交流回路の計算では、コンダクタンス、アドミタンス、サセプタンスという似た名称の量が登場します。
いずれも電流の流れやすさに関係していますが、扱う対象や数式上の役割は同じではありません。
コンダクタンスは主に抵抗成分に対する電流の流れやすさを表す実数の量です。
アドミタンスは、抵抗だけでなくコイルやコンデンサーによる位相のずれも含めた、交流回路全体の流れやすさを表します。
そしてサセプタンスは、アドミタンスの虚数成分として、リアクタンスに由来する電流の流れやすさを示す量です。
交流回路では電圧と電流の大きさだけでなく、位相差も考えなければなりません。
そのため、インピーダンスやアドミタンスは複素数を使って表現されます。
名称だけを暗記すると混乱しやすいものの、インピーダンスの逆数がアドミタンスである点を起点に整理すれば理解しやすくなるでしょう。
この記事では、コンダクタンスとアドミタンスの違い、サセプタンスとの関係、計算式、並列回路での使い方を詳しく解説します。
コンダクタンスは実数成分でアドミタンスは交流回路全体の流れやすさ
それではまず、コンダクタンスとアドミタンスの本質的な違いについて解説していきます。
コンダクタンスが表すもの
コンダクタンスは、抵抗成分に対する電流の流れやすさを表す量です。
一般的に記号Gを使用し、単位にはジーメンスを用います。
純粋な抵抗Rだけで構成された回路では、コンダクタンスはRの逆数です。
G=1/Rです。
抵抗が10Ωならコンダクタンスは0.1Sとなります。
抵抗が大きいほど電流は流れにくくなるため、コンダクタンスは小さくなります。
純抵抗回路では、電圧と電流の位相は一致します。
したがって、コンダクタンスは電力を実際に消費する成分と関係します。
抵抗器で発生するジュール熱や、負荷で有効に消費される電力に結び付く量です。
交流回路においても、コンダクタンスそのものはアドミタンスの実数部分として扱われます。
つまり、交流回路全体の中から抵抗的な性質だけを取り出したものと考えられるでしょう。
直流回路ではコンダクタンスだけで流れやすさを表せますが、コイルやコンデンサーを含む交流回路では不十分です。
そこで必要になるのがアドミタンスです。
アドミタンスが表すもの
アドミタンスとは、交流回路における電流の流れやすさを複素数で表した量です。
一般的に記号Yを使用し、単位はコンダクタンスと同じジーメンスです。
アドミタンスはインピーダンスZの逆数として定義されます。
Y=1/Zです。
インピーダンスは交流回路における電流の流れにくさを表します。
抵抗だけでなく、コイルやコンデンサーによるリアクタンスも含む量です。
したがって、その逆数であるアドミタンスも、抵抗成分とリアクタンス成分の両方を反映します。
アドミタンスは一般にY=G+jBの形で表されます。
Gはコンダクタンス、Bはサセプタンス、jは虚数単位です。
この式により、交流回路の流れやすさを実数成分と虚数成分へ分けて考えられます。
実数成分は電力を消費する抵抗的な流れやすさです。
虚数成分はエネルギーを一時的に蓄えて戻すリアクタンス的な流れやすさを示します。
アドミタンスは交流回路における総合的な流れやすさです。
コンダクタンスはアドミタンスの実数部分であり、サセプタンスは虚数部分に相当します。
両者の違いを比較
コンダクタンスとアドミタンスの大きな違いは、位相情報を含むかどうかです。
コンダクタンスは実数で表され、主に抵抗に対応します。
アドミタンスは複素数で表され、抵抗、コイル、コンデンサーの影響をまとめて扱います。
純抵抗回路ではサセプタンスが0になるため、アドミタンスとコンダクタンスは同じ値です。
一方、リアクタンスが存在する回路では、アドミタンスに虚数成分が加わります。
| 比較項目 | コンダクタンス | アドミタンス |
|---|---|---|
| 記号 | G | Y |
| 表す内容 | 抵抗成分の流れやすさ | 交流回路全体の流れやすさ |
| 数の種類 | 実数 | 複素数 |
| 基本式 | G=1/R | Y=1/Z |
