磁化は、磁石や磁性材料がどの程度磁気を帯びているかを表す重要な物理量です。
モーター、変圧器、永久磁石、磁気センサーなどを扱う場面では、磁化の単位や磁束密度との違いを理解しておく必要があります。
ただし、SI単位系ではA/mを使う一方、CGS単位系ではemu/cm³などが用いられるため、資料によって数値の見え方が大きく変わります。
この記事では、磁化の単位の基本と換算時の注意点を、式や表を交えてわかりやすく解説します。
磁化の単位と基本的な考え方

それではまず磁化の単位と基本的な考え方について解説していきます。
磁化が表す物理的な意味
磁化とは、物質が持つ磁気モーメントが単位体積あたりにどれほど存在するかを示す量です。
記号では一般にMで表し、磁性体の内部で磁気がどの程度整列しているかを数値化したものと考えると理解しやすいでしょう。
たとえば鉄に外部磁界を加えると、内部にある微小な磁石のような性質を持つ領域が同じ方向にそろいやすくなります。
この整列の程度を表すのが磁化です。
磁化が大きい材料ほど、同じ体積の中に大きな磁気モーメントが集まっている状態といえます。
磁化は磁石そのものの強さだけでなく、材料内部の磁気的な状態を示す量である点がポイントです。
磁化Mは、磁気モーメントを体積で割った値です。
磁気モーメントの総量だけでは材料の大きさに影響されるため、比較には単位体積あたりの磁化が役立ちます。
SI単位系におけるA/m
国際単位系であるSI単位系では、磁化の単位にA/mを用います。
Aはアンペア、mはメートルを表しており、読み方はアンペア毎メートルです。
磁化がA/mで表される理由は、磁化が電流によって生じる磁気的な作用と密接に関係しているためです。
磁気モーメントのSI単位はA・m²であり、これを体積m³で割るとA/mになります。
M = m ÷ V
Mは磁化、mは磁気モーメント、Vは体積を表します。
磁気モーメントがA・m²で体積がm³なら、磁化の単位はA/mとなります。
材料の磁化特性を示すカタログや学術論文では、kA/mという単位もよく見かけます。
1kA/mは1000A/mであり、強い磁性を持つ材料ではこちらの表記のほうが数値を読み取りやすい場合があります。
磁界Hや磁束密度Bとの区別
磁化Mは、磁界Hや磁束密度Bと混同されやすい量です。
いずれも磁気に関係しますが、意味と単位は同じではありません。
| 物理量 | 主な記号 | SI単位 | 示す内容 |
|---|---|---|---|
| 磁化 | M | A/m | 物質内部の磁気モーメントの密度 |
| 磁界 | H | A/m | 外部から加えられる磁気的な作用 |
| 磁束密度 | B | T | 空間や材料中を通る磁気の密度 |
| 磁気分極 | J | T | 磁化に真空の透磁率を掛けた量 |
磁化Mと磁界HはどちらもA/mで表されるため、単位だけで意味を判別することはできません。
そのため、図面、測定データ、材料仕様書では、記号と測定条件をセットで確認することが欠かせません。
磁化に関係する単位の種類
続いては磁化に関係する単位の種類を確認していきます。
体積磁化と質量磁化
一般的に磁化と呼ばれるものは、体積磁化を指します。
体積磁化は単位体積あたりの磁気モーメントであり、SI単位ではA/mです。
一方で、材料評価の分野では質量磁化が使われることもあります。
質量磁化は試料の質量あたりの磁気モーメントを表し、SI単位ではA・m²/kgが用いられます。
粉末試料や微量試料の測定では、体積を正確に求めにくいことがあります。
そのような場合に、質量を基準にしたデータが有効です。
ただし、体積磁化と質量磁化はそのまま比較できません。
密度を用いて換算する必要があります。
体積磁化 = 質量磁化 × 密度
密度の単位をSI単位系にそろえることで、質量基準のデータを体積基準へ換算できます。
磁気モーメントの単位
磁気モーメントは、物体全体がどれほど磁石として振る舞うかを表す量です。
SI単位ではA・m²が使われます。
磁気モーメントは体積の大きい試料ほど大きくなりやすいため、材料そのものの性能比較には不向きな場合があります。
そこで、体積で割った磁化や、質量で割った質量磁化が利用されます。
永久磁石の評価では、試料の大きさだけで判断せず、残留磁化や保磁力とあわせて確認することが大切です。
