システムや設備の信頼性を評価するうえで、並列稼働率は非常に重要な指標です。
複数の機器を並列に配置することで、1台が故障しても全体が止まらない冗長性を設計できます。
「並列にすると稼働率はどう変わるの?」「公式を使った計算方法がわからない」という方も多いでしょう。
この記事では、並列稼働率の定義・計算公式・直列稼働率との違い・可用性への応用まで詳しく解説していきます。
並列稼働率の基本と定義
それではまず、並列稼働率の基本的な定義と考え方を解説していきます。
稼働率とは
稼働率(アベイラビリティ)とは、機器やシステムが要求された時間に正常に機能している確率のことです。
稼働率A=MTBF/(MTBF+MTTR)という式で定義されます。
MTBFは平均故障間隔(Mean Time Between Failures)、MTTRは平均修復時間(Mean Time To Repair)を示します。
稼働率が0.99(99%)なら、100時間のうち99時間は正常に動作していることを意味します。
並列稼働率の基本公式
複数の機器を並列に配置した場合の稼働率は、次の公式で求めます。
並列稼働率の公式(2台並列の場合)
A並列=1-(1-A₁)×(1-A₂)
A₁・A₂は各機器の稼働率
n台すべて同じ稼働率Aの場合:A並列=1-(1-A)ⁿ
「全部が故障する確率」を1から引いたものが並列稼働率であるというのが、この公式の本質です。
並列では少なくとも1台が動いていればシステムが機能するため、すべて故障する確率の余事象を取ることで求められます。
直列稼働率との比較
直列接続(すべての機器が正常でないとシステムが動かない場合)の稼働率は次のとおりです。
直列稼働率:A直列=A₁×A₂×…×Aₙ
例:A₁=A₂=0.9の場合
直列:0.9×0.9=0.81(稼働率が下がる)
並列:1-(1-0.9)×(1-0.9)=1-0.01=0.99(稼働率が上がる)
直列接続では機器が増えるほど稼働率が下がる一方、並列接続では機器が増えるほど稼働率が向上します。
並列稼働率の計算方法と具体例
続いては、具体的な数値を使った並列稼働率の計算方法を確認していきます。
2台並列の計算例
例1:稼働率0.95の機器を2台並列配置した場合
A=1-(1-0.95)²=1-(0.05)²=1-0.0025=0.9975
→ 99.75%の稼働率が実現できる
例2:稼働率0.80の機器を3台並列配置した場合
A=1-(1-0.80)³=1-(0.20)³=1-0.008=0.992
→ 99.2%の稼働率が実現できる
このように、個々の機器の稼働率が低くても、並列台数を増やすことで高い稼働率を実現できます。
ただし台数を増やすほどコスト・スペース・管理負荷が増えるため、要求稼働率と費用のバランスが重要です。
故障確率を使った別の考え方
故障確率(不稼働率)F=1-Aを使うと、並列稼働率の公式はより直感的に理解できます。
並列システムの故障確率F並列=F₁×F₂(すべての機器が同時に故障する確率)となります。
並列では「全機が同時故障しない限りシステムは動く」という考え方が基本であり、個々の故障確率を掛け合わせることで全体の故障確率を求めます。
稼働率の目標値設定
| 稼働率 | 年間停止時間の目安 | 典型的な要求場面 |
|---|---|---|
| 99% | 約87.6時間 | 一般的な業務システム |
| 99.9%(スリーナイン) | 約8.76時間 | 重要な業務サーバー |
| 99.99%(フォーナイン) | 約52.6分 | 金融・通信システム |
| 99.999%(ファイブナイン) | 約5.26分 | 電力・医療・航空管制 |
高い稼働率を要求されるシステムほど並列冗長構成が重要になり、設計コストも大きくなります。
可用性設計への応用
続いては、並列稼働率の考え方をシステムの可用性設計に応用する方法を確認していきます。
冗長構成の設計パターン
信頼性設計では並列冗長のパターンとしてN+1冗長・2N冗長・2N+1冗長などが使われます。
N+1冗長は必要台数Nに対して予備1台を加える構成で、コストと信頼性のバランスが良いため最もよく採用されます。
2N冗長は必要台数の2倍を用意する完全冗長構成で、データセンターの電源系統など最高レベルの可用性を要求される場面で使われます。
ソフトウェア・ITシステムへの適用
ITシステムでも並列稼働率の概念は広く使われています。
複数のサーバーをロードバランサーで並列運転するクラスター構成は、並列稼働率の原理をそのまま応用したものです。
クラウドサービスでの「マルチAZ(アベイラビリティゾーン)構成」も、地理的に分散した並列冗長構成の典型例といえます。
稼働率計算の落とし穴
並列稼働率の計算でよくある誤解と注意点
①共通原因故障(電源喪失・地震など)は並列でも同時停止するため考慮が必要
②並列機器の保守・点検中は冗長性が一時的に失われる
③稼働率の計算は独立故障を前提としており、機器間に依存性がある場合は補正が必要
これらの注意点を踏まえた上で並列稼働率を設計に活用することで、より現実的で安全な信頼性評価が可能になります。
まとめ
並列稼働率はA並列=1-(1-A)ⁿの公式で求められ、並列台数が増えるほど高い稼働率が実現できます。
直列では機器が増えるほど稼働率が下がるのと正反対の性質を持っており、冗長設計の基本となる重要な概念です。
フォーナイン・ファイブナインといった高い可用性が要求されるシステムでは、並列冗長構成と共通原因故障への対策を組み合わせた総合的な信頼性設計が欠かせません。