遮断周波数の求め方は?計算方法と公式を解説(カットオフ周波数・RC回路・LC回路・フィルタ設計など)
「遮断周波数(カットオフ周波数)の求め方がわからない」「RC回路とLC回路での計算式が知りたい」「フィルタ設計でどのように遮断周波数を決めるのか」という疑問は、電子回路・信号処理・通信工学を学ぶ学生からエンジニアまで非常によく聞かれます。
遮断周波数(カットオフ周波数:fc