ガラス転移温度の一覧表は?主要材料のTg値まとめ!(ポリマー:樹脂:エラストマー:熱可塑性樹脂:熱硬化性樹脂など)について知っておくと、プラスチック、ゴム、樹脂、接着剤、塗料、フィルム、電子材料、複合材料などの材料選定に役立ちます。
ガラス転移温度はTgと表記され、高分子材料がガラス状態からゴム状態へ変化し始める温度を示します。
材料ごとのTg値を一覧で確認すると、なぜ低温で硬くなるゴムがあるのか、なぜ高温で変形しやすい樹脂があるのか、どの材料が耐熱用途に向くのかを判断しやすくなります。
ただし、Tgは材料名だけで完全に決まるものではありません。
分子量、共重合組成、可塑剤、添加剤、結晶化度、架橋密度、測定方法、熱履歴によって値が変わることがあります。
この記事では、主要なポリマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーのTg値を目安として一覧化しながら、見方と注意点をわかりやすく解説していきます。
ガラス転移温度の一覧表は、材料の使用温度と硬さの変化を比較する目安になります
それではまずガラス転移温度の一覧表の結論にあたる使い方について解説していきます。
ガラス転移温度の一覧表は、主要材料のTg値を比較し、使用温度で材料が硬い状態にあるのか、柔らかい状態にあるのかを判断するための目安になります。
Tgより低い温度では、高分子の分子鎖が動きにくく、材料は硬くガラス的な性質を示しやすくなります。
Tgより高い温度では、分子鎖が動きやすくなり、柔らかくゴム的な性質が出やすくなります。
そのため、Tgの一覧を見ることで、材料の耐熱性、低温特性、弾性、柔軟性、寸法安定性を大まかに比較できます。
たとえばポリスチレンやPMMAは室温より高いTgを持つため、室温では硬い樹脂として使われます。
一方でシリコーンゴムや天然ゴムは室温よりかなり低いTgを持つため、室温では柔らかく弾性を示します。
この違いは、材料の用途を考えるうえでとても重要です。
ただし、一覧表のTg値は代表値または目安値として扱う必要があります。
同じ樹脂名でもグレードによってTgは変わることがあるため、最終的にはメーカーのデータシートや実測値を確認しましょう。
ガラス転移温度の一覧表は、材料を比較する入り口として便利です。
しかし、設計や品質保証で使う場合は、必ず測定条件とグレードを確認することが重要です。
Tg一覧表でわかること
Tg一覧表を見ると、材料ごとの温度応答の違いがわかります。
室温よりTgが高い材料は、室温ではガラス状態に近く、硬く剛性のある性質を示しやすいです。
室温よりTgが低い材料は、室温ではゴム状態に近く、柔らかさや弾性を示しやすくなります。
もちろん、結晶性や充填材、架橋構造などの影響もあるため、Tgだけですべてを判断することはできません。
それでも、材料の大まかな性格をつかむには非常に有効です。
たとえば硬質透明樹脂として使われるPMMAはTgが比較的高く、柔軟なエラストマーとして使われるポリブタジエンはTgが低い傾向があります。
このように、Tgは材料の硬さや柔らかさを考える入り口になります。
一覧表の値は代表値として見る
ガラス転移温度は、材料名だけで一つに決まる固定値ではありません。
同じポリマーでも、分子量、立体規則性、共重合比、添加剤、可塑剤、充填材の有無によってTgは変化します。
測定方法によっても値が変わることがあります。
DSCで求めたTgとDMAで求めたTgでは、同じ材料でも数値が一致しない場合があります。
また、DSCでもTgの開始点、中間点、終了点のどれを採用するかで値が変わります。
そのため、一覧表の数値は厳密な保証値ではなく、材料比較の目安として使いましょう。
実際の設計では、製品グレードごとのデータシートや試験結果を確認する必要があります。
使用温度との関係が重要
材料選定では、Tgの値そのものよりも、使用温度との関係が重要です。
たとえばTgが100℃の樹脂を室温で使う場合、室温はTgよりかなり低いため、材料は硬い状態を保ちやすいです。
しかし使用温度が90℃付近になると、Tgに近づくため、弾性率の低下や変形に注意が必要になります。
一方でゴム材料では、Tgが使用温度より十分低いことが望ましい場合が多いです。
低温で使うシール材やパッキンでは、Tgが高すぎると硬化して密封性が落ちる可能性があります。
つまり、硬い部品では使用温度がTgに近づきすぎないこと、柔らかい部品では使用温度がTgより十分高いことが大切です。
Tg一覧表を見るときは、用途と温度条件を一緒に考えましょう。
