起電力の公式と求め方は?電池・コイル・交流の基本式を解説!
起電力は、電池が電流を流そうとする働きや、コイルに電圧が生まれる現象を理解するうえで欠かせない考え方です。
電圧と同じ単位で表されるため混同しやすいものの、起電力には発生源の性質や電気エネルギーの変換が関わります。
乾電池の表示、発電機の仕組み、電磁誘導、交流回路の計算までをつなげて考えると、公式の使い分けが明確になるでしょう。
この記事では、起電力の意味から電池、コイル、交流における基本式、計算時の注意点までを順を追って紹介します。
起電力の意味と基本的な考え方

それではまず起電力の意味と、公式を使う前に押さえたい基本を解説していきます。
起電力と電圧の違い
起電力とは、電源が電荷を低い電位側から高い電位側へ移動させ、電流を流そうとする能力を表す量です。
記号は一般にEで表し、単位には電圧と同じボルトを用います。
そのため、起電力と電圧をまったく同じものとして扱ってしまうことがありますが、厳密には注目している場所が異なります。
起電力は電源の内部で電気エネルギーを生み出す働きに着目した値です。
一方の電圧は、回路上の二点間にある電位差を指します。
たとえば新品の乾電池に何もつながない状態では、端子電圧は起電力に近い値になります。
しかし負荷をつないで電流が流れると、電池内部の抵抗による電圧降下が起こるため、端子電圧は起電力より小さくなるのが通常です。
起電力は電源が本来持つ押し出す力、端子電圧は実際に外部回路へ現れている電位差として考えると整理しやすくなります。
起電力が生まれる代表的な現象
起電力の発生原因は一つではありません。
化学反応によって生じる化学起電力、磁束の変化によって生じる誘導起電力、温度差を利用する熱起電力などがあります。
乾電池や蓄電池では、内部の電極と電解質で起こる化学反応が電荷を分離し、起電力を発生させます。
発電機やコイルでは、導体が磁界を横切る運動、またはコイルを通る磁束の変化によって起電力が誘導されます。
異なる金属の接点に温度差を与える熱電対も、測定機器で利用される起電力の例です。
発生原因が違っても、電荷一個あたりに与えられるエネルギーという見方をすると、共通した意味で理解できます。
電気エネルギーから見た定義
起電力は、電源が単位電荷に与える仕事として定義できます。
電源が電荷Qに対して仕事Wをしたとき、起電力Eは次の関係で表されます。
E=W÷Q
Eは起電力、Wは電源が与えた仕事、Qは電気量を表します。
仕事の単位はジュール、電気量の単位はクーロンです。
ジュールをクーロンで割るとボルトになるため、起電力の単位がVになる理由も確認できます。
この定義は、電池や発電機の種類が変わっても使える土台です。
回路計算ではオームの法則を使う場面が多いですが、その前に電流を動かすエネルギーの供給元が起電力であると考えると、各式の役割が見えやすくなります。
電池の起電力と内部抵抗
続いては電池の起電力と、実際の端子電圧を左右する内部抵抗を確認していきます。
電池回路における基本公式
現実の電池は、理想的な起電力Eと内部抵抗rを直列につないだものとして表せます。
外部回路に抵抗Rを接続して電流Iが流れるとき、回路全体の電流は次の公式で求められます。
I=E÷(R+r)
外部抵抗Rと内部抵抗rの合計が、電流を妨げる抵抗になります。
電池の端子電圧をVとすると、V=E-Irという関係が成り立ちます。
電流が大きくなるほど内部抵抗での電圧降下Irも大きくなり、外部に取り出せる電圧は下がります。
ここで大切なのは、電池に1.5Vと印字されていても、使用中に常に1.5Vが出るわけではない点です。
負荷の大きさ、温度、残量、劣化状態によって内部抵抗は変化します。
乾電池の直列接続と並列接続
乾電池を直列につなぐと、各電池の起電力は加算されます。
起電力が1.5Vの電池を2本直列にすると、合成起電力は3.0Vです。
