過電圧地絡継電器とは?仕組み・役割と64の原理を解説!
過電圧地絡継電器は、電力設備で地絡が発生した際に現れる零相電圧を監視し、事故区間の切り離しや警報に役立てる保護継電器です。
保護番号の64として呼ばれることも多く、受電設備や高圧配電設備を安全に運用するうえで重要な役割を担います。
地絡継電器には複数の種類があり、設置される系統の接地方式、設備容量、求められる保護協調によって適切な方式を選ぶ必要があります。
この記事では、過電圧地絡継電器の意味、構成、動作原理、設定値、点検時の注意点までを分かりやすく解説します。
過電圧地絡継電器の概要

それではまず過電圧地絡継電器の概要について解説していきます。
地絡事故を検出する保護継電器
過電圧地絡継電器は、一般にOVGRと略される保護継電器です。
名称にある過電圧とは、通常の相電圧が単純に高くなる状態ではなく、地絡事故に伴って生じる零相電圧を対象にした表現です。
高圧配電系統では、一相が大地や接地された設備に触れる地絡事故が起こることがあります。
このとき系統の電圧平衡が崩れ、零相回路に電圧が発生します。
OVGRはこの変化を捉え、設定された電圧と時間を超えた場合に警報接点または遮断指令を出力します。
人が感電する危険、電気火災、機器絶縁の劣化、事故の波及を抑えるための保護装置と考えると理解しやすいでしょう。
過電圧地絡継電器は、地絡電流そのものではなく、地絡によって発生する零相電圧を主な判断材料にする継電器です。
零相変流器を用いる地絡過電流継電器とは、検出対象と役割の一部が異なります。
保護番号64の意味
電力保護の分野では、保護継電器の機能を数字で表す慣行があります。
その中で64は地絡検出に関係する保護機能を示す番号として広く使われています。
受配電盤の回路図や保護協調図で、64、64G、OVGRなどの表記を見かけることがあるでしょう。
ただし、表記の細部や接点名称はメーカー、設計仕様、設備の年代によって異なります。
番号だけで動作条件を決めつけず、盤内図面、保護継電器の仕様書、試験記録を合わせて確認する姿勢が大切です。
64は地絡保護に関する機能番号として把握し、実際の検出方式まで確認することが実務では欠かせません。
採用される設備と利用場面
OVGRは、特別高圧から高圧へ受電する需要家設備、工場、商業施設、病院、集合住宅の受変電設備などで採用されます。
特に非接地系統や高抵抗接地系統では、地絡時の電流が比較的小さい場合があります。
このような系統では、過電流だけを手掛かりに事故を確実に判定しにくいことがあります。
そこで、接地形計器用変圧器から得られる零相電圧を用いるOVGRが有効になります。
警報のみを出して保守担当者に知らせる構成もあれば、遮断器をトリップさせて事故回路を速やかに分離する構成もあります。
設備の停止が事業に与える影響と、事故を継続させる危険性を比べながら、保護方式を設計することになります。
零相電圧と検出回路の仕組み
続いては零相電圧と検出回路の仕組みを確認していきます。
三相電圧の不平衡
健全な三相交流系統では、各相の電圧は大きさがほぼ等しく、位相は120度ずつずれています。
この三つの電圧をベクトルとして加えると、理想的には合計がほぼゼロになります。
一方で、一相が地絡すると対地電圧のバランスが崩れます。
残る健全相の対地電圧が上昇する現象もあり、地絡の状況によっては機器の絶縁に負担がかかります。
この不平衡の結果として現れる成分が零相電圧であり、OVGRはその大きさを計測します。
わずかな電圧変化を正常時のばらつきと混同しないよう、継電器には整定値と動作時間が設定されます。
零相電圧は、三相の対地電圧を加算して求める考え方で表せます。
V0はVa、Vb、Vcの合計を三で割った値として扱われ、実際の保護回路では三相分の電圧を合成して検出します。
接地形計器用変圧器の役割
OVGRへ零相電圧を入力する代表的な機器が、接地形計器用変圧器です。
GPTと呼ばれることもあり、三相の電圧情報から零相電圧を取り出すために使われます。
通常時には二次側の開放デルタ回路に現れる電圧は小さく、地絡時には有意な電圧が発生します。
