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熱伝導率と熱伝達率の計算・変換・違い(意味や公式・単位など)を解説!

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熱の伝わりやすさと伝わりにくさを表す物理量として、熱伝導率と熱伝達率があります。

これらは材料選定や熱設計において重要な指標となり、建築、電子機器、機械設計など様々な分野で活用されています。しかし、これらの物理量の違いや相互関係について混乱することも多いのではないでしょうか。

このような背景もあり、この記事では、熱伝導率と熱伝達率の意味の違い、公式と関係式、計算・変換方法、そして単位の違いについて詳しく解説します。熱の伝わり方の基本を理解し、適切な熱設計に役立てていきましょう!

熱伝導率と熱伝達率の意味の違い

まずは、熱伝導率と熱伝達率の基本的な意味の違いを確認しましょう。これらは熱の伝わり方を表す重要な物理量ですが、異なる現象を表しています(^^)/

熱伝導率とは、物質がどれだけ熱を伝えやすいかを示す物性値です。具体的には、単位面積あたり、単位時間あたり、温度勾配1 K/mで伝わる熱量を表します。熱伝導率が高いほど、熱を速く伝えることができます。

一方、熱伝達率とは、固体表面と流体間の熱の授受のしやすさを示す値です。熱伝達率が高いほど、固体と流体間の熱交換が活発に行われます。

簡単に整理すると以下の通りです1. 熱伝導率(λ または k):固体内部での熱の伝わりやすさを示す値です。単位はW/(m·K)などで表されます。

2. 熱伝達率(h または α):固体表面と流体間の熱交換のしやすさを示す値です。単位はW/(m²·K)で表されます。

3. 熱伝導率が高い材料(例:金属)は内部で熱を良く伝えます。

4. 熱伝達率が高い状態(例:強制対流)では固体と流体間の熱交換が活発です。

 

熱伝導率と熱伝達率の公式と関係式・計算・変換方法

熱伝導率と熱伝達率の基本的な関係式は以下の通りです

熱伝導の場合(フーリエの法則):q = -λ·(dT/dx)

熱伝達の場合(ニュートンの冷却則):

q = h·(Ts – Tf)

ここで

q: 熱流束 [W/m²](単位面積あたりの熱流量)

λ: 熱伝導率 [W/(m·K)]

h: 熱伝達率 [W/(m²·K)]

dT/dx: 温度勾配 [K/m]

Ts: 固体表面温度 [K]

Tf: 流体温度 [K]

 

熱伝導率と熱伝達率の基本式の導出方法

これらの関係式がどのように導かれるのか、順を追って見ていきましょう。

熱伝導の基本法則であるフーリエの法則は以下のように表されます・

q = -λ·(dT/dx)ここで

q: 熱流束 [W/m²](単位面積あたりの熱流量)

λ: 熱伝導率 [W/(m·K)]

dT/dx: 温度勾配 [K/m](距離に対する温度変化)

マイナス記号は、熱が高温側から低温側へ流れることを示します

 

一方、熱伝達現象は固体表面と流体間の熱交換を表し、ニュートンの冷却則で記述されます:

q = h·(Ts – Tf)ここで

q: 熱流束 [W/m²]

h: 熱伝達率 [W/(m²·K)]

Ts: 固体表面温度 [K]

Tf: 流体温度 [K]

熱伝達率は流体の種類、流速、物性値、表面形状などによって変化する値で、理論的には次元解析や実験から導かれる無次元数(ヌセルト数など)を用いて計算されます。

熱伝達率の計算例

熱伝達率は以下のような式で計算されることがあります:

h = Nu·λf/L

ここで

h: 熱伝達率 [W/(m²·K)]

Nu: ヌセルト数(無次元数)

λf: 流体の熱伝導率 [W/(m·K)]

L: 代表長さ [m]

 

ヌセルト数は流れの状態によって異なる実験式で求められます。例えば、平板上の層流強制対流の場合:

Nu = 0.664·Re^(1/2)·Pr^(1/3)ここで

Re: レイノルズ数

Pr: プラントル数

 