内部抵抗も直列に加わるため、同じ電池2本なら合成内部抵抗はおおむね2倍になります。
一方で並列接続では、理想的には起電力は1本分と同じです。
ただし電流を分担できるため、電池1本あたりの負担を減らしやすくなります。
種類、残量、銘柄の異なる電池を安易に並列接続することは、電池間で電流が流れて発熱や液漏れにつながるおそれがあるため注意が必要です。
| 接続方法 | 起電力の変化 | 内部抵抗の傾向 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 直列接続 | 加算される | 加算される | より高い電圧を得る |
| 並列接続 | 原則として1本分 | 小さくなる傾向 | 電流供給の余裕を増やす |
| 単独使用 | 電池1本の値 | 電池1本の値 | 小型機器への給電 |
起電力と端子電圧の計算例
起電力が1.5V、内部抵抗が0.20Ωの電池に、2.8Ωの抵抗をつないだ場合を考えます。
電流はI=1.5÷(2.8+0.20)となり、0.50Aです。
内部抵抗で生じる電圧降下はIr=0.50×0.20で0.10Vになります。
したがって端子電圧は1.5-0.10で1.4Vです。
外部抵抗にかかる電圧をR×Iで計算しても、2.8×0.50で同じ1.4Vになります。
このように二通りの求め方が一致するかを確認すると、計算ミスを見つけやすいでしょう。
起電力は電源の値、端子電圧は負荷へ届けられた値という区別を、式でも意識することが重要です。
コイルに生じる誘導起電力
続いてはコイルに生じる誘導起電力と、磁束の変化を利用する公式を確認していきます。
ファラデーの電磁誘導の法則
コイルを貫く磁束が変化すると、コイルには起電力が生じます。
この現象を電磁誘導といい、発生する誘導起電力の大きさはファラデーの法則で表せます。
e=-NΔΦ÷Δt
eは誘導起電力、Nはコイルの巻数、ΔΦは磁束の変化量、Δtは変化に要した時間です。
マイナス記号は、変化を打ち消す向きに電流が流れるというレンツの法則を示しています。
数値計算で大きさだけを問う問題では、符号を除いたNΔΦ÷Δtを使うこともあります。
磁束の単位はウェーバで、時間の単位は秒です。
ウェーバ毎秒はボルトに等しいため、誘導起電力もVで表されます。
誘導起電力を大きくする条件
誘導起電力を大きくするには、式の各要素を確認するのが近道です。
まずコイルの巻数Nを増やすと、各巻き線に生じる作用が重なり、起電力は大きくなります。
次に、より強い磁石を使う、鉄心を用いる、磁界の中で導体が通る範囲を増やすなどして、磁束の変化量を大きくする方法があります。
さらに磁石やコイルを速く動かし、短い時間で磁束を変化させれば、Δtが小さくなって起電力は増加します。
磁石を近づけたまま止めているだけでは、磁束が変化しないため誘導起電力は生じません。
磁界が強いことと、起電力が発生し続けることは別の条件です。
電磁誘導では、磁束そのものの大きさだけでなく、磁束がどれだけ速く変わるかが決定的です。
直線導体の運動起電力
磁界の中で直線導体を動かす場合は、運動起電力の公式が便利です。
磁束密度Bの一様な磁界に対して、長さlの導体を速度vで動かすとき、導体の運動方向と磁界が直交していれば次の式になります。
e=Blv
Bは磁束密度、lは有効導体長、vは速度を表します。
導体の動く向きと磁界のなす角をθとする一般形では、e=Blv sinθです。
磁界と平行に動かすとsinθは0となり、起電力は発生しません。
発電機の基本原理は、この運動起電力とコイルの回転を組み合わせたものです。
問題文に角度が出てきたときは、磁界に対する角度なのか、磁束に対する角度なのかを図で確認するとよいでしょう。
交流回路における起電力の表し方
続いては交流回路における起電力の表し方と、最大値や実効値の関係を確認していきます。