磁気モーメントは全体量、磁化は密度を示すという違いを押さえておくと、資料の読み違いを防げます。
磁気分極とテスラ表記
磁気分極Jは、磁化Mに真空の透磁率を掛けた量です。
単位はテスラであり、磁束密度と同じ単位を使います。
永久磁石のカタログでは、残留磁束密度Brや磁気分極Jrがテスラで掲載されることがあります。
そのため、磁化がテスラで表されているように感じるかもしれません。
しかし、厳密にはA/mで表す磁化Mと、Tで表す磁気分極Jは別の物理量です。
テスラ表記を見たときは、磁束密度Bなのか磁気分極Jなのかを確認しましょう。
磁化MそのもののSI単位は、原則としてA/mです。
SI単位系とCGS単位系の違い
続いてはSI単位系とCGS単位系の違いを確認していきます。
CGS単位系で使われるemu/cm³
CGS単位系では、磁化にemu/cm³が使われることがあります。
emuはelectromagnetic unitを略した表記であり、電磁気学の古い単位体系で広く利用されてきました。
特に海外の古い論文、磁性材料の研究資料、測定装置の出力画面では、emuやGaussといった単位に出会うことがあります。
CGS単位系の磁化は、emu/cm³のほかemu/gで表記される場合もあります。
emu/gは質量磁化に近い考え方であり、粉末材料や酸化物磁性体の比較で使われることがあります。
CGS単位系では体積基準か質量基準かを先に見分けることが換算の第一歩です。
A/mとemu/cm³の換算関係
体積磁化を換算する場合、1emu/cm³は1000A/mに相当します。
つまり、CGS単位系で100emu/cm³と記載されていれば、SI単位系では100000A/mです。
kA/mで表せば100kA/mとなります。
1emu/cm³ = 1000A/m
1A/m = 0.001emu/cm³
単位の接頭語kを使う場合、1emu/cm³ = 1kA/mと覚えると便利です。
| CGS単位系 | SI単位系 | 換算の目安 |
|---|---|---|
| 1emu/cm³ | 1000A/m | 1kA/m |
| 10emu/cm³ | 10000A/m | 10kA/m |
| 100emu/cm³ | 100000A/m | 100kA/m |
| 1000emu/cm³ | 1000000A/m | 1000kA/m |
この換算は体積磁化に対するものです。
emu/gをA/mへ変換したい場合は、材料の密度が必要になります。
GaussやOerstedとの関係
CGS単位系には、磁束密度のGaussと磁界のOerstedもあります。
GaussはG、OerstedはOeと略されます。
磁束密度では10000Gが1Tに相当します。
磁界では、真空中で1Oeがおよそ79.58A/mに相当します。
ただし、磁性材料の内部ではB、H、Mの関係が単純ではないことがあります。
特に強磁性体では、透磁率や磁気履歴の影響を受けるため、数値だけを機械的に変換するのは注意が必要です。
単位換算と物理量の換算は別の作業であることを意識しておきましょう。
磁化の換算方法と計算例
続いては磁化の換算方法と計算例を確認していきます。
体積磁化をSI単位へ変換する方法
emu/cm³からA/mへ換算する場合は、数値に1000を掛けます。
たとえば、測定結果が250emu/cm³であれば、250000A/mです。
kA/mに直すなら250kA/mとなります。
計算自体は簡単ですが、cm³とm³の体積単位の差が換算係数に含まれている点を理解すると、誤入力を減らせます。
250emu/cm³ × 1000 = 250000A/m
250000A/m ÷ 1000 = 250kA/m
逆にA/mからemu/cm³へ変換するなら、1000で割ります。
85000A/mは85emu/cm³です。
報告書では、元データの単位と換算後の単位を併記すると、第三者による確認がしやすくなります。
質量磁化から体積磁化への変換
emu/gで示された質量磁化をA/mへ変換するには、密度を掛け合わせます。
ここでは密度が7.8g/cm³の材料を例に考えます。
質量磁化が100emu/gなら、体積磁化は780emu/cm³です。
これをSI単位系に直すと780000A/m、すなわち780kA/mになります。
