建築や電気設備の図面を見ていると、PSという略語を頻繁に目にします。このPSは建築設備において非常に重要な役割を果たしており、正確な理解なしには図面を読み解くことができません。
また、PSD、DS、EPSなど似たような略語も多数存在し、それぞれが異なる意味と用途を持っています。さらに、PS1、PS3といった番号表記も建物の規模や用途によって様々なルールで使い分けられています。
本記事では、これらの略語の正確な意味と使い分け、図面での表記方法について、実務に役立つ知識を体系的に解説していきます。
PS(パイプシャフト)の基礎知識
PSの意味と定義
それではまず、PSの基本的な意味について解説していきます。
PSは日本語では「パイプシャフト」と呼ばれ、建物の各階を貫通する配管専用の空間として計画されます。
マンションやオフィスビルなどの中高層建築物において、各階の水回り設備(キッチン、洗面所、浴室、トイレなど)に必要な配管を効率的に配置するために不可欠な設備です。
PSがなければ、各階ごとに個別の配管ルートを確保する必要があり、建物の構造や意匠に大きな制約が生じてしまいます。
建築図面と電気図面でのPSの役割
続いては、建築図面と電気図面それぞれでのPSの役割を確認していきます。
建築図面においてPSは、主に給排水配管の経路として表現されます。平面図では四角形の枠で囲まれ、「PS」の文字が記載されているのが一般的です。
建築設計においては、PSの位置と大きさが建物全体のプランニングに大きく影響します。特に住宅設計では、水回りの配置とPSの位置関係が居住性に直結するため、慎重な検討が必要です。
一方、電気図面でのPSは、電気配線の垂直経路としても活用されます。弱電設備(電話、インターネット、テレビなど)の配線もPSを通ることが多く、給排水配管と電気配線が同一のPS内を通る場合もあります。
ただし、電気設備専用のシャフトが設けられる場合は、後述するEPS(電気パイプシャフト)として区別されることもあります。
PSが設置される場所と目的
続いては、PSが実際に設置される場所と具体的な目的を確認していきます。
PSの設置場所は、建物の用途と水回りの配置によって決定されます。住宅の場合、キッチンや洗面所、浴室の近くに設置されることが多く、できるだけ短い配管長で各設備に接続できるよう計画されます。
オフィスビルでは、各階のトイレや給湯室の近くにPSが配置され、テナントごとの水回り設備に効率的に配管を供給できるよう設計されます。
また、PSはメンテナンス性の観点からも重要です。配管の点検や修理が必要になった際、PSを通じて各階の配管にアクセスできるため、工事範囲を最小限に抑えることができます。
PSD・DS・EPSとの違いと使い分け
PSD(パイプシャフトダクト)との違い
それではまず、PSDとの違いについて解説していきます。
PSD(Pipe Shaft Duct)は、PSの概念をさらに細分化したもので、配管とダクトの両方が通るシャフトを指します。
一般的なPSが主に給排水配管を対象とするのに対し、PSDは空調用のダクトも含めた総合的な設備シャフトとして計画されます。大規模な建築物では、配管とダクトを分離するよりも、一つのシャフトにまとめる方が効率的な場合があります。
ただし、PSDという表記は比較的新しく、設計事務所や施工会社によって使用頻度に差があります。多くの場合、従来通り「PS」として表記され、図面の凡例で「配管・ダクト共用」といった注記がされることもあります。
DS(ダクトシャフト)との違い
続いては、DSとの違いを確認していきます。
PSが主に水回り関連の配管を対象とするのに対し、DSは空調・換気設備のダクト専用として設けられます。
DSは一般的にPSよりも大きな断面が必要となります。これは、空調ダクトが配管よりも太く、また風量確保のために十分な断面積が必要だからです。
建物の用途によっては、PSとDSを別々に設けることで、それぞれの設備の独立性を保ち、メンテナンス時の影響を最小限に抑えることができます。
EPS(電気パイプシャフト)との違い
続いては、EPSとの違いを確認していきます。
EPS(Electric Pipe Shaft)は、電気設備専用のシャフトで、強電・弱電の配線や電気機器の設置空間として使用されます。
PSが給排水配管を主な対象とするのに対し、EPSは以下のような電気設備を収容します
・幹線ケーブル
・分電盤
・通信機器
・火災報知設備
・インターネット配線
EPSは電気設備の安全性と保守性を考慮して設計されるため、適切な換気設備や点検用の照明が設けられることが一般的です。
また、水回りの配管とは分離することで、漏水による電気設備への影響を防ぐという安全上の配慮もあります。
PS1・PS3などの番号表記の意味
番号表記の基本ルール
それではまず、PS番号表記の基本的なルールについて解説していきます。
PS1、PS2、PS3といった番号表記は、同一建物内に複数のPSが存在する場合の識別番号として使用されます。
基本的なルールとして、番号は設置順序や重要度に応じて付けられることが多いです。PS1が最も主要なシャフト、PS2が副次的なシャフトという具合に分類されます。
住宅の場合、PS1はメインの水回り(キッチン・浴室)に対応し、PS2は洗面所やトイレ専用といった使い分けがされることもあります。
商業施設やオフィスビルでは、階数や建物の規模に応じて、PS1からPS10以上まで番号が振られることもあります。
階層別・用途別の分類方法
続いては、階層別・用途別の分類方法を確認していきます。
大規模建築物では、階層ごとにPS番号を管理する方法も採用されます。例えば、低層階(1~5階)をPS1系統、中層階(6~10階)をPS2系統として分類することで、配管系統の管理を効率化できます。
用途別の分類では、以下のような区分けが行われることがあります:
・PS1:給水系統
・PS2:排水系統
・PS3:ガス系統
・PS4:電気・通信系統
この分類方法により、設備の保守管理や故障時の対応が迅速に行えるようになります。
図面での正しい表記方法と注意点
続いては、図面での正しい表記方法と注意点を確認していきます。
図面でのPS表記は、明確で統一された記号を使用することが重要です。一般的には、四角形の枠内に「PS1」「PS2」といった文字を記載します。
表記時の注意点として、以下の要素を明記する必要があります:
・PS番号(PS1、PS2など)
・寸法(幅×奥行き)
・対象設備(給水、排水、ガスなど)
・階数範囲(1F~RF、B1F~10Fなど)
また、平面図だけでなく、縦断面図や設備系統図においても、PS番号を一貫して使用することで、図面間の整合性を保つことができます。
凡例表記も重要で、図面の余白に各PS番号の詳細な説明を記載することで、施工者や管理者が正確に理解できるようになります。
まとめ 建築図面などのPSの意味は?DS・EPSとの違いは?PS1やPS3は?
PS(パイプシャフト)は、建築設備において配管を効率的に配置するための重要な空間です。給排水配管を主な対象とし、建物の各階を貫通する縦穴状の空間として計画されます。
PSD、DS、EPSとの違いを理解することで、それぞれの設備シャフトの役割を明確に把握できます。PSDは配管とダクトの複合シャフト、DSは空調ダクト専用、EPSは電気設備専用として使い分けられています。
PS1、PS3などの番号表記は、複数のシャフトを識別するための重要な管理方法です。建物の規模や用途に応じて、階層別・用途別の分類ルールを設定し、一貫した番号管理を行うことが重要です。
図面作成時には、PS番号、寸法、対象設備を明記し、凡例での詳細説明も併記することで、施工や管理の品質向上につながります。これらの知識を活用して、より効率的で分かりやすい設計図書の作成を心がけましょう。