科学

水の三重点とは?温度や圧力の値も!(0.01℃・611.657Pa:温度基準:ケルビンの定義:相平衡など)

当サイトでは記事内に広告を含みます
いつも記事を読んでいただきありがとうございます!!! これからもお役に立てる各情報を発信していきますので、今後ともよろしくお願いします(^^)/

水の三重点とは?温度や圧力の値も!(0.01℃・611.657Pa:温度基準:ケルビンの定義:相平衡など)

水の三重点は科学・計測・熱力学の分野で特別な重要性を持つ概念であり、かつては絶対温度(ケルビン)の定義基準として国際的に採用されていました。

「水の三重点とはどういう状態なのか」「温度と圧力の具体的な数値は何か」「なぜ国際単位の基準に使われていたのか」という疑問をお持ちの方に向けて、本記事では水の三重点の意味・温度・圧力の値、ケルビンとの関係、相図上での位置、実験的な確認方法まで詳しく解説します。

水の三重点への理解は熱力学・物理化学の基礎として、また計量・計測分野での温度管理の理解にもつながります。

水の三重点とは?温度と圧力の値の結論

それではまず、水の三重点の定義と具体的な温度・圧力の値について解説していきます。

水の三重点とは、液体の水・固体の氷・水蒸気(気体)の三相が熱力学的平衡状態で同時に共存できる唯一の温度と圧力の組み合わせです。

その値は温度0.01℃(273.16ケルビン)・圧力611.657パスカル(約0.006気圧)と精密に定められています。

水の三重点の正確な数値

【水の三重点の正確な値】

温度:0.01℃(正確には0.0100℃)= 273.16 K(ケルビン)

圧力:611.657 Pa(パスカル)≒ 0.00604 atm(大気圧)≒ 4.585 mmHg

この温度と圧力の組み合わせでのみ水の固体・液体・気体が共存できます

比較:水の通常の融点(0℃・1気圧)と沸点(100℃・1気圧)はそれぞれ1気圧での値であり、三重点とは異なる条件です

水の三重点温度(0.01℃)が通常の氷点(0℃)より0.01℃高い理由は、1気圧という加圧状態が水の融点をわずかに下げるためであり、三重点は外部圧力のない自然な平衡状態での固有値です。

水の三重点の相図上での位置

水の相図(P-T図)上では、三重点は固相(氷)・液相(水)・気相(水蒸気)の3本の境界線が交わる点として表されます。

三重点より低い圧力では液体の水は存在できず、氷が直接水蒸気に昇華します(凍結乾燥の原理)。

三重点より高い圧力では温度に応じて固体・液体・気体の相が存在し、圧力を上げると融点がわずかに低下するという水特有の性質(氷の融解曲線の負の傾き)がみられます。

水の相図の特殊性

水の相図は多くの物質と異なる特殊な性質を持っています。

ほとんどの物質では圧力を上げると融点が上昇しますが、水は圧力を上げると融点がわずかに低下します(氷の密度が水より低いため)。

水のこの特殊性(圧力増加で融点低下)はスケートの刃の滑り・氷河の移動・深海の氷の挙動など多くの自然現象と関係しています。

また水は高圧下で複数の氷の結晶構造(氷Ih・氷III・氷V・氷VI・氷VII・氷Xなど)を持つため、相図上に多数の三重点が存在する複雑な構造になっています。

水の三重点とケルビン(絶対温度)の定義

続いては、水の三重点と絶対温度単位ケルビン(K)の歴史的な関係について確認していきます。

水の三重点は国際単位系(SI)の温度単位ケルビンの定義に深く関わっていました。

2019年以前のケルビンの定義

2019年5月のSI改定以前、ケルビン(K)は「水の三重点の熱力学温度の273.16分の1」として定義されていました。

つまり水の三重点温度が正確に273.16Kと定義されており、これが絶対温度スケールの基準点でした。

水の三重点が選ばれた理由は、その温度と圧力が物質固有の定数として高い再現性で実現でき、世界中の計量機関が独立に参照できる普遍的な基準として優れていたためです。

2019年のSI改定後のケルビンの新定義

2019年5月20日に発効した新SI(国際単位系)では、ケルビンの定義がボルツマン定数(k=1.380649×10⁻²³ J/K)の固定値によって再定義されました。

