反応速度定数は、反応物濃度の時間変化を測定し、そのデータを速度式または積分速度式へ当てはめることで求められます。
代表的な方法は、ある時点の反応速度と濃度から計算する方法、濃度と時間のグラフの傾きを利用する方法、半減期から求める方法です。
ゼロ次反応では濃度を時間に対して、一次反応では濃度の自然対数を時間に対して、二次反応では濃度の逆数を時間に対してプロットします。
最も直線性が高いグラフを選び、その傾きから速度定数kを求める流れです。
複数の初期濃度で初速度を測定すれば、反応次数と速度定数を同時に決定することもできます。
反応速度定数を正しく求めるには、反応次数を確認し、対応する速度式を選び、濃度と時間の単位を統一することが重要です。
本記事では、微分速度式、積分速度式、グラフ、初速度法、半減期、アレニウス式を用いた具体的な計算方法を解説します。
反応速度定数は速度式または濃度と時間のグラフから求めます
それではまず、反応速度定数を求める基本的な手順について解説していきます。
反応速度と濃度を速度式へ代入する
反応次数と速度式が既に分かっている場合、反応速度と濃度の測定値を代入すればkを計算できます。
一次反応の速度式は次のとおりです。
v=k[A]
両辺を[A]で割ります。
k=v/[A]
例えば、反応速度が0.015mol/L・s、Aの濃度が0.30mol/Lなら次の計算です。
k=0.015÷0.30=0.050sの逆数
二次反応v=k[A][B]なら、反応速度を二つの濃度の積で割ります。
k=v/{[A][B]}
この方法は計算が簡単ですが、瞬間的な反応速度を正確に測定する必要があります。
濃度と時間の離散的なデータしかない場合は、隣接点の差から速度を近似するか、積分速度式を利用するほうが適しています。
積分速度式へ濃度と時間を代入する
反応次数が分かっていれば、初期濃度と時刻tにおける濃度からkを計算できます。
一次反応の積分速度式は次のとおりです。
ln([A]/[A]0)=-kt
kについて解くと次の形です。
k=1/t・ln([A]0/[A])
初期濃度が1.00mol/L、百秒後の濃度が0.60mol/Lなら、次のように計算します。
k=1/100・ln(1.00/0.60)
kは約0.00511sの逆数です。
積分速度式を使えば、瞬間速度を数値微分する必要がありません。
ただし、一組のデータだけでは測定誤差の影響を受けやすいため、複数時刻のデータを使った回帰分析が望ましいでしょう。
直線グラフの傾きからkを決定する
積分速度式を直線形に変形すると、グラフの傾きからkを求められます。
| 反応次数 | 縦軸 | 横軸 | 傾き |
|---|---|---|---|
| ゼロ次 | [A] | t | -k |
| 一次 | ln[A] | t | -k |
| 二次 | 1/[A] | t | +k |
ゼロ次と一次では傾きの符号が負であるため、kは傾きの絶対値です。
二次反応では傾きが正であり、その値がkになります。
複数の測定点を使って最小二乗法による直線回帰を行えば、一点ごとの誤差を平均化できます。
濃度データを三種類の形へ変換し、最も直線性が高いグラフを選ぶことで、反応次数と速度定数を同時に判断できます。
ゼロ次反応の速度定数を求める方法
続いては、ゼロ次反応における具体的な計算方法を確認していきます。
濃度の減少量を時間で割る
ゼロ次反応では反応速度が濃度に依存せず一定です。
-d[A]/dt=k
積分速度式は次のとおりです。
[A]=[A]0-kt
kについて解くと、初期濃度と時刻tの濃度との差を時間で割る形になります。
k=([A]0-[A])/t
初期濃度が0.80mol/L、四十秒後に0.56mol/Lになったとします。
k=(0.80-0.56)/40
k=0.0060mol/L・s
ゼロ次反応ではkが反応速度と同じ単位を持ちます。
濃度対時間グラフの傾きを使う
複数時刻で濃度を測定し、縦軸に[A]、横軸にtを取ります。
ゼロ次反応ならデータは右下がりの直線に並びます。
回帰直線を[A]=b+mtと表したとき、切片bが初期濃度、傾きmが-kです。
