静止膜電位の求め方は?計算方法や公式も!(平衡電位:ネルンストの式:mV:生物基礎など)
静止膜電位は、神経細胞や筋細胞が刺激を受けていないとき、細胞膜を挟んで生じている電位差です。
生物基礎では、イオンの濃度差や細胞膜の選択的透過性と結び付けて学ぶ重要なテーマでしょう。
計算問題では、平衡電位をネルンストの式で求める場合と、複数のイオンを考慮して静止膜電位を見積もる場合があります。
公式だけを暗記するよりも、どのイオンが細胞内外へ移動しようとするのかを押さえると、mVの符号や答えの意味を判断しやすくなります。
静止膜電位を求める基本手順

それではまず、静止膜電位を求めるための全体像について解説していきます。
静止膜電位と平衡電位の違い
静止膜電位とは、細胞が安静にしている状態での細胞内と細胞外の電位差です。
一般に、細胞内の電位を基準に考えるため、神経細胞の静止膜電位はおよそマイナス七〇mV前後と表されます。
一方の平衡電位は、特定の一種類のイオンだけが膜を通過できると仮定したとき、そのイオンの正味の移動が止まる電位です。
濃度差によって動こうとする力と、電気的な引力や反発力が釣り合った状態と考えると分かりやすいでしょう。
カリウムイオンだけを考えればカリウムの平衡電位が得られますが、実際の細胞膜ではカリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなどが関わります。
したがって、静止膜電位は一つの平衡電位と完全に同じものではない点が大切です。
| 用語 | 対象 | 考え方 |
|---|---|---|
| 静止膜電位 | 実際の安静時の細胞膜 | 複数のイオンと膜の透過性を反映した電位差 |
| 平衡電位 | 特定の一種類のイオン | 濃度差と電気的な力が釣り合う電位 |
| 膜電位 | 細胞膜を挟んだ電位差全般 | 静止時や興奮時を含む広い呼び方 |
計算問題を解く順番
問題文を読んだら、最初に問われている値が平衡電位なのか、静止膜電位なのかを確認します。
平衡電位を問う設問なら、対象となるイオンの価数と細胞内外の濃度を抜き出します。
次に、温度が指定されているかを見ます。
生物基礎レベルの計算では体温付近として簡略式を使うことも多く、温度が明示される場合は絶対温度を使った式が必要になるでしょう。
計算の流れ
一 対象イオンの電荷を確認する
二 細胞外濃度と細胞内濃度を確認する
三 ネルンストの式へ代入する
四 mVへの換算と正負の確認を行う
五 求めた値が生理的に妥当かを考える
静止膜電位を考える設問では、どのイオンに対して膜が通しやすいかという情報も重要です。
安静時の神経細胞はカリウムイオンを比較的通しやすいため、膜電位はカリウムの平衡電位に近い値へ寄ります。
符号と単位を確認する視点
膜電位の符号は、細胞内の電位から細胞外の電位を引く考え方で示されることが一般的です。
細胞内が細胞外より負なら、答えにはマイナスの符号が付きます。
単位はVではなく、通常はmVで表すことにも注意しましょう。
一mVは〇・〇〇一Vなので、Vで計算した値をmVへ直すときは一〇〇〇倍します。
静止膜電位の基本的な結論は、安静時の細胞内は細胞外より負であり、その値は主にカリウムイオンの濃度差と膜透過性の影響を強く受けるということです。
計算結果がプラスになった場合でも、ただちに誤りとは限りません。
対象イオンがナトリウムイオンなら、細胞外濃度が高いため、平衡電位はプラス側になることが多いからです。
ネルンストの式と平衡電位
続いては、平衡電位の計算に使うネルンストの式を確認していきます。
ネルンストの式の基本形
ネルンストの式は、イオン濃度の差から平衡電位を求める公式です。
温度を絶対温度で扱う基本形は、次のように表せます。
E = RT ÷ zF × ln 外液濃度 ÷ 内液濃度
Eは平衡電位です。
Rは気体定数、Tは絶対温度、zはイオンの価数、Fはファラデー定数を表します。
この式では、自然対数のlnを使います。
ただし、学校の問題や入門的な解説では、常用対数を用いた近似式が示されることも少なくありません。
三七℃付近では、陽イオンに対しておおよそ次の形で計算できます。
