三角関数の微分積分において、tanxはsinxやcosxとは異なる特徴を持つ重要な関数です。微分すると1/cos²x(またはsec²x)になり、積分すると対数関数が現れるという興味深い性質があります。
これらの公式を理解することは、より高度な数学の理解につながるでしょう。
この記事では、tanxの微分公式と積分公式について、その導出過程から証明、実際の計算方法まで詳しく解説していきます。sec²xとの関係や対数を含む積分公式、定積分と不定積分の計算方法も理解を深めていきましょう。
tanxの微分公式はd/dx(tanx)=1/cos²x
それではまず、tanxの微分公式について解説していきます。
基本的な微分公式
tanxの微分公式はd/dx(tanx) = 1/cos²x
です。この公式はsec²xとも表記されます。
tanxはsinx/cosxと定義される関数であり、その微分は商の微分公式を用いて導出できます。結果として得られる1/cos²xは、三角関数の中でも特徴的な形でしょう。
【tanxの微分公式】
d/dx(tanx) = 1/cos²x
または
d/dx(tanx) = sec²x
(sec²x = 1/cos²x)
sec²xという表記は、secx = 1/cosxと定義される正割関数を使ったものです。どちらの表記も正しく、文脈に応じて使い分けることができます。
商の微分公式を用いた導出
tanx = sinx/cosxという定義から、商の微分公式を使って導出してみましょう。
商の微分公式は、d/dx(f/g) = (f’g – fg’)/g²です。これをtanx = sinx/cosxに適用します。
【商の微分公式による導出】
d/dx(tanx) = d/dx(sinx/cosx)
= (cosx·cosx – sinx·(-sinx))/cos²x
= (cos²x + sin²x)/cos²x
= 1/cos²x
ここで、三角関数の基本公式sin²x + cos²x = 1を使いました。この恒等式により、分子が1に簡略化されるのです。
微分の定義による証明
微分の定義からも、この公式を証明できます。
d/dx(tanx) = limₕ→₀ [tan(x+h) – tanx]/hという極限を計算します。
tanの加法定理tan(x+h) = (tanx + tanh)/(1 – tanx·tanh)を用いると、計算が進められます。ただし、この方法は商の微分公式を使う方法よりも煩雑になるでしょう。
どちらの方法でも、最終的にd/dx(tanx) = 1/cos²x = sec²xという同じ結果が得られます。
| 導出方法 | 使用する公式・定理 | 難易度 |
|---|---|---|
| 商の微分公式 | (f/g)’ = (f’g-fg’)/g²、sin²x+cos²x=1 | 標準的 |
| 微分の定義 | tanの加法定理、極限 | やや難 |
| 結果 | 1/cos²x = sec²x | – |
tanxの積分公式は∫tanx dx = -log|cosx| + C
続いては、tanxの積分公式について確認していきます。
不定積分の基本公式
tanxの不定積分は∫tanx dx = -log|cosx| + C
です。対数関数が現れる特徴的な公式でしょう。
この公式は、∫tanx dx = log|secx| + Cとも表記できます。log|secx| = log|1/cosx| = -log|cosx|という対数の性質を使った等価な形です。
【tanxの不定積分公式】
∫tanx dx = -log|cosx| + C
または
∫tanx dx = log|secx| + C
(Cは積分定数)
sinxやcosxの積分では三角関数のままでしたが、tanxの積分では対数関数が現れることが大きな特徴です。
置換積分による導出
tanx = sinx/cosxという形を利用して、置換積分で導出してみましょう。
∫tanx dx = ∫(sinx/cosx)dxと書き換えます。ここで、u = cosxと置換すると、du = -sinx dxとなります。
【置換積分による導出】
∫tanx dx = ∫(sinx/cosx)dx
u = cosxとおくと、du = -sinx dx
∫(sinx/cosx)dx = ∫(-1/u)du
= -log|u| + C
= -log|cosx| + C
この導出方法は、tanxの定義と置換積分を組み合わせた標準的な手法です。
検算による確認
積分公式が正しいことを、微分して確認してみましょう。
d/dx(-log|cosx|) = -1/cosx · d/dx(cosx) = -1/cosx · (-sinx) = sinx/cosx = tanx
確かに元の関数tanxに戻るため、積分公式が正しいことがわかります。対数の微分公式d/dx(log|f(x)|) = f'(x)/f(x)を使っているのです。
| 積分公式 | 別表記 | 検算 |
|---|---|---|
| ∫tanx dx = -log|cosx| + C | log|secx| + C | d/dx(-log|cosx|) = tanx |
| ∫cotx dx = log|sinx| + C | -log|cscx| + C | d/dx(log|sinx|) = cotx |
tanxの定積分の計算方法
続いては、tanxの定積分の計算方法について確認していきます。
定積分の基本的な計算
tanxの定積分は、∫ₐᵇtanx dx = [-log|cosx|]ₐᵇ = -log|cosb| + log|cosa|という形で計算されます。
対数の性質を使うと、-log|cosb| + log|cosa| = log|cosa/cosb|とまとめることもできるでしょう。