| 単位 | S | S |
| 位相情報 | 含まない | 含む |
単位が同じであるため混同しやすいものの、アドミタンスには方向に相当する位相角が存在します。
数値の大きさだけでなく、実部と虚部の符号にも注目する必要があります。
アドミタンスとインピーダンスの関係
続いては、アドミタンスを理解するうえで欠かせないインピーダンスとの関係を確認していきます。
インピーダンスの基本
インピーダンスは、交流回路における電流の流れにくさを表す複素数の量です。
記号にはZを使用し、単位はオームです。
一般的にはZ=R+jXの形で表します。
Rは抵抗、Xはリアクタンスです。
抵抗成分は電圧と電流の同相成分に関係し、リアクタンス成分は位相差に関係します。
コイルのリアクタンスは正の値となり、コンデンサーのリアクタンスは負の値です。
そのため、誘導性回路と容量性回路ではインピーダンスの虚数部分の符号が反対になります。
インピーダンスの大きさは、複素平面上で実数成分と虚数成分から求められます。
Z=R+jXです。
インピーダンスの大きさは|Z|=√R²+X²です。
交流電流の実効値は、電圧の実効値をインピーダンスの大きさで割ることで求められます。
ただし、位相を含めて正確に計算する場合は複素数のまま扱う必要があります。
逆数計算の方法
アドミタンスはインピーダンスの逆数ですが、複素数の逆数を求めるには分母を実数化します。
Z=R+jXである場合、Y=1/R+jXをそのまま実部と虚部へ分けることはできません。
分子と分母に共役複素数R-jXを掛けます。
Y=1/R+jX=R-jX/R²+X²です。
したがってG=R/R²+X²、B=-X/R²+X²となります。
この結果から、コンダクタンスは単純に1/Rとは限らないことが分かります。
回路にリアクタンスが含まれる場合、アドミタンスの実部GはRとXの両方の影響を受けます。
G=1/Rがそのまま成立するのは、Xが0の純抵抗回路です。
たとえばZ=4+j3Ωの回路を考えます。
R²+X²は16+9より25です。
したがって、Y=4/25-j3/25となります。
数値ではY=0.16-j0.12Sです。
このときコンダクタンスは0.16S、サセプタンスは-0.12Sとなります。
アドミタンスの大きさは√0.16²+0.12²より0.2Sです。
一方、元のインピーダンスの大きさは5Ωであり、その逆数が0.2Sになることも確認できます。
極形式による表現
インピーダンスとアドミタンスは、直交形式だけでなく極形式でも表せます。
直交形式は実数部と虚数部を明確に示せるため、コンダクタンスとサセプタンスを確認するときに便利です。
極形式は大きさと位相角を直接表せるため、電圧と電流の位相関係を計算しやすくなります。
インピーダンスが|Z|∠θで表される場合、アドミタンスはその逆数です。
Y=1/|Z|∠-θです。
つまり、アドミタンスの大きさはインピーダンスの大きさの逆数となります。
位相角は符号が反対です。
インピーダンスの位相角が正であれば誘導性であり、アドミタンスの位相角は負になります。
インピーダンスの位相角が負であれば容量性であり、アドミタンスの位相角は正です。
たとえばZ=10∠30度Ωなら、Y=0.1∠-30度Sとなります。
この変換により、インピーダンス表示からアドミタンス表示へ素早く切り替えられます。
交流回路では直列接続にインピーダンス、並列接続にアドミタンスを使うと計算が簡単です。
接続形式に応じて表現を選ぶことが、複雑な回路を効率よく解くポイントでしょう。
サセプタンスとの関係
続いては、アドミタンスの虚数成分であるサセプタンスについて確認していきます。
サセプタンスの意味
サセプタンスとは、交流回路におけるリアクタンス的な電流の流れやすさを表す量です。
一般的に記号Bを使用し、単位はジーメンスです。
アドミタンスYを実数部と虚数部に分けると、Y=G+jBとなります。
このうちGがコンダクタンス、Bがサセプタンスです。
サセプタンスは、コイルやコンデンサーが交流電流へ与える影響を流れやすさの側から表します。