主要な熱可塑性樹脂のガラス転移温度一覧
続いては主要な熱可塑性樹脂のガラス転移温度一覧を確認していきます。
熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化し、冷却すると固まる性質を持つ樹脂です。
射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形など、多くの加工方法で使われています。
熱可塑性樹脂には非晶性樹脂と結晶性樹脂があります。
非晶性樹脂ではTgが実用上の耐熱性や剛性変化に大きく関係します。
結晶性樹脂ではTgに加えて、融点や結晶化度も重要です。
同じ熱可塑性樹脂でも、PMMA、PC、PSのように比較的高いTgを持つものもあれば、PEやPPのようにTgが低くても結晶構造によって実用性を持つものもあります。
一覧表では代表的なTgの目安を示します。
実際にはグレードや測定条件によって変わるため、参考値として確認してください。
非晶性樹脂のTg一覧
非晶性樹脂は、結晶構造をほとんど持たない、または明確な結晶融解を示しにくい樹脂です。
透明性に優れる材料も多く、Tgが耐熱性の目安になりやすい特徴があります。
ポリスチレン、PMMA、ポリカーボネート、PVC、ABSなどが代表例です。
非晶性樹脂では、Tg付近で弾性率が大きく変化しやすいため、使用温度とTgの差を確認することが大切です。
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材料名 |
略号 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|---|
|
ポリスチレン |
PS |
約100℃ |
透明で硬く、室温ではガラス状態に近い樹脂です。 |
|
ポリメタクリル酸メチル |
PMMA |
約105℃ |
透明性に優れ、アクリル樹脂として使われます。 |
|
ポリカーボネート |
PC |
約145℃ |
耐衝撃性と耐熱性に優れる透明樹脂です。 |
|
硬質ポリ塩化ビニル |
PVC |
約80℃ |
配管や建材に使われる汎用樹脂です。 |
|
ABS樹脂 |
ABS |
約100℃前後 |
成形性と耐衝撃性のバランスがよい樹脂です。 |
|
ポリエーテルイミド |
PEI |
約215℃ |
高耐熱性を持つスーパーエンプラです。 |
非晶性樹脂では、Tgを超えると急に軟化しやすくなるため、高温用途ではTgに余裕を持った材料選定が必要です。
特に透明部品や寸法精度が必要な部品では、使用温度がTgに近いと変形や応力緩和が起こる場合があります。
結晶性樹脂のTg一覧
結晶性樹脂は、分子鎖の一部が規則的に並んだ結晶領域を持つ樹脂です。
結晶性樹脂では、Tgだけでなく融点も非常に重要です。
たとえばポリエチレンやポリプロピレンはTgが低いですが、結晶部分が材料を支えるため、室温でも固体として使えます。
そのため、Tgが低いからといって必ず柔らかすぎるとは限りません。
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材料名 |
略号 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|---|
|
低密度ポリエチレン |
LDPE |
約-110℃付近 |
柔軟性が高く、フィルムや包装材に使われます。 |
|
高密度ポリエチレン |
HDPE |
約-120℃付近 |
剛性と耐薬品性に優れる汎用樹脂です。 |
|
ポリプロピレン |
PP |
約-10℃付近 |
軽量で耐薬品性があり、成形品に広く使われます。 |
|
ポリアミド6 |
PA6 |
約50℃ |
吸湿によりTgや物性が変わりやすい樹脂です。 |
|
ポリエチレンテレフタレート |
PET |
約70℃から80℃ |
繊維、フィルム、ボトルに使われる樹脂です。 |
|
ポリオキシメチレン |
POM |
約-60℃付近 |
摺動性と機械強度に優れるエンジニアリングプラスチックです。 |
結晶性樹脂では、Tgより高い温度でも結晶領域が剛性を支えるため、非晶性樹脂とは違う挙動を示します。
このため、Tgだけでなく融点、結晶化度、熱変形温度を合わせて確認しましょう。
スーパーエンプラのTg一覧
スーパーエンプラは、高温環境や高負荷条件で使われる高性能樹脂です。
耐熱性、機械強度、耐薬品性、寸法安定性に優れる材料が多く、電子部品、自動車部品、航空宇宙部品、医療部品などに使われます。
