断面二次モーメントを学ぶとき、長方形や円形の公式はよく目にするものの、「三角形の場合はどうなるの?」と疑問に思った経験はないでしょうか。三角形断面の断面二次モーメントは、材料力学・構造力学の授業や試験でも頻繁に登場する重要なテーマです。
本記事では、三角形の断面二次モーメントの公式・単位・導出・証明をわかりやすく丁寧に解説していきます。重心軸まわりと底辺軸まわりの2つの公式の違い、積分による導出プロセス、そして計算例まで網羅していますので、学生から実務者まで役立てていただける内容です。ぜひ最後までご覧ください。
三角形の断面二次モーメントの公式と単位 結論からわかりやすく解説

それではまず、三角形の断面二次モーメントの公式と単位について、結論から解説していきます。
「三角形の断面二次モーメントの公式や単位や導出・証明をわかりやすく解説!」というテーマのとおり、まず最初に結論となる公式をしっかりと押さえておきましょう。三角形断面の断面二次モーメントには、「底辺軸まわり」と「重心軸まわり」という2種類の公式があります。この2つを混同しないことが最も重要なポイントです。
底辺軸まわり(底辺を通る水平軸):I = bh³ ÷ 12
重心軸まわり(重心を通る水平軸):I₀ = bh³ ÷ 36
b = 底辺の長さ、h = 三角形の高さ
単位はcm⁴・mm⁴・m⁴(長さの4乗)
2つの公式の分母の違いに注目してください。底辺軸まわりが「÷12」、重心軸まわりが「÷36」です。重心軸まわりの公式は底辺軸まわりの公式のちょうど3分の1の値になります。この関係は後ほど平行軸の定理で確認できます。
三角形の断面二次モーメントの単位
断面二次モーメントの単位は「長さの4乗」です。これは断面二次モーメントの定義式が「微小面積dA × 距離yの2乗の積分」であることから導かれます。面積の単位(長さ²)に距離の2乗(長さ²)を掛けることで、長さの4乗になるわけです。
| 単位 | 読み方 | 主に使われる場面 |
|---|---|---|
| m⁴ | メートルの4乗 | 建築・土木・大型構造物の設計 |
| cm⁴ | センチメートルの4乗 | 一般的な構造計算・学校の演習問題 |
| mm⁴ | ミリメートルの4乗 | 機械部品・精密部品の設計 |
学校の演習問題ではcm⁴が最もよく使われます。単位の換算も頭に入れておくと便利です。
1 m⁴ = 10⁸ cm⁴ = 10¹² mm⁴
1 cm⁴ = 10⁴ mm⁴
(長さの換算比の4乗になることに注意!)
たとえば1cm = 10mmですから、1cm⁴ = 10⁴mm⁴ = 10,000mm⁴となります。単位の換算ミスは計算結果に大きな誤差を生むため、計算前に単位を統一する習慣をつけておきましょう。
三角形の重心位置と断面二次モーメントの関係
三角形の断面二次モーメントを正しく理解するうえで、三角形の重心位置を把握しておくことが非常に重要です。
三角形の重心は底辺から高さの3分の1の位置にあります。これは三角形の幾何学的な性質で、数学的にも証明されている事実です。
底辺からの距離 = h ÷ 3
頂点からの距離 = 2h ÷ 3
h = 三角形の高さ
重心軸まわりの断面二次モーメントと底辺軸まわりの断面二次モーメントの関係は、後述する平行軸の定理によって説明できます。重心が底辺から「h÷3」の位置にあることが、「÷12」と「÷36」という2つの公式の違いを生み出しているわけです。
三角形断面が登場する実際の場面
三角形断面の断面二次モーメントは、どのような場面で実際に使われるのでしょうか。
構造設計の実務では純粋な三角形断面の部材はあまり登場しませんが、材料力学・構造力学の学習においては非常に重要な基礎問題として頻出します。また、複合断面(台形断面など)の計算において三角形に分割して計算する際にも、三角形の断面二次モーメントの公式が活躍します。
さらに、土木・地盤工学の分野では三角形に近い断面形状を持つ堤体(堤防の断面)の断面解析においても応用されます。基礎をしっかり理解しておくことで、応用問題にも対応できるようになるでしょう。
