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透磁率とは?単位や求め方!真空では?鉄や空気などの一覧も

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電磁気学を学ぶ上で避けて通れない概念の一つが透磁率です。磁石やコイル、変圧器など、磁気に関する現象を理解するためには、透磁率の知識が欠かせません。

しかし、透磁率とは何を表しているのか、どんな単位で表されるのか、どうやって計算するのか、わかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

実は、透磁率は物質が磁場をどれだけ通しやすいかを表す物理量であり、材料の磁気的性質を知る上で非常に重要な指標です。

鉄のような強磁性体は透磁率が非常に大きく、空気や真空はほぼ同じ透磁率を持ちます。

この記事では、透磁率の基本的な定義から、単位や記号、真空の透磁率、計算方法、そして鉄や空気をはじめとする様々な物質の透磁率一覧まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。電気工学や物理学を学ぶ方はぜひ最後までお読みください。

透磁率とは?基本的な意味と定義

それではまず、透磁率の基本的な意味と定義について解説していきます。

透磁率の定義

透磁率(とうじりつ、英語:magnetic permeability)とは、物質が磁場をどれだけ通しやすいか、または磁化されやすいかを表す物理量です。

記号ではμ(ミュー)で表されます。

透磁率が大きい物質ほど、磁場の影響を受けやすく、磁力線が通りやすい性質を持ちます。逆に透磁率が小さい物質は、磁場の影響を受けにくいということになります。

例えば、鉄は透磁率が非常に大きいため、磁石に強く引きつけられます。一方、銅やアルミニウムは透磁率が小さく、磁石にはほとんど引きつけられません。

透磁率は、電磁石の設計、変圧器の製作、磁気シールドの設計など、様々な電気・電子機器の開発に欠かせない物理量です。

磁束密度と磁場の関係

透磁率を理解するには、磁束密度と磁場の関係を知る必要があります。

磁場Hは、電流や磁石によって作られる磁気的な場です。単位はA/m(アンペア毎メートル)で表されます。

磁束密度Bは、単位面積あたりを貫く磁力線の密度です。単位はT(テスラ)またはWb/m²(ウェーバー毎平方メートル)で表されます。

これらの関係は、次の式で表されます。

B = μH

この式が示すのは、「磁束密度Bは、透磁率μと磁場Hの積に等しい」ということです。

つまり、透磁率μは、

μ = B/H

という関係式で定義されます。同じ磁場Hを加えても、物質によって生じる磁束密度Bが異なるのは、透磁率μが異なるためです。

透磁率が表す物質の性質

透磁率の値によって、物質は3つのグループに分類されます。

強磁性体:透磁率が非常に大きい物質。鉄、ニッケル、コバルトなど。磁石に強く引きつけられ、自身も磁石になることができます。透磁率は数百から数十万倍にもなります。

常磁性体:透磁率が真空よりわずかに大きい物質。アルミニウム、プラチナ、酸素など。磁場中でわずかに磁化されますが、その効果は非常に小さいです。

反磁性体:透磁率が真空よりわずかに小さい物質。銅、金、銀、水、多くの有機化合物など。磁場を反発する性質があります。

物質の磁気的分類
・強磁性体:μが非常に大きい(鉄など)
・常磁性体:μが真空よりわずかに大きい
・反磁性体:μが真空よりわずかに小さい

日常生活で「磁石につく」と感じるのは、強磁性体だけです。

透磁率の単位と記号

続いては、透磁率を表す単位と記号について確認していきます。

透磁率の単位(H/m)

透磁率の単位は、SI単位系ではH/m(ヘンリー毎メートル)です。

これは、μ = B/Hという定義式から導かれます。

磁束密度Bの単位:T(テスラ)= Wb/m²(ウェーバー毎平方メートル)

磁場Hの単位:A/m(アンペア毎メートル)

したがって、

μ = B/H = (Wb/m²)/(A/m) = Wb/(A·m)ここで、Wb/A = H(ヘンリー、インダクタンスの単位)なので、

μ = H/m

ヘンリー(H)はインダクタンス(自己誘導係数)の単位で、電磁気学では重要な単位です。

1ヘンリーは、1アンペアの電流が流れるコイルに1ウェーバーの磁束が生じるときのインダクタンスです。

真空の透磁率μ₀

真空(何もない空間)での透磁率は、真空の透磁率または磁気定数と呼ばれ、記号μ₀(ミューゼロ、ミューノート)で表されます。

真空の透磁率の値は、

μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/m≈ 1.257 × 10⁻⁶ H/m

この値は定数であり、どこでも同じ値を持ちます。

2019年5月のSI単位の再定義以前は、μ₀は正確に4π × 10⁻⁷ H/mと定義されていました。再定義後も実用上はこの値を使います。

真空の透磁率は、光速度cや真空の誘電率ε₀と次の関係があります。

c² = 1/(μ₀ε₀)

