ヤング率を実際に求めるためには、公式の理解だけでなく、応力とひずみをどのように測定・計算するかを把握することが重要です。
引張試験・圧縮試験などの材料試験から実験的にヤング率を求める方法や、理論的な計算による求め方など、複数のアプローチが存在します。
本記事では、ヤング率の計算式・各パラメータの求め方・引張試験による実測手順・計算例まで、実務・実験で役立つ形で詳しく解説していきます。
材料力学の学習者から試験・実験を行う技術者まで、幅広く役立てていただける内容です。
ヤング率の公式と求め方の基本
それではまず、ヤング率の公式と基本的な求め方について解説していきます。
ヤング率の基本式は以下のとおりです。
ヤング率の計算式
E = σ / ε
E:ヤング率(Pa, N/mm², GPa)
σ:応力(Pa, N/mm²)= 荷重F / 断面積A
ε:ひずみ(無次元)= 変形量ΔL / 元の長さL₀
展開式:E = (F/A) / (ΔL/L₀) = FL₀ / (AΔL)
この式から、ヤング率を求めるためには「荷重・断面積・変形量・元の長さ」の四つの量を正確に測定することが必要です。
実験や試験でこれらの値を計測し、式に代入することで材料のヤング率を算出することができます。
応力の計算方法
応力σ(シグマ)は、単位面積あたりに作用する内力のことであり、引張試験では試験片に作用する荷重Fと試験片の断面積Aから求めます。
応力の計算
σ = F / A
F:荷重(N)、A:試験片の断面積(m²またはmm²)
例:断面積20 mm²の試験片に4000 Nの引張力を加えた場合
σ = 4000 / 20 = 200 N/mm² = 200 MPa
断面積の計算には試験片の形状に応じた公式を使います。
円形断面の試験片では A = π(d/2)²、矩形断面では A = 幅 × 厚さ で求めます。
ひずみの計算方法
ひずみε(イプシロン)は、変形量ΔLと元の長さL₀の比として定義される無次元量です。
ひずみの計算
ε = ΔL / L₀
ΔL:変形量(荷重後の長さ − 元の長さ)、L₀:元の長さ(標点間距離)
例:元の長さ100 mmの試験片が荷重によって0.1 mm伸びた場合
ε = 0.1 / 100 = 0.001(= 0.1%)
ひずみは非常に小さな値(0.001〜0.01程度)になることが多いため、精密な変位計(ひずみゲージ・伸び計など)を使った測定が重要です。
ひずみは無次元数なので単位はありませんが、μ(マイクロ)ひずみ(1με = 10⁻⁶)で表記する場合もあります。
引張試験によるヤング率の実測方法
続いては、引張試験によってヤング率を実際に求める方法を確認していきます。
ヤング率の実測には材料試験機(万能試験機)を使った引張試験が最も一般的です。
引張試験の手順
引張試験によるヤング率測定の手順
① 試験片を規格(JIS Z 2241など)に従って作製する
② 試験片の断面積A(mm²)と標点間距離L₀(mm)を精密に測定する
③ 材料試験機に試験片をセットし、伸び計(エクステンソメーター)を取り付ける
④ 一定速度で引張力を加え、荷重Fと変位ΔLを連続記録する
⑤ 応力σ=F/Aとひずみε=ΔL/L₀を計算する
⑥ 弾性域(線形部分)の傾き E = Δσ/Δε からヤング率を算出する
試験では荷重と変位を同時に記録した「荷重-変位曲線」または「応力-ひずみ曲線」が得られます。
この曲線の弾性域(初期の線形部分)の傾きがヤング率に相当します。
ヤング率の計算例
計算例:引張試験によるヤング率の算出
試験片情報:断面積 A = 50 mm²、標点間距離 L₀ = 100 mm
測定データ:荷重 F = 10,000 N のとき変位 ΔL = 0.097 mm
① 応力:σ = F/A = 10,000/50 = 200 N/mm²
② ひずみ:ε = ΔL/L₀ = 0.097/100 = 9.7×10⁻⁴
③ ヤング率:E = σ/ε = 200 / (9.7×10⁻⁴) ≒ 206,000 N/mm² = 206 GPa
この結果は鋼鉄の標準的なヤング率(206 GPa)と一致しており、正確な測定が行われたことが確認できます。
ひずみゲージを使った測定方法
より精度の高いひずみ測定には、試験片表面に直接貼り付けるひずみゲージ(strain gauge)が使われます。
ひずみゲージは試験片の変形に伴う電気抵抗の変化を利用してひずみを精密に計測する素子であり、μεオーダーの微小なひずみも正確に測定できます。
引張・圧縮・曲げ・ねじりなど様々な変形モードでのヤング率測定に使用でき、実構造物に取り付けて実動荷重下での応力測定にも広く活用されています。
ヤング率の計算における注意点
続いては、ヤング率の計算・測定における主要な注意点を確認していきます。
正確なヤング率を得るためには、測定条件の管理と計算手順の適切な実施が欠かせません。
弾性域での計測が必須
ヤング率はフックの法則が成立する弾性変形域でのみ正しく求められます。
降伏点を超えた塑性変形域では応力とひずみの線形関係が崩れるため、ヤング率の計算式が適用できません。
試験では応力-ひずみ曲線の初期線形部分(一般に降伏応力の50〜70%以下)のデータを使ってヤング率を算出することが重要です。
温度の影響
ヤング率は温度に依存する材料定数であり、高温では一般的に低下します。
鋼鉄では200℃でのヤング率は常温比で約10%低下し、高温プロセス機器の設計では温度に応じたヤング率の補正が必要です。
設計・試験を行う際には、使用温度でのヤング率の値を確認することが重要でしょう。
試験片の寸法精度の重要性
断面積Aの測定精度がヤング率の精度に直結するため、試験片の寸法は±0.01 mm程度の精度で測定することが推奨されます。
断面積の測定誤差が1%あれば、算出されるヤング率も1%の誤差を持つことになります。
JIS規格に準じた試験片形状と測定手順を遵守することが、再現性の高い測定結果を得るための基本です。
まとめ
本記事では、ヤング率の求め方について、公式・応力とひずみの計算方法・引張試験の手順・計算例・注意点まで詳しく解説してきました。
ヤング率はE = σ/ε = FL₀/(AΔL)という式で求められ、荷重・断面積・変形量・元の長さの四つの量を正確に測定することが必要です。
引張試験による実測では、弾性域の応力-ひずみ曲線の傾きからヤング率を算出します。
弾性域での計測・温度管理・試験片寸法の精度確保が正確なヤング率測定のポイントです。
ヤング率の計算方法をマスターし、材料試験・構造設計・材料選定に積極的に役立ててみてください。