抵抗成分と異なり、理想的なリアクタンスでは平均的な有効電力は消費されません。
コイルやコンデンサーはエネルギーを磁界や電界へ一時的に蓄え、その後回路へ戻します。
この往復するエネルギーに関係するのがサセプタンスです。
サセプタンスの符号は素子の種類によって異なります。
容量性サセプタンスは正、誘導性サセプタンスは負として表すのが一般的です。
サセプタンスの符号を見ると、回路が容量性か誘導性かを判断できます。
Bが正なら容量性、Bが負なら誘導性です。
コンデンサーのサセプタンス
理想的なコンデンサーのインピーダンスは、ZC=1/jωCです。
この逆数を取ると、アドミタンスはYC=jωCとなります。
実数成分がないため、理想コンデンサーのコンダクタンスは0です。
サセプタンスはωCとなります。
BC=ωC=2πfCです。
ここでωは角周波数、fは周波数、Cは静電容量です。
コンデンサーのサセプタンスは、周波数と静電容量に比例します。
周波数が高くなるほどコンデンサーに交流電流が流れやすくなることを意味します。
直流では周波数が0であるため、理想コンデンサーのサセプタンスは0です。
定常状態では電流が流れない開放回路のように振る舞います。
一方、高周波になるほどサセプタンスが大きくなり、インピーダンスは小さくなります。
たとえばC=10μF、f=50Hzの場合を考えます。
BC=2π×50×10×10のマイナス6乗より、約0.00314Sです。
アドミタンスはj0.00314Sとなります。
対応する容量リアクタンスの大きさは約318Ωです。
電源回路の平滑コンデンサーや信号回路の結合コンデンサーでは、この周波数依存性が重要になります。
コイルのサセプタンス
理想的なコイルのインピーダンスは、ZL=jωLです。
逆数を取ると、アドミタンスはYL=1/jωLとなります。
1/jは-jであるため、YL=-j/ωLです。
したがって、コイルのサセプタンスは負の値になります。
BL=-1/ωL=-1/2πfLです。
コイルのサセプタンスは、周波数やインダクタンスが大きいほど絶対値が小さくなります。
つまり、高周波ではコイルに電流が流れにくくなります。
直流に近い低周波では誘導リアクタンスが小さいため、サセプタンスの絶対値は大きくなります。
理想コイルは直流に対して短絡に近い性質を示します。
たとえばL=0.1H、f=50Hzの場合、ωLは約31.4Ωです。
サセプタンスは-1/31.4より約-0.0318Sとなります。
アドミタンスは-j0.0318Sです。
実際のコイルには巻線抵抗が存在するため、アドミタンスにはコンダクタンス成分も含まれます。
理想式は基本的な傾向を理解するためのモデルであり、実部品では損失を考慮する必要があります。
| 素子 | アドミタンス | サセプタンス | 符号 |
|---|---|---|---|
| 純抵抗 | 1/R | 0 | なし |
| コンデンサー | jωC | ωC | 正 |
| コイル | -j/ωL | -1/ωL | 負 |
交流回路での計算方法と活用
続いては、アドミタンスを用いた並列回路の計算方法と実務上の活用を確認していきます。
並列回路でアドミタンスを使う理由
アドミタンスは、複数の素子が並列接続された交流回路の計算に適しています。
並列回路では各素子に同じ電圧が加わり、それぞれの枝へ電流が分かれます。
枝電流は電圧とアドミタンスの積で表せます。
全電流は各枝電流の和なので、合成アドミタンスは各枝のアドミタンスを足し合わせれば求められます。
Y=Y1+Y2+Y3です。
インピーダンスで並列計算を行う場合は逆数の和を計算する必要があります。
アドミタンスへ変換すれば、複素数の単純な加算で処理できます。
抵抗、コイル、コンデンサーが並列に接続された回路でも、各アドミタンスを実部と虚部へ分ければ整理しやすくなります。
抵抗のコンダクタンスをG、コンデンサーのサセプタンスをBC、コイルのサセプタンスをBLとします。
合成アドミタンスはG+jBC+BLです。
