変位は、物体が最初にいた位置から最終的にどこへ移ったかを表す物理量です。
距離と似た言葉ですが、移動した道のりそのものではなく、位置の変化に注目する点が大きな違いとなります。
速度や加速度の計算、等速直線運動、等加速度直線運動、グラフ問題などでは、変位を正しく扱えるかどうかが重要です。
この記事では、変位の意味から基本公式、グラフを利用する方法、具体的な計算例までを順番に解説します。
変位の求め方と基本公式

それではまず変位の求め方と基本公式について解説していきます。
位置の差から求める基本計算
変位は、最終位置から初期位置を引くことで求められます。
物体が一直線上を移動する場合、初期位置をx0、最終位置をxとすると、変位はx-x0で表されます。
変位 = 最終位置 - 初期位置
Δx = x - x0
たとえば、位置2mにあった物体が位置9mへ移動した場合、変位は9-2で+7mです。
反対に、位置9mから位置2mへ戻った場合は、2-9となるため、変位は-7mになります。
このマイナス記号は計算ミスではなく、あらかじめ決めた正の向きとは逆方向に移動したことを示しています。
変位を扱う際は、数値の大きさだけでなく、正負まで含めて答える意識が必要でしょう。
速さと時間を使う等速運動の計算
速さが一定の等速直線運動では、変位は速度と時間の積から求められます。
速度をv、経過時間をtとすると、変位はvtです。
変位 = 速度 × 時間
Δx = vt
東向きを正とし、毎秒4mで5秒間進んだ場合、変位は4×5で+20mです。
西向きへ毎秒4mで5秒間進むなら、速度は-4m毎秒と考え、変位は-20mとなります。
速さは向きを含まない量であり、速度は向きを含む量です。
問題文に東、西、右、左、上、下などの方向が書かれている場合は、速度の符号を意識して式に代入してください。
単位はm、cm、kmなどで統一し、時間も秒、分、時間をそろえてから計算することが基本です。
変位と移動距離の違い
変位と移動距離は混同しやすいものの、意味は明確に異なります。
移動距離は実際に進んだ経路の長さであり、必ず0以上の値になります。
一方の変位は、スタート地点とゴール地点の位置関係だけで決まり、途中でどのように動いたかは直接影響しません。
| 比較項目 | 変位 | 移動距離 |
|---|---|---|
| 意味 | 初期位置から最終位置までの位置の変化 | 実際に移動した道のりの合計 |
| 向き | 正負で表す | 原則として正の値のみ |
| 途中の経路 | 基本的に影響しない | すべて加算する |
| 出発点へ戻る場合 | 0になる | 0以外になることがある |
家から駅まで300m歩き、その後に家へ300m戻った場合、移動距離は600mです。
しかし、最終位置は初期位置と同じため、変位は0mになります。
変位は出発点と到着点の差で決まります。
往復運動では距離が大きくても、最後に元の位置へ戻れば変位は0です。
座標と符号による変位の考え方
続いては座標と符号による変位の考え方を確認していきます。
正の向きを決める重要性
変位の問題では、最初に正の向きを決めることが大切です。
横方向の運動なら右向きや東向きを正、縦方向なら上向きを正とするケースが一般的です。
一度決めた向きは、計算の最後まで変えないようにしましょう。
右向きを正と決めた場合、右へ進む変位は正、左へ進む変位は負になります。
方向を途中で入れ替えると、速度や加速度の符号も崩れ、答え全体が不正確になるおそれがあります。
問題文で正の向きが指定されている場合は、その設定を優先してください。
指定がない場合でも、自分で明示的に決めておくと、複数段階の運動を整理しやすくなります。
負の変位が示す移動方向
負の変位は、物体が負の向きへ移動したことを意味します。
数値が負だからといって、移動量が存在しないわけではありません。
たとえば、北向きを正として、ある人が南へ15m移動したとします。
このときの変位は-15mであり、変位の大きさは15mです。
符号は方向を示し、絶対値は大きさを示すと考えると理解しやすくなります。
変位の大きさだけを問われた場合は、通常、符号を外した絶対値で答えます。
ただし、変位そのものを問われた問題では、正負を省略しないことが重要です。
複数回移動した場合の合計
物体が複数回に分けて移動した場合、各区間の変位を符号付きで足し合わせれば、全体の変位を求められます。
右へ8m、左へ3m、さらに右へ6m移動した場合を考えてみましょう。
全体の変位 = +8 - 3 + 6
全体の変位 = +11m
実際の移動距離は8+3+6で17mですが、変位は+11mです。
途中で進行方向が変わる問題ほど、距離と変位を別々に書き出す方法が役立ちます。