スーパーエンプラでは、Tgが非常に高いものや、結晶性で融点が高いものがあります。
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材料名 |
略号 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|---|
|
ポリエーテルエーテルケトン |
PEEK |
約143℃ |
耐熱性、耐薬品性、機械強度に優れます。 |
|
ポリフェニレンサルファイド |
PPS |
約90℃ |
高耐熱で寸法安定性に優れる結晶性樹脂です。 |
|
ポリエーテルイミド |
PEI |
約215℃ |
非晶性で高いTgを持つ耐熱樹脂です。 |
|
ポリイミド |
PI |
約250℃以上のものが多い |
非常に高い耐熱性を持つ高性能樹脂です。 |
|
液晶ポリマー |
LCP |
グレードにより大きく異なる |
薄肉成形性と高寸法安定性に優れます。 |
スーパーエンプラでは、Tgの高さだけでなく、融点、長期耐熱性、荷重たわみ温度、難燃性なども重要です。
高温環境で使う場合は、短時間の耐熱性と長時間の信頼性を分けて評価する必要があります。
エラストマーとゴム材料のガラス転移温度一覧
続いてはエラストマーとゴム材料のガラス転移温度一覧を確認していきます。
エラストマーやゴム材料では、Tgが低温特性に大きく関係します。
一般的に、使用温度がTgより十分高いと、ゴムらしい弾性を示します。
しかし使用温度がTgに近づくと、ゴムは硬くなり、弾性を失いやすくなります。
さらにTgより低い温度では、ガラス状になって脆くなることがあります。
そのため、寒冷地で使うシール材、パッキン、ホース、防振ゴム、タイヤ、ケーブル被覆などでは、Tgの低さが重要になります。
エラストマーのTg一覧を見ると、低温柔軟性に優れる材料と、耐油性や耐熱性に優れる材料の違いがわかります。
ただし、ゴムは配合によって物性が大きく変わるため、Tgだけではなく硬度、架橋、充填材、可塑剤、耐油性、耐候性も確認する必要があります。
汎用ゴムのTg一覧
汎用ゴムは、工業製品や日用品に広く使われるゴム材料です。
天然ゴム、SBR、BR、NBR、EPDMなどが代表例です。
それぞれ低温特性、耐油性、耐候性、耐摩耗性などに違いがあります。
|
材料名 |
略号 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|---|
|
天然ゴム |
NR |
約-70℃ |
弾性と機械強度に優れる汎用ゴムです。 |
|
スチレンブタジエンゴム |
SBR |
約-50℃ |
タイヤや一般ゴム製品に使われます。 |
|
ブタジエンゴム |
BR |
約-100℃ |
低温特性と耐摩耗性に優れます。 |
|
ニトリルゴム |
NBR |
約-40℃から-20℃ |
耐油性に優れますが、配合でTgが変わります。 |
|
エチレンプロピレンゴム |
EPDM |
約-50℃ |
耐候性、耐オゾン性、耐水性に優れます。 |
汎用ゴムでは、Tgが低いほど低温でも柔らかさを保ちやすい傾向があります。
ただし、耐油性や耐候性などの要求特性もあるため、Tgだけで選ばないことが大切です。
特殊ゴムのTg一覧
特殊ゴムは、耐熱性、耐油性、耐薬品性、耐候性など、特定の性能を重視して使われます。
フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴムなどが代表的です。
用途により、低温柔軟性よりも耐熱性や耐薬品性が重視されることもあります。
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材料名 |
略号 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|---|
|
シリコーンゴム |
VMQ |
約-120℃付近 |
低温柔軟性と耐熱性に優れます。 |
|
フッ素ゴム |
FKM |
約-20℃付近 |
耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れます。 |
|
クロロプレンゴム |
CR |
約-40℃ |
耐候性と難燃性のバランスがよい材料です。 |
|
アクリルゴム |
ACM |
約-30℃付近 |
耐油性と耐熱性に優れます。 |
|
ウレタンゴム |
PU |
配合により大きく異なる |
耐摩耗性と機械強度に優れます。 |
