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誘電率とは?単位やコンデンサでは?水や真空の一覧・比誘電率との違い!求め方や公式

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電磁気学や電気工学を学ぶ上で重要な概念の一つが誘電率です。コンデンサ、絶縁体、高周波回路など、電気に関する現象を理解するためには、誘電率の知識が欠かせません。

しかし、誘電率とは何を表しているのか、どんな単位で表されるのか、比誘電率とどう違うのか、わかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。

実は、誘電率は物質が電場をどれだけ通しやすいか、または電気を蓄える能力を表す物理量であり、材料の電気的性質を知る上で非常に重要な指標です。

水は誘電率が非常に大きく、空気や真空はほぼ同じ誘電率を持ちます。

この記事では、誘電率の基本的な定義から、単位や記号、真空の誘電率、計算方法や公式、比誘電率との違い、そして様々な物質の誘電率一覧まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。

電気工学や物理学を学ぶ方はぜひ最後までお読みください。

誘電率とは?基本的な意味と定義

それではまず、誘電率の基本的な意味と定義について解説していきます。

誘電率の定義

誘電率(ゆうでんりつ、英語:permittivity)とは、物質が電場をどれだけ通しやすいか、または電気を蓄える能力を表す物理量です。

記号ではε(イプシロン)で表されます。

誘電率が大きい物質ほど、電場の影響を受けやすく、電荷を蓄えやすい性質を持ちます。

逆に誘電率が小さい物質は、電場の影響を受けにくいということになります。

例えば、水は誘電率が非常に大きいため、極性分子として電場に強く反応します。一方、空気やプラスチックは誘電率が比較的小さいです。

誘電率は、コンデンサの設計、絶縁材料の選定、高周波回路の設計など、様々な電気・電子機器の開発に欠かせない物理量です。

電束密度と電場の関係

誘電率を理解するには、電束密度と電場の関係を知る必要があります。

電場Eは、電荷によって作られる電気的な場です。単位はV/m(ボルト毎メートル)またはN/C(ニュートン毎クーロン)で表されます。

電束密度Dは、単位面積あたりを貫く電気力線の密度です。単位はC/m²(クーロン毎平方メートル)で表されます。

これらの関係は、次の式で表されます。

D = εE

この式が示すのは、「電束密度Dは、誘電率εと電場Eの積に等しい」ということです。

つまり、誘電率εは、

ε = D/E

という関係式で定義されます。

同じ電場Eを加えても、物質によって生じる電束密度Dが異なるのは、誘電率εが異なるためです。

誘電率が表す物質の性質

誘電率は、物質の電気的な性質を表す重要な指標です。

誘電率が大きい物質

・電荷を蓄えやすい

・コンデンサの容量が大きくなる

・電場を弱める効果が大きい

・例:水、チタン酸バリウム、セラミック

誘電率が小さい物質

・電荷を蓄えにくい

・良い絶縁材料になる

・電場の影響を受けにくい

・例:空気、テフロン、ポリエチレン

誘電率は、コンデンサの容量Cを決める重要な要素です。

平行板コンデンサの容量は、

C = εA/d

ここで、Aは極板の面積、dは極板間の距離です。

誘電率εが大きいほど、同じ大きさのコンデンサでも大きな容量を得られます

誘電率と物質の性質
・誘電率が大きい:電荷を蓄えやすい(コンデンサに適する)
・誘電率が小さい:電荷を蓄えにくい(絶縁材料に適する)
・誘電率はコンデンサの容量を決定する

誘電率の単位と記号

続いては、誘電率を表す単位と記号について確認していきます。

誘電率の単位(F/m)

誘電率の単位は、SI単位系ではF/m(ファラド毎メートル)です。

これは、ε = D/Eという定義式から導かれます。

・電束密度Dの単位:C/m²(クーロン毎平方メートル)

・電場Eの単位:V/m(ボルト毎メートル)

したがって、

ε = D/E = (C/m²)/(V/m) = C/(V·m)

ここで、C/V = F(ファラド、静電容量の単位)なので、

ε = F/m

ファラド(F)は静電容量の単位で、電気工学では重要な単位です。

1ファラドは、1ボルトの電圧で1クーロンの電荷を蓄えることができる容量です。

真空の誘電率ε₀

真空(何もない空間)での誘電率は、真空の誘電率または電気定数と呼ばれ、記号ε₀(イプシロンゼロ、イプシロンノート)で表されます。

真空の誘電率の値は、

ε₀ = 8.854 × 10⁻¹² F/m

≈ 8.85 × 10⁻¹² F/m

です。この値は定数であり、どこでも同じ値を持ちます。

別の表現として、

ε₀ = 1/(4πk)