計算途中で括弧を使い、左向きの移動を負の数として記録すると、符号の見落としを減らせるでしょう。
位置の変化を数直線に描く方法も、初学者にはわかりやすい手段です。
速度と時間から求める変位計算
続いては速度と時間から求める変位計算を確認していきます。
一定速度で進む場合の公式
速度が一定なら、変位は速度と時間を掛けるだけで求められます。
この公式は、等速直線運動の基本として多くの問題で使われます。
速度が毎秒6m、時間が4秒なら、変位は+24mです。
速度の単位がkm毎時、時間の単位が時間で与えられる場合も、単位をそろえれば同じ考え方を使えます。
たとえば、時速60kmで0.5時間進むなら、変位の大きさは30kmです。
向きが反対なら、速度を負として扱います。
問題の答えに単位を書き忘れると、正しい計算でも評価を落とすことがあるため注意が必要です。
平均速度を使う場合の注意点
速度が途中で変化する運動では、平均速度を使って変位を求められる場合があります。
平均速度は、全体の変位を全体の時間で割った値です。
したがって、変位を求める式に直すと、平均速度に時間を掛ける形になります。
ただし、速さの平均と平均速度は同じとは限りません。
往復運動では変位が0になるため、平均速度も0になります。
一方、往復に要した移動距離を時間で割った平均の速さは0にはなりません。
平均速度では変位を使うという点を押さえると、類題の取り違えを防げます。
単位換算で間違えやすいポイント
変位の計算では、速度と時間の単位換算が頻出の注意点です。
時速を使うなら時間、分速を使うなら分、毎秒を使うなら秒にそろえると計算しやすくなります。
| 変換前 | 変換後 | 換算の考え方 |
|---|---|---|
| 1km | 1000m | 長さの単位をそろえる |
| 1時間 | 3600秒 | 秒を使う速度に合わせる |
| 1分 | 60秒 | 毎秒の計算で利用する |
| 時速36km | 毎秒10m | 36を3.6で割る |
時速72kmを毎秒に変えると、72÷3.6で毎秒20mです。
この物体が3秒進む場合、変位は20×3で60mとなります。
数値だけを式に入れる前に、単位欄を確認する習慣をつけると、計算精度が上がります。
加速度を含む変位公式
続いては加速度を含む変位公式を確認していきます。
等加速度直線運動の基本式
加速度が一定の運動では、初速度と加速度、時間を使って変位を求めます。
初速度をv0、加速度をa、時間をtとすると、変位は次の式で表されます。
変位 = 初速度 × 時間 + 2分の1 × 加速度 × 時間の2乗
Δx = v0t + 2分の1at2
この式は、加速度が一定である等加速度直線運動に限って使用します。
加速度が途中で不規則に変わる場合、そのまま当てはめることはできません。
初速度が0なら、最初の項は0になり、変位は2分の1at2だけで求められます。
自由落下や斜面上の運動でも、条件によってはこの公式が利用されます。
初速度がある運動の計算例
右向きを正とし、初速度が毎秒3m、加速度が毎秒毎秒2m、時間が4秒の運動を考えます。
公式に代入すると、変位は3×4+2分の1×2×4の2乗です。
計算すると、12+16となり、変位は+28mです。
初速度による移動分と、加速によって増えた移動分を分けて考えると意味を理解しやすくなります。
最初の12mは初速度のまま4秒進んだと仮定した部分です。
残りの16mは、加速度によって速度が増加した影響に相当します。
時間は2乗になるため、時間が長くなるほど加速度の影響は大きくなります。
自由落下における変位の扱い
自由落下では、重力による加速度を使って鉛直方向の変位を求めます。
上向きを正と決める場合、重力加速度は負の値になります。
空気抵抗を無視し、初速度0で物体を落とす場合、加速度は-9.8m毎秒毎秒として扱う方法があります。
このとき、変位は2分の1×-9.8×t2です。
変位が負になるのは、物体が上向きを正とした座標に対して下へ移動するからです。
下向きを正に設定した場合は、重力加速度も正となり、変位も正で表せます。
どちらの設定でも計算できますが、符号のルールを最後まで統一することが欠かせません。
グラフから読み取る変位
続いてはグラフから読み取る変位を確認していきます。
位置時間グラフにおける変位
位置時間グラフでは、縦軸が位置、横軸が時間を示します。
ある時刻から別の時刻までの変位は、二つの時刻に対応する位置の差です。
グラフが右上がりなら位置が正の向きへ増え、右下がりなら位置が負の向きへ変化しています。
たとえば、2秒後の位置が5m、6秒後の位置が17mなら、その間の変位は+12mです。
