」のように通貨記号を追加することも可能です。
条件付きで括弧を追加する
特定の条件を満たす場合にのみ括弧を追加したい場合、IF関数と組み合わせることで条件分岐が可能です。
例えば、A1セルに値が入力されている場合のみ括弧を追加し、空白の場合は何も表示しないという場合、次の数式を使います。
「=IF(A1<>””,”︵”&A1&”︶”,””)」
この数式は、「A1セルが空白でない場合、括弧付きで表示、空白の場合は空白を返す」という意味です。
さらに複雑な条件として、「数値が1000以上の場合のみ括弧を付ける」という場合は、「=IF(A1>=1000,”︵”&TEXT(A1,”#,##0″)&”︶”,A1)」のように記述します。
| 目的 | 数式例 | 結果 |
|---|---|---|
| 文字列に括弧追加 | =”︵”&A1&”︶” | ︵税込︶ |
| 数値に括弧とカンマ追加 | =”︵”&TEXT(A1,”#,##0″)&”︶” | ︵1,000︶ |
| 空白時は括弧なし | =IF(A1<>””,”︵”&A1&”︶”,””) | 空白ならブランク |
| 条件付き括弧追加 | =IF(A1>=1000,”︵”&A1&”︶”,A1) | 1000以上なら括弧付き |
関数を使った括弧の追加は、元データを保持したまま表示を変更できる点が最大のメリットです。
データベースとして管理する元データは括弧なしで保持し、印刷用や表示用のシートでは括弧付きで表示するという使い分けが可能です。
また、数式を使っているため、元データが更新されれば自動的に表示も更新されます。
ただし、数式が入っているセルは、並べ替えやフィルターで意図しない動作をする場合があるため、最終的には値貼り付けで固定することも検討してください。
縦書き文書全般の最適化テクニック
最後に、縦書き文書を作成する際の総合的な最適化テクニックを確認していきます。
セルの書式設定で縦書きを設定する
Excelで縦書きを設定する基本的な方法は、セルの書式設定から方向を変更することです。
縦書きにしたいセルまたは範囲を選択し、右クリックして「セルの書式設定」を選択します。
「配置」タブを開き、右側にある「方向」セクションで「文字列」と書かれた縦向きのボックスをクリックします。
または、「角度」の欄に「-90」度を入力するか、方向ダイヤルを縦向きに調整します。
OKをクリックすると、選択したセル内のテキストが縦書きで表示されます。
この設定後に、本記事で説明した記号の置換や関数による括弧追加を行うことで、見栄えの良い縦書き文書が完成します。
縦書き設定の手順
セルを選択
右クリック
セルの書式設定
配置タブ
方向で縦向きを
選択してOK
縦中横機能で数字を横向きに表示
縦書き文書内で、特定の数字やアルファベットだけを横向きに表示したい場合があります。
例えば、「令和5年」の「5」だけを横向きにしたい場合、縦中横(たてちゅうよこ)機能を使用します。
ただし、Excelには縦中横機能が標準で搭載されていないため、Wordほど柔軟な対応はできません。
Excelで擬似的に縦中横を実現するには、数字部分だけを別のセルに分割し、そのセルだけを横書きのままにするという方法があります。
または、テキストボックスを使用して縦書きテキストの中に横書きのテキストボックスを配置する方法もあります。
完全な縦書き文書を作成する場合は、WordやInDesignなどの専用ソフトウェアの使用も検討してください。
フォント選択と行間調整
縦書き文書の可読性を高めるためには、適切なフォントと行間の設定が重要です。
縦書きに適したフォントとしては、游明朝、游ゴシック、ヒラギノ明朝、ヒラギノ角ゴシックなどが推奨されます。
これらのフォントは、縦書き時の文字バランスが良く、記号の表示も比較的適切です。
行間(セルの幅)は、文字サイズに応じて調整します。
縦書きの場合、列幅が行間に相当するため、セルの列幅を調整して読みやすい間隔にします。
一般的には、文字サイズの1.5〜2倍程度の列幅が読みやすいとされています。
また、セルの高さ(横書き時の行間に相当)は、テキストの長さに応じて十分な高さを確保します。
印刷設定とプレビュー確認
縦書き文書を印刷する際は、印刷プレビューで必ず確認することが重要です。
画面上では正しく表示されていても、印刷すると記号が意図しない向きになることがあります。
特に、PDFに変換する場合、一部の縦書き用記号が正しく変換されない場合があるため、PDF化後も必ず確認してください。
印刷設定では、用紙の向きを縦書きに合わせて調整します。
縦書きの文書は、通常は用紙を横向きにして、右から左へと文章が流れるようにレイアウトします。
ページ設定で用紙の向きを「横」にし、印刷範囲を適切に設定します。
また、余白も縦書きに適した設定にし、特に右側の余白を広めに取ることで、読みやすい文書になります。
Excelは本来、横書きの表計算ソフトウェアとして設計されているため、縦書き文書の作成には一定の制約があります。
簡単な縦書きの表や短い縦書きテキストであればExcelで十分対応できますが、長文の縦書き文書や複雑なレイアウトが必要な場合は、Wordや専用のDTPソフトウェアの使用を検討してください。
ただし、データベースと連動した縦書きの帳票や、計算結果を縦書きで表示する表など、Excelの表計算機能と縦書きを組み合わせる必要がある場合は、本記事で紹介したテクニックを活用することで、実用的な文書を作成できます。
まとめ 縦書き時のハイフンや括弧の問題と解決方法
Excelで縦書き時にハイフンや括弧が横向きになる問題の解決方法をまとめると
・問題の原因:全角ハイフン「ー」や括弧「()」などは、縦書き時に自動回転せず横向きのまま表示される、Unicode文字コードで横書き専用または方向を持たない文字として定義されているため
・記号の置き換え:長音記号「ー」を縦線「|」に変換(Shift+¥で入力)、括弧「()」を縦書き用「︵︶」に変換(IME記号入力またはFE35/FE36)、検索と置換(Ctrl+H)で一括変換が効率的
・関数による括弧追加:「=”︵”&A1&”︶”」で元データを変更せずに括弧を追加、TEXT関数で数値の書式設定と括弧追加を同時実行、IF関数で条件付きの括弧追加が可能、元データと表示を分離できるメリット
・縦書き設定の最適化:セルの書式設定→配置タブで縦書きを設定、フォントは游明朝、游ゴシックなど縦書き対応フォントを選択、列幅(行間)を文字サイズの1.5〜2倍に調整、印刷プレビューで必ず確認
縦書き文書での記号の表示問題は、適切な対処法を知っていれば簡単に解決できます。
検索と置換で一括変換する方法は、既存の文書を修正する際に最も効率的で、関数を使った方法は、元データを保持したまま表示を変更したい場合に最適です。
特に縦書き用記号「︵︶」や縦線「|」への置き換えは、見た目が自然で読みやすい縦書き文書を作成するための必須テクニックです。
Excelでの縦書き文書作成には制約もありますが、本記事で紹介したテクニックを活用することで、帳票、案内状、メニュー、縦書き報告書など、実用的な縦書き文書を作成できます。
フォント選択、行間調整、印刷設定にも注意を払うことで、プロフェッショナルな仕上がりの縦書き文書が完成します。
適切な記号の使い方で、美しい縦書き文書を作成していきましょう!