正弦波交流の瞬時値
交流発電機でコイルを一定の速さで回転させると、起電力は時間とともに正と負を繰り返す正弦波になります。
瞬間ごとの起電力は、一般に次のように表されます。
e=Em sinωt
Emは最大起電力、ωは角周波数、tは時間です。
角周波数ωは2πfで求められ、fは周波数を表します。
周波数50Hzの交流では、1秒間に50回の周期を繰り返します。
最大起電力Emは波形の頂点に対応する値であり、測定器に表示される交流電圧とは通常異なります。
正弦波では最大値と実効値を混同しないことが、交流計算の基本です。
実効値と家庭用交流の表示
交流の実効値とは、同じ抵抗で同じ時間に同じ熱を発生させる直流電圧に換算した値です。
正弦波交流では、実効値Eと最大値Emの関係はE=Em÷√2です。
反対に最大値を求めるなら、Em=√2Eとなります。
日本の家庭用コンセントで示される100Vは、通常は実効値です。
そのため正弦波として見た最大値は、およそ141Vになります。
テスターの表示とオシロスコープで確認する波形の頂点が違って見えるのは、実効値表示か瞬時値表示かという違いがあるためです。
| 項目 | 記号の例 | 正弦波での関係 | 確認したい場面 |
|---|---|---|---|
| 瞬時値 | e | 時間で変化する | 波形のある時刻の値 |
| 最大値 | Em | 実効値の√2倍 | 波形の頂点 |
| 実効値 | E | 最大値÷√2 | 電源表示や消費電力計算 |
周波数とコイルのリアクタンス
交流回路にコイルをつなぐと、コイルは電流の変化を妨げる性質を示します。
この交流に対する抵抗のような量を誘導リアクタンスといい、XLで表します。
公式はXL=ωL=2πfLです。
Lは自己インダクタンスで、単位はヘンリーを使います。
周波数fが高いほどXLは大きくなり、同じ電圧でも流れる電流は小さくなります。
直流が十分に安定した状態では周波数を0として考えられるため、理想コイルのリアクタンスは0になります。
ただし、スイッチを入れた直後や切った直後には電流が急変しようとするため、コイルの自己誘導が重要になります。
コイルは交流ほど電流を通しにくく、周波数が高いほどその傾向が強いという特徴を押さえましょう。
自己誘導と相互誘導の基本式
続いては自己誘導と相互誘導の基本式を確認していきます。
自己誘導による逆起電力
コイルに流れる電流を変化させると、コイル自身を通る磁束も変化します。
その変化を妨げる向きに、同じコイル内で誘導起電力が生じる現象が自己誘導です。
自己誘導起電力は次の式で表します。
e=-LΔI÷Δt
Lは自己インダクタンス、ΔI÷Δtは電流変化の割合です。
電流を急に増やそうとすると、コイルには増加を妨げる向きの逆起電力が発生します。
反対に電流を急に減らそうとすると、減少を妨げる向きの起電力が生じます。
この性質があるため、コイルを含む回路では電流が瞬時に変化しにくくなります。
リレーやモーターのコイルをスイッチで切るときに高い電圧が発生することがあるのも、自己誘導が関係しています。
自己誘導の符号は、電流の変化を打ち消す向きを示します。式のマイナス記号を省かずに意味を捉えることが大切です。
自己インダクタンスの意味
自己インダクタンスLは、電流の変化に対してどれだけ大きな自己誘導起電力を生じさせるかを示す量です。
単位はヘンリーで、1Hは電流が毎秒1Aの割合で変化したときに1Vの起電力を生じる大きさです。
巻数が多いコイル、断面積が大きいコイル、磁気を通しやすい鉄心を使ったコイルでは、一般に自己インダクタンスが大きくなります。
電源回路のノイズ低減に使うチョークコイルや、スイッチング電源のエネルギー蓄積部品では、この性質が活用されています。
インダクタンスが大きいからといって、常に電流を小さくする部品というわけではありません。
