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比エンタルピーの求め方は?温度・湿度から導く手順を解説(空気線図・表)

比エンタルピーの求め方
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空調設備の設計や省エネ診断、除湿量の計算では、空気がどれほどの熱を持っているかを知る必要があります。

その指標となるのが比エンタルピーです。

温度だけでは空気の状態を十分に判断できず、湿度や水蒸気量も合わせて見ることが欠かせません。

本記事では、乾球温度と相対湿度から比エンタルピーを求める流れを、空気線図と計算式、表の読み方を交えて解説します。

比エンタルピーの求め方

比エンタルピーの求め方

それではまず比エンタルピーの求め方について解説していきます。

比エンタルピーの意味

比エンタルピーとは、乾き空気を基準にした湿り空気の熱量を表す値です。

単位は一般にkJ/kgDAで表され、kgDAは乾き空気1kgを意味します。

湿り空気は、乾き空気と水蒸気が混ざった状態です。

そのため比エンタルピーには、空気そのものの温度に由来する顕熱だけでなく、水蒸気が持つ潜熱も含まれます。

温度が同じでも湿度が高い空気ほど、比エンタルピーは大きくなります。

夏に蒸し暑さを感じる理由も、この潜熱を含む熱量と深く関係しています。

例えば、室温が26℃であっても、相対湿度が50%の場合と75%の場合では、空気に含まれる水蒸気の量が違います。

後者は除湿しなければ取り除けない熱を多く含んでおり、冷房負荷も増えやすくなります。

比エンタルピーは、空気の暖かさだけを示す数値ではありません。

顕熱と潜熱を合計した、湿り空気全体の熱の状態を捉えるための数値です。

温度と湿度から求める基本手順

比エンタルピーを求めるには、乾球温度と相対湿度、または絶対湿度が必要です。

空気線図を使う方法であれば、乾球温度と相対湿度から状態点を見つけ、等エンタルピー線をたどることで読めます。

計算式で求める場合は、最初に相対湿度から水蒸気分圧を求め、次に絶対湿度へ換算します。

その後、乾き空気の顕熱と水蒸気の顕熱および潜熱を合算する流れです。

実務では温湿度計の測定値を入力し、表計算ソフトや空調計算ソフトで自動計算する場面も多いでしょう。

ただし計算の考え方を理解しておくと、入力ミスや測定値の異常に気付きやすくなります。

標準大気圧付近で使用される代表的な式は、h=1.006t+x(2501+1.86t)です。

hは比エンタルピーkJ/kgDA、tは乾球温度℃、xは絶対湿度kg/kgDAを表します。

計算時にそろえる条件

比エンタルピーの計算では、温度の種類と圧力条件を混同しないことが大切です。

基本となる温度は乾球温度であり、濡れ球温度や露点温度をそのまま式のtへ代入するわけではありません。

また、空気線図や簡易表の多くは標準大気圧で作られています。

高地や減圧された製造装置内では、大気圧との差によって絶対湿度や比エンタルピーの関係が変わります。

通常の建築空調では101.325kPaを前提にした計算で実用上問題ない場合が多いものの、用途によって確認が必要です。

外気処理、乾燥工程、クリーンルーム、食品工場などでは、設計条件を明確にしてから計算を始めましょう。

湿り空気の状態量

続いては湿り空気の状態量を確認していきます。

乾球温度と相対湿度

乾球温度は、一般的な温度計で測る空気の温度です。

空調の設定温度や室温として扱われる値は、基本的に乾球温度に当たります。

相対湿度は、その温度で空気が含むことのできる最大の水蒸気量に対して、現在どれだけ水蒸気を含んでいるかを百分率で示したものです。