この二次電圧を継電器の入力端子へ接続し、設定値を超えたときに動作させる構成です。
GPTのヒューズ溶断、配線の緩み、端子の腐食があると、実際の事故を正しく検出できないおそれがあります。
継電器本体だけでなくGPTと二次配線も保護機能の一部として点検する必要があります。
動作信号から遮断までの流れ
地絡が起きて零相電圧が上昇すると、GPTを経由してOVGRに検出信号が入力されます。
継電器は電圧の大きさと継続時間を判定し、動作条件を満たした場合に出力接点を切り替えます。
出力先は、警報表示灯、中央監視装置、遮断器のトリップコイル、上位保護装置などです。
遮断器を動作させる構成では、事故回路を系統から切り離し、地絡の継続を防ぎます。
一方、複数の保護装置が同時に動作すると、必要以上に広い範囲が停電する可能性もあります。
そのため、動作時間を段階的に設定する保護協調が重要になります。
地絡過電流継電器との使い分け
続いては地絡過電流継電器との使い分けを確認していきます。
検出する量の違い
地絡過電流継電器は、一般にGRまたはOCGRと呼ばれます。
こちらは零相変流器を通して、地絡による零相電流を検出する方式です。
OVGRが零相電圧を見るのに対し、GRは零相電流を見る点が最も大きな違いです。
地絡が発生しても、接地方式や事故地点の状態によっては電流が小さいことがあります。
反対に、電圧の検出が有利になる系統もあるため、設備条件を踏まえた選定が求められます。
| 比較項目 | 過電圧地絡継電器 | 地絡過電流継電器 |
|---|---|---|
| 主な略称 | OVGR | GRまたはOCGR |
| 検出対象 | 零相電圧 | 零相電流 |
| 主な入力機器 | GPT | ZCT |
| 有効になりやすい場面 | 地絡時の電圧変化を利用したい系統 | 地絡電流を直接監視したい回路 |
| 確認事項 | GPT回路と開放デルタ電圧 | ZCTの通線と残留電流 |
併用による検出性能
OVGRとGRは、どちらか一方だけが常に優れている関係ではありません。
地絡時に現れる電圧と電流の両方を監視することで、事故検出の確実性を高められる場合があります。
たとえば、地絡電流が小さくGRの判定が難しい場面でも、零相電圧の上昇が明瞭ならOVGRが有効に働く可能性があります。
一方で、OVGRだけでは事故区間の選択性が不足する設計もあります。
受電点、幹線、分岐回路のどこで事故が起きたかを見分けるには、複数の保護要素を組み合わせることが重要です。
保護装置の選定は単体性能ではなく系統全体の協調で判断します。
OVGRとGRを併用する場合でも、動作接点を単純に並列接続するだけでは十分とはいえません。
遮断範囲、時限、警報の優先順位、復旧手順まで含めて保護シーケンスを設計する必要があります。
接地方式による判断
保護方式を検討する際には、系統の接地方式を必ず確認します。
非接地方式では、一線地絡時の地絡電流が小さい一方、健全相の対地電圧が上昇しやすい特徴があります。
抵抗接地方式では、接地抵抗器によって地絡電流を一定の範囲へ制限し、保護継電器が検出しやすい状態をつくる考え方があります。
接地変圧器や接地抵抗器の仕様が変われば、地絡時の電圧と電流も変化します。
継電器の整定だけを先に決めるのではなく、単線結線図と接地系統図を確認してから保護計算を進めることが適切です。
整定値と保護協調の考え方
続いては整定値と保護協調の考え方を確認していきます。
動作電圧の整定
OVGRの動作電圧は、通常時に発生し得る不平衡電圧よりも高く、地絡時には確実に検出できる値に設定します。
整定値を低くしすぎると、電圧のばらつき、誘導、計器用変圧器の誤差などで不要動作するおそれがあります。
反対に高くしすぎると、抵抗値の大きい地絡や初期段階の異常を見逃す可能性が高まります。
必要な感度と不要動作への強さを両立させることが、整定の基本です。
メーカーが示す整定範囲だけを根拠にせず、系統計算と現地の測定結果も参照しましょう。
整定値を考える際は、通常時の零相電圧の最大値に余裕を加え、想定地絡時の最小零相電圧より低くなる範囲を探します。
この範囲が狭い場合は、計測精度、接地方式、保護方式そのものを再検討する必要があります。