ここで、k = 8.988 × 10⁹ N·m²/C²(クーロンの法則の比例定数)

真空の誘電率は、光速度cや真空の透磁率μ₀と次の関係があります。

c² = 1/(μ₀ε₀)

この関係式は、電磁波(光)の速度が誘電率と透磁率によって決まることを示しています。

比誘電率とは

実際の計算では、比誘電率εᵣ(イプシロンアール)がよく使われます。

比誘電率は、真空の誘電率に対する物質の誘電率の比で、次のように定義されます。

εᵣ = ε/ε₀

または、

ε = εᵣε₀

比誘電率は無次元数(単位のない数)です。真空の比誘電率はεᵣ = 1です。

比誘電率を使うと、物質の電気的性質を直感的に理解しやすくなります。

・εᵣ = 1:真空と同じ

・εᵣ > 1:真空より電場を通しやすい(ほとんどの物質)

・εᵣ

記号 名称 単位 ε 誘電率 F/m ε₀ 真空の誘電率 8.854 × 10⁻¹² F/m εᵣ 比誘電率 無次元(単位なし)

これらの関係を理解することが、電磁気学の基礎となります。

誘電率の求め方と計算方法

続いては、誘電率を実際に求める方法を見ていきます。

基本的な計算式

誘電率εの基本的な求め方は、定義式を使います。

ε = D/E

電束密度Dと電場Eを測定できれば、誘電率を計算できます。

計算例1:電場E = 1000 V/mを加えたとき、電束密度D = 7.08 × 10⁻⁸ C/m²が生じた物質の誘電率は?

ε = D/E = 7.08 × 10⁻⁸ C/m² / 1000 V/m

= 7.08 × 10⁻¹¹ F/m

この物質の誘電率は7.08 × 10⁻¹¹ F/mです。

また、コンデンサの容量Cから誘電率を求めることもできます。

平行板コンデンサの場合、

C = εA/d

ここから、

ε = Cd/A

ここで、Aは極板の面積、dは極板間の距離です。

比誘電率の求め方

比誘電率εᵣは、誘電率εがわかれば簡単に求められます。

εᵣ = ε/ε₀
計算例2:誘電率ε = 7.08 × 10⁻¹¹ F/mの物質の比誘電率は?

εᵣ = ε/ε₀

= 7.08 × 10⁻¹¹ / 8.854 × 10⁻¹²

≈ 8.0

比誘電率は約8です。

逆に、比誘電率から誘電率を求めることもできます。

ε = εᵣε₀
計算例3:比誘電率εᵣ = 80の水の誘電率は?

ε = εᵣε₀

= 80 × 8.854 × 10⁻¹²

≈ 7.08 × 10⁻¹⁰ F/m

誘電率は約7.08 × 10⁻¹⁰ F/mです。

具体的な計算例

実際的な問題での計算例を見ていきましょう。

計算例4:平行板コンデンサの容量

極板の面積A = 0.01 m²、極板間の距離d = 0.001 m(1 mm)の平行板コンデンサに、比誘電率εᵣ = 4のガラスを挿入したとき、容量Cは?

C = εA/d = εᵣε₀A/d

= 4 × (8.854 × 10⁻¹²) × 0.01 / 0.001

= 4 × 8.854 × 10⁻¹² × 10

= 3.54 × 10⁻¹⁰ F

= 354 pF

容量は約354ピコファラドです。

計算例5:誘電体を挿入したときの容量変化

真空中で容量C₀ = 100 pFのコンデンサに、比誘電率εᵣ = 2.5の誘電体を満たしたとき、容量Cは?

C = εᵣC₀

= 2.5 × 100 pF

= 250 pF

容量は250ピコファラドになります。比誘電率の倍だけ容量が増加します。

計算例6:電場と電束密度の関係

比誘電率εᵣ = 6の物質中で電場E = 500 V/mのとき、電束密度Dは?

