圧力の単位として「パスカル(Pa)」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
理科や物理の授業で習う単位ですが、日常生活では「kg/cm2」や「気圧」など、さまざまな圧力の単位が使われています。
タイヤの空気圧を測るとき、天気予報で気圧の話を聞くとき、あるいは工業製品のスペックを見るときなど、圧力の単位換算が必要になる場面は意外と多いものです。
しかし、パスカルと他の単位との関係がわかりにくく、換算方法に迷ってしまうことも少なくありません。
本記事では、パスカル(Pa)を中心とした圧力の単位について、kg/cm2、N/cm2、N/m2など、よく使われる単位との換算方法をわかりやすく解説していきます。
具体的な計算例も豊富に用意しているので、この記事を読めば圧力の単位換算が得意になること間違いなし。
それでは、まずパスカルとは何かという基本から解説していきます。
パスカル(Pa)とは?圧力の基本単位を理解しよう
圧力の単位であるパスカルについて、まずは基本的な定義と意味を確認していきましょう。
パスカルを理解することで、他の単位との換算もスムーズに行えるようになります。
ここでは圧力とは何か、そしてパスカルがどのように定義されているのかを詳しく見ていきます。
圧力とパスカルの定義
圧力とは、単位面積あたりに働く力のことを指します。
例えば、床の上に物を置いたとき、その物の重さが床に加わる力となり、接触面積で割ったものが圧力です。
同じ重さの物でも、接触面積が小さいほど圧力は大きくなるでしょう。
圧力 = 力 ÷ 面積
パスカル(Pa)= N/m²(ニュートン毎平方メートル)
パスカルは国際単位系(SI単位系)における圧力の単位で、1パスカルは「1平方メートルの面積に1ニュートンの力が働くときの圧力」と定義されています。
フランスの科学者ブレーズ・パスカルにちなんで名付けられた単位です。
1Pa = 1N/m²という関係は、圧力の定義そのものを表しており、これが単位換算の基本となります。
日常生活では1Paは非常に小さな圧力なので、実際にはキロパスカル(kPa)やメガパスカル(MPa)などの単位がよく使われるでしょう。
パスカルとニュートンの関係
パスカルを理解するには、力の単位であるニュートン(N)についても知っておく必要があります。
ニュートンは力の大きさを表す単位で、1ニュートンは「質量1kgの物体に1m/s²の加速度を与える力」と定義されています。
地球上では、質量約100gの物体にかかる重力がおよそ1Nです。
【ニュートンと重量の関係】
1kgの物体にかかる重力 ≒ 9.8N(約10N)
100gの物体にかかる重力 ≒ 0.98N(約1N)
パスカルはこのニュートンを面積で割ったものなので、1Pa = 1N/m²となります。
つまり、1平方メートル(1m × 1mの広さ)に100gの物体の重さ分の力が加わっている状態が、およそ1Paということです。
この関係を理解しておくと、N/m²からPaへの換算、あるいはその逆の換算が簡単にできるようになるでしょう。
パスカルの派生単位(kPa、MPa、hPa)
実際の使用場面では、パスカルに接頭語をつけた単位がよく使われます。
| 単位 | 読み方 | パスカルとの関係 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| hPa | ヘクトパスカル | 1hPa = 100Pa | 気圧(天気予報) |
| kPa | キロパスカル | 1kPa = 1,000Pa | タイヤ空気圧、一般的な圧力 |
| MPa | メガパスカル | 1MPa = 1,000,000Pa | 高圧(材料強度など) |
