設計において「実際のせん断応力が安全な範囲内に収まっているかどうか」を確認するために欠かせないのが「許容せん断応力」という概念です。
許容せん断応力は材料の強度特性と安全率から算出されるものであり、設計の根拠となる重要な基準値です。
本記事では、許容せん断応力の定義・材料強度からの算出方法・安全率の考え方・主要材料の許容値について詳しく解説していきます。
許容せん断応力とは?定義と基本的な考え方
それではまず、許容せん断応力の定義と基本的な考え方から解説していきましょう。
許容せん断応力(allowable shear stress)とは、設計において材料に許容される(超えてはならない)せん断応力の上限値のことです。
材料の破壊・降伏に対して十分な安全余裕を確保するために、材料強度に安全率を考慮して設定されます。
許容せん断応力の算出式
許容せん断応力の算出方法
方法①:引張降伏応力から算出
τ_allow = σ_y / (√3 × S) (Von Misesの降伏基準)
τ_allow = σ_y / (2 × S) (Trescaの降伏基準)
方法②:引張強さから算出
τ_allow = σ_u / (2 × S) (一般的な目安)
σ_y:引張降伏応力(MPa)、σ_u:引張強さ(MPa)、S:安全率
設計基準によって採用する式・安全率が異なるため、適用する規格・基準を確認することが重要です。
安全率の設定
安全率Sは、材料のばらつき・荷重の不確かさ・解析精度・破損時の影響度などを考慮して設定されます。
一般的な機械設計では静荷重で安全率2〜3程度、繰り返し荷重(疲労)では3〜5、衝撃荷重ではさらに高い値が使われることがあります。
建築基準法に基づく許容応力度設計では、長期荷重で安全率約1.5〜2、短期(地震・風)で約1.0相当の許容値が設定されています。
主要材料の許容せん断応力の目安
続いては、代表的な工業材料の許容せん断応力の目安を確認していきましょう。
| 材料 | 降伏応力σ_y(MPa) | 許容せん断応力 τ_allow(MPa)の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| SS400(一般構造用鋼) | 245 | 94〜100 | 建築基準法の長期許容値 |
| S45C(機械構造用炭素鋼) | 490 | 140〜165 | 安全率3として算出 |
| SUS304 | 205 | 80〜100 | 降伏応力の0.58倍目安 |
| A6061-T6 | 276 | 90〜110 | アルミ合金 |
| FC250(鋳鉄) | −(引張強さ250) | 50〜60 | 引張強さの20〜25%目安 |
設計基準別の許容せん断応力の考え方
続いては、機械設計・建築設計・機械要素それぞれの設計基準における許容せん断応力の取り扱いを確認していきましょう。
機械設計での許容せん断応力
機械設計では、使用条件(静荷重・繰り返し荷重・衝撃荷重)・安全率・材料の品質保証レベルに応じて許容せん断応力を設定します。
JISB規格・機械設計便覧などに材料別の許容応力値が示されており、これらを参照しながら設計を行います。
ボルトの許容せん断応力
ボルトの接合設計では、JIS規格(JISB1051等)に基づいたボルト強度区分(4.8・8.8・10.9・12.9など)ごとに許容せん断応力が定められています。
高強度ボルト(10.9・12.9)は高い許容せん断応力を持つため、小径ボルトでも大きな荷重に対応できます。
まとめ
本記事では、許容せん断応力の定義・算出方法・安全率の設定・主要材料の許容値・設計基準別の考え方について解説しました。
許容せん断応力は降伏応力または引張強さに安全率を考慮して算出する設計の安全基準であり、機械設計・建築設計・ボルト接合など幅広い場面で活用されます。
適用する規格・基準を確認した上で正確な許容値を設定することが、安全で信頼性の高い設計の出発点となるでしょう。