特殊ゴムでは、Tgが低い材料ほど低温で有利ですが、耐油性や耐薬品性とのバランスが必要です。
シリコーンゴムは低温と高温の両方に強い一方で、機械強度や耐摩耗性では他材料と比較が必要です。
熱可塑性エラストマーのTg一覧
熱可塑性エラストマーは、ゴムのような弾性を持ちながら、熱可塑性樹脂のように成形できる材料です。
TPE、TPU、TPO、TPSなどの種類があります。
ブロック共重合体や相分離構造を持つものが多く、軟質相と硬質相の組み合わせによって物性が決まります。
そのため、Tgも単純な一つの値ではなく、複数の転移を示す場合があります。
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材料名 |
略号 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|---|
|
スチレン系エラストマー |
TPS |
軟質相は約-60℃前後 |
柔軟性と成形性に優れます。 |
|
オレフィン系エラストマー |
TPO |
グレードにより異なる |
軽量で自動車部品などに使われます。 |
|
ウレタン系エラストマー |
TPU |
軟質相は約-50℃前後 |
耐摩耗性と弾性に優れます。 |
|
ポリエステル系エラストマー |
TPC |
軟質相は低温側に現れます。 |
耐熱性と機械強度のバランスがよい材料です。 |
|
ポリアミド系エラストマー |
TPA |
組成により異なる |
柔軟性と耐薬品性を持つ材料です。 |
熱可塑性エラストマーは複雑な構造を持つため、Tgの読み取りには注意が必要です。
軟質相のTgが低温柔軟性に関係し、硬質相は耐熱性や形状保持に関係することがあります。
熱硬化性樹脂と接着剤、塗料のガラス転移温度一覧
続いては熱硬化性樹脂と接着剤、塗料のガラス転移温度一覧を確認していきます。
熱硬化性樹脂は、加熱や硬化剤によって化学反応が進み、三次元網目構造を形成する樹脂です。
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂などがあります。
熱硬化性樹脂では、硬化状態や架橋密度によってTgが大きく変化します。
未硬化や硬化不足ではTgが低く、十分に硬化するとTgが高くなる場合があります。
そのため、Tgは硬化度や耐熱性の評価にも使われます。
接着剤や塗料では、Tgが柔軟性、密着性、耐熱性、耐傷性、粘着性に影響します。
用途に応じて、低Tgの柔らかい配合、高Tgの硬い配合、中間的なバランス配合が使い分けられます。
熱硬化性樹脂のTg一覧
熱硬化性樹脂のTgは、樹脂の種類だけでなく、硬化剤、硬化温度、硬化時間、後硬化条件によって大きく変わります。
そのため、一覧表の値は特に目安として扱う必要があります。
|
材料名 |
Tgの目安 |
特徴 |
|---|---|---|
|
エポキシ樹脂 |
約50℃から200℃以上 |
硬化剤や硬化条件によりTgが大きく変化します。 |
|
フェノール樹脂 |
高温域に現れることが多い |
耐熱性と寸法安定性に優れる熱硬化性樹脂です。 |
|
不飽和ポリエステル樹脂 |
約60℃から150℃ |
FRP材料に広く使われます。 |
|
メラミン樹脂 |
配合により異なる |
硬く耐熱性のある塗料や成形材料に使われます。 |
|
ポリウレタン硬化物 |
配合により大きく異なる |
柔軟材料から硬質材料まで幅広く設計できます。 |
熱硬化性樹脂では、Tgを測定することで硬化状態を評価できる場合があります。
特にエポキシ樹脂では、硬化後のTgが使用温度より十分高いかどうかが重要です。
接着剤のTgと性能の関係
接着剤では、Tgが接着層の硬さや柔軟性に影響します。
Tgが低い接着剤は、室温で柔らかく、応力を緩和しやすい傾向があります。
そのため、柔軟な基材や熱膨張差の大きい材料に向く場合があります。
一方で、Tgが高い接着剤は、硬く、耐熱性や剛性に優れる場合があります。
ただし、硬すぎると衝撃やはく離に弱くなることもあります。
構造用接着剤では、Tg、弾性率、破壊靭性、耐湿性、耐熱性のバランスが重要です。
粘着剤では、Tgが粘着性に大きく関係します。
一般に、使用温度よりTgがかなり低いと、柔らかく粘着性を発揮しやすくなります。
反対にTgが高すぎると、室温で硬くなり、十分な濡れ性が得られにくい場合があります。
塗料やコーティングのTgと膜物性
塗料やコーティングでは、Tgが塗膜の硬さ、柔軟性、耐傷性、耐ブロッキング性、耐汚染性に影響します。
Tgが高い樹脂を使うと、硬く傷つきにくい塗膜になりやすいです。
