微積分を学習していると、「ln xの積分」という問題に出会うことがあるでしょう。自然対数の積分は一見難しそうに見えますが、適切な手法を使えば確実に解くことができます。
この記事では、ln xの積分の公式と解き方について、部分積分の使い方から定積分の計算まで詳しく解説していきます。なぜxln x – xという形になるのか、その導出過程と応用例をしっかりお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
ln xの積分の基本公式
それではまず、ln xの積分の結論と基本公式について解説していきます。
積分の結果
ln xの不定積分は、次のように表されます。
∫ln x dx = x ln x – x + C
ここで、Cは積分定数
この公式は、部分積分を使って導出される重要な積分公式の一つです。ln xだけでは積分しにくいため、特別な工夫が必要になります。
公式の確認(微分による検証)
この公式が正しいことを、微分で確認してみましょう。
f(x) = x ln x – x とすると
f'(x) = d/dx[x ln x] – d/dx[x]
積の微分公式より:
d/dx[x ln x] = 1 × ln x + x × (1/x)
= ln x + 1
よって:
f'(x) = (ln x + 1) – 1
= ln x ✓
確かに微分するとln xに戻ることが確認できました。
別の表記
この公式は、次のように書くこともできます。
∫ln x dx = x(ln x – 1) + C
または
∫log_e x dx = x log_e x – x + C
(ln x = log_e xなので)
xでくくった形の方が、覚えやすいと感じる方もいるでしょう。x ln x – xとx(ln x – 1)は同じ式です。
部分積分による導出
続いては、なぜこの公式になるのか、部分積分を使った導出方法を確認していきます。
部分積分の公式
まず、部分積分の公式を復習しておきましょう。
部分積分の公式:
∫u dv = uv – ∫v du
または
∫f(x)g'(x)dx = f(x)g(x) – ∫f'(x)g(x)dx
ln xの積分では、この公式を巧妙に適用する必要があります。
uとdvの設定
部分積分の鍵は、uとdvをどう設定するかです。
∫ln x dx を部分積分で計算
【設定】
u = ln x (微分すると簡単になる)
dv = dx (積分しても簡単)
【微分と積分】
du = (1/x)dx
v = x
ln xは微分すると1/xになり、dxは積分するとxになります。この組み合わせが最も計算しやすい設定です。
部分積分の実行
それでは、実際に計算してみましょう。
∫ln x dx
= uv – ∫v du
= (ln x) × x – ∫x × (1/x)dx
= x ln x – ∫1 dx
= x ln x – x + C
∫v duの部分が∫1 dxとなり、非常に簡単な積分になることがポイントです。これで公式が導出されました。
なぜこの設定が適切か
逆の設定ではうまくいかないことを確認してみましょう。
【もし逆に設定したら】
u = 1, dv = ln x dx とすると
du = 0
v = ∫ln x dx(これが求めたいもの!)
vを求めるために∫ln x dxを計算する必要があり、
循環してしまう
したがって、u = ln x, dv = dxという設定が唯一の正解なのです。
具体的な計算例
続いては、ln xの積分を使った具体的な計算例を確認していきます。
不定積分の基本例
まず、基本的な不定積分から見ていきましょう。
【例1】∫ln x dx
= x ln x – x + C
【例2】∫2ln x dx
= 2∫ln x dx
= 2(x ln x – x) + C
= 2x ln x – 2x + C
【例3】∫(ln x + 1)dx
= ∫ln x dx + ∫1 dx
= (x ln x – x) + x + C
= x ln x + C
例3では、-xとxが打ち消し合って、非常にシンプルな形になりました。
定積分の計算
次に、定積分の具体例を見てみましょう。
【例4】∫
ln x dx を計算
= [x ln x – x]₁ᵉ
= (e ln e – e) – (1 × ln 1 – 1)
= (e × 1 – e) – (1 × 0 – 1)
= (e – e) – (0 – 1)
= 0 – (-1)
= 1
ln e = 1、ln 1 = 0という性質を使うことで、計算がスムーズになります。
【例5】∫
ln x dx を計算
= [x ln x – x]₁²
= (2 ln 2 – 2) – (1 × ln 1 – 1)
= (2 ln 2 – 2) – (0 – 1)
= 2 ln 2 – 2 + 1
= 2 ln 2 – 1
≈ 2 × 0.693 – 1
≈ 1.386 – 1
≈ 0.386
このように、定積分では対数の値を代入して計算します。
係数を含む場合
係数がついている場合の計算も見てみましょう。
【例6】∫ln(2x)dx を計算
u = 2x とおくと、du = 2dx より dx = du/2
x = u/2
∫ln(2x)dx = ∫ln u × (1/2)du
= (1/2)∫ln u du
= (1/2)(u ln u – u) + C
= (1/2)(2x ln(2x) – 2x) + C
= x ln(2x) – x + C
置換積分と組み合わせることで、より複雑な形も計算できます。
(ln x)²やx ln xの積分
続いては、ln xに関連するより複雑な積分を確認していきます。
(ln x)²の積分
(ln x)²の積分も部分積分で求められます。
