方程式を解く際、「実数解を求めよ」「実数解の個数は?」という問題に出会うことがよくあります。実数解という概念は数学の基礎であり、正確に理解しておく必要があるでしょう。
しかし「そもそも実数解って何?」「解の個数はどうやって数えるの?」「重解は1個?それとも2個?」といった疑問を持つ方も多いはずです。
本記事では、実数解の定義から個数の数え方、具体的な計算方法まで、実数解に関する知識を体系的に解説していきます。1次方程式から2次方程式、さらに高次方程式まで、様々なケースを具体例とともに見ていきますので、実数解について完璧に理解したい方は参考にしてください。
実数解の基本的な定義
それではまず、実数解とは何かという基本から確認していきます。
実数解とは何か
実数解とは、方程式を満たす値のうち、実数であるものを指します。
方程式f(x)=0において、f(a)=0を満たす実数aを、この方程式の実数解と呼ぶのです。「解」という言葉は広く複素数解も含みますが、「実数解」と言った場合は実数に限定されます。
実数解の定義
方程式f(x)=0において、f(a)=0を満たす実数aを実数解という
例えばx²-1=0という方程式を考えましょう。x=1を代入すると1²-1=0となり成立します。x=-1も同様に成立します。したがってこの方程式の実数解はx=1, -1です。
一方でx²+1=0の場合、x=1でもx=-1でも方程式は成立しません。実数の2乗は必ず0以上なので、実数xでx²+1=0を満たすものは存在しないのです。
実数解が存在しない場合でも、複素数の範囲では解が存在します。x²+1=0の解はx=±iという複素数解です。これらは実数ではないため、実数解とは呼ばれません。
実数解と複素数解の関係
すべての実数解は複素数解でもありますが、すべての複素数解が実数解とは限りません。
複素数は実部と虚部を持つ数で、a+bi(a, bは実数)という形で表されます。このうちb=0の場合、つまり虚部がない場合が実数なのです。
| 解の種類 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 実数解 | a(虚部なし) | 3, -2, 0, √2, π |
| 純虚数解 | bi(実部なし) | 2i, -3i, i |
| 複素数解 | a+bi(両方あり) | 1+2i, -3+i, 2-5i |
数直線上に表せる解が実数解であり、複素平面上でのみ表せる解が複素数解です。実数解は複素平面において、実軸上にある点に対応します。
方程式によっては、実数解と複素数解が混在することもあります。例えばx³-1=0は、実数解x=1と複素数解x=(-1±√3i)/2を持つのです。
問題文で「実数解を求めよ」と指定された場合は、複素数解を除外し、実数である解のみを答えます。一方「すべての解を求めよ」なら、複素数解も含めて答えるわけです。
実数解の幾何学的意味
実数解には、グラフを使った視覚的な理解もできます。
方程式f(x)=0の実数解は、関数y=f(x)のグラフとx軸との交点のx座標に対応するのです。
例えばy=x²-4というグラフを考えましょう。このグラフはx=-2とx=2の点でx軸と交わります。したがってx²-4=0の実数解はx=±2となるわけです。
グラフと実数解の関係
- グラフがx軸と交わる → 実数解が存在
- 交点の個数 → 実数解の個数
- x軸と交わらない → 実数解なし
y=x²+1のグラフはすべての点でy>0となり、x軸と交わりません。これは方程式x²+1=0が実数解を持たないことに対応しています。
グラフを描くことで、実数解の存在や個数を視覚的に確認できます。特に高次方程式や超越方程式では、グラフによる考察が有効でしょう。
実数解を求める問題では、代数的な計算だけでなく、グラフのイメージも持つことで理解が深まります。両方の視点を持つことが、数学力向上の鍵なのです。
実数解の個数の求め方
続いては、実数解が何個あるかを求める方法について見ていきましょう。
1次方程式の実数解の個数
1次方程式ax+b=0(a≠0)は、常にちょうど1個の実数解を持ちます。
解はx=-b/aで与えられ、a≠0である限り、この値は必ず実数です。1次方程式で実数解が存在しない、または2個以上あるということはありません。
1次方程式の例
2x+6=0
x=-6/2=-3
実数解は1個(x=-3)
グラフで考えると、y=ax+bは傾きがある直線なので、必ずx軸とちょうど1点で交わります。a≠0であれば水平線ではないため、交点が1個だけ存在するのです。