線の傾きは速度を表し、傾きが急であるほど速度の大きさが大きいことを示します。
位置そのものと変位を混同しないよう、必ず終点の位置から始点の位置を引いてください。
速度時間グラフの面積
速度時間グラフでは、グラフと時間軸で囲まれた面積から変位を求めます。
速度が正の領域にある面積は正の変位、速度が負の領域にある面積は負の変位です。
速度が毎秒5mで4秒間一定なら、長方形の面積は5×4で20となり、変位は+20mです。
速度が時間とともに直線的に増える場合は、三角形や台形の面積を利用します。
速度時間グラフの面積は移動距離ではなく変位である点に注意してください。
負の部分も含めて面積を符号付きで加えると、全体の変位を計算できます。
移動距離を求める場合は、負の部分も正の大きさとして加算します。
グラフ問題で確認したい手順
グラフ問題では、いきなり計算を始めるよりも、軸と単位を確認する手順が有効です。
まず、縦軸が位置なのか速度なのかを見分けます。
次に、求めたい範囲の開始時刻と終了時刻を確認してください。
位置時間グラフなら位置の差を求め、速度時間グラフなら符号付きの面積を求めます。
時間軸の目盛りが1秒刻みではない場合もあるため、数値を丁寧に読み取る必要があります。
グラフの線が時間軸を横切る場面では、速度の向きが変化している可能性があります。
位置時間グラフでは位置の差を確認します。
速度時間グラフでは面積を確認します。
グラフの種類を見分けることが、変位問題の最初のポイントです。
変位計算で起こりやすい間違い
続いては変位計算で起こりやすい間違いを確認していきます。
距離をそのまま変位として扱う誤り
変位の問題で最も多い誤りは、移動距離をそのまま変位として答えることです。
特に、途中で方向転換する往復運動では、二つの値に大きな差が生まれます。
右へ10m、左へ10m移動した場合、移動距離は20mですが変位は0mです。
答える前に、問題が尋ねているものが変位なのか移動距離なのかを確認しましょう。
変位は位置の差、距離は道のりの合計という区別を毎回意識すると失点を防げます。
文章題では、最終的にどこにいるのかを図で確認する方法も効果的です。
数直線上に出発点と到着点を書くだけでも、変位の意味が明確になります。
符号を途中で落とす計算ミス
左向き、下向き、南向きなどの移動を負として扱ったあと、途中で符号を落とすミスにも注意が必要です。
負の速度に時間を掛ければ、変位も負になります。
負の加速度を含む式では、括弧を使って代入すると間違いを減らせます。
たとえば、加速度が-2m毎秒毎秒なら、式には-2ではなく、必要に応じて括弧付きの値として書くとよいでしょう。
計算結果が負になった場合も、すぐに誤答と判断する必要はありません。
決めた正の向きと逆方向への変位なら、負の答えが正しいケースがあります。
符号には意味があるため、最後に絶対値だけを答えてしまわないよう注意してください。
公式の使い分けを誤るケース
変位の公式は、運動の条件に応じて使い分ける必要があります。
速度が一定ならΔx=vtを使い、加速度が一定ならΔx=v0t+2分の1at2を検討します。
速度が不規則に変化する場合は、平均速度やグラフ、区間ごとの計算を使うことがあります。
| 運動の条件 | 主な求め方 | 確認事項 |
|---|---|---|
| 速度が一定 | 速度×時間 | 速度の符号と単位 |
| 加速度が一定 | 初速度と加速度の公式 | 時間の2乗 |
| 速度が段階的に変化 | 区間ごとに変位を加算 | 各区間の方向 |
| 速度時間グラフ | 符号付き面積 | 時間軸の下側の扱い |
公式を暗記するだけでなく、問題文から速度一定か、加速度一定かを読み取ることが大切です。
変位の公式は、運動の条件に合わせて選びます。
まずは速度、加速度、時間、初期位置のどの情報が与えられているかを整理してください。
変位計算のまとめ
変位は、最終位置から初期位置を引いて求める位置の変化です。
基本式はΔx=x-x0であり、等速運動ではΔx=vt、等加速度直線運動ではΔx=v0t+2分の1at2を使います。
途中の移動経路を足し合わせる移動距離とは異なり、変位は出発点と到着点の関係で決まります。
往復して元の位置へ戻れば、移動距離があっても変位は0です。
また、変位では正負が方向を表すため、符号まで含めて答えることが重要になります。
問題を解く際は、正の向きを決め、単位をそろえ、与えられた運動条件に合う公式を選びましょう。
位置時間グラフでは位置の差を、速度時間グラフでは符号付き面積を利用します。
こうした基本を押さえれば、変位に関する計算問題を落ち着いて解けるようになるでしょう。