流体力学を学ぶ上で最も基本的かつ重要な方程式のひとつが「連続の式」です。
連続の式は質量保存則を流体の流れに適用したものであり、「流れの中で質量は消えたり増えたりしない」というシンプルかつ本質的な物理法則を数式で表したものです。
この式を理解することで、配管の断面積変化による流速変化・流量計算・管路の設計など、多くの流体力学の問題を解く基礎が得られます。
本記事では、連続の式の定義・物理的な意味・導出方法・非圧縮性流体への適用・実用的な計算方法まで、わかりやすく詳しく解説していきます。
連続の式とは?質量保存則の流体への適用
それではまず、連続の式の基本的な意味と質量保存則との関係について解説していきます。
連続の式(equation of continuity)は、流れの中での流体の質量保存を表す基本方程式です。
「どこかで流体が湧き出したり消えたりしない」という自然界の基本原理を数式化したものであり、あらゆる流体力学計算の出発点となります。
連続の式の一般形(圧縮性流体)
∂ρ/∂t + ∇·(ρv) = 0
∂ρ/∂t:時間による密度変化(非定常項)
∇·(ρv):質量フラックスの発散(流出入)
非圧縮性・定常流(ρ = 一定、∂ρ/∂t = 0):∇·v = 0
非圧縮性流体(水・低速空気)の定常流では、∇·v = 0という非常にシンプルな形になります。
これは「流体の流速のベクトル場に湧き出しも吸い込みもない」ことを意味し、断面積と流速の積(体積流量)が流路内で一定であることを示しています。
連続の式の実用的な形:断面平均を使った表現
管路や開水路の工学計算では、断面平均流速を使った連続の式が実用的に使われます。
断面平均を使った連続の式
非圧縮性・定常流の場合:Q = A₁v₁ = A₂v₂ = 一定
Q:体積流量(m³/s)
A₁、A₂:断面積(m²)
v₁、v₂:断面平均流速(m/s)
この式は「どの断面を通る流量も同じ」という直感的に理解しやすい形であり、配管設計・流量計算の最も基礎的な式として日常的に使われます。
連続の式から導かれる断面積と流速の関係
連続の式 A₁v₁ = A₂v₂ から、断面積と流速の間に反比例の関係があることがわかります。
断面積が2倍になれば流速は1/2、断面積が1/4になれば流速は4倍になります。
これはホースの先を指で絞ると水が勢いよく出るという日常的な現象を説明しており、ノズル・絞り弁・ベンチュリ管などの設計原理の基礎となっています。
連続の式の導出方法:コントロールボリュームによるアプローチ
続いては、連続の式の導出方法を確認していきます。
連続の式は「コントロールボリューム(検査体積)」と呼ばれる空間領域に対する質量収支から導出されます。
コントロールボリュームによる導出
コントロールボリュームによる連続の式の導出
① 固定した空間的領域(コントロールボリューム:CV)を考える
② CV内の質量変化率 = CV内への質量流入率 − CV外への質量流出率
③ 数式で表すと:
d/dt ∫∫∫_CV ρ dV = −∮_CS ρ(v·n) dA
④ ガウスの定理を適用して変換する
⑤ 結果:∂ρ/∂t + ∇·(ρv) = 0
この導出は「コントロールボリュームアプローチ」と呼ばれ、流体力学の方程式を導出する最も基本的な手法のひとつです。
コントロールボリューム内の物理量の変化が、境界面での流入・流出と等しいという収支の考え方は、質量だけでなく運動量・エネルギーの保存式の導出にも同様に使われます。
圧縮性流体への拡張
気体など密度が変化する圧縮性流体では、密度ρが時間的・空間的に変化するため連続の式は一般形(∂ρ/∂t + ∇·(ρv) = 0)を使います。
衝撃波・超音速流れ・音響問題など、密度変化が重要な流れでは圧縮性を考慮した連続の式が不可欠です。
一方、マッハ数が0.3以下の低速流れでは密度変化が小さく(1%未満)、非圧縮性の仮定が十分に成立します。
連続の式の実際の応用:管路・開水路・流量計
続いては、連続の式の実際の工学的応用例を確認していきます。
管路における流量計算
管路の流量計算例
上流:内径D₁ = 100mm(A₁ = 78.5 cm²)、流速v₁ = 1.0 m/s
下流:内径D₂ = 50mm(A₂ = 19.6 cm²)
連続の式:A₁v₁ = A₂v₂
v₂ = A₁v₁/A₂ = 78.5 × 1.0 / 19.6 ≒ 4.0 m/s
流量Q = A₁v₁ = 78.5 cm² × 1.0 m/s = 78.5×10⁻⁴ m³/s = 7.85 L/s
このように連続の式を使えば、管径が変わる部分での流速変化を簡単に計算できます。
配管系の設計では各断面での流速が適正範囲(一般に1〜3 m/s)に収まっているかを確認するためにこの計算が頻繁に使われるでしょう。
開水路の流れへの適用
河川・水路・排水路など開水路の流れにも連続の式が適用されます。
開水路では水面が大気に接しているため、管路とは異なり流れ方向に水位(断面積)が変化することがあります。
連続の式 Q = Av = 一定 を水路断面の形状(台形・矩形・三角形など)に合わせた断面積計算と組み合わせることで、水位・流速・流量の関係を求めることができます。
差圧式流量計の原理
ベンチュリ管・オリフィス板などの差圧式流量計は、連続の式とベルヌーイの定理を組み合わせた原理で動作します。
絞り部での断面積変化による流速変化をベルヌーイの定理で圧力変化に変換し、その差圧を計測することで流量を求めます。
連続の式とベルヌーイの定理の組み合わせは、流量計・ポンプ・ノズル・混合器など多くの流体機器の設計原理として現在も広く活用されています。
まとめ
本記事では、連続の式の定義・物理的意味・導出方法・非圧縮性流体への適用・実用的な計算例まで詳しく解説してきました。
連続の式は質量保存則を流体に適用したものであり、非圧縮性定常流では Q = A₁v₁ = A₂v₂ = 一定というシンプルな形で使えます。
断面積と流速が反比例する関係は、ノズル・絞り弁・ベンチュリ管など多くの流体機器の基本設計原理です。
コントロールボリュームアプローチによる導出を理解することで、質量・運動量・エネルギーの保存式の体系的な理解にもつながります。
連続の式をしっかりとマスターし、流体力学の学習と実務設計の基礎として積極的に活用してみてください。