一方で、柔軟性が不足すると、曲げや衝撃で割れやすくなる場合があります。
Tgが低い樹脂を使うと、柔軟で割れにくい塗膜になりやすいです。
しかし、表面がべたついたり、汚れが付きやすくなったりすることがあります。
そのため、塗料設計ではTgを調整して、硬さと柔軟性のバランスを取ります。
水性塗料では、最低造膜温度や可塑剤、共重合組成も関係します。
コーティングの用途によって、求められるTgは大きく異なります。
ガラス転移温度一覧を見るときの注意点
続いてはガラス転移温度一覧を見るときの注意点を確認していきます。
ガラス転移温度一覧は便利ですが、数値だけを見て材料を決めると誤解につながります。
Tgは材料の代表的な性質を示す重要な指標ですが、使用性能のすべてを示すものではありません。
実際の材料には、添加剤、充填材、繊維補強、可塑剤、難燃剤、安定剤などが含まれている場合があります。
これらはTgや弾性率、耐熱性、衝撃性に影響します。
また、結晶性樹脂ではTgが低くても、結晶領域によって形状保持性を持つことがあります。
非晶性樹脂では、Tgを超えると軟化が目立ちやすい傾向があります。
測定方法によってもTg値は変化するため、DSC、DMA、TMAのどれで測られた値かを確認することが重要です。
一覧表は材料比較の出発点として使い、最終判断は個別データと実使用試験で行うのが安全です。
グレード差と配合差を確認する
同じ樹脂名でも、グレードによってTgは変わることがあります。
たとえばABS樹脂は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの組成比やゴム成分量によって物性が変わります。
ポリウレタンも、ソフトセグメントとハードセグメントの比率によってTgや硬さが大きく変わります。
エポキシ樹脂では、硬化剤や硬化条件によってTgが大きく変化します。
このように、材料名だけでTgを決めつけるのは避けましょう。
メーカーのデータシートには、グレードごとのTg、測定方法、試験条件が記載されている場合があります。
実際の設計では、その情報を優先することが大切です。
DSCとDMAの値を混同しない
DSCとDMAでは、測定している現象が異なります。
DSCは主に熱量変化や比熱変化を見ます。
DMAは機械的な弾性率や損失を見ます。
そのため、同じ材料でもDSCのTgとDMAのTgが異なることがあります。
DMAでは、tanδピーク温度をTgとする場合や、貯蔵弾性率の変化点を見る場合があります。
どの点をTgとして採用するかによっても値が変わります。
一覧表でTgを比較するときは、できるだけ同じ測定方法の値を比べるとよいでしょう。
異なる測定方法の値を比較する場合は、厳密な順位付けではなく、大まかな傾向として見るのが適切です。
Tgだけで使用可否を判断しない
Tgは重要な指標ですが、使用可否を決める唯一の基準ではありません。
高温で使う部品では、熱変形温度、融点、連続使用温度、分解温度、酸化劣化も確認する必要があります。
低温で使う部品では、脆化温度、衝撃強度、弾性回復、圧縮永久ひずみなども重要です。
薬品に触れる用途では、耐薬品性や膨潤も確認しなければなりません。
屋外用途では、耐候性、紫外線劣化、加水分解も関係します。
つまり、Tg一覧表は材料選定の入口であり、最終的な判断には用途別の評価が必要です。
特に安全性や信頼性が重要な部品では、実使用条件に近い試験を行うことが望ましいでしょう。
まとめ
ガラス転移温度の一覧表は、主要材料のTg値を比較し、使用温度で材料がどのような状態になるかを考えるための便利な資料です。
Tgより低い温度では材料は硬くガラス的になりやすく、Tgより高い温度では柔らかくゴム的な性質を示しやすくなります。
非晶性樹脂ではTgが耐熱性や剛性変化の重要な目安になります。
結晶性樹脂では、Tgだけでなく融点や結晶化度も合わせて見る必要があります。
エラストマーやゴム材料では、Tgが低温柔軟性に大きく関係します。
熱硬化性樹脂では、硬化条件や架橋密度によってTgが大きく変化することがあります。
一覧表のTg値は代表値であり、グレード、配合、添加剤、測定方法によって変わります。
DSC、DMA、TMAなどの測定方法の違いも、Tgの値に影響します。
材料選定では、Tgだけでなく、融点、熱変形温度、弾性率、衝撃性、耐薬品性、耐候性なども確認することが重要です。
ガラス転移温度一覧を正しく使えば、ポリマー、樹脂、エラストマーの性質を比較しやすくなり、用途に合った材料を選びやすくなるでしょう。