相対湿度50%は、水蒸気量が常に半分という意味ではありません。

気温が上がるほど飽和水蒸気量は大きくなるため、同じ相対湿度でも温度によって実際の水蒸気量は変化します。

したがって、相対湿度だけで空気の熱量や除湿負荷を比較するのは不十分です。

比エンタルピーを考える際には、温度と相対湿度を必ず組み合わせて扱います。

絶対湿度と含湿量

絶対湿度は空気中の水蒸気量を示す言葉ですが、分野によって表し方が異なります。

空調計算では、乾き空気1kgに含まれる水蒸気の質量を表す含湿量を使うのが一般的です。

単位はkg/kgDAまたはg/kgDAで示されます。

例えば含湿量0.010kg/kgDAは、乾き空気1kgに対して水蒸気が10g含まれる状態です。

含湿量は、空気を加熱しただけでは変化しません。

一方で加湿器による加湿、冷却コイルでの結露、除湿機による水分除去では変化します。

この性質を押さえると、空気線図上での状態変化も理解しやすくなります。

含湿量xは、水蒸気分圧pvと大気圧Pを用いて、x=0.622pv/(P-pv)で求められます。

標準大気圧ではPを101.325kPaとして計算します。

飽和水蒸気圧と露点温度

水蒸気分圧を求めるには、乾球温度における飽和水蒸気圧を確認します。

飽和水蒸気圧は温度ごとに決まっており、温度が高いほど大きくなります。

実際の水蒸気分圧は、飽和水蒸気圧に相対湿度を掛けて求められます。

相対湿度を小数へ換算して使う点が重要です。

相対湿度60%なら、計算では0.60を掛けます。

露点温度は、空気を冷却していったときに結露が始まる温度です。

露点温度が高い空気ほど水蒸気量が多く、比エンタルピーも高くなる傾向があります。

結露リスクの判断には露点温度、空調負荷の把握には比エンタルピーという使い分けが役立ちます。

計算式による算出手順

続いては計算式による算出手順を確認していきます。

相対湿度から水蒸気分圧を求める手順

例として、乾球温度25℃、相対湿度60%、標準大気圧の空気を考えます。

25℃における飽和水蒸気圧は、およそ3.17kPaです。

相対湿度60%を小数の0.60へ変換し、飽和水蒸気圧へ掛けます。

水蒸気分圧は3.17×0.60で、およそ1.90kPaとなります。

飽和水蒸気圧の値は、湿り空気線図、蒸気表、気象計算用の表などで確認できます。

小数点以下の細かな差は生じますが、一般的な空調負荷の概算では実用的な精度が得られるでしょう。

25℃、相対湿度60%の場合、水蒸気分圧は約1.90kPaです。

計算は3.17kPa×0.60=1.90kPaとなります。

水蒸気分圧から絶対湿度を求める手順

次に、水蒸気分圧1.90kPaを含湿量の式へ代入します。

標準大気圧101.325kPaとして、x=0.622×1.90/(101.325-1.90)を計算します。

結果はおよそ0.0119kg/kgDAです。

g/kgDAへ換算すると、約11.9g/kgDAになります。

この値は、乾き空気1kgに約11.9gの水蒸気が含まれていることを表します。

計算機や表計算ソフトを使う場合も、途中の値を数桁残しておくと、最後の丸め誤差を抑えられます。

絶対湿度は比エンタルピー計算の中心となる値なので、単位の取り違えに注意が必要です。

g/kgDAの11.9をそのまま式へ入れると、結果が大きく狂います。

比エンタルピーへ代入する手順

含湿量が0.0119kg/kgDAと分かったら、h=1.006t+x(2501+1.86t)へ代入します。

乾球温度tは25℃です。

乾き空気の顕熱は1.006×25で、およそ25.2kJ/kgDAとなります。