ただし注意すべきは、a=0の場合です。このとき方程式は0×x+b=0、つまりb=0となります。b=0なら任意のxが解となり、b≠0なら解は存在しません。しかしa=0の場合、もはや1次方程式ではないのです。
1次方程式の定義にはa≠0という条件が含まれているため、正しい1次方程式であれば、実数解は必ず1個と覚えておきましょう。
2次方程式の実数解の個数
2次方程式ax²+bx+c=0(a≠0)の実数解の個数は、判別式Dの値によって決まります。
判別式D=b²-4acを計算し、その正負により個数を判定するのです。
| 判別式D | 実数解の個数 | 詳細 |
|---|---|---|
| D > 0 | 2個 | 異なる2つの実数解 |
| D = 0 | 1個 | 重解(同じ値が2回) |
| D < 0 | 0個 | 実数解なし(複素数解2個) |
重解の場合、「実数解の個数」の数え方に注意が必要です。「異なる実数解の個数」を問われた場合は1個ですが、「重複度を込めた実数解の個数」なら2個と数えます。
例1:x²-5x+6=0
D=25-24=1>0
→ 実数解2個(x=2, 3)
例2:x²-4x+4=0
D=16-16=0
→ 実数解1個(x=2の重解)
例3:x²+x+1=0
D=1-4=-3<0
→ 実数解0個
判別式を使えば、実際に解を求めなくても個数が分かります。効率的な判定方法として、必ず覚えておきましょう。
3次以上の方程式の実数解の個数
3次方程式以上の高次方程式では、実数解の個数を判定する一般的な公式はありません。
しかしグラフの性質や定理を使って、個数の範囲を絞ることができます。
n次方程式は、複素数の範囲で必ずn個の解を持ちます(代数学の基本定理)。このうち何個が実数解かは、方程式によって異なるのです。
高次方程式の実数解の個数
- 奇数次方程式:少なくとも1個の実数解を持つ
- 偶数次方程式:実数解を持たない場合もある
例えばx³-1=0は3次方程式で、実数解はx=1の1個だけです。残りの2つの解は複素数です。
x⁴+1=0は4次方程式ですが、実数解は0個です。すべての解が複素数になります。
グラフで考えると、奇数次の多項式は必ず左右で異なる向きに伸びるため、どこかでx軸と交わります。しかし偶数次の多項式は両端が同じ向きに伸びるため、x軸と交わらない可能性があるのです。
高次方程式の実数解の個数を正確に求めるには、因数分解や数値計算、グラフの描画などの手法を組み合わせる必要があるでしょう。
実数解の具体的な計算方法
それでは、実数解を実際に計算する方法を確認していきましょう。
因数分解による解法
方程式が因数分解できる場合、それが最も簡単な解法です。
因数分解により方程式を(x-α)(x-β)=0のような形にすれば、x=α, βが解となります。
例1:x²-7x+12=0
(x-3)(x-4)=0
x=3 または x=4
実数解は2個
例2:x²-6x+9=0
(x-3)²=0
x=3(重解)
実数解は1個
因数分解には、たすきがけや公式を使います。a²-b²=(a+b)(a-b)や、x²+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)といった公式を覚えておくと便利です。
高次方程式でも、因数定理を使って因数分解できる場合があります。例えばx³-8=0は(x-2)(x²+2x+4)=0と因数分解でき、x=2が実数解と分かるのです。
因数分解できるかどうかは、まず試してみることが重要でしょう。うまく因数分解できれば、複雑な計算をせずに解が求まります。
解の公式による解法
2次方程式ax²+bx+c=0の場合、解の公式を使うのが確実な方法です。
解の公式
x = (-b ± √(b²-4ac)) / 2a
この公式に係数を代入すれば、必ず解が求まります。判別式D=b²-4ac≥0なら実数解が得られるのです。
例:2x²-5x+2=0を解く
a=2, b=-5, c=2
D=(-5)²-4×2×2=25-16=9>0
x = (5 ± √9) / 4 = (5 ± 3) / 4
x = 8/4 = 2 または x = 2/4 = 1/2
実数解:x=2, 1/2
計算の際は、符号に注意しましょう。特にbが負の数のとき、-bは正になります。b=-5なら-b=5です。
また√の計算で、D=9なら√9=3ですが、D=5なら√5はそのまま残します。無理数解の場合は、√を含んだ形が答えになるわけです。
解の公式は2次方程式の万能な解法として、必ず使えるようにしておきましょう。
平方完成による解法
2次方程式は平方完成という手法でも解けます。
平方完成とは、ax²+bx+c=0をa(x-p)²+q=0の形に変形する方法です。これにより(x-p)²=-q/aとなり、xについて解けます。
