射出成形において「気泡」に関わる不良は複数の種類があり、それぞれ異なる発生メカニズムと対策を必要とします。
製品内部に空洞が生じる「ボイド(void)」、表面に銀色の筋が走る「シルバーストリーク(silver streak)」、末端部が焦げる「ガス焼け(burn mark)」はいずれも気体の存在が原因の成形不良です。
これらの不良は外観品質の低下だけでなく、製品強度・寸法精度にも影響するため、原因の特定と適切な対策が重要です。
本記事では、射出成形における気泡関連不良の発生メカニズム・原因・脱気技術・成形条件・材料管理による対策まで、詳しく解説していきます。
射出成形の気泡関連不良:三種類の違いと共通点
それではまず、射出成形における主な気泡関連不良の種類と違いについて解説していきます。
射出成形における気泡関連の不良は大きく「ボイド」「シルバーストリーク」「ガス焼け(バーンマーク)」の三種類に分類されます。
気泡関連不良の三種類の比較
① ボイド(Void)
現象:製品内部に気泡・空洞が発生する
原因:冷却収縮による内部の圧力低下・保圧不足
発生場所:肉厚部・製品中心部
② シルバーストリーク(Silver Streak)
現象:製品表面に銀色・白色の筋が現れる
原因:樹脂中の水分・揮発分・分解ガスの混入
発生場所:ゲート付近から流れ方向に筋状
③ ガス焼け(Burn Mark)
現象:充填末端部が茶色・黒色に焦げる
原因:トラップされた空気の断熱圧縮による発熱
発生場所:充填末端部・コーナー・ボス底部
三種類の不良はいずれも「気体」が原因ですが、気体の発生源(収縮空間・樹脂中の揮発分・トラップされた空気)が異なります。
原因となる気体の発生源を正確に特定することが効果的な対策の前提となります。
ボイドの発生メカニズムと対策
ボイドはヒケと同じく冷却収縮が原因ですが、表面が硬くて変形できない(高剛性・高肉厚)場合に内部に空洞として現れる不良です。
外表面が先に固化して硬い層を形成し、内部が冷却収縮する際に体積減少分が表面の変形ではなく内部の空洞(ボイド)として現れます。
ボイドの主な対策
・保圧圧力の増加・保圧時間の延長(収縮補正の強化)
・ゲートサイズの拡大(保圧が届く時間の延長)
・肉厚の削減(製品設計変更)
・型温度の低下(表面固化の促進)
・ゲート位置を肉厚部近くに変更
ボイドとヒケは同じ原因から発生しますが、製品表面の剛性によって表れ方が異なります。
透明樹脂(PC・アクリル)では内部のボイドが外部から視認できるため特に問題となります。
シルバーストリークの発生メカニズムと対策
続いては、シルバーストリークの発生メカニズムと対策を確認していきます。
シルバーストリークは樹脂中に含まれる気体(水蒸気・揮発分・分解ガス)が射出時にキャビティ内で膨張して製品表面に銀色・白色の筋として現れる不良です。
シルバーストリークの原因の種類
シルバーストリークの原因となる気体の発生源は以下の三種類に分類されます。
まず、樹脂ペレットの吸湿による水分が最も一般的な原因です。
次に、樹脂中の残留モノマー・可塑剤・添加剤の揮発による揮発分も原因となります。
さらに、過熱・滞留による樹脂の熱分解によって発生する分解ガスも原因のひとつです。
原料乾燥による対策(最重要)
シルバーストリークの最も根本的な対策は、成形前の原料の十分な乾燥です。
主要樹脂の推奨乾燥条件
PP(ポリプロピレン):80℃ × 3〜4時間
ABS:80〜90℃ × 3〜4時間
PC(ポリカーボネート):120℃ × 4〜6時間
ナイロン(PA6):80℃ × 8〜12時間
PET(ポリエチレンテレフタレート):160℃ × 4〜6時間
※乾燥後は吸湿を防ぐため速やかに使用すること
特に吸湿性の高い樹脂(ナイロン・PET・PC・ABS)では乾燥管理が非常に重要であり、乾燥不足は必ずシルバーストリーク・気泡の原因になります。
成形条件による対策
樹脂温度の過剰な上昇は熱分解を促進してシルバーストリークを悪化させるため、推奨成形温度の上限を超えないよう管理することが重要です。
スクリューの逆流防止弁(チェックリング)の摩耗・故障もシルバーストリークの原因になるため、定期的な点検が必要です。
スクリュー回転数の過剰な上昇は剪断発熱による樹脂温度上昇を招くため、適切な回転数設定が重要でしょう。
ガス焼けの発生メカニズムと対策
続いては、ガス焼け(バーンマーク)の発生メカニズムと対策を確認していきます。
ガス焼けのメカニズム:ディーゼル効果
ガス焼けは充填末端部にトラップされた空気が、高速射出時に急激に圧縮されることで高温になり、樹脂を熱焼損させる現象です。
この現象はディーゼルエンジンの圧縮着火と同様の原理であることから「ディーゼル効果(Diesel Effect)」とも呼ばれます。
空気は断熱圧縮されると温度が急上昇し、理論計算では数百℃〜1000℃近くに達することもあるため、樹脂の熱分解・炭化が起きます。
ガス焼けの対策
ガス焼けの対策として最も有効なのは、トラップされた空気を逃がすための「ベント(通気溝)」を金型の適切な位置に設けることです。
ガス焼け対策の方法
① 金型ベントの追加・清掃(最も有効)
・ベント深さ:樹脂によって異なる(PP:0.01〜0.03 mm、PA:0.01〜0.02 mm)
② 射出速度の低下(空気の圧縮速度低減)
③ ゲート・ランナーの再設計(空気のトラップ経路の改善)
④ 真空排気システムの採用(金型内を減圧してから射出)
ベントの設計は、ガス焼けには有効ですが、ベントが大きすぎるとバリが発生するため、適切なベント深さの設定が重要です。
まとめ
本記事では、射出成形の気泡関連不良について、ボイド・シルバーストリーク・ガス焼けの三種類の発生メカニズム・原因・対策まで詳しく解説してきました。
ボイドは冷却収縮による内部空洞であり保圧強化・肉厚削減が有効、シルバーストリークは水分・揮発分・分解ガスが原因で十分な原料乾燥が最重要対策です。
ガス焼けはトラップ空気の断熱圧縮(ディーゼル効果)が原因であり、金型ベントの設置が最も有効な対策です。
三種類の不良はいずれも発生源(収縮・樹脂内揮発分・空気)が異なるため、現象を正確に特定してから対策を実施することが効率的な品質改善の基本です。
気泡関連不良の知識を体系的に身につけ、射出成形の品質管理・不良対策・材料管理に積極的に役立ててみてください。