密度は温度、組成、空隙率、焼結状態などによって変化するため、実際の試料に近い値を使うことが重要です。
粉末とバルク材で密度が異なる場合には、同じ材料名でも換算結果が変わる可能性があります。
emu/gからA/mへの換算では、材料固有の密度が不可欠です。
密度が不明な状態で体積磁化を断定すると、評価結果に大きな誤差が生じるおそれがあります。
換算表を利用するときの確認項目
インターネット上の換算表を利用する際は、対象となる物理量を必ず確認してください。
磁化、磁気モーメント、磁束密度、磁界の換算係数はそれぞれ異なります。
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 体積基準か質量基準か | emu/cm³とemu/gでは必要な計算が異なります |
| 磁化か磁束密度か | A/mとTでは物理量そのものが異なります |
| 真空中か材料内部か | 透磁率や磁化の影響を考える必要があります |
| 測定温度 | 磁性は温度によって変化することがあります |
| 測定方向 | 異方性を持つ材料では方向によって値が変わります |
とくに永久磁石や電磁鋼板では、磁化曲線のどの位置の値なのかも重要です。
飽和磁化、残留磁化、保磁力は同じ意味ではないため、測定条件まで読み取る必要があります。
磁性材料の評価で確認する項目
続いては磁性材料の評価で確認する項目を確認していきます。
飽和磁化と残留磁化
飽和磁化は、外部磁界を十分に強くしたときに磁化がほぼ上限に達した状態を示します。
材料中の磁気モーメントが大部分そろったときの値であり、飽和磁化Msと表記されることがあります。
一方の残留磁化は、外部磁界を取り去ったあとにも残る磁化です。
永久磁石では、残留磁化が大きいほど強い磁場を維持しやすい傾向があります。
しかし、飽和磁化が大きい材料が必ずしも永久磁石に適しているとは限りません。
保磁力、温度特性、耐食性、加工性なども用途に応じて確認する必要があります。
保磁力とヒステリシス曲線
保磁力は、磁化された材料の磁化をゼロに戻すために必要な逆向きの磁界の大きさです。
一般にHcで表され、SI単位ではA/mが使われます。
保磁力も磁化と同じA/mで示されるため、表を読む際には記号の確認が欠かせません。
ヒステリシス曲線は、磁界Hを変化させたときに磁束密度Bや磁化Mがどのように変化するかを描いた曲線です。
この曲線から、飽和状態、残留状態、保磁力、磁気損失などを読み取れます。
単位だけでなく曲線上の位置を読むことが、磁性材料を正しく評価するための鍵です。
測定機器と測定条件
磁化の測定には、振動試料型磁力計、SQUID磁力計、フラックスメーター、BHトレーサーなどが使われます。
機器によって得意な試料サイズ、測定感度、印加できる磁界の範囲が異なります。
微小な磁気モーメントを測りたい場合には高感度な測定機器が必要になるでしょう。
一方で、工場での材料検査では、測定速度や再現性を重視した装置が選ばれることもあります。
試料形状の影響も見逃せません。
棒状、板状、リング状などの形状によって反磁界の影響が変わり、見かけの磁化が変化する場合があります。
磁化データは、単位、測定温度、試料形状、印加磁界、測定方向までそろえて比較することが大切です。
数値が同じでも、条件が異なれば材料性能を単純に比較できないことがあります。
磁化の単位に関する注意点とまとめ
最後に磁化の単位に関する注意点とまとめを確認していきます。
磁化MのSI単位はA/mであり、単位体積あたりの磁気モーメントを表します。
CGS単位系ではemu/cm³が使われ、1emu/cm³は1000A/mとして換算できます。
一方で、emu/gは質量磁化に関する単位です。
emu/gをA/mへ変換するには密度が必要になるため、単純な係数だけでは処理できません。
磁化と磁界は同じA/mを使いますが、磁化は材料内部の状態、磁界は外部から加える作用を示す別の物理量です。
また、テスラで表される磁束密度Bや磁気分極Jも、磁化Mと混同しないよう注意しましょう。
磁性材料のデータを見るときは、単位だけで判断せず、飽和磁化、残留磁化、保磁力、測定温度、試料形状まで確認することが大切です。
物理量の意味を確認してから単位換算する習慣を持つことで、材料選定や技術資料の読解をより正確に進められます。