三角形の断面二次モーメントの導出・証明(底辺軸まわり)
続いては、三角形の断面二次モーメントの導出と証明のプロセスを、底辺軸まわりから確認していきます。
公式を丸暗記するだけでなく、積分を使った導出のプロセスを理解しておくことで、試験での応用問題にも対応しやすくなります。ここでは底辺軸まわりの公式「I = bh³ ÷ 12」の導出を丁寧に解説します。
導出の準備 三角形の断面を積分でとらえる
断面二次モーメントの定義式は以下のとおりです。
I = ∫y² dA
y = 基準軸からの距離
dA = 微小面積
積分は断面全体にわたって行う
三角形断面を底辺軸(底辺を通るx軸)まわりに積分するには、底辺から高さ方向に薄い短冊状の微小要素を考えます。底辺bと高さhを持つ三角形(直角三角形・二等辺三角形など一般的な三角形)を考えましょう。
底辺から距離yの位置における三角形の幅(水平方向の長さ)は、相似の関係から次のように表せます。
b(y) = b × (h − y) ÷ h
(底辺でy=0のとき幅b、頂点でy=hのとき幅0)
このb(y)を使って、微小面積は「dA = b(y) dy」と表されます。これを定義式に代入して積分を行います。
積分による底辺軸まわりの導出
それでは、積分を実行して公式を導いてみましょう。
I = ∫₀ʰ y² × b(y) dy
= ∫₀ʰ y² × b(h − y)/h dy
= (b/h) × ∫₀ʰ y²(h − y) dy
= (b/h) × ∫₀ʰ (hy² − y³) dy積分を実行すると
= (b/h) × [hy³/3 − y⁴/4]₀ʰ
= (b/h) × (h × h³/3 − h⁴/4)
= (b/h) × (h⁴/3 − h⁴/4)
= (b/h) × h⁴ × (1/3 − 1/4)
= (b/h) × h⁴ × (4/12 − 3/12)
= (b/h) × h⁴ × 1/12
= bh³/12
よって I = bh³ ÷ 12 (証明完了)
積分の計算では、「hy² − y³」を展開してから積分するというステップが重要です。1/3と1/4の差が1/12になることで、最終的に「bh³÷12」という公式が導かれます。
導出の計算で注意すべきポイント
導出の過程でつまずきやすいポイントをいくつかご紹介します。
まず、三角形の幅の表現b(y) = b(h−y)/hをどう立式するかです。これは相似比を使った考え方で、高さyのところまで上がると残りの高さが(h−y)になり、その比率で幅が変化するという関係を表しています。底辺(y=0)では幅がbで、頂点(y=h)では幅が0になることを確認すれば、この式が正しいとわかるでしょう。
次に注意したいのが積分範囲です。底辺軸まわりの積分は、底辺(y=0)から頂点(y=h)までの範囲、つまり0からhまで積分します。積分範囲を間違えると正しい答えが得られないため、軸の設定と積分範囲を常にセットで確認することが大切です。
1. 断面二次モーメントの定義式「I = ∫y² dA」を書く
2. 相似比を使って高さyの位置における幅b(y) = b(h−y)/hを立式する
3. dA = b(y)dyを代入して積分式を整理する
4. 積分範囲0〜hで積分を実行する
5. I = bh³÷12 が導かれる
重心軸まわりの公式の導出と平行軸の定理による証明
続いては、重心軸まわりの公式の導出と、平行軸の定理を使った証明を確認していきます。
底辺軸まわりの公式「I = bh³÷12」が導けたら、次は重心軸まわりの公式「I₀ = bh³÷36」を求めましょう。重心軸まわりの公式は、積分から直接求める方法と、平行軸の定理を使って底辺軸まわりから変換する方法の2通りがあります。ここでは平行軸の定理を使った方法をご紹介します。
平行軸の定理を使った重心軸まわりの導出
平行軸の定理とは、重心軸まわりの断面二次モーメントI₀と、そこから距離dだけ平行移動した軸まわりの断面二次モーメントIの関係を表す定理です。