k=-m
測定誤差によって傾きが完全に一定でなくても、決定係数が高ければゼロ次モデルが妥当と判断できます。
ただし、決定係数だけでなく残差が時間に対して偏っていないかも確認するとよいでしょう。
半減期からゼロ次速度定数を求める
ゼロ次反応の半減期は初期濃度に比例します。
t二分の一=[A]0/(2k)
したがって、kは次の式です。
k=[A]0/(2t二分の一)
初期濃度が1.20mol/L、半減期が百秒なら、kは0.0060mol/L・sです。
ゼロ次反応では初期濃度が高いほど半分になるまでの時間が長くなります。
異なる初期濃度で半減期を測り、初期濃度へ比例するか確認すれば、ゼロ次反応の判定にも利用できます。
一次反応の速度定数を求める方法
続いては、一次反応における代表的な計算方法を確認していきます。
濃度比の自然対数から計算する
一次反応では、反応物濃度が指数関数的に減少します。
[A]=[A]0 exp(-kt)
速度定数は次の式で求められます。
k=1/t・ln([A]0/[A])
初期濃度が0.50mol/L、二百秒後の濃度が0.20mol/Lなら次の計算です。
k=1/200・ln(0.50/0.20)
kは約0.00458sの逆数です。
濃度の比を取るため、[A]0と[A]には同じ単位を使用します。
対数の中へ単位付きの量を直接入れるのではなく、同じ単位同士の比で無次元化している点が重要です。
ln濃度対時間グラフの傾きを使う
各時刻の濃度について自然対数ln[A]を計算し、時間に対してプロットします。
一次反応なら次の直線式に従います。
ln[A]=ln[A]0-kt
傾きは-k、切片はln[A]0です。
濃度そのものを時間に対してプロットすると曲線になりますが、自然対数へ変換することで直線化できます。
常用対数を使用する場合は係数2.303が必要です。
log[A]=log[A]0-kt/2.303
自然対数と常用対数を混同すると、kが約2.303倍ずれるため注意しましょう。
半減期から一次速度定数を求める
一次反応の半減期は初期濃度に依存しません。
t二分の一=ln2/k
したがって、速度定数は次の式です。
k=ln2/t二分の一
半減期が三十分なら次のように求められます。
k=0.693/30=0.0231minの逆数
秒単位へ換算するなら、三十分を千八百秒として計算します。
k=0.693/1800=3.85×10のマイナス4乗sの逆数
両者は単位を変換すれば同じ速度定数です。
一次反応では、濃度比、ln濃度グラフ、半減期のいずれから求めても同じkが得られることを確認すると、計算の信頼性が高まります。
二次反応の速度定数を求める方法
続いては、二次反応における計算方法を確認していきます。
一種類の反応物について二次の場合
速度式が-d[A]/dt=k[A]²である反応を考えます。
積分速度式は次のとおりです。
1/[A]=1/[A]0+kt
kについて解くと次の形になります。
k=1/t{1/[A]-1/[A]0}
初期濃度が0.40mol/L、五十秒後の濃度が0.20mol/Lなら次の計算です。
k=1/50{1/0.20-1/0.40}
k=0.050L/mol・s
濃度の逆数を取るため、単位はL/molになります。
時間で割ることで、速度定数の単位はL/mol・sです。
逆濃度対時間グラフの傾きを使う
二次反応では、縦軸に1/[A]、横軸にtを取ると直線になります。
1/[A]=1/[A]0+kt
傾きが正のk、切片が1/[A]0です。
ゼロ次および一次反応とは異なり、傾きの符号を反転する必要はありません。
濃度測定値が小さくなると逆数の誤差が大きくなる場合があります。
反応終盤の低濃度データだけが回帰結果へ強く影響していないか確認しましょう。
異なる二種類の反応物が関与する場合
反応A+Bから生成物が生じ、速度式がv=k[A][B]である場合を考えます。
AとBの初期濃度が等しければ、反応進行中も濃度が等しく減少するため、一種類の二次反応と同じ形で処理できます。
初期濃度が異なる場合は、次のような対数を含む積分式を使用します。