例:x²+6x+5=0を平方完成で解く
x²+6x+9-9+5=0
(x+3)²-4=0
(x+3)²=4
x+3=±2
x=-3±2
x=-1 または x=-5
平方完成の手順は以下の通りです。
1. x²の係数を1にする(必要に応じて両辺を割る)
2. xの係数の半分を2乗した値を加えて引く
3. 平方の形にまとめる
4. 平方根を取って解く
この方法は、解の公式がどこから来たのかを理解する上でも重要です。実は解の公式は、一般的な2次方程式を平方完成することで導かれるのです。
| 解法 | 適用条件 | 利点 |
|---|---|---|
| 因数分解 | 簡単に因数分解できる | 最も速い |
| 解の公式 | すべての2次方程式 | 確実 |
| 平方完成 | すべての2次方程式 | 変形の理解に有効 |
状況に応じて、最適な解法を選びましょう。簡単に因数分解できそうなら因数分解を試し、できなければ解の公式を使うのが効率的です。
実数解の個数と重解の扱い
続いては、実数解の個数を数える際の注意点について見ていきましょう。
重解の数え方
重解とは、同じ値が解として複数回現れる状態です。その数え方は文脈によって異なるため、注意が必要になります。
例えば(x-2)²=0という方程式は、x=2が解として2回現れます。これを重解と呼ぶのです。
重解の数え方
- 「異なる実数解の個数」→ 1個
- 「実数解の個数(重複度込み)」→ 2個
- 「方程式の解の個数」→ 通常は重複度込みで数える
問題文に「異なる」という言葉があれば、重解は1個と数えます。何も書いていなければ、文脈で判断する必要があるでしょう。
高校数学では、通常「実数解の個数」と言った場合、異なる解の個数を指すことが多いです。しかし大学以降の数学では、重複度を込めて数えることもあります。
例:x²-4x+4=0の実数解の個数
(x-2)²=0より、x=2(重解)
「異なる実数解」なら1個
「重複度込み」なら2個
迷った場合は、問題文の他の部分から推測したり、両方の数え方を明記して答えたりするとよいでしょう。テストでは減点を避けるため、確認することをお勧めします。
3次以上の方程式での重解
3次以上の方程式でも、重解が現れることがあります。
例えば(x-1)³=0という3次方程式は、x=1が3回現れる3重解です。(x-2)²(x+1)=0は、x=2の2重解とx=-1の単解を持ちます。
| 方程式 | 因数分解 | 解 | 重複度 |
|---|---|---|---|
| x³-3x²+3x-1=0 | (x-1)³=0 | x=1 | 3重解 |
| x³-4x²+4x=0 | x(x-2)²=0 | x=0, 2 | 単解、2重解 |
| x⁴-8x²+16=0 | (x²-4)²=0 | x=±2 | 各2重解 |
グラフで見ると、重解はグラフがx軸に接する点に対応します。単解ではグラフがx軸を横切りますが、重解では接するだけで向きを変えるのです。
n重解では、グラフがx軸に「n-1回微分しても接している」という特殊な状況になります。高次の微分と関係する深い概念なのです。
複素数解と実数解の組み合わせ
方程式によっては、実数解と複素数解が混在します。
2次方程式の場合、解は「すべて実数」か「すべて複素数(共役ペア)」のどちらかです。実数解1個と複素数解1個という組み合わせは起こりません。
しかし3次以上では、様々な組み合わせが可能になります。
3次方程式 x³-1=0 の解
実数解:x=1(1個)
複素数解:x=(-1±√3i)/2(2個)
4次方程式 x⁴-1=0 の解
実数解:x=±1(2個)
複素数解:x=±i(2個)
複素数解は、常に共役ペア(a+biとa-bi)で現れます。これは実係数の方程式の性質によるものです。
実数解の個数を求める問題では、全体の解の個数から複素数解の個数を引くことで求められる場合もあります。全体の解の個数は次数と等しいため、この方法も有効でしょう。
まとめ 実数解の個数の求め方や計算方法は?
本記事では、実数解の定義から個数の求め方、具体的な計算方法まで、実数解に関する知識を総合的に解説しました。
実数解とは方程式を満たす実数の値であり、グラフとx軸の交点に対応します。個数は1次方程式なら1個、2次方程式なら判別式により0~2個、高次方程式は次数や係数によって変わります。重解の数え方には注意が必要です。
計算方法としては因数分解、解の公式、平方完成があり、状況に応じて使い分けましょう。実数解の概念をしっかり理解することで、方程式を解く力が大きく向上するはずです。