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虚数とは何か?分かりやすく・簡単に例を用いて解説!いつ習う?中学生

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数学を学んでいると「虚数」という不思議な名前の数に出会います。実数の世界では解けなかった方程式を解くために生まれた虚数は、一見すると難解に感じられるかもしれません。しかし、その本質を理解すれば、数学の世界が大きく広がることでしょう。

本記事では、虚数の基本的な概念から、虚数解の求め方、判別式との関係、さらには実際の応用まで、中学生にも分かるように丁寧に解説していきます。

二次関数や三次関数における虚数解の扱い方、特性方程式やωといった発展的な内容まで、順を追って確認していきましょう。虚数は決して難しいものではなく、むしろ数学をより豊かにする素晴らしい道具なのです。

虚数とは何か?虚数単位iの基本を理解しよう

それではまず、虚数の基本的な概念について解説していきます。

虚数が生まれた理由と歴史的背景

虚数が誕生したきっかけは、実数の範囲では解けない方程式に数学者たちが直面したことでした。

例えば、x² = -1 という方程式を考えてみましょう。実数の世界では、どんな数を2乗しても正の数か0にしかなりません。2² = 4、(-2)² = 4、0² = 0 といった具合です。

つまり、実数の範囲では x² = -1 を満たす数は存在しないのです。

実数の2乗の性質

正の数の2乗 → 正の数(例:3² = 9)

負の数の2乗 → 正の数(例:(-3)² = 9)

0の2乗 → 0(例:0² = 0)

結論:実数を2乗しても負の数にはならない

しかし、16世紀のイタリアの数学者たちは、三次方程式を解く過程で「負の数の平方根」を扱う必要に迫られました。最初は「虚ろな数(imaginary number)」として懐疑的に見られていましたが、次第にその有用性が認められていったのです。

この歴史的経緯から「虚数」という名前が付けられましたが、決して「存在しない数」という意味ではありません。

虚数単位iの定義と計算方法

虚数の基礎となるのが虚数単位i(アイ)です。

虚数単位iの定義

i² = -1

つまり、iは2乗すると-1になる数として定義されます。

この定義から、様々な計算が可能になります。

iの累乗計算

i¹ = i

i² = -1

i³ = i² × i = -1 × i = -i

i⁴ = i² × i² = (-1) × (-1) = 1

i⁵ = i⁴ × i = 1 × i = i

このように、iの累乗は4つごとに繰り返します。

虚数単位を使った基本的な計算例を見てみましょう。

√(-4) = √(4 × (-1)) = √4 × √(-1) = 2i

√(-9) = √(9 × (-1)) = √9 × √(-1) = 3i

このように、負の数の平方根は虚数単位iを使って表現できるのです。

なお、工学や電気工学の分野では、iが電流(current)を表す記号として使われるため、虚数単位にはj(ジェイ)が使われることもあります。

複素数とは?実数と虚数の関係性

実数と虚数を組み合わせたものを複素数と呼びます。

複素数の標準形

a + bi(a、bは実数)

a:実部(real part)

b:虚部(imaginary part)

複素数の例をいくつか挙げてみましょう。

複素数 実部 虚部 分類
3 + 2i 3 2 複素数
5 5 0 実数(純粋な実数)
4i 0 4 純虚数
-2 + 7i -2 7 複素数

実数は複素数の特殊な場合(虚部が0)であり、純虚数も複素数の特殊な場合(実部が0)です。つまり、複素数は実数と虚数を包含する最も広い数の概念なのです。

数の分類を整理すると、自然数 ⊂ 整数 ⊂ 有理数 ⊂ 実数 ⊂ 複素数 という包含関係になります。

虚数解とは?判別式との関係と求め方を徹底解説

続いては、虚数解の概念と、それを判定する判別式について確認していきます。

判別式D<0のときに虚数解が現れる理由

二次方程式 ax² + bx + c = 0 の解の種類を判定するのが判別式Dです。

判別式Dの定義

D = b² – 4ac

この値によって解の種類が決まります。

判別式と解の関係を表にまとめてみましょう。

判別式の値 解の種類 解の個数 グラフとx軸の関係
D > 0 異なる2つの実数解 2個 2点で交わる
D = 0 重解(実数解) 1個 1点で接する
D 異なる2つの虚数解 2個 交わらない