k t=1/([B]0-[A]0)ln{[B][A]0/([A][B]0)}
式の符号や濃度の配置は定義によって変わりやすいため、反応進行度を用いて丁寧に導くと安全です。
実験では一方を大過剰にして擬一次反応として扱う方法もよく利用されます。
Bを大過剰にすれば[B]はほぼ一定となり、k見かけ=k[B]として一次式で解析できます。
初速度法で反応次数と速度定数を求める方法
続いては、複数の実験データを比較する初速度法を確認していきます。
一つの濃度だけを変えて次数を求める
速度式をv=k[A]m乗[B]n乗と仮定します。
A濃度だけを変え、B濃度を一定にした二つの実験を比較します。
v2/v1=([A]2/[A]1)m乗
A濃度を二倍にしたとき速度も二倍ならm=1です。
速度が四倍ならm=2、速度が変わらなければm=0となります。
Bについても、A濃度を一定にして同様の比較を行います。
一度に複数の濃度を変えると、各成分の影響を分離しにくくなるため注意しましょう。
対数を使って整数でない次数を求める
濃度比と速度比が単純な整数関係でない場合は、両辺の対数を取ります。
m=ln(v2/v1)/ln([A]2/[A]1)
例えばA濃度を1.5倍にしたとき速度が約1.84倍なら、次数はおよそ1.5です。
実験誤差によって整数に近い値が1.96や2.04になることもあります。
反応機構や誤差範囲を考慮し、妥当な次数を判断します。
多数の実験がある場合は、ln vをln濃度に対して重回帰する方法も有効です。
求めた次数を速度式へ代入してkを計算する
各反応物の次数が決まったら、任意の実験データを速度式へ代入します。
k=v/{[A]m乗[B]n乗}
複数の実験からそれぞれkを計算し、ほぼ同じ値になるか確認しましょう。
大きくばらつく場合は、次数の推定、測定誤差、温度変化、反応開始時刻のずれなどを見直します。
| 実験 | [A] | [B] | 初速度 |
|---|---|---|---|
| 一 | 0.10mol/L | 0.20mol/L | 0.0040mol/L・s |
| 二 | 0.20mol/L | 0.20mol/L | 0.0080mol/L・s |
| 三 | 0.10mol/L | 0.40mol/L | 0.016mol/L・s |
実験一と二を比較すると、Aが二倍で速度も二倍なのでAについて一次です。
実験一と三では、Bが二倍で速度が四倍なのでBについて二次です。
速度式はv=k[A][B]²となります。
実験一を使うと、k=0.0040÷{0.10×0.20²}=1.0L²/mol²・sです。
初速度法では、濃度を一成分ずつ変えた実験同士を比較し、次数を決定した後に速度定数を計算します。
実験データをグラフ解析してkを求める方法
続いては、複数の濃度データを使ったグラフ解析を確認していきます。
三種類の直線化グラフを比較する
反応次数が不明な場合は、同じ濃度データから[A]、ln[A]、1/[A]を計算します。
それぞれを時間tに対してプロットし、直線性を比較します。
[A]対tが直線ならゼロ次、ln[A]対tが直線なら一次、1/[A]対tが直線なら二次です。
表計算ソフトでは近似直線と決定係数を表示できます。
最も決定係数が一に近いモデルが候補になります。
ただし、測定点が少ない場合は複数のモデルが似た決定係数になることもあります。
回帰直線の傾きと切片を確認する
反応次数を選んだ後、回帰直線の傾きからkを求めます。
同時に切片が理論上の初期値と一致するか確認します。
一次反応なら切片はln[A]0です。
測定した初期濃度の自然対数と大きく異なる場合、反応開始前に既に反応が進んでいた可能性があります。
装置の混合時間や測定応答の遅れによって、実際の時刻ゼロがずれることもあります。
傾きだけでなく切片も確認すると、実験系の問題を見つけやすくなります。
残差を調べてモデルの妥当性を評価する
残差は、実測値と回帰直線による予測値との差です。
適切なモデルなら、残差はゼロ付近にランダムに分布します。
時間とともに残差が曲線状に偏る場合、その反応次数が合っていない可能性があります。
