ボルトは機械・構造物の接合部に広く使われる重要な機械要素ですが、接合部にせん断力が加わる場合、ボルトはせん断応力を受けて破断するリスクがあります。
ボルトのせん断強度を正確に把握し、適切な本数・サイズを選定することは、安全で信頼性の高い接合設計に直結します。
本記事では、ボルトのせん断応力の計算方法・片せん断と両せん断・許容せん断応力・設計計算の手順について詳しく解説していきます。
ボルトのせん断応力の計算方法
それではまず、ボルトのせん断応力の基本的な計算方法から解説していきましょう。
片せん断と両せん断の違い
ボルト接合にはせん断面の数に応じて「片せん断(一面せん断)」と「両せん断(二面せん断)」があります。
片せん断と両せん断の違い
片せん断:ボルトのせん断面が1箇所。τ = F/A
両せん断:ボルトのせん断面が2箇所(中板が2枚の外板に挟まれた構造)。τ = F/(2A)
両せん断の方がボルト1本あたりのせん断応力が半分になるため、同じ荷重に対してより高い強度を発揮します。
ボルトのせん断応力計算式
ボルトのせん断応力計算
片せん断:τ = F / (n × Ab)
両せん断:τ = F / (2 × n × Ab)
F:接合部に作用する外力(N)
n:ボルトの本数
Ab:ボルト1本の軸断面積 Ab = π×d²/4(mm²)
d:ボルトの呼び径(mm)
ボルトのせん断応力計算例
計算例
M16ボルト(d = 16mm)3本で板材を接合。外力F = 60kN(片せん断)。
Ab = π×16²/4 = 201.1 mm²
τ = 60000/(3×201.1) = 99.5 N/mm²
強度区分8.8のボルトの降伏応力:640MPa
許容せん断応力(安全率S=2.5):τ_allow = 640/(√3×2.5) ≈ 148 N/mm²
τ = 99.5 MPa < τ_allow = 148 MPa → OK(安全)
ボルト強度区分と許容せん断応力
続いては、ボルトの強度区分と許容せん断応力の目安を確認していきましょう。
| 強度区分 | 引張強さσ_u(MPa) | 降伏応力σ_y(MPa) | 許容せん断応力目安(MPa) |
|---|---|---|---|
| 4.8 | 400 | 320 | 74〜92 |
| 8.8 | 800 | 640 | 148〜185 |
| 10.9 | 1000 | 900 | 207〜260 |
| 12.9 | 1200 | 1080 | 249〜312 |
高強度ボルト(10.9・12.9)は許容せん断応力が高いため、スペースが限られる設計で少数のボルトで大きな荷重に対応することができます。
ボルト接合の設計フロー
続いては、ボルト接合の設計フローを確認していきましょう。
ボルト接合の設計ステップ
①作用荷重Fの確認(静荷重・動荷重・衝撃荷重)
②ボルト径・強度区分の仮定
③せん断応力の計算(片・両せん断の選択)
④許容せん断応力との比較(τ ≦ τ_allow)
⑤ボルト本数・配置の最終決定
⑥被締結材の支圧応力・ガタ・疲労も必要に応じて確認
まとめ
本記事では、ボルトのせん断応力の計算方法・片せん断と両せん断の違い・強度区分別の許容値・設計フローについて解説しました。
ボルトのせん断強度設計はτ = F/(n×Ab)の基本式から算出し、強度区分に応じた許容せん断応力と比較する手順が基本です。
荷重の性質・安全率・被締結材の状態も含めた総合的な設計を行うことで、信頼性の高い接合部が実現するでしょう。