水蒸気側は0.0119×(2501+1.86×25)で、およそ30.3kJ/kgDAです。

合計すると、比エンタルピーは約55.5kJ/kgDAとなります。

空気線図で25℃、60%RHの交点を確認しても、概ね同程度の値を読めるはずです。

乾球温度25℃、相対湿度60%の空気の比エンタルピーは、標準大気圧でおよそ55kJ/kgDAです。

空気線図の読み取り値と計算結果は、丸め方によってわずかに差が出ます。

空気線図の読み取り方

続いては空気線図の読み取り方を確認していきます。

状態点の見つけ方

空気線図は、湿り空気の温度、湿度、比エンタルピーなどの関係を一枚で確認できる図表です。

一般的な図では、横軸が乾球温度、縦方向が含湿量を表します。

曲線状に描かれた線は相対湿度線で、右上側の境界は相対湿度100%の飽和線です。

乾球温度25℃の位置から上へ進み、相対湿度60%の曲線と交わる点を探します。

この交点が対象となる湿り空気の状態点です。

状態点さえ正しく定まれば、含湿量、露点温度、湿球温度、比エンタルピーを読み取れます。

空気線図は計算を省略するための図ではなく、空気の変化を視覚的に理解するための実務的な道具です。

等エンタルピー線の確認

比エンタルピーを示す線は、空気線図上で斜め方向に描かれています。

図の形式によっては、湿球温度線とほぼ平行に見える場合もあります。

状態点を通る等エンタルピー線を、図の目盛りがある位置までたどることで比エンタルピーを読み取ります。

読み取り値は、細かい小数点まで求めるものではありません。

例えば55kJ/kgDAから56kJ/kgDA程度と読めれば、概算や空調方式の比較には十分役立ちます。

精密な設計計算では、メーカーの計算ソフトや湿り空気計算式による再確認を行うと安心です。

空気線図の種類によって、等エンタルピー線の表示位置や目盛りの向きが異なる点にも注意しましょう。

加熱と冷却除湿の状態変化

空気を加熱するだけの場合、含湿量は変わらず、空気線図上では右方向へ移動します。

乾球温度が上がるため比エンタルピーも増加しますが、水蒸気量は一定です。

加湿器で水分を加える場合は、状態点が上方へ移動し、比エンタルピーも大きくなります。

冷却コイルで空気を冷やすと、まず温度低下によって左側へ移動します。

露点に達した後は結露が始まり、温度と含湿量の両方が下がります。

冷却除湿では顕熱と潜熱を同時に取り除くため、比エンタルピーが大きく低下します。

この変化を読み取れるようになると、除湿機、冷却コイル、全熱交換器の働きも把握しやすくなります。

温湿度別の比エンタルピー表

続いては温湿度別の比エンタルピー表を確認していきます。

概算値の比較表

下表は標準大気圧における代表的な温湿度条件の比エンタルピー概算値です。

空気線図を手元に置けない場合の初期判断に使えますが、厳密な設計では対象条件に合わせて再計算してください。

乾球温度 相対湿度 含湿量の目安 比エンタルピーの目安
15℃ 40% 4.2g/kgDA 25.7kJ/kgDA
15℃ 60% 6.4g/kgDA 31.3kJ/kgDA
20℃ 40% 5.8g/kgDA 34.8kJ/kgDA
20℃ 60% 8.7g/kgDA 42.2kJ/kgDA
25℃ 40% 7.9g/kgDA 45.2kJ/kgDA
25℃ 60% 11.9g/kgDA 55.5kJ/kgDA
25℃ 80% 16.1g/kgDA 66.3kJ/kgDA
30℃ 40% 10.6g/kgDA 57.3kJ/kgDA
30℃ 60% 16.0g/kgDA 71.1kJ/kgDA
30℃ 80% 21.6g/kgDA 85.5kJ/kgDA