【定積分の計算手順】
1. 不定積分を求める:∫tanx dx = -log|cosx|
2. 上端での値を計算:-log|cosb|
3. 下端での値を計算:-log|cosa|
4. 差を求める:-log|cosb| – (-log|cosa|) = log|cosa/cosb|
具体的な計算例
いくつかの定積分を計算してみましょう。
例1:∫₀^(π/4) tanx dx = [-log|cosx|]₀^(π/4) = -log|cos(π/4)| – (-log|cos0|) = -log(1/√2) – (-log1) = -log(1/√2) = log√2 = (1/2)log2
例2:∫₀^(π/3) tanx dx = [-log|cosx|]₀^(π/3) = -log|cos(π/3)| + log|cos0| = -log(1/2) + log1 = -log(1/2) = log2
これらの計算では、対数の性質を活用することが重要です。log(1/a) = -logaという性質をよく使います。
定積分における注意点
tanxの定積分では、積分区間に注意が必要です。
tanxはx = π/2 + nπ(nは整数)で不連続になります。これらの点ではcosxがゼロになるため、tanxが定義されないのです。
tanxの定積分を計算する際は、積分区間に不連続点(x = π/2 + nπ)が含まれていないか確認しましょう。不連続点を含む場合、その区間での定積分は存在しません。
例えば、∫₀^πtanx dxは、区間内にx = π/2という不連続点を含むため、通常の定積分としては計算できません。
| 積分区間 | 定積分の値 | 備考 |
|---|---|---|
| ∫₀^(π/4) tanx dx | (1/2)log2 | 計算可能 |
| ∫₀^(π/3) tanx dx | log2 | 計算可能 |
| ∫₀^π tanx dx | 定義されない | x=π/2で不連続 |
| ∫_(π/6)^(π/4) tanx dx | log(√3/√2) | 計算可能 |
tanxの微分積分の応用と計算テクニック
続いては、tanxの微分積分を用いた応用計算について確認していきます。
合成関数の微分
tanxを含む合成関数の微分では、連鎖律を使用します。
一般に、d/dx[tan(f(x))] = sec²(f(x))·f'(x) =
·f'(x)という公式が成り立ちます。
【合成関数の微分例】
d/dx(tan2x) = sec²(2x) · 2 = 2/cos²(2x)
d/dx(tan(x²)) = sec²(x²) · 2x = 2x/cos²(x²)
d/dx(tan³x) = 3tan²x · sec²x
最後の例は、(tanx)³と考えて、外側の3乗を微分してから内側のtanxを微分しています。
置換積分の技法
tanxの積分では、適切な置換が重要です。
例えば、∫tan²x dxを計算する場合、三角関数の恒等式を使います。
【tan²xの積分】
tan²x = sec²x – 1という恒等式を使用
∫tan²x dx = ∫(sec²x – 1)dx
= ∫sec²x dx – ∫1 dx
= tanx – x + C
sec²xの積分がtanxになることを利用しています。この恒等式は、1 + tan²x = sec²xという基本公式から導かれるものです。
部分積分との組み合わせ
tanxと他の関数の積を積分する際には、工夫が必要です。
∫x·tanx dxのような積分は、直接的な部分積分だけでは解けません。tanxの積分が対数関数になるため、複雑な計算が必要になるのです。
このような場合、級数展開や特殊関数を用いた表現が必要になることがあります。基本的なtanxの積分公式だけでは対応できない、より高度な問題でしょう。
sec²xとの関係
sec²xはtanxの微分であるという関係を活用できます。
∫sec²x dx = tanx + Cという公式は、d/dx(tanx) = sec²xの逆演算として理解できます。
【sec²xに関する公式】
微分:d/dx(tanx) = sec²x
積分:∫sec²x dx = tanx + C
恒等式:sec²x = 1 + tan²x
これらの関係式を組み合わせることで、様々なtan系の積分を計算できるようになります。
| 計算技法 | 使用場面 | 例 |
|---|---|---|
| 連鎖律 | 合成関数の微分 | d/dx(tan2x) = 2sec²(2x) |
| 恒等式の利用 | tan²xなどの積分 | ∫tan²x dx = tanx – x + C |
| 置換積分 | tanxの定義利用 | ∫tanx dx = -log|cosx| + C |
| sec²xの積分 | 微分の逆演算 | ∫sec²x dx = tanx + C |
まとめ
tanxの微分と積分について、公式の導出から計算方法まで詳しく解説してきました。
tanxの微分公式はd/dx(tanx) = 1/cos²x = sec²xであり、商の微分公式を用いて導出できます。一方、積分公式は∫tanx dx = -log|cosx| + Cであり、対数関数が現れる特徴的な形になるでしょう。
定積分では、不連続点に注意する必要があります。x = π/2 + nπで不連続になるため、これらの点を含む区間では定積分が定義されません。
合成関数の微分では連鎖律を、tan²xなどの積分では恒等式sec²x = 1 + tan²xを活用することで、より複雑な問題にも対応できます。tanxの微分積分は、sinxやcosxとは異なる特徴を持つため、それぞれの性質をしっかりと理解することが重要です。