全体の熱移動の計算方法

実際のシステムでは、熱伝導と熱伝達が複合的に起こる場合があります。例えば、壁を通して室内から室外へ熱が移動する場合を考えましょう

1. 室内空気から壁内表面への熱伝達

2. 壁内部での熱伝導

3. 壁外表面から外気への熱伝達

この全体の熱移動を表す熱貫流率(U値)は次式で求められます:

U = 1 / (1/hi + L/λ + 1/ho)

ここで

U: 熱貫流率 [W/(m²·K)]

hi: 内側の熱伝達率 [W/(m²·K)]

λ: 壁材の熱伝導率 [W/(m·K)]

L: 壁の厚さ [m]

ho: 外側の熱伝達率 [W/(m²·K)]

 

具体的な計算例

例えば、熱伝導率λ = 0.04 W/(m·K)の断熱材があり、厚さL = 0.1 mの壁を考えます。室内側の熱伝達率hi = 8 W/(m²·K)、室外側の熱伝達率ho = 25 W/(m²·K)とすると:

– 熱貫流率 U = 1 / (1/8 + 0.1/0.04 + 1/25) = 1 / (0.125 + 2.5 + 0.04) = 1 / 2.665 = 0.375 W/(m²·K)

室内外の温度差が20 Kの場合の熱流束qは

q = U·(Ti – To) = 0.375·20 = 7.5 W/m²

 

このように、熱伝導率と熱伝達率の関係式を使って、様々な熱問題を解析することができます(^^)/

熱伝導率と熱伝達率の単位の違いを解説

熱伝導率と熱伝達率の単位は異なります。それぞれの単位とその意味について解説します。

熱伝導率の単位

単位 SI単位系 説明
W/(m·K) 基本単位 1メートルの距離で1ケルビンの温度差があるとき、1平方メートルあたり1ワットの熱が流れる場合の値
kcal/(m·h·℃) 旧単位 1メートルの距離で1℃の温度差があるとき、1平方メートルあたり1時間に何キロカロリーの熱が流れるかを表す値
Btu·in/(ft²·h·°F) 英単位 1インチの厚さで1平方フィート、1時間、1°Fの温度差で流れる熱量をBTU単位で表した値

 

熱伝達率の単位

単位 説明 用途
W/(m²·K) 1平方メートルの面積、1ケルビンの温度差あたりの熱流量 一般的な熱伝達問題
kcal/(m²·h·℃) 旧単位系での熱伝達率 古い文献や資料
Btu/(ft²·h·°F) 英単位での熱伝達率 英米圏の技術資料

 

単位変換の例

1. 熱伝導率:

– 1 W/(m·K) = 0.86 kcal/(m·h·℃)

– 1 W/(m·K) = 6.93 Btu·in/(ft²·h·°F)

2. 熱伝達率:

– 1 W/(m²·K) = 0.86 kcal/(m²·h·℃)

– 1 W/(m²·K) = 0.176 Btu/(ft²·h·°F)

熱伝導率と熱伝達率は、単位の違いからも明らかなように、物理的な意味も異なります。

熱伝導率には長さの次元が含まれる一方、熱伝達率には含まれません。この違いは熱伝導が物質内部の熱移動を表すのに対し、熱伝達が界面での熱交換を表すことに起因します。

熱設計や熱交換器設計を行う際は、状況に応じて適切な物理量を選択することが重要です(^^)/

まとめ 熱伝導率と熱伝達率の違いと応用方法!

本記事では、熱伝導率と熱伝達率の意味の違い、公式と関係式、計算方法、そして単位の違いについて詳しく解説しました。

熱伝導率は固体内部での熱の伝わりやすさを示し、熱伝達率は固体表面と流体間の熱交換のしやすさを示す、異なる熱移動現象を表す物理量です。

実際の熱設計では、これらの物理量を適切に組み合わせて総合的な熱移動を評価することが重要です。例えば、熱交換器設計では両方の物理量が重要な役割を果たします。

材料の特性や設計目的に応じて、適切な物理量を選び、正確な計算を行うことで、効率的な熱設計が可能になります。

熱伝導と熱伝達の基本的な理解を深め、様々な熱問題の解決に役立てていきましょう!