動作時間の整定
過電圧地絡継電器には、瞬時動作形と限時動作形があります。
瞬時動作は事故を早く除去できる反面、下位側の保護装置が先に動作する余地を失うことがあります。
限時動作では、下位回路の継電器やヒューズが先に事故回路を切り離せるよう、時間差を持たせます。
これが保護協調の基本であり、事故の影響を最小の回路にとどめるための考え方です。
早く遮断することと広く停電させないことは両方とも重要であり、時間整定はそのバランスを取る作業です。
整定計算と試験記録
整定値を決めた後は、設定内容を台帳、図面、保護協調表に明記します。
継電器の前面表示だけを見て管理すると、更新工事や設定変更の際に情報の食い違いが生じやすくなります。
試験では、所定の電圧を入力して動作値、復帰値、動作時間、出力接点を確認します。
試験結果は前回記録と比較し、経年変化や設定誤りを早期に見つける材料にします。
デジタル継電器では設定ファイルの保存も重要であり、盤ごとに版数を管理すると復旧時に役立ちます。
整定値の変更は、継電器単体の作業ではありません。
上位側と下位側の保護協調、遮断器の定格、接地方式、設備管理者の運用方針を確認したうえで実施します。
点検試験とトラブル対応
続いては点検試験とトラブル対応を確認していきます。
定期点検で確認する項目
OVGRの点検では、外観、端子部、設定値、表示灯、試験端子、出力接点を確認します。
盤内にほこりや結露があると、絶縁低下や端子腐食につながることがあります。
端子ねじの緩みは入力信号の断続や誤動作の原因になるため、定期的な確認が必要です。
GPTの一次側と二次側、ヒューズ、開放デルタ回路、継電器までの配線も対象に含めます。
継電器が正常でも入力回路が故障すれば保護は成立しないため、系統として試験する視点が欠かせません。
継電器試験の手順
試験は、保安規程、作業手順書、メーカー資料に従い、必要な資格と安全措置のもとで実施します。
まず遮断器の誤トリップを防ぐため、試験中の出力回路を適切に管理します。
次に試験器から零相電圧に相当する入力を与え、設定値付近で動作するかを確認します。
設定値を超えた状態での動作時間、警報表示、接点出力、監視装置への信号伝送も確認対象です。
試験後には、試験用の短絡片や切替スイッチを必ず通常状態へ戻します。
復旧確認の漏れは保護機能の不作動につながるため、複数人による指差し確認が有効でしょう。
試験記録には、試験日、対象盤、継電器形式、整定電圧、整定時限、実測動作値、実測時間、確認者を残します。
異常が見つかった場合は、応急対応と恒久対策を分け、設備停止の必要性を判断します。
不要動作と不動作の原因
不要動作の原因には、整定値が低すぎること、GPT二次配線の誤り、ノイズの影響、他回路からの誘導などがあります。
不動作の原因としては、GPTヒューズの溶断、断線、端子接触不良、設定値の誤り、出力接点やトリップ回路の不具合が考えられます。
事故後に継電器だけをリセットして復電すると、根本原因を見落とすおそれがあります。
イベント記録、保護継電器の動作表示、遮断器の状態、絶縁抵抗測定、現地の損傷状況を組み合わせて調査しましょう。
特にデジタル形では、故障記録やオシログラフ機能が原因分析に役立つ場合があります。
不要動作と不動作は対策の方向が正反対になるため、事実確認なしに整定値だけを変更してはいけません。
過電圧地絡継電器の要点
過電圧地絡継電器は、地絡時に現れる零相電圧を検出する保護継電器であり、保護番号64として扱われることが多い装置です。
GPTから得た電圧信号をもとに警報または遮断指令を出し、感電、火災、機器損傷、事故波及の防止に役立ちます。
OVGRの性能を十分に引き出すには、継電器単体ではなく、GPT、二次配線、遮断器、接地方式を含めた設備全体の確認が必要です。
また、GRなどの地絡保護装置との違いを理解し、検出対象と保護協調を踏まえて整定値を決めることが重要になります。
定期試験では動作値、動作時間、出力接点、復旧状態を記録し、異常の兆候を早めに把握しましょう。
安全で安定した電力供給を維持するためにも、図面と試験記録を更新しながら、過電圧地絡継電器を適切に管理することが大切です。