反応途中で機構が変化した場合や、逆反応、副反応、温度変化がある場合も、一つの直線から系統的に外れます。
単に決定係数が高いという理由だけでモデルを決めず、残差と化学的な妥当性も確認しましょう。
アレニウス式から別の温度の速度定数を求める方法
続いては、温度変化を利用した速度定数の計算方法を確認していきます。
活性化エネルギーと頻度因子から求める
アレニウス式は次のとおりです。
k=A exp{-Ea/(RT)}
頻度因子A、活性化エネルギーEa、絶対温度Tが分かれば、直接kを計算できます。
EaをJ/mol、Rを8.314J/mol・Kで使用する場合、単位がそろいます。
EaがkJ/molで与えられている場合は千倍してJ/molへ変換しなければなりません。
温度には摂氏ではなくケルビンを用います。
二つの温度における速度定数の比を使う
一つの温度におけるkが既知なら、頻度因子を使わず別の温度のkを計算できます。
ln(k2/k1)=-Ea/R(1/T2-1/T1)
例えばT2がT1より高ければ、括弧内は負になります。
右辺全体は正となるため、ln(k2/k1)が正になり、k2がk1より大きいことが分かります。
計算結果が温度上昇にもかかわらず小さくなった場合は、逆数の引き算や符号を確認しましょう。
アレニウスプロットの傾きから求める
複数温度でkを測定し、縦軸にln k、横軸に1/Tを取ります。
ln k=ln A-Ea/R・1/T
傾きmは-Ea/Rです。
Ea=-mR
切片はln Aなので、A=exp(切片)として頻度因子も求められます。
得られた直線式へ任意の1/Tを代入すれば、その温度におけるkを推定できます。
アレニウス計算では、温度をケルビンで扱うこと、活性化エネルギーと気体定数のエネルギー単位をそろえることが必須です。
速度定数を求めるときの注意点
続いては、実験値や計算結果の信頼性を高めるための注意点を確認していきます。
反応次数を決めてから公式を選ぶ
ゼロ次、一次、二次では積分速度式が異なります。
一次反応のデータへ二次反応の公式を使用すると、計算自体はできても意味のないkになります。
問題文で次数が指定されていない場合は、初速度法や直線化グラフによって次数を判断します。
複雑な反応では単純な整数次数に従わない可能性もあります。
時間と濃度の単位を統一する
濃度データがmol/L、反応速度がmmol/L・sのように異なる接頭語を含む場合は、どちらかへ統一します。
時間についても、濃度データが分単位なのに速度定数をsの逆数として扱わないよう注意が必要です。
一次反応では濃度単位が比の中で消えますが、二次反応ではkの単位へ濃度単位が残ります。
計算式の各数値へ単位を書き添えると、換算ミスを見つけやすくなります。
温度と反応条件を一定に保つ
速度定数は温度に強く依存します。
測定中に温度が変化すると、一つの一定なkではデータを説明できなくなる場合があります。
発熱反応では反応による温度上昇にも注意が必要です。
触媒濃度、pH、溶媒組成、イオン強度、攪拌速度なども一定に保ちます。
物質移動が律速となる系では、測定した値が化学反応固有の速度定数ではなく、混合や拡散の影響を含む見かけの値になる可能性があります。
まとめ
反応速度定数は、反応速度と濃度を速度式へ代入する方法、積分速度式を使う方法、グラフの傾きを利用する方法などで求められます。
ゼロ次反応では[A]対tの傾きの絶対値、一次反応ではln[A]対tの傾きの絶対値、二次反応では1/[A]対tの傾きがkです。
一次反応では濃度比と時間、または半減期から簡単に計算できます。
初速度法では一つの反応物濃度だけを変えた実験を比較し、各成分の反応次数を求めた後、速度式へ代入してkを決定します。
複数温度におけるkからは、アレニウスプロットを用いて活性化エネルギーや頻度因子も推定できます。
正確な値を得るには、反応次数の選択、単位の統一、温度管理、複数データによる回帰分析が欠かせません。
濃度変化を適切な形へ変換し、理論式と実験データが最もよく一致する傾きを求めることが、反応速度定数を決定する基本となります。