| GPa | ギガパスカル | 1GPa = 1,000,000,000Pa | 超高圧(材料工学) |
天気予報で「気圧が1013hPa」と言われるのを聞いたことがあるでしょう。
これは101,300Pa(約101kPa)と同じ意味です。
自動車のタイヤ空気圧は通常200~250kPa程度、つまり200,000~250,000Paとなります。
工業製品の耐圧試験などでは、MPa単位で表記されることが多く、1MPaは約10気圧に相当する高い圧力です。
これらの派生単位を使うことで、桁数が多くなりすぎず、わかりやすく圧力を表現できるようになっています。
パスカルとkg/cm²の換算方法
続いては、日常生活でよく見かけるkg/cm²という単位とパスカルの換算について確認していきます。
特に古い機器や海外製品では、kg/cm²表記が使われることも多いため、換算方法を知っておくと便利です。
ここではkg/cm²の意味と、パスカルとの換算方法を詳しく見ていきましょう。
kg/cm²(重量キログラム毎平方センチメートル)とは
kg/cm²は、1平方センチメートルの面積に1kgの重量がかかる圧力を表す単位です。
正確には「kgf/cm²」(キログラム重毎平方センチメートル)と表記すべきですが、単にkg/cm²と書かれることも多いでしょう。
ここでの「kg」は質量ではなく重量(力)を表しており、1kgfは質量1kgの物体にかかる重力の大きさです。
地球上では、1kgf ≒ 9.8N(約10N)という関係があります。
1kg/cm² = 1kgf/cm²
= 約98,000Pa = 約98kPa ≒ 0.098MPa
タイヤの空気圧計や古い圧力計では、この単位が使われていることがあります。
例えば「2.0kg/cm²」と表示されている場合、これは約196kPa(約2気圧)に相当する圧力です。
工業分野では現在、SI単位系のパスカルが推奨されていますが、現場ではまだkg/cm²も広く使われているのが実情でしょう。
kg/cm²からPaへの換算計算
kg/cm²をパスカルに換算する際の具体的な計算方法を見ていきましょう。
【換算係数】
1kg/cm² = 98,066.5Pa ≒ 98,000Pa
または
1kg/cm² ≒ 98kPa ≒ 0.098MPa
実際の換算では、簡易的に「1kg/cm² ≒ 100kPa」として計算することもあります。
具体的な計算例を見てみましょう。
【例題1】2.5kg/cm²は何Paか?
【解答】
2.5 × 98,000 = 245,000Pa = 245kPa
または、簡易計算として
2.5 × 100 = 250kPa(概算)
もう一つ例を見てみましょう。
【例題2】0.5kg/cm²は何kPaか?
【解答】
0.5 × 98 = 49kPa
または、簡易計算として
0.5 × 100 = 50kPa(概算)
精密な計算が必要な場合は98.0665を使い、概算で良い場合は100を使うと覚えやすいでしょう。
工業現場では、98や100という係数を使って暗算することも多いです。
Paからkg/cm²への換算計算
逆に、パスカルからkg/cm²への換算も見てみましょう。
【換算係数】
1Pa = 0.0000102kg/cm² ≒ 1/98,000 kg/cm²
1kPa ≒ 0.0102kg/cm² ≒ 1/98 kg/cm²
1MPa ≒ 10.2kg/cm²
実際の計算例を見ていきます。
【例題3】200kPaは何kg/cm²か?
【解答】
200 ÷ 98 = 2.04kg/cm²
または、簡易計算として
200 ÷ 100 = 2.0kg/cm²(概算)
もう一つ例を示します。
【例題4】3MPaは何kg/cm²か?