E = 六一・五 ÷ z × log 外液濃度 ÷ 内液濃度 mV
一価の陽イオンならzは一です。
二価のカルシウムイオンならzは二となります。
式の細かな定数を覚えるだけでは不十分です。
濃度の比がどちら向きに置かれているかを毎回確かめる習慣が、符号の取り違えを防ぎます。
価数による計算結果の変化
イオンの価数は、イオンが持つ電荷の数を表します。
ナトリウムイオンやカリウムイオンはプラス一価、カルシウムイオンはプラス二価です。
同じ濃度比でも、二価イオンは一価イオンより電気的な影響を二倍受けます。
そのためネルンストの式ではzで割り、二価イオンの平衡電位の絶対値は条件によって一価イオンより小さくなります。
| イオン | 主な電荷 | 安静時のおおまかな分布 | 平衡電位の傾向 |
|---|---|---|---|
| カリウムイオン | プラス一価 | 細胞内に多い | マイナス側になりやすい |
| ナトリウムイオン | プラス一価 | 細胞外に多い | プラス側になりやすい |
| カルシウムイオン | プラス二価 | 細胞外に非常に多い | 大きくプラス側になりやすい |
| 塩化物イオン | マイナス一価 | 細胞外に多いことが多い | 式の扱いに符号の注意が必要 |
塩化物イオンのような陰イオンでは、電荷がマイナスである点に注意が必要です。
問題で示された公式を優先し、濃度比の向きと価数の扱いを一貫させると混乱を避けられます。
温度と濃度比の読み取り
ネルンストの式では、温度が高いほど濃度差による電位差はやや大きくなります。
ただし生物基礎の範囲では、温度変化よりも濃度比とイオンの種類に注目する問題が中心でしょう。
たとえば、カリウムイオンが細胞外に五、細胞内に一五〇あるとします。
外液濃度を内液濃度で割った比は一より小さくなり、常用対数は負の値になります。
カリウムイオンの例
E = 六一・五 × log 五 ÷ 一五〇 mV
五 ÷ 一五〇は約〇・〇三三です。
その常用対数は負なので、平衡電位もおよそマイナス九〇mVになります。
このマイナスの値は、カリウムイオンが細胞内から外へ出ようとする濃度勾配を、細胞内の負の電位が引き留めている状態を示します。
計算とイオン移動の向きを結び付けて考えることが重要です。
カリウムイオンと静止膜電位
続いては、静止膜電位でカリウムイオンが重要になる理由を確認していきます。
細胞内外のカリウムイオン濃度差
多くの動物細胞では、カリウムイオンは細胞内に多く、細胞外には少ない状態です。
そのためカリウムイオンは濃度の高い細胞内から、濃度の低い細胞外へ拡散しようとします。
カリウムイオンは正の電荷を持つので、外へ出るほど細胞内には負の電荷が相対的に残ります。
すると細胞内の負の電位がカリウムイオンを内側へ引き戻すようになり、やがて二つの力が釣り合います。
この釣り合いの電位がカリウムイオンの平衡電位です。
一般的な神経細胞では、カリウムの平衡電位はおよそマイナス九〇mV付近になることが多いでしょう。
カリウム漏洩チャネルの働き
安静時の細胞膜には、カリウムイオンを通しやすいチャネルがあります。
これをカリウム漏洩チャネルと呼び、刺激がなくても一定量のカリウムイオンが通過できる経路です。
ナトリウムイオンも少しは通れますが、安静時にはカリウムイオンほど通りやすくありません。
その結果、静止膜電位はカリウムの平衡電位へ近付く傾向を示します。
静止膜電位がカリウムの平衡電位と同じにならないのは、ナトリウムイオンや塩化物イオンもわずかに関与するためです。
実際の神経細胞では、静止膜電位はマイナス七〇mV程度で、カリウムの平衡電位より少しプラス側に位置します。
この差を理解すると、なぜカリウムだけの計算結果と実測値がずれるのかを説明できます。
生体の膜は完全に一種類のイオンだけを選ぶ壁ではないためです。
ナトリウムカリウムポンプの役割
ナトリウムカリウムポンプは、ATPのエネルギーを使ってナトリウムイオンを細胞外へ運び、カリウムイオンを細胞内へ運ぶ輸送体です。
代表的には、ナトリウムイオンを三個外へ出し、カリウムイオンを二個内へ入れます。