なぜD
解の公式

x = (-b ± √D) / 2a

D

グラフの観点から見ると、放物線がx軸と交わらない場合に虚数解を持つということになります。

二次方程式の虚数解の求め方と公式

実際に虚数解を求める手順を見ていきましょう。

例題1:x² + 2x + 5 = 0 を解け

ステップ1:判別式を計算

D = 2² – 4×1×5 = 4 – 20 = -16

D

もう一つ例を見てみましょう。

例題2:2x² – 4x + 5 = 0 を解け

ステップ1:判別式を計算

D = (-4)² – 4×2×5 = 16 – 40 = -24

ステップ2:解の公式を適用

x = (4 ± √(-24)) / 4

= (4 ± 2i√6) / 4

= (2 ± i√6) / 2

答え:x = (2 + i√6) / 2、(2 – i√6) / 2

ここで重要な性質があります。虚数解は必ず共役複素数のペアとして現れるのです。

つまり、a + bi が解なら、a – bi も解になります。これは実数係数の方程式における重要な性質です。

虚数解を持つ条件とグラフの特徴

二次関数 y = ax² + bx + c が虚数解を持つ条件を整理してみましょう。

虚数解を持つ条件

1. 判別式 D = b² – 4ac 0 のとき:グラフが常にx軸より上

a

グラフの特徴を具体的に考えてみます。

例えば、y = x² + 2x + 5 という関数を考えると、この二次関数は常に正の値を取ります。平方完成すると y = (x + 1)² + 4 となり、最小値が4であることが分かります。

つまり、x軸(y = 0)と交わることがないため、x² + 2x + 5 = 0 は実数解を持たず、虚数解のみを持つのです。

実際の応用問題では、「二次関数がx軸と共有点を持たない条件を求めよ」という形で出題されることがあります。これは判別式D ω(オメガ)と特性方程式・三次関数における虚数の応用

次に、より発展的な内容として、ωや特性方程式について見ていきましょう。

1の三乗根ωとその性質

方程式 x³ = 1 を考えてみましょう。この方程式は「1の三乗根」を求める方程式です。

明らかに x = 1 は解の一つですが、実はあと2つの解があります。それが複素数解ω(オメガ)なのです。

1の三乗根

x³ = 1 の解は以下の3つ

x = 1

x = ω = (-1 + i√3) / 2

x = ω² = (-1 – i√3) / 2

ωは非常に美しい性質を持っています。

ωの重要な性質

1. ω³ = 1

2. 1 + ω + ω² = 0

3. ω² = ω̄(ωの共役複素数)

4. ω³ⁿ = 1(nは整数)

5. ω³ⁿ⁺¹ = ω、ω³ⁿ⁺² = ω²

特に、1 + ω + ω² = 0 という関係式は様々な計算で威力を発揮します。

例えば、ω⁴ を計算したい場合、ω⁴ = ω³ × ω = 1 × ω = ω となります。このように、ωの累乗は3つの値を循環するのです。

三次方程式と虚数解の関係

三次方程式は実数係数の場合、必ず少なくとも1つの実数解を持ちます。これは三次関数のグラフが必ずx軸と交わることからも理解できるでしょう。

三次方程式の解のパターンは以下の3通りです。

パターン 実数解の個数 虚数解の個数 具体例
パターン1 3個 0個 x³ – 6x² + 11x – 6 = 0
パターン2 1個(重解含む) 0個 x³ = 0
パターン3 1個 2個(共役ペア) x³ – 1 = 0
例題:x³ – 1 = 0 を解け

この方程式は (x – 1)(x² + x + 1) = 0 と因数分解できます。

x – 1 = 0 より x = 1(実数解)

x² + x + 1 = 0 の判別式は D = 1 – 4 = -3

三次方程式で虚数解が現れる場合、必ず共役複素数のペアとして現れるという規則性があります。

特性方程式における虚数解の意味と応用

特性方程式は、数列の漸化式や微分方程式を解く際に現れる重要な方程式です。

例えば、数列の漸化式 aₙ₊₂ = aₙ₊₁ + aₙ を考えてみましょう。

この漸化式に対する特性方程式は x² = x + 1、つまり x² – x – 1 = 0 となります。

特性方程式の解と一般項の関係

特性方程式 x² – px – q = 0 の解をα、βとすると

数列の一般項は aₙ = Aαⁿ + Bβⁿ の形で表されます。

(A、Bは初期条件から決まる定数)