D = εE = εᵣε₀E

= 6 × (8.854 × 10⁻¹²) × 500

= 2.66 × 10⁻⁸ C/m²

電束密度は約2.66 × 10⁻⁸ C/m²です。

計算のポイント
・ε = D/E(定義式)
・εᵣ = ε/ε₀(比誘電率)
・ε = εᵣε₀(誘電率の計算)
・ε₀ = 8.854 × 10⁻¹² F/m(覚えておく)
・C = εA/d(平行板コンデンサ)

これらの式を使いこなせれば、様々な電気の問題を解けます

様々な物質の誘電率一覧

続いては、代表的な物質の誘電率を確認していきます。

気体の誘電率

気体の誘電率は、真空とほぼ同じで非常に小さいです。

真空

・比誘電率εᵣ = 1(定義)

・誘電率ε₀ = 8.854 × 10⁻¹² F/m

空気

・比誘電率εᵣ ≈ 1.00059

・実用上はεᵣ = 1とする

・誘電率ε ≈ ε₀

窒素

・比誘電率εᵣ ≈ 1.00055

酸素

・比誘電率εᵣ ≈ 1.00049

二酸化炭素

・比誘電率εᵣ ≈ 1.00092

気体の比誘電率は1に非常に近く、実用上は真空と同じとして扱われます

液体の誘電率

液体の誘電率は、物質によって大きく異なります。

・比誘電率εᵣ ≈ 80(室温)

・最も高い誘電率を持つ一般的な液体

・優れた溶媒として機能

エタノール

・比誘電率εᵣ ≈ 24

アセトン

・比誘電率εᵣ ≈ 21

メタノール

・比誘電率εᵣ ≈ 33

グリセリン

・比誘電率εᵣ ≈ 43

変圧器油

・比誘電率εᵣ ≈ 2.2〜2.5

・絶縁油として使用

ベンゼン

・比誘電率εᵣ ≈ 2.3

水の誘電率が特に大きいことは重要です。これは水分子が極性を持つためです。

固体の誘電率

固体の誘電率は、材料によって幅広い範囲にわたります。

絶縁材料

・テフロン(PTFE):εᵣ ≈ 2.1

・ポリエチレン:εᵣ ≈ 2.3

・ポリプロピレン:εᵣ ≈ 2.2

・ポリスチレン:εᵣ ≈ 2.6

・塩化ビニル:εᵣ ≈ 3〜4

ガラス・セラミック

・石英ガラス:εᵣ ≈ 3.8

・パイレックスガラス:εᵣ ≈ 4.7

・普通ガラス:εᵣ ≈ 5〜10

・磁器:εᵣ ≈ 6〜7

・マイカ:εᵣ ≈ 5〜7

高誘電率材料

・チタン酸バリウム:εᵣ ≈ 1000〜10000

・チタン酸ストロンチウム:εᵣ ≈ 300

・酸化チタン:εᵣ ≈ 85〜170

その他の材料

・紙:εᵣ ≈ 2〜4

・木材(乾燥):εᵣ ≈ 2〜7

・ゴム:εᵣ ≈ 2〜4

・氷:εᵣ ≈ 3.2

・ダイヤモンド:εᵣ ≈ 5.7

・シリコン:εᵣ ≈ 11.7

物質 比誘電率εᵣ 用途
真空 1 基準
空気 ≈ 1 一般環境
テフロン 2.1 高周波絶縁
ポリエチレン 2.3 ケーブル絶縁
ガラス 4〜10 一般絶縁
エタノール 24 溶媒
80 溶媒
チタン酸バリウム 1000〜10000 高容量コンデンサ

空気と真空の誘電率がほぼ等しいため、空気中での計算は真空として扱えることが多いです。

まとめ 誘電率の水や真空の一覧・比誘電率との違い!求め方や公式

誘電率について、基本的な定義から単位、計算方法、様々な物質の誘電率まで詳しく解説してきました。

誘電率εは、物質が電場をどれだけ通しやすいか、または電気を蓄える能力を表す物理量で、D = εEという関係式で定義されます。

単位はF/m(ファラド毎メートル)です。

真空の誘電率ε₀ = 8.854 × 10⁻¹² F/mは基準となる重要な定数です。

実際の計算では、比誘電率εᵣ = ε/ε₀がよく使われ、これは無次元数で物質の電気的性質を表します。

誘電率の求め方は、ε = D/Eという定義式から計算するか、ε = εᵣε₀という関係式を使います。

比誘電率がわかれば、誘電率を簡単に求められます。

物質の誘電率は、水(εᵣ ≈ 80)やチタン酸バリウム(εᵣ ≈ 1000〜10000)が非常に大きく、空気、テフロン、ポリエチレンなどは小さい値です。

誘電率が大きい物質はコンデンサに、小さい物質は絶縁材料に適しています。

コンデンサ、ケーブル、絶縁材料など、多くの電気機器の設計には誘電率の知識が不可欠です。

この記事で学んだ知識を使って、電気工学の理解を深めてください