新定義ではケルビンは「ボルツマン定数kが1.380649×10⁻²³ J·K⁻¹となるように定義される温度」であり、水の三重点への直接的な依存がなくなりました。

ただし新定義後も水の三重点の温度は273.16K(0.01℃)であることは変わらず、実用的な温度校正の基準点として三重点セルは引き続き使われています。

水の三重点セルによる温度校正

水の三重点セル(Triple Point of Water Cell)は純粋な水を密閉したガラス製容器であり、三重点状態を再現することで0.01℃(273.16K)の温度基準を提供します。

三重点セルによる温度校正の不確かさは0.1mK(0.0001℃)以下と非常に高精度であり、産業用・科学研究用の温度計の精密校正に世界中で活用されています。

日本では国立研究開発法人産業技術総合研究所(AIST)が国家温度標準を管理しており、水の三重点セルによる校正チェーンが温度計測の精度を支えています。

水の三重点の実験的な確認方法

続いては、水の三重点を実験的に確認・再現する方法について確認していきます。

三重点セルの原理と構造

水の三重点セルは純粋な水(比抵抗18MΩ・cm以上の超純水)を密閉したガラス・石英セルであり、内部に温度計挿入用の細管(サーモウェル)を持ちます。

使用方法は、セルを液体窒素などで全体を一時的に凍結させてから、内部の細管を温水で溶かして薄い液体層(マント)を形成させます。

この「固体の氷・薄い液体のマント・水蒸気」が共存した状態が三重点状態であり、セルが適切に管理されると数mKの安定性で0.01℃の温度基準が数時間〜数日間にわたって維持されます。

凍結乾燥(フリーズドライ)との関係

食品・医薬品の保存技術として知られる凍結乾燥(フリーズドライ)は、水の三重点の特性を利用した技術です。

凍結乾燥では食品・医薬品を凍らせてから、三重点圧力以下の低真空状態にすることで氷が液体にならず直接水蒸気として昇華します。

これによって乾燥時の熱による品質劣化を防ぎながら水分を除去できるため、インスタントコーヒー・宇宙食・医薬品・バイオ製品の長期保存に広く活用されています。

水の三重点に関係する日常現象

水の三重点に関係する身近な現象として、冬の朝の霜の形成(昇華と凝華)・雪の昇華(洗濯物が凍って乾く現象)・ドライアイスとの比較などが挙げられます。

霜の形成は大気中の水蒸気が直接固体(氷)に変化する凝華であり、逆に氷が直接水蒸気になる昇華は三重点以下の圧力条件が成立する低圧環境で起きます。

水の三重点に関するよくある疑問

続いては、水の三重点についてよくある疑問を確認していきます。

三重点での水は「凍っているのか・溶けているのか」

三重点では固体・液体・気体が同時に共存しており、「凍っている」でも「溶けている」でも「蒸発している」でもある複雑な平衡状態です。

実際の三重点セルの中では、少量の固体(氷)・液体(水)・気体(水蒸気)が絶えず相互に変換しながら平衡を保っており、巨視的には安定しているように見えても微視的には活発な分子の行き来が起きている動的平衡状態です。

海水・不純物を含む水の三重点

三重点は純粋な物質(単一成分)にのみ厳密に定義されます。

海水・塩水・不純物を含む水では三重点が一点に定まらず、凝固点降下・沸点上昇などの束一的性質の影響を受けます。

温度校正に使う三重点セルには超純水が必要であり、不純物が混入すると温度基準としての精度が損なわれます。

重水(D₂O)の三重点

重水素を含む重水(D₂O:デューテリウムオキサイド)の三重点は通常の水と異なる値を持ちます。

重水の三重点温度は3.82℃(276.97K)・圧力は661.5Paであり、通常の水(0.01℃・611.657Pa)と比べて融点が約4℃高い特性があります。

重水の三重点はITS-90の定義点にも採用されており、低温域の温度標準として使われています。

まとめ

本記事では、水の三重点の意味・定義、正確な温度(0.01℃・273.16K)と圧力(611.657Pa)の値、ケルビンとの歴史的な関係(2019年改定前・後)、三重点セルによる実験的確認方法、凍結乾燥との関係まで幅広く解説しました。

水の三重点は0.01℃・611.657Paという物質固有の定数であり、外部条件によらず再現性の高い温度基準として科学計測・温度校正において世界中で活用されています。

2019年のSI改定でケルビンの定義はボルツマン定数に基づくものに変わりましたが、水の三重点セルは引き続き実用的な温度校正の基準として重要な役割を担っています。

水の三重点への理解は熱力学・物理化学・精密計測の基礎として、また凍結乾燥などの実用技術の原理理解にも役立つ重要な知識です。