特性方程式が虚数解を持つ場合、数列は振動的な挙動を示します。

物理学や工学では、特性方程式の虚数解は振動現象や周期的な運動を表すことが多いのです。例えば、ばねの振動や電気回路の交流など、周期的に変化する現象を記述する際に虚数解が重要な役割を果たします。

微分方程式 y” + y = 0 の特性方程式は r² + 1 = 0 となり、r = ±i という虚数解を持ちます。この場合の一般解は y = C₁cos(x) + C₂sin(x) という三角関数で表され、周期的な運動を記述できるのです。

虚数はいつ習う?学習段階と実社会での活用例

最後に、虚数を学ぶタイミングと実際の活用場面を確認していきます。

中学・高校での学習内容と到達レベル

数の概念は段階的に拡張されていきます。学習段階を整理してみましょう。

学年 学習内容 扱う数の範囲
小学校 自然数、整数、分数、小数 有理数の一部
中学1年 正負の数 整数、有理数
中学3年 平方根、無理数 実数
高校2年(数学II) 複素数、虚数 複素数
高校3年(数学III) 複素数平面、極形式 複素数(発展)

虚数を本格的に学ぶのは高校2年生が一般的です。

数学IIの「複素数と方程式」という単元で、虚数単位i、複素数の四則演算、二次方程式の虚数解などを学びます。

さらに数学IIIでは、複素数平面という幾何学的な表現方法や、極形式(r(cosθ + i sinθ))、ド・モアブルの定理など、より高度な内容を扱います。

中学生でも理解できる部分はありますが、体系的に学ぶには高校数学の知識が必要になるでしょう。

虚数が使われる分野と具体例

虚数は数学の中だけの概念ではなく、実社会の様々な場面で活用されています。

虚数の主な応用分野

1. 電気工学:交流回路の解析

2. 量子力学:波動関数の記述

3. 信号処理:フーリエ変換

4. 制御工学:システムの安定性解析

5. 流体力学:渦の解析

特に電気工学では、虚数単位j(電流のiと区別するため)を使って、交流電圧や電流を表現します。

例えば、抵抗R、コイルL、コンデンサCからなる回路のインピーダンス(交流抵抗)は Z = R + j(ωL – 1/ωC) という複素数で表されるのです。

量子力学では、電子などの粒子の状態を記述する波動関数ψが複素数値を取ります。シュレーディンガー方程式という基本方程式にも虚数単位iが含まれており、虚数なしでは現代物理学は成り立たないと言っても過言ではありません。

信号処理の分野では、音声や画像のデータをフーリエ変換によって周波数成分に分解する際、複素数表現が本質的な役割を果たしています。

虚数がなかったらどうなる?その重要性

もし虚数が発見されなかったら、現代文明はどうなっていたでしょうか。

まず、数学的には多くの方程式が「解なし」となってしまいます。三次方程式の解の公式(カルダノの公式)も、途中で負の数の平方根が現れるため、虚数を認めなければ使えません。

虚数がない世界での制約

代数方程式が完全に解けない

複素関数論が発展しない

電気工学の交流理論が構築できない

量子力学が記述できない

信号処理技術が発展しない

実用面では、電気を効率的に送電する技術が発達しなかったかもしれません。現代の発電所から家庭まで電気を送る際、交流送電が使われていますが、その設計には複素数を用いた回路解析が不可欠です。

また、スマートフォンで音楽を聴いたり、画像を処理したりする技術も、フーリエ変換という複素数を使った数学理論に基づいています。

さらに、GPS衛星による位置測定、MRIによる医療診断、無線通信技術なども、背後では複素数の理論が使われているのです。

虚数は「虚ろ」という名前とは裏腹に、現代社会を支える極めて実用的な数学的道具と言えるでしょう。

数学史を振り返ると、人類は必要に応じて数の概念を拡張してきました。自然数から整数へ、有理数へ、実数へ、そして複素数へ。その最後の飛躍が虚数の発見だったのです。

まとめ

虚数は、実数の範囲では解けなかった方程式を解くために生まれた数学的概念です。虚数単位iを用いることで、x² = -1 のような方程式にも解を与えることができます。

二次方程式において、判別式D