この働きは、細胞内にカリウムイオンが多く、細胞外にナトリウムイオンが多い濃度差を長期的に維持します。
つまり、静止膜電位を直接つくる主因は漏洩チャネルを通るイオン移動ですが、濃度差を支えているのはナトリウムカリウムポンプです。
| 働き | 主な内容 | 静止膜電位との関係 |
|---|---|---|
| カリウム漏洩チャネル | カリウムイオンを比較的通しやすい | 安静時の膜電位をカリウム平衡電位へ近付ける |
| ナトリウム漏洩 | ナトリウムイオンが少量入る | 膜電位をややプラス側へ動かす |
| ナトリウムカリウムポンプ | ATPを使いイオンを能動輸送する | 長期的な濃度勾配を維持する |
ゴールドマンの式と複数イオン
続いては、複数のイオンを含めて静止膜電位を考える方法を確認していきます。
単一イオンの式では足りない理由
ネルンストの式は、一種類のイオンについて平衡電位を計算するための式です。
しかし実際の細胞膜では、複数のイオンがそれぞれ異なる透過性で移動します。
静止膜電位をより現実に近く扱うには、各イオンの濃度と膜透過性をまとめて考える必要があります。
そこで用いられるのがゴールドマン・ホジキン・カッツの電圧式です。
高校の学習では計算そのものを詳しく扱わない場合もありますが、考え方は押さえておくと役立ちます。
透過性が高いイオンほど静止膜電位へ与える影響が大きいという原則です。
ゴールドマンの式の考え方
ゴールドマンの式では、カリウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなどの濃度に、それぞれの透過性を掛けて評価します。
安静時にはカリウムイオンの透過性が大きいため、計算結果はカリウムの平衡電位に比較的近い値になります。
ゴールドマンの式で見る要点
カリウムイオンの透過性が大きいと、膜電位はマイナス側へ寄ります。
ナトリウムイオンの透過性が増えると、膜電位はプラス側へ寄ります。
塩化物イオンは陰イオンなので、濃度を置く位置が陽イオンと反対になる点に注意が必要です。
活動電位の発生時には、ナトリウムチャネルが開いてナトリウムイオンの透過性が急に高まります。
この変化により、膜電位は静止状態のマイナス側から一気にプラス側へ向かいます。
透過性の変化と膜電位の移動
膜電位は、どのイオンの平衡電位へ近付くかという視点で考えると整理しやすくなります。
カリウムチャネルが多く開けば、膜電位はカリウムの平衡電位へ近付きます。
ナトリウムチャネルが開けば、膜電位はナトリウムの平衡電位へ向かいます。
ナトリウムの平衡電位はプラス側なので、脱分極が起こるという流れです。
静止膜電位を説明するときは、濃度差だけでなく膜透過性を必ず組み合わせます。
濃度差があっても、そのイオンを通す経路がほとんどなければ、膜電位への影響は限定的です。
この見方は、計算式を忘れそうな場面でも有効です。
どのチャネルが開くかを考えれば、膜電位がマイナス側とプラス側のどちらへ動くかを予測できます。
静止膜電位の計算例と注意点
続いては、具体的な数値を使った計算例と、間違えやすい注意点を確認していきます。
カリウムイオンの平衡電位の例
体温付近で、細胞外のカリウムイオン濃度を五mM、細胞内濃度を一五〇mMと仮定します。
一価の陽イオンとして近似式へ代入すると、次の計算になります。
E = 六一・五 × log 五 ÷ 一五〇 mV
五 ÷ 一五〇は約〇・〇三三です。
log〇・〇三三は約マイナス一・四八です。
よってEは約マイナス九一mVとなります。
この値は、カリウムイオンだけが自由に動けるときの平衡電位です。
神経細胞の静止膜電位そのものではなく、静止膜電位を理解するための基準値と捉えましょう。
ナトリウムイオンの平衡電位の例
細胞外のナトリウムイオン濃度を一四五mM、細胞内濃度を一二mMと仮定します。
同じく一価の陽イオンとして計算すると、濃度比は一より大きくなります。
E = 六一・五 × log 一四五 ÷ 一二 mV
一四五 ÷ 一二は約一二です。
log一二は約一・〇八です。
よってEは約プラス六六mVとなります。