I = I₀ + A × d²
I = 移動後の軸まわりの断面二次モーメント
I₀ = 重心軸まわりの断面二次モーメント
A = 断面積
d = 重心軸から移動後の軸までの距離
三角形の場合、底辺軸まわりのIと重心軸まわりのI₀の関係を平行軸の定理で表すと、以下のようになります。
三角形の断面積:A = bh ÷ 2
重心位置(底辺から):d = h ÷ 3平行軸の定理より
I(底辺軸) = I₀(重心軸) + A × d²
bh³÷12 = I₀ + (bh/2) × (h/3)²
bh³÷12 = I₀ + (bh/2) × h²/9
bh³÷12 = I₀ + bh³/18
I₀ を求めると
I₀ = bh³/12 − bh³/18
I₀ = bh³ × (1/12 − 1/18)
I₀ = bh³ × (3/36 − 2/36)
I₀ = bh³ × 1/36
I₀ = bh³ ÷ 36 (証明完了)
この導出で重要なのは、三角形の重心が底辺から「h÷3」の位置にあるという事実を使う点です。この重心位置の情報がなければ平行軸の定理を正しく適用できませんので、三角形の重心位置は必ず覚えておきましょう。
底辺軸まわりと重心軸まわりの公式の比較
2つの公式の関係を改めて整理して確認しましょう。
| 公式の種類 | 基準軸の位置 | 公式 | 値の大小 |
|---|---|---|---|
| 底辺軸まわり | 底辺を通る水平軸 | I = bh³ ÷ 12 | 大きい |
| 重心軸まわり | 重心を通る水平軸 | I₀ = bh³ ÷ 36 | 小さい(底辺軸の1/3) |
平行軸の定理から明らかなように、重心軸まわりの断面二次モーメントはあらゆる平行な軸まわりの中で最小値となります。底辺軸まわりの値は重心軸まわりの値に「A×d²」を加えた値なので、必ず重心軸まわりより大きくなります。
頂点軸まわりの断面二次モーメント
試験問題や演習では、底辺軸まわり・重心軸まわりに加えて頂点を通る水平軸まわりの断面二次モーメントを求める問題も登場することがあります。平行軸の定理を使って求めてみましょう。
頂点は底辺から距離h(重心から距離2h/3)の位置にある平行軸の定理より
I(頂点軸)= I₀(重心軸)+ A × (2h/3)²
= bh³/36 + (bh/2) × 4h²/9
= bh³/36 + 4bh³/18
= bh³/36 + 8bh³/36
= 9bh³/36
= bh³/4
よって 頂点軸まわり I = bh³ ÷ 4
3つの軸まわりの値をまとめると、重心軸(÷36)< 底辺軸(÷12)< 頂点軸(÷4)という関係になります。基準軸が重心から遠くなるほど断面二次モーメントの値が大きくなることが確認できます。
三角形の断面二次モーメントの計算例と応用問題
続いては、三角形の断面二次モーメントの具体的な計算例と応用問題を確認していきます。
公式の導出が理解できたら、実際の数値を使った計算例で定着を図りましょう。基本的な計算例から、複合断面への応用まで段階的にご紹介します。
基本計算例 底辺と重心軸まわりの比較
まず、具体的な数値を使って底辺軸まわりと重心軸まわりの断面二次モーメントを計算し、その違いを確認してみましょう。
例題1 底辺b = 12 cm、高さh = 9 cm の三角形断面
底辺軸まわりの断面二次モーメント
I = bh³ ÷ 12
I = 12 × 9³ ÷ 12
I = 12 × 729 ÷ 12
I = 729 cm⁴
重心軸まわりの断面二次モーメント
I₀ = bh³ ÷ 36
I₀ = 12 × 729 ÷ 36
I₀ = 8748 ÷ 36
I₀ = 243 cm⁴
確認:I₀ = I ÷ 3 = 729 ÷ 3 = 243 cm⁴ ✓
底辺軸まわりと重心軸まわりの比がちょうど3対1になっていることが確認できます。この関係は公式の分母が12と36(3倍の差)であることから生じるものです。
平行軸の定理を使った応用計算
次は、平行軸の定理を使って任意の軸まわりの断面二次モーメントを求める計算例をご紹介します。