この関係式は、電磁波(光)の速度が透磁率と誘電率によって決まることを示しています。

比透磁率とは

実際の計算では、比透磁率μᵣ(ミューアール)がよく使われます。

比透磁率は、真空の透磁率に対する物質の透磁率の比で、次のように定義されます。

μᵣ = μ/μ₀または、

μ = μᵣμ₀

比透磁率は無次元数(単位のない数)です。真空の比透磁率はμᵣ = 1です。

比透磁率を使うと、物質の磁気的性質を直感的に理解しやすくなります。

・μᵣ ≈ 1:真空とほぼ同じ(空気、銅、水など)

・μᵣ > 1:真空より磁場を通しやすい(常磁性体、強磁性体)

・μᵣ < 1:真空より磁場を通しにくい(反磁性体)

鉄の比透磁率はμᵣ = 数百〜数万と非常に大きく、これが鉄が磁石に強く引きつけられる理由です。

記号 名称 単位
μ 透磁率 H/m
μ₀ 真空の透磁率 4π × 10⁻⁷ H/m
μᵣ 比透磁率 無次元(単位なし)

これらの関係を理解することが、電磁気学の基礎となります。

透磁率の求め方と計算方法

続いては、透磁率を実際に求める方法を見ていきます。

基本的な計算式

透磁率μの基本的な求め方は、定義式を使います。

μ = B/H

磁束密度Bと磁場Hを測定できれば、透磁率を計算できます。

計算例1:磁場H = 1000 A/mを加えたとき、磁束密度B = 1.2 Tが生じた物質の透磁率は?μ = B/H = 1.2 T / 1000 A/m

= 1.2 × 10⁻³ H/m

= 0.0012 H/m

この物質の透磁率は0.0012 H/mです。

また、コイルのインダクタンスLから透磁率を求めることもできます。ソレノイドコイル(円筒形のコイル)の場合、

L = μ₀μᵣ n² A / l

ここで、nは単位長さあたりの巻数、Aはコイルの断面積、lはコイルの長さです。この式から、μᵣを求めることができます。

比透磁率の求め方

比透磁率μᵣは、透磁率μがわかれば簡単に求められます。

μᵣ = μ/μ₀

計算例2:透磁率μ = 0.0012 H/mの物質の比透磁率は?μᵣ = μ/μ₀

= 0.0012 / (4π × 10⁻⁷)

= 0.0012 / (1.257 × 10⁻⁶)

≈ 955

比透磁率は約955です。これはかなり大きな値で、強磁性体であることがわかります。

逆に、比透磁率から透磁率を求めることもできます。

μ = μᵣμ₀

計算例3:比透磁率μᵣ = 5000の鉄の透磁率は?μ = μᵣμ₀

= 5000 × 4π × 10⁻⁷

= 5000 × 1.257 × 10⁻⁶

≈ 6.28 × 10⁻³ H/m

透磁率は約6.28 × 10⁻³ H/mです。

具体的な計算例

実際的な問題での計算例を見ていきましょう。

計算例4:ソレノイドコイルでの透磁率長さl = 0.2 m、断面積A = 1 × 10⁻⁴ m²のソレノイドコイルに、鉄心(比透磁率μᵣ = 4000)を入れたとき、1 mあたりの巻数がn = 1000回の場合、インダクタンスLは?

L = μ₀μᵣ n² A / l

= (4π × 10⁻⁷) × 4000 × (1000)² × (1 × 10⁻⁴) / 0.2

= (1.257 × 10⁻⁶) × 4000 × 1,000,000 × 0.0001 / 0.2

= 5.03 × 10⁻³ / 0.2

≈ 0.025 H

= 25 mH

インダクタンスは約25ミリヘンリーです。

計算例5:磁場と磁束密度の関係空気中で磁場H = 500 A/mのとき、磁束密度Bは?(空気の比透磁率をμᵣ ≈ 1とする)

B = μH = μ₀μᵣH

= (4π × 10⁻⁷) × 1 × 500

= (1.257 × 10⁻⁶) × 500

≈ 6.28 × 10⁻⁴ T

= 0.628 mT

磁束密度は約0.628ミリテスラです。

計算のポイント
・μ = B/H(定義式)
・μᵣ = μ/μ₀(比透磁率)
・μ = μᵣμ₀(透磁率の計算)
・μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/m(覚えておく)