【解答】
3 × 10.2 = 30.6kg/cm²
または、簡易計算として
3 × 10 = 30kg/cm²(概算)
パスカルからkg/cm²への換算では、「kPaを100で割る」「MPaを10倍する」という簡易的な方法を覚えておくと便利です。
ただし、これらは概算値なので、正確な計算が必要な場合は適切な係数を使用する必要があるでしょう。
パスカルとN/cm²、N/m²の換算方法
続いては、ニュートンを使った圧力単位との換算について確認していきます。
N/cm²やN/m²は、パスカルと密接に関連した単位です。
ここではこれらの単位の関係と換算方法を詳しく見ていきましょう。
N/m²とPaの関係(実は同じ単位)
実は、N/m²とPaは全く同じ単位です。
パスカルの定義そのものが「1平方メートルあたり1ニュートンの力」なので、1Pa = 1N/m²という等式が成り立ちます。
1Pa = 1N/m²(完全に等しい)
100Pa = 100N/m²
1kPa = 1,000N/m²
つまり、N/m²とPaの「換算」というよりは、単に表記の違いに過ぎません。
物理の教科書では「N/m²」と書かれていても、実用的な場面では「Pa」と表記されることが多いでしょう。
これは、パスカルという名称の方が簡潔で覚えやすいためです。
【例】圧力の表記の違い
5,000N/m² = 5,000Pa = 5kPa
250,000N/m² = 250,000Pa = 250kPa = 0.25MPa
試験問題などで「N/m²をPaに換算せよ」と言われた場合、実際には換算の必要がなく、数値はそのままでOKということになります。
ただし、単位記号だけは「N/m²」から「Pa」に書き換える必要があるでしょう。
N/cm²からPaへの換算計算
一方、N/cm²は面積の単位が平方センチメートルなので、N/m²やPaとは異なります。
1m² = 10,000cm²(100cm × 100cm)という関係から、換算係数を導き出せます。
1N/cm² = 10,000N/m² = 10,000Pa = 10kPa
つまり、N/cm²の値を10,000倍すればPaになるということです。
【例題5】0.5N/cm²は何Paか?
【解答】
0.5 × 10,000 = 5,000Pa = 5kPa
もう一つ例を見てみましょう。
【例題6】2.5N/cm²は何kPaか?
【解答】
2.5 × 10,000 = 25,000Pa = 25kPa
または
2.5 × 10 = 25kPa(直接kPaを求める)
N/cm²からkPaへの換算では、「10倍する」と覚えると簡単です。
N/cm²からMPaへの換算では、「100で割る」または「0.01倍する」という計算になるでしょう。
PaからN/cm²への換算計算
逆に、パスカルからN/cm²への換算を見ていきます。
【換算係数】
1Pa = 0.0001N/cm²
1kPa = 0.1N/cm²
1MPa = 100N/cm²
具体的な計算例です。
【例題7】50,000Paは何N/cm²か?
【解答】
50,000 ÷ 10,000 = 5N/cm²
または
50kPa × 0.1 = 5N/cm²
もう一つ例を示します。
【例題8】0.8MPaは何N/cm²か?
【解答】
0.8 × 100 = 80N/cm²
パスカルからN/cm²への換算では、「Paを10,000で割る」「kPaを10で割る」「MPaを100倍する」という計算になります。
これらの換算係数を覚えておくと、様々な単位間の変換がスムーズに行えるでしょう。
その他の圧力単位との換算(気圧、bar、psi)
続いては、日常生活や特定の分野でよく使われる、その他の圧力単位について確認していきます。
気圧、bar、psiなど、場面によって様々な単位が使われるため、これらとパスカルの関係も知っておくと便利です。
ここでは代表的な圧力単位との換算方法を詳しく見ていきましょう。
気圧(atm)とパスカルの換算
気圧(atmosphere)は、標準大気圧を基準とした圧力の単位です。
1気圧(1atm)は、海面上での平均的な大気圧を表しており、日常生活で最も馴染みのある圧力単位の一つでしょう。
1気圧(1atm)= 101,325Pa ≒ 101.3kPa ≒ 0.1013MPa
1気圧 = 1013hPa(天気予報での標準気圧)
天気予報で「高気圧」「低気圧」と言われますが、これは1013hPa(1気圧)を基準にした相対的な表現です。
実際の計算例を見てみましょう。
【例題9】3気圧は何kPaか?
【解答】
3 × 101.3 = 303.9kPa ≒ 304kPa
または、簡易計算として
3 × 100 = 300kPa(概算)
逆の換算も見てみます。
【例題10】500kPaは何気圧か?