∫(ln x)²dx を計算
u = (ln x)², dv = dx とおくと
du = 2ln x × (1/x)dx, v = x
∫(ln x)²dx = x(ln x)² – ∫x × 2ln x × (1/x)dx
= x(ln x)² – 2∫ln x dx
= x(ln x)² – 2(x ln x – x) + C
= x(ln x)² – 2x ln x + 2x + C
= x((ln x)² – 2ln x + 2) + C
部分積分を2回使うことで、答えが得られます。
x ln xの積分
x ln xの積分も重要です。
∫x ln x dx を計算
u = ln x, dv = x dx とおくと
du = (1/x)dx, v = x²/2
∫x ln x dx = (ln x) × (x²/2) – ∫(x²/2) × (1/x)dx
= (x²/2)ln x – ∫(x/2)dx
= (x²/2)ln x – x²/4 + C
= (x²/2)(ln x – 1/2) + C
xの次数が上がると、計算が少し複雑になりますが、基本は同じです。
一般化:x^n ln xの積分
より一般的な形も示しておきましょう。
∫x^n ln x dx = x^(n+1)/(n+1) × ln x – x^(n+1)/(n+1)² + C
= x^(n+1)/(n+1) × (ln x – 1/(n+1)) + C
(n ≠ -1)
この公式を使えば、どんな次数でも計算できます。
応用例と実用
続いては、ln xの積分が実際にどのような場面で使われるのか確認していきます。
面積の計算
y = ln xのグラフと軸で囲まれた面積を求めてみましょう。
【問題】x = 1からx = eまでの、y = ln xとx軸で囲まれた面積
S = ∫
ln x dx
= [x ln x – x]₁ᵉ
= (e × 1 – e) – (1 × 0 – 1)
= 0 – (-1)
= 1(平方単位)
この面積がちょうど1になるという美しい結果が得られます。
エントロピーの計算
情報理論のエントロピー計算でln xが現れます。
【連続確率分布のエントロピー】
確率密度関数p(x)のエントロピー:
H = -∫p(x)ln p(x)dx
一様分布 p(x) = 1/(b-a) (a ≤ x ≤ b)の場合:
H = -∫[a→b] (1/(b-a))ln(1/(b-a))dx
= ln(b-a)
このような計算で、ln xの積分の知識が活用されます。
物理学での応用
熱力学や統計力学でも登場します。
| 分野 | 応用例 | 式 |
|---|---|---|
| 熱力学 | エントロピー変化 | ΔS = ∫(dQ/T) |
| 統計力学 | 分配関数 | Z = ∫e^(-E/kT)dE |
| 量子力学 | 期待値計算 | ⟨x⟩ = ∫xψ²dx |
| 経済学 | 効用関数 | U = ∫ln(c)dt |
微分方程式での活用
ln xの積分は、微分方程式を解く際にも現れます。
【例】dy/dx = ln x を解く
両辺を積分:
y = ∫ln x dx
= x ln x – x + C
初期条件 x = 1で y = 2のとき:
2 = 1 × 0 – 1 + C
C = 3
よって:y = x ln x – x + 3
このように、微分方程式の一般解を求める際に使われます。
よくある間違いと注意点
続いては、ln xの積分でよくある間違いと注意すべきポイントを確認していきます。
積分定数を忘れる
不定積分では、積分定数Cが必須です。
【誤り】∫ln x dx = x ln x – x
【正しい】∫ln x dx = x ln x – x + C
定積分の場合は積分定数は不要ですが、不定積分では必ずつけましょう。
部分積分の設定ミス
u と dv の設定を間違えると計算が進みません。
【誤り】u = 1, dv = ln x dx
→ v = ∫ln x dx が求まらない(循環)
【正しい】u = ln x, dv = dx
→ du = (1/x)dx, v = x で計算可能
ln xは微分する側に置くのがポイントです。
定義域の確認
ln xはx > 0でのみ定義されることに注意が必要です。
∫ln x dx は x > 0の範囲でのみ有効
x ≤ 0では ln x が定義されない
定積分の積分区間がすべて正の範囲にあることを確認しましょう。
計算ミス防止
よくある計算ミスのパターンです。
【間違い例】
∫ln x dx = x ln x – 1 + C
(-xを-1と誤る)
【正しい】
∫ln x dx = x ln x – x + C
確認:微分すると
d/dx[x ln x – x] = ln x + 1 – 1 = ln x ✓
最後に微分で確認する習慣をつけると良いでしょう。
まとめ
この記事では、ln xの積分について詳しく解説してきました。
ln xの不定積分は∫ln x dx = x ln x – x + Cという公式で表されます。この公式は部分積分を使って導出され、u = ln x, dv = dxと設定することがポイントでした。ln xは微分すると1/xとなり簡単になるため、微分する側に置くことで計算がスムーズになるでしょう。
定積分では、ln e = 1やln 1 = 0といった対数の基本性質を活用することで計算が簡潔になります。また、(ln x)²やx ln xなど、より複雑な形も部分積分を繰り返し使うことで求められます。
ln xの積分は、面積計算、情報理論のエントロピー、物理学、経済学など様々な分野で応用されています。部分積分の基本をしっかりマスターし、積分定数を忘れず、定義域に注意することで、確実に計算できるようになることでしょう。