直流か交流か、周波数はいくつか、過渡現象を見ているかによって、役割は変わります。
相互誘導と変圧器
二つのコイルを近づけ、一方のコイルに流れる電流を変化させると、もう一方のコイルにも起電力が生じます。
これが相互誘導です。
変圧器は相互誘導を利用し、一次コイルと二次コイルの巻数比によって交流電圧を変えます。
理想的な変圧器では、電圧比は巻数比に等しくなります。
V二次÷V一次=N二次÷N一次
一次側と二次側の巻数の比で、交流電圧のおよその比が決まります。
二次コイルの巻数が一次コイルより多ければ昇圧、少なければ降圧です。
変圧器は交流の磁束変化を前提にしているため、安定した直流をそのまま入力しても通常の変圧動作はできません。
変圧器で電圧を変えられるのは、交流によって磁束が繰り返し変化するためです。
起電力の公式を使う計算手順
続いては起電力の公式を使う計算手順と、間違えやすい単位や条件を確認していきます。
問題文から現象を見分ける方法
まず、問題が電池の回路を扱っているのか、磁石とコイルの電磁誘導を扱っているのか、交流波形を扱っているのかを見分けます。
電池、内部抵抗、端子電圧、外部抵抗といった語があれば、E=V+IrやI=E÷(R+r)を検討します。
巻数、磁束、時間変化という語が並ぶなら、e=-NΔΦ÷Δtが中心です。
磁束密度、導体長、速度が与えられていれば、e=Blvまたはe=Blv sinθを使う流れになります。
周波数、最大値、実効値、波形が出てくる場合は、正弦波交流の関係式を確認します。
公式を先に暗記順で選ぶよりも、何が変化して起電力が生じるのかを文章から読み取るほうが、応用問題にも対応しやすくなります。
単位換算と有効数字の注意点
起電力の計算では、単位の統一が結果を大きく左右します。
ミリ秒は秒へ、ミリテスラはテスラへ、センチメートルはメートルへ直してから代入しましょう。
たとえば5mTは0.005T、20cmは0.20m、10msは0.010sです。
運動起電力e=Blvでは、BをmTのまま、lをcmのまま入れると、桁が大きくずれてしまいます。
抵抗についても、kΩとΩ、mAとAをそろえる必要があります。
計算の途中では十分な桁を残し、最後に問題の条件に合わせて丸めるとよいでしょう。
単位を書き添えながら計算する習慣は、式の取り違えや入力ミスの予防にも役立ちます。
公式を使うときの確認項目
電池の計算では、内部抵抗を含めるかどうかを最初に確認します。
何もつながっていない開放状態なら電流は流れず、理想的には端子電圧は起電力に等しくなります。
コイルの誘導起電力では、磁束の変化量が正しく求められているかを見ます。
磁束が正から負へ変わる場合は、変化量の符号を含めて考える必要があります。
交流では、問われている値が瞬時値、最大値、実効値のどれなのかを必ず確認してください。
同じVという単位でも、起電力、端子電圧、最大値、実効値では意味が異なるためです。
公式へ代入する前に、現象、求める量、単位、最大値か実効値かという四点を確認すると、起電力の問題は安定して解けるようになります。
起電力の公式と求め方のまとめ
起電力は、電源が電荷を動かすために与えるエネルギーを表す電気的な量です。
電池では起電力Eと内部抵抗rを区別し、電流が流れると端子電圧がE-Irになることを押さえましょう。
コイルでは磁束の時間変化からe=-NΔΦ÷Δtを使い、運動する導体ではe=Blvを基本に考えます。
交流ではe=Em sinωt、実効値E=Em÷√2、コイルのリアクタンスXL=2πfLが重要です。
自己誘導ではe=-LΔI÷Δtとなり、電流変化を妨げる向きに逆起電力が生じます。
問題を解く際は、電池、誘導、交流のどれを扱っているかを見分け、単位をそろえてから公式へ代入する流れが効果的です。
起電力がどのようなエネルギー変換で生まれ、どの量の変化に依存するかまで理解すれば、公式を暗記だけに頼らず使いこなせるでしょう。