ナトリウムイオンは細胞外に多いため、細胞内へ入ろうとする力が強く働きます。
膜がナトリウムイオンを通しやすくなると、膜電位がプラス六〇mV前後へ近付く方向に変化する理由がここにあります。
よくある計算ミス
一つ目は、外液濃度と内液濃度の比を逆にしてしまうミスです。
陽イオンについて外液濃度を内液濃度で割る形を使うなら、途中で逆向きにしないように注意しましょう。
二つ目は、mMの単位をそのまま使える場面で、無理にMへ換算して混乱することです。
濃度比では分子と分母が同じ単位なら単位が打ち消されるため、両方がmMならそのまま比を取れます。
三つ目は、静止膜電位と平衡電位を同じ値として書くことです。
カリウムイオンの平衡電位が約マイナス九〇mVであっても、神経細胞の静止膜電位は約マイナス七〇mVという違いがあります。
計算後は、カリウムならマイナス側、ナトリウムならプラス側という大まかな傾向と照らし合わせます。
符号が予想と逆なら、濃度比、価数、陰イオンの扱いを順に見直すとよいでしょう。
生物基礎で押さえる静止膜電位
続いては、生物基礎の学習や試験で押さえたい静止膜電位のポイントを確認していきます。
用語を結び付ける覚え方
静止膜電位は、細胞内が負である安静時の電位差です。
この一文を出発点にして、カリウムイオン、漏洩チャネル、ナトリウムカリウムポンプを関連付けると理解が深まります。
| 覚える語句 | 結び付ける内容 |
|---|---|
| 静止膜電位 | 安静時に細胞内が細胞外より負の状態 |
| カリウムイオン | 細胞内に多く、安静時の膜電位へ大きく影響する |
| ナトリウムイオン | 細胞外に多く、流入すると脱分極に関わる |
| 選択的透過性 | イオンによって膜の通りやすさが異なる性質 |
| ナトリウムカリウムポンプ | 濃度差の維持にATPを使う輸送体 |
単語を独立して暗記するのではなく、イオンの分布と移動の流れで覚えることが近道です。
細胞内にカリウム、細胞外にナトリウムという配置は、特に重要な基礎知識でしょう。
グラフや図の読み取り方
膜電位のグラフでは、縦軸にmV、横軸に時間が置かれることが多くあります。
刺激を受ける前に安定しているマイナスの値が、静止膜電位です。
グラフが上向きに動く現象は脱分極で、主にナトリウムイオンの流入と結び付けて考えます。
下向きに戻る過程は再分極で、カリウムイオンの流出が中心になります。
静止膜電位より一時的にさらに低い方向へ動くこともあります。
これは過分極と呼ばれ、カリウムイオンの透過性が一時的に高い状態として説明できるでしょう。
記述問題での説明の組み立て
記述問題では、細胞内外の濃度差だけを書くと説明が不足する場合があります。
カリウムイオンが細胞外へ拡散し、細胞内が負になることで電気的な力が生じる流れまで示すと、内容が伝わりやすくなります。
ナトリウムカリウムポンプについて問われたら、ATPを用いる能動輸送であることと、ナトリウムイオン三個とカリウムイオン二個の移動を結び付けます。
ただし、ポンプの働きだけで静止膜電位を説明し切ろうとせず、漏洩チャネルによる選択的透過性にも触れることが重要です。
説明文を作る際は、濃度差、イオン移動、電位差、膜透過性の順に並べると論理が整います。
この順序なら、数式を使わない問題でも答えを組み立てやすくなるはずです。
静止膜電位の求め方のまとめ
静止膜電位は、安静時に細胞内が細胞外より負となる電位差です。
神経細胞ではおよそマイナス七〇mVで、カリウムイオンの平衡電位に近い値を取ります。
一種類のイオンの平衡電位は、ネルンストの式で計算します。
陽イオンでは外液濃度を内液濃度で割り、価数と温度を確認してmVで表すことが基本です。
実際の静止膜電位には、カリウムイオンだけでなくナトリウムイオンや塩化物イオンも関わります。
そのため、複数イオンと膜透過性を扱うゴールドマンの式の考え方が役立ちます。
濃度差だけでなく、どのイオンを膜が通しやすいかに注目することが、静止膜電位を正しく理解する鍵です。
公式の代入、符号の確認、イオン移動の意味付けまで一緒に練習すれば、計算問題にも記述問題にも対応しやすくなるでしょう。