表を見ると、乾球温度と相対湿度の両方が上がるにつれて、比エンタルピーが増えることが分かります。

特に高温多湿の条件では、水蒸気が持つ潜熱の影響が大きくなります。

外気条件を比較する考え方

夏季の外気負荷を比較する際、乾球温度だけを見ると判断を誤ることがあります。

例えば30℃で湿度40%の空気と、25℃で湿度80%の空気では、後者のほうが比エンタルピーが高くなる場合があります。

前者は暑く感じても含湿量が比較的少なく、後者は温度が低めでも除湿すべき水分を多く含んでいるためです。

冷房能力や除湿能力を考えるときは、温度差ではなく比エンタルピー差を確認することが重要です。

外気処理空調機では、室内空気と外気の比エンタルピー差から、必要な冷却量の大まかな規模を把握できます。

また、全熱交換器の性能評価でも、給気と排気の比エンタルピー差が有用な判断材料になります。

室内環境の目安

一般的な居住空間では、夏は26℃前後、相対湿度50%から60%程度が目安として挙げられます。

この条件の比エンタルピーは、およそ53kJ/kgDAから58kJ/kgDA程度です。

冬は20℃前後、相対湿度40%から50%程度で、比エンタルピーは35kJ/kgDAから39kJ/kgDA程度となります。

室内環境の快適性は、比エンタルピーだけで決まるものではありません。

気流、放射温度、着衣量、活動量も体感に影響します。

それでも温湿度を一体で評価できる比エンタルピーは、空調管理の共通言語として便利です。

同じ乾球温度でも、相対湿度が高ければ比エンタルピーは増加します。

空調の負荷や外気の評価では、温度と湿度を別々に見るだけでなく、比エンタルピーとして統合して確認しましょう。

空調負荷計算での活用

続いては空調負荷計算での活用を確認していきます。

全熱量の計算

湿り空気の全熱量は、風量と比エンタルピー差を使って求められます。

空気の状態が変わる前後で比エンタルピーを確認し、その差に乾き空気の質量流量を掛けます。

これにより、顕熱と潜熱を合計した全熱負荷を計算できます。

空調機が外気を取り入れて室内給気状態まで処理する場合、外気と給気の比エンタルピー差が特に重要です。

換気量が多い建物では、外気処理に要するエネルギーが無視できない割合を占めることがあります。

全熱量Qは、乾き空気の質量流量mと比エンタルピー差Δhを用いて、Q=mΔhで求めます。

mをkgDA/s、ΔhをkJ/kgDAで扱えば、QはkWとして算出できます。

顕熱負荷と潜熱負荷

顕熱負荷は主に乾球温度の変化に伴う熱負荷です。

人や照明、機器から発生する熱、外壁や窓から流入する熱などが代表例となります。

潜熱負荷は、水蒸気量の増減に伴う熱負荷です。

在室者の発汗や呼気、調理、洗濯物、外気の流入などが潜熱負荷の要因になります。

比エンタルピー差を用いた全熱計算では、これらをまとめて扱えます。

除湿不足が問題になる空間では、顕熱能力だけでなく潜熱能力を確認する必要があります。

冷房能力が十分に見えても、室内湿度が下がらない場合は、潜熱処理能力や運転制御を見直すことが求められます。

全熱交換器と省エネルギー

全熱交換器は、排気が持つ顕熱と潜熱の一部を給気側へ回収する設備です。

夏には高温多湿の外気をそのまま導入するよりも、室内から排出する比較的低エンタルピーの空気を利用して負荷を軽減できます。

冬には、室内空気の熱と水分を回収し、冷たく乾いた外気の負荷を和らげます。

評価では温度交換効率だけでなく、比エンタルピーの変化にも注目しましょう。

温度交換効率が高くても、湿気の移動を考慮しなければ全熱性能を正確に判断できません。

換気量、室内外の温湿度、装置の有効換気量をそろえたうえで、運転条件を比較することが大切です。

比エンタルピー計算の注意点

続いては比エンタルピー計算の注意点を確認していきます。

単位と基準空気の確認

比エンタルピーの単位はkJ/kgDAであり、湿り空気1kg当たりではない点に注意が必要です。

乾き空気基準で表すことで、加湿や除湿によって水蒸気量が変化しても比較しやすくなります。

含湿量もkg/kgDAまたはg/kgDAで扱われます。

計算式へ代入する際はkg/kgDAへ統一しなければなりません。

また、比熱の係数や水の蒸発潜熱は、使用する資料によってわずかに異なることがあります。

複数の資料を組み合わせる場合は、基準条件と単位をそろえましょう。

測定値の誤差

温湿度計の設置場所が悪いと、測定値が実際の空気状態を表さないことがあります。

直射日光、吹出口の近く、外壁面、発熱機器の周辺では、局所的な温湿度の偏りが生じやすいでしょう。

相対湿度計は経年変化や汚れによって誤差が大きくなる場合もあります。

特に高湿度域では、数%の測定誤差が含湿量や比エンタルピーの差として現れます。

計算の精度を高める前に、測定位置と測定機器の校正状態を確認することが先決です。

必要に応じて複数地点を測定し、代表値を用いる方法も有効です。

標高と気圧の影響

空気線図は多くの場合、標準大気圧を前提にしています。

標高が高い地域では大気圧が低くなり、同じ温度と相対湿度でも含湿量の計算結果が変わります。

工場の真空設備周辺や特殊な試験環境でも、標準大気圧の式をそのまま使えないことがあります。

通常の住宅やオフィスでの温湿度管理では、大きな問題にならないことが多いでしょう。

一方で精密な乾燥管理、製造工程の設計、研究用途では、現地気圧を反映した湿り空気線図や計算式を使う必要があります。

比エンタルピーの値は便利な指標ですが、正しい温湿度と気圧を入力して初めて意味を持ちます。

値だけを比較するのではなく、測定条件と計算条件も一緒に記録しておきましょう。

比エンタルピー計算のまとめ

比エンタルピーは、乾き空気の顕熱と水蒸気の潜熱を合わせた、湿り空気の総合的な熱量です。

乾球温度と相対湿度が分かれば、飽和水蒸気圧、水蒸気分圧、絶対湿度の順に計算し、比エンタルピーを導けます。

標準大気圧における代表式は、h=1.006t+x(2501+1.86t)です。

空気線図を使えば、温度と湿度の交点から比エンタルピーを視覚的に読み取れます。

空調の冷房負荷、除湿量、外気処理、全熱交換器の評価では、温度差だけでなく比エンタルピー差を見ることが重要です。

単位をkg/kgDAへそろえ、測定条件や大気圧も確認しながら計算すれば、温湿度データをより実用的に活かせるでしょう。