これらの式を使いこなせれば、様々な電磁気の問題を解けます

様々な物質の透磁率一覧

続いては、代表的な物質の透磁率を確認していきます。

強磁性体の透磁率(鉄・ニッケル・コバルトなど)

強磁性体は、透磁率が非常に大きい物質です。

ただし、透磁率は磁場の強さによって変化します。以下は代表的な値です。

純鉄

・比透磁率μᵣ = 4,000〜200,000

・条件によって大きく変化

・平均的にはμᵣ ≈ 5,000程度

軟鉄(ソフト鉄)

・比透磁率μᵣ = 2,000〜5,000

・変圧器の鉄心などに使用

珪素鋼板

・比透磁率μᵣ = 7,000〜10,000

・電力用変圧器に広く使用

パーマロイ(ニッケル-鉄合金)

・比透磁率μᵣ = 10,000〜100,000

・最も高い透磁率を持つ合金の一つ

・磁気シールドに使用

ニッケル

・比透磁率μᵣ = 100〜600

コバルト

・比透磁率μᵣ = 60〜250

強磁性体の透磁率は、磁場の強さ、温度、材料の純度、加工履歴などによって大きく変わります。

常磁性体と反磁性体の透磁率

常磁性体と反磁性体の透磁率は、真空とほぼ同じです。

常磁性体(μᵣ > 1、わずかに磁化):

・アルミニウム:μᵣ ≈ 1.00002

・プラチナ:μᵣ ≈ 1.0003

・マンガン:μᵣ ≈ 1.001

・酸素(気体):μᵣ ≈ 1.000002

反磁性体(μᵣ < 1、磁場を反発):

・銅:μᵣ ≈ 0.99999

・金:μᵣ ≈ 0.99996

・銀:μᵣ ≈ 0.99998

・水:μᵣ ≈ 0.999991

・ダイヤモンド:μᵣ ≈ 0.99998

これらの値は1に非常に近く、実用上はμᵣ ≈ 1として扱われます

真空・空気・水などの透磁率

日常的によく扱う物質の透磁率をまとめます。

真空

・比透磁率μᵣ = 1(定義)

・透磁率μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/m

空気

・比透磁率μᵣ ≈ 1.00000037

・実用上はμᵣ = 1とする

・透磁率μ ≈ μ₀

・比透磁率μᵣ ≈ 0.999991

・反磁性体だがほぼ1

木材

・比透磁率μᵣ ≈ 1

ガラス

・比透磁率μᵣ ≈ 1

プラスチック

・比透磁率μᵣ ≈ 1

物質 比透磁率μᵣ 分類
真空 1(定義) 基準
空気 ≈ 1 常磁性体
≈ 1 反磁性体
≈ 1 反磁性体
アルミニウム ≈ 1 常磁性体
ニッケル 100〜600 強磁性体
軟鉄 2,000〜5,000 強磁性体
珪素鋼板 7,000〜10,000 強磁性体
パーマロイ 10,000〜100,000 強磁性体

空気と真空の透磁率がほぼ等しいため、空気中での計算は真空として扱えることが多いです。

まとめ 透磁率の計算は?真空では?鉄や空気などの一覧も

透磁率について、基本的な定義から単位、計算方法、様々な物質の透磁率まで詳しく解説してきました。

透磁率μは、物質が磁場をどれだけ通しやすいかを表す物理量で、B = μHという関係式で定義されます。単位はH/m(ヘンリー毎メートル)です。

真空の透磁率μ₀ = 4π × 10⁻⁷ H/mは基準となる重要な定数です。

実際の計算では、比透磁率μᵣ = μ/μ₀がよく使われ、これは無次元数で物質の磁気的性質を表します。

透磁率の求め方は、μ = B/Hという定義式から計算するか、μ = μᵣμ₀という関係式を使います。比透磁率がわかれば、透磁率を簡単に求められます。

物質の透磁率は、強磁性体(鉄、ニッケルなど)が非常に大きく、μᵣは数百から数万にもなります。一方、空気、水、銅、アルミニウムなどの透磁率は真空とほぼ同じでμᵣ ≈ 1です。

電磁石、変圧器、モーター、磁気シールドなど、多くの電気機器の設計には透磁率の知識が不可欠です。

この記事で学んだ知識を使って、電磁気学の理解を深めてください