設計・解析において、材料の破壊・降伏を正確に評価するためには「最大せん断応力」を求めることが不可欠です。
特に複雑な多軸応力状態では、単純なτ = F/Aでは最大せん断応力を正確に求めることができず、モールの応力円などの理論的手法が必要になります。
本記事では、最大せん断応力の定義・公式・モールの応力円による求め方・破壊条件への応用について詳しく解説していきます。
最大せん断応力とは?定義と物理的な意味
それではまず、最大せん断応力の定義と物理的な意味から解説していきましょう。
最大せん断応力τ_maxとは、ある点での応力状態において、すべての面の向きを変えたときに得られる最大のせん断応力値のことです。
材料は最大せん断応力が材料の降伏せん断応力に達したとき降伏が始まる(最大せん断応力説・Tresca基準)とされており、設計上の重要な指標です。
主応力と最大せん断応力の関係
最大せん断応力は、主応力σ₁・σ₂(2次元の場合)または主応力σ₁・σ₂・σ₃(3次元の場合)を使って以下のように求められます。
最大せん断応力の公式
2次元の場合:
τ_max = (σ₁ − σ₂) / 2
3次元の場合:
τ_max = max((σ₁−σ₂)/2, (σ₂−σ₃)/2, (σ₁−σ₃)/2)
一般的な応力状態(σx, σy, τxy)からの主応力計算:
σ₁,σ₂ = (σx+σy)/2 ± √(((σx−σy)/2)² + τxy²)
モールの応力円による最大せん断応力の求め方
続いては、モールの応力円を使った最大せん断応力の求め方を確認していきましょう。
モールの応力円の作図方法
モールの応力円は、ある点での応力状態(σx, σy, τxy)を円で表現したグラフであり、主応力・最大せん断応力を視覚的に求めることができます。
モールの応力円の作図手順
①水平軸をσ(垂直応力)、垂直軸をτ(せん断応力)とする座標系を設定
②点A(σx,τxy)と点B(σy,−τxy)をプロット
③ABを直径とする円を描く
④円の中心C = ((σx+σy)/2,0)
⑤円の半径R = τ_max = √(((σx−σy)/2)² + τxy²)
⑥円がσ軸と交わる点が主応力σ₁、σ₂
⑦円の最上・最下点がτ_max(最大せん断応力)
モールの応力円を使った計算例
計算例
σx = 100MPa、σy = 40MPa、τxy = 30MPa
中心:C = (100+40)/2 = 70 MPa
半径:R = √(((100−40)/2)² + 30²) = √(30² + 30²) = √1800 ≈ 42.4 MPa
主応力:σ₁ = 70 + 42.4 = 112.4 MPa、σ₂ = 70 − 42.4 = 27.6 MPa
最大せん断応力:τ_max = R = 42.4 MPa
最大せん断応力説(Tresca基準)と破壊設計
続いては、最大せん断応力説(Tresca基準)を破壊・降伏設計にどのように応用するかを確認していきましょう。
Tresca基準の適用
Tresca基準(最大せん断応力説)では、最大せん断応力τ_maxが材料の降伏せん断応力τ_y = σ_y/2に達したとき、降伏が始まるとします。
Tresca降伏基準
τ_max ≧ σ_y / 2 → 降伏開始
または:σ₁ − σ₂ ≧ σ_y → 降伏開始
(σ₁ ≥ σ₂ ≥ σ₃ の場合、3次元では σ₁ − σ₃ ≥ σ_y)
安全設計条件:τ_max < σ_y / (2 × S)(Sは安全率)
Von Mises基準との比較
Tresca基準と並ぶ降伏基準として「Von Mises基準(相当応力基準)」があります。
Von Mises基準はTresca基準よりやや実験結果と一致しやすく、延性金属の降伏評価に広く使われていますが、Tresca基準は計算が簡単で保守的(安全側)な評価が得られるため、実用設計でも多用されています。
まとめ
本記事では、最大せん断応力の定義・公式・モールの応力円による算出法・Tresca降伏基準への応用について解説しました。
最大せん断応力は主応力の差の半分(τ_max = (σ₁−σ₂)/2)として求められ、モールの応力円を使えば視覚的・直感的に算出できます。
Tresca基準を活用した降伏評価により、多軸応力状態での安全設計が実現するでしょう。