底辺から5cm上方の水平軸まわりの断面二次モーメントを求めるまず重心位置を確認する
重心は底辺から h/3 = 12/3 = 4 cm の位置
重心軸まわりの断面二次モーメント
I₀ = bh³ ÷ 36 = 6 × 12³ ÷ 36 = 6 × 1728 ÷ 36 = 288 cm⁴
重心から目的の軸までの距離d
d = 5 − 4 = 1 cm(底辺から5cmの軸は、重心より1cm上方)
断面積
A = bh ÷ 2 = 6 × 12 ÷ 2 = 36 cm²
平行軸の定理より
I = I₀ + A × d²
I = 288 + 36 × 1²
I = 288 + 36
I = 324 cm⁴
このように、平行軸の定理を使えば任意の位置の軸まわりの断面二次モーメントを求めることができます。重心位置からの距離dを正確に計算することが、この計算のポイントです。
三角形を含む複合断面への応用
実際の問題では、三角形と長方形を組み合わせた複合断面の断面二次モーメントを求めることがあります。台形断面は「長方形+三角形」または「大きな三角形から小さな三角形を引く」という考え方で分解できます。
底辺軸まわりの断面二次モーメントを求める
(「長方形 + 三角形2つ」に分解する方法)分解する形状
中央の長方形:幅6cm × 高さ9cm
左右の三角形(2つ合わせて):底辺(12−6)cm = 6cm × 高さ9cm
中央の長方形の底辺軸まわりI
I₁ = 6 × 9³ ÷ 3 = 6 × 729 ÷ 3 = 1458 cm⁴
(底辺まわりなので bh³÷3 を使用)
左右の三角形(合計)の底辺軸まわりI
I₂ = 6 × 9³ ÷ 12 = 6 × 729 ÷ 12 = 364.5 cm⁴
台形断面の底辺軸まわりI
I = I₁ + I₂ = 1458 + 364.5 = 1822.5 cm⁴
複合断面の計算では「形状を単純な図形に分解する」ことが基本的なアプローチです。各部分の断面二次モーメントをすべて同じ軸まわりに揃えてから合計することが正確な計算の鍵となります。
各断面形状の公式をまとめた表も確認しておきましょう。
| 断面形状 | 基準軸 | 公式 |
|---|---|---|
| 三角形 | 底辺軸まわり | I = bh³ ÷ 12 |
| 三角形 | 重心軸まわり | I₀ = bh³ ÷ 36 |
| 三角形 | 頂点軸まわり | I = bh³ ÷ 4 |
| 長方形 | 重心軸まわり | I₀ = bh³ ÷ 12 |
| 長方形 | 底辺軸まわり | I = bh³ ÷ 3 |
| 円形 | 中心軸まわり | I = πd⁴ ÷ 64 |
三角形の「底辺軸まわり ÷12」と長方形の「重心軸まわり ÷12」が同じ式になっている点は、混同しやすいポイントです。三角形は底辺軸まわりが÷12、長方形は重心軸まわりが÷12という違いをしっかり押さえておきましょう。
まとめ
今回は「三角形の断面二次モーメントの公式や単位や導出・証明をわかりやすく解説!」というテーマで、三角形断面の断面二次モーメントの公式・単位・積分による導出・平行軸の定理を使った証明・具体的な計算例まで詳しく解説しました。
最も重要な公式は、底辺軸まわり「I = bh³ ÷ 12」と重心軸まわり「I₀ = bh³ ÷ 36」の2つです。分母が12と36で、重心軸まわりは底辺軸まわりのちょうど3分の1の値になります。この関係は、三角形の重心が底辺から「h÷3」の位置にあることと平行軸の定理から導かれます。
導出の手順は「断面二次モーメントの定義式 → 相似比による幅の表現 → 積分の実行」というステップで進めることが基本です。そして底辺軸まわりの公式が求まれば、平行軸の定理を使って重心軸まわりや任意の軸まわりの値を求めることができます。
単位は「長さの4乗(cm⁴・mm⁴・m⁴)」で、計算前に単位を統一することが正確な計算への近道です。本記事が三角形の断面二次モーメントの理解を深めるきっかけになれば幸いです。