容量性と誘導性のサセプタンスは符号が反対なので、互いに打ち消し合います。
両者の大きさが等しくなると、虚数成分が0となって並列共振が起こります。
並列RLC回路の計算例
抵抗R、コイルL、コンデンサーCが並列接続された回路を考えます。
抵抗枝のアドミタンスは1/Rです。
コイル枝は-j/ωL、コンデンサー枝はjωCです。
したがって、回路全体のアドミタンスは次のように表されます。
Y=1/R+jωC-j/ωLです。
整理するとY=G+jBとなり、G=1/R、B=ωC-1/ωLです。
たとえばR=100Ω、L=0.1H、C=100μF、f=50Hzとします。
抵抗のコンダクタンスは0.01Sです。
コンデンサーのサセプタンスは2π×50×100×10のマイナス6乗より約0.0314Sです。
コイルのサセプタンスは-1/2π×50×0.1より約-0.0318Sとなります。
合成サセプタンスは約-0.0004Sです。
したがって、合成アドミタンスは約0.01-j0.0004Sとなります。
虚数成分が小さいため、回路はほぼ共振状態に近いと判断できます。
合成インピーダンスはアドミタンスの逆数から求めます。
共振時にはサセプタンスが打ち消され、アドミタンスがほぼコンダクタンスだけになります。
その結果、並列回路のインピーダンスは大きくなり、電源から流れる電流は小さくなります。
直列共振とは逆の特徴である点に注意しましょう。
電力や力率との関係
アドミタンスの実数成分と虚数成分は、交流電力とも関係します。
電圧の実効値をVとした場合、有効電力PはコンダクタンスGを使って表せます。
無効電力QはサセプタンスBと関係します。
有効電力はP=V²Gです。
符号規約により表現が異なる場合がありますが、無効電力の大きさはV²Bに対応します。
コンダクタンスが大きいほど、同じ電圧で多くの有効電力が消費されます。
サセプタンスの絶対値が大きいほど、電源とリアクタンス素子の間を往復する無効電力が増えます。
アドミタンスの位相角は、電流が電圧に対してどの程度進むか遅れるかを示します。
容量性回路では電流が進み、誘導性回路では電流が遅れます。
力率は、アドミタンスの大きさに対するコンダクタンスの割合としても表現できます。
力率=G/|Y|です。
サセプタンスが0に近いほど力率は1に近づきます。
工場設備やモーター負荷では誘導性の無効電力が大きくなりやすいため、コンデンサーを並列接続して補償します。
コンデンサーの正のサセプタンスで、コイル負荷の負のサセプタンスを打ち消す仕組みです。
力率改善をアドミタンスの観点から考えると、必要なコンデンサー容量を理解しやすくなるでしょう。
直列回路ではインピーダンスを加算し、並列回路ではアドミタンスを加算するのが基本です。
コンダクタンスとサセプタンスへ分けることで、有効成分と無効成分を同時に把握できます。
まとめ
コンダクタンスとアドミタンスは、どちらも電流の流れやすさを示しますが、扱う範囲が異なります。
コンダクタンスは抵抗成分に対応する実数の量であり、記号G、単位Sで表します。
純抵抗回路ではG=1/Rです。
アドミタンスは交流回路全体の流れやすさを示す複素数の量であり、記号Yを使用します。
アドミタンスはインピーダンスの逆数であり、Y=1/Zです。
直交形式ではY=G+jBと表され、実数部Gがコンダクタンス、虚数部Bがサセプタンスとなります。
サセプタンスはリアクタンス成分に対応し、コンデンサーでは正、コイルでは負です。
純抵抗回路ではB=0となるため、アドミタンスとコンダクタンスは同じ値になります。
一方、コイルやコンデンサーを含む回路では、位相情報を含むアドミタンスで考える必要があります。
並列回路では各枝のアドミタンスを足し合わせられるため、インピーダンスを使うより計算を簡潔にできます。
コンダクタンスはアドミタンスの実数成分、サセプタンスは虚数成分という関係を押さえることが重要です。
インピーダンスとアドミタンスを接続形式に応じて使い分け、交流回路の大きさと位相を正しく解析しましょう。