【解答】
500 ÷ 101.3 = 4.94気圧 ≒ 5気圧
または、簡易計算として
500 ÷ 100 = 5気圧(概算)
実用的には、「1気圧 ≒ 100kPa」として概算することが多いです。
高圧ガスボンベなどは数十気圧~数百気圧の圧力がかかっており、例えば150気圧なら約15MPaに相当します。
bar(バール)とパスカルの換算
bar(バール)は、主にヨーロッパで使われる圧力の単位です。
1barは100,000Paと定義されており、ちょうど100kPaに等しくなります。
1bar = 100,000Pa = 100kPa = 0.1MPa
1bar ≒ 0.987気圧(約1気圧)
barは1気圧に非常に近い値なので、実用上は「1bar ≒ 1気圧」として扱われることも多いでしょう。
| 単位 | Pa換算 | kPa換算 | 気圧換算 |
|---|---|---|---|
| 1bar | 100,000Pa | 100kPa | ≒0.987atm |
| 1mbar | 100Pa | 0.1kPa | ≒0.000987atm |
| 1hPa | 100Pa | 0.1kPa | ≒0.000987atm |
興味深いことに、1mbar(ミリバール)= 1hPa(ヘクトパスカル)という関係があります。
このため、天気予報では以前使われていたmbar表記が、現在はhPa表記に変わっています。
【例題11】2.5barは何kPaか?
【解答】
2.5 × 100 = 250kPa
barからkPaへの換算は非常に簡単で、100倍するだけです。
逆にkPaからbarへは100で割ればよいでしょう。
psi(ポンド毎平方インチ)とパスカルの換算
psi(pounds per square inch)は、主にアメリカで使われる圧力の単位です。
1平方インチあたり1ポンドの力がかかる圧力を表しており、特に自動車関連でよく見かける単位でしょう。
1psi = 6,894.76Pa ≒ 6.895kPa ≒ 0.00689MPa
1psi ≒ 0.068気圧
実用的には「1psi ≒ 7kPa」として概算することが多いです。
【例題12】30psiは何kPaか?
【解答】
30 × 6.895 = 206.85kPa ≒ 207kPa
または、簡易計算として
30 × 7 = 210kPa(概算)
自動車のタイヤ空気圧は、アメリカ仕様だと「32psi」などと表記されることがあります。
これを換算すると、32 × 7 ≒ 224kPa(約2.2kg/cm²)となるでしょう。
逆の換算も見てみます。
【例題13】200kPaは何psiか?
【解答】
200 ÷ 6.895 = 29.0psi
または、簡易計算として
200 ÷ 7 = 28.6psi(概算)
psiは日本ではあまり馴染みがありませんが、輸入車や海外製品のマニュアルではよく使われています。
換算係数を覚えておくと、海外の製品仕様を理解する際に役立つでしょう。
まとめ
パスカル(Pa)を中心とした圧力の単位換算について、詳しく解説してきました。
パスカルは1N/m²と定義される国際標準の圧力単位で、これを基準に様々な単位との換算が可能です。
日常生活でよく使われるkg/cm²との換算では、1kg/cm² ≒ 98kPa(概算では100kPa)という関係を覚えておくと便利でしょう。
N/m²はパスカルと全く同じ単位ですが、N/cm²は10,000倍の関係にあるため、換算の際は注意が必要です。
気圧、bar、psiなど、場面によって様々な圧力単位が使われますが、それぞれパスカルとの換算係数を知っておくことで、柔軟に対応できます。
実用的には、厳密な計算よりも概算値を使うことが多く、「1気圧≒100kPa」「1kg/cm²≒100kPa」「1psi≒7kPa」などの簡易的な換算を覚えておくと現場で役立つでしょう。
工業製品のスペック確認、タイヤの空気圧管理、天気予報の理解など、圧力の単位換算は様々な場面で必要となる知識です。
本記事で解説した換算方法と係数を活用して、自信を持って圧力の単位を扱えるようになっていただければ幸いです。
圧力の単位は多様ですが、基本的な関係性を理解すれば、どの単位間でもスムーズに換算できるようになります。