医療現場において、患者さんの意識レベルを正確に評価することは極めて重要です。意識障害の程度を客観的に測定し、医療チーム間で統一した基準で情報を共有するために使用されるのが「GCS」という評価スケールです。
GCSは世界中の医療機関で広く使用されており、救急医療や脳神経外科、集中治療室などで患者さんの状態把握に欠かせないツールとなっています。この評価方法を理解することで、医療従事者は患者さんの意識状態を的確に判断し、適切な治療方針を立てることができます。
本記事では、GCSの基本的な概念から具体的な評価方法、覚え方のコツ、そして日本でよく使用されるJCSとの違いまで、医療・看護分野で必要な知識を分かりやすく解説していきます。
gcsとは(意識レベル:医療)?
それではまず、GCSとは何かについて解説していきます。
GCS(Glasgow Coma Scale:グラスゴー・コーマ・スケール)は、1974年にスコットランドのグラスゴー大学で開発された意識レベルの評価スケールです。「ジーシーエス」と読み、世界中の医療現場で標準的に使用されている意識障害の評価方法です。
GCSは、患者さんの意識状態を3つの反応領域に分けて評価します。これらは「開眼反応(Eye opening:E)」「言語反応(Verbal response:V)」「運動反応(Motor response:M)」の3項目で、それぞれに点数を付けて総合的に意識レベルを判定します。
この評価方法の最大の特徴は、主観的な判断を排除し、客観的で再現性の高い評価が可能なことです。どの医療従事者が評価しても同じ結果が得られるよう、明確な判定基準が設けられています。
GCSの総得点は3点から15点の間で表され、15点が正常な意識状態、3点が最も重篤な意識障害状態を示します。一般的に8点以下は重篤な意識障害、9~12点は中等度の意識障害、13~15点は軽度の意識障害と分類されます。
医療現場では、患者さんの初期評価から経過観察まで、継続的にGCSを測定することで意識レベルの変化を把握し、治療効果の判定や予後の予測に活用しています。
gcsの一覧表【eやvやM:tなど】
続いては、GCSの具体的な評価項目と点数を確認していきます。
GCSは以下の3つの項目で構成され、それぞれの最高点を合計した15点が満点となります。
開眼反応(Eye opening:E)- 最高4点
点数 | 反応内容 | 詳細 |
---|---|---|
4点 | 自発的に開眼 | 何も刺激しなくても目を開けている |
3点 | 呼びかけで開眼 | 声をかけると目を開ける |
2点 | 痛み刺激で開眼 | 痛い刺激を与えると目を開ける |
1点 | 開眼しない | どのような刺激でも目を開けない |
言語反応(Verbal response:V)- 最高5点
点数 | 反応内容 | 詳細 |
---|---|---|
5点 | 見当識良好 | 時間・場所・人物の見当識が保たれている |
4点 | 混乱した会話 | 会話は成立するが混乱している |
3点 | 不適切な言葉 | 単語は出るが会話にならない |
2点 | 理解不能な音声 | うめき声などの音声のみ |
1点 | 発語なし | 全く声を出さない |
運動反応(Motor response:M)- 最高6点
点数 | 反応内容 | 詳細 |
---|---|---|
6点 | 従命可能 | 指示に従って手足を動かせる |
5点 | 疼痛部位に向かう反応 | 痛い場所を手で払いのける |
4点 | 逃避反応 | 痛み刺激から身体を遠ざける |
3点 | 異常屈曲反応 | 痛み刺激で肘が曲がる(除脳硬直) |
2点 | 伸展反応 | 痛み刺激で手足が伸びる(除皮質硬直) |
1点 | 反応なし | 痛み刺激でも全く動かない |
特殊な表記について
- T(Tracheostomy) 気管切開や挿管中で発語できない場合に使用
- E表記 眼瞼浮腫などで開眼評価が困難な場合に使用
評価は「GCS:E○V○M○」の形で記録され、例えば正常であれば「GCS:E4V5M6(15点)」と表記されます。
gcsの覚え方のコツ
続いては、GCSの覚え方のコツとJCSとの違いを確認していきます。
GCSの覚え方のコツ
GCSを効率よく覚えるためのポイントをご紹介します。
項目の覚え方
「EVM」で覚える
- Eye opening(開眼反応)
- Verbal response(言語反応)
- Motor response(運動反応)
点数の覚え方
「4・5・6」で覚える
- 開眼反応は最高4点
- 言語反応は最高5点
- 運動反応は最高6点
重症度の目安
「8点ルール」で覚える
- 8点以下 重篤な意識障害
- 9~12点 中等度の意識障害
- 13~15点 軽度の意識障害
各項目の覚え方
開眼反応
「自発→声→痛み→なし」の順番
言語反応 「正常→混乱→単語→音声→なし」の順番
運動反応 「従命→疼痛部位→逃避→屈曲→伸展→なし」の順番
GCSとjcsとの違い
日本では、GCSと並んでJCS(Japan Coma Scale)も広く使用されています。両者の主な違いは以下の通りです。
項目 | GCS | JCS |
---|---|---|
開発国 | イギリス(1974年) | 日本(1974年) |
評価項目 | 3項目(E・V・M) | 1項目(覚醒レベル) |
点数範囲 | 3~15点 | 0~300点 |
国際的使用 | 世界標準 | 主に日本 |
評価の詳細さ | より詳細 | よりシンプル |
JCSの特徴
- 覚醒状態のみに焦点を当てたシンプルな評価
- 1桁(1~3)、2桁(10~30)、3桁(100~300)で分類
- 日本の医療現場では馴染み深い評価方法
使い分け
- GCS 国際的な研究や重症例の詳細評価に適している
- JCS 日常的な意識レベル評価や日本国内での情報共有に適している
どちらの評価方法も重要で、医療現場では両方を理解し、状況に応じて使い分けることが求められます。
まとめ 医療のgcsとは?eやtとは?jcsとの違いも【スケール:意識障害:医療・看護用語】
本記事では、医療現場で重要な意識レベル評価ツールであるGCSについて詳しく解説してきました。
GCSは開眼反応(E)、言語反応(V)、運動反応(M)の3項目で構成され、それぞれ4点、5点、6点の最高点を持つ15点満点の評価スケールです。客観的で再現性の高い評価が可能で、世界中の医療機関で標準的に使用されています。
覚え方のコツとして「EVM」「4・5・6」「8点ルール」を活用し、各項目の評価基準を段階的に理解することが重要です。また、日本で使用されるJCSとは評価方法や特徴が異なるため、両者の違いを把握して適切に使い分ける必要があります。
GCSは患者さんの意識状態を正確に把握し、適切な医療を提供するための重要なツールです。医療従事者にとって必須の知識であり、継続的な学習と実践を通じて正確な評価技術を身につけることが大切です。
意識レベルの評価は患者さんの生命に関わる重要な判断材料となるため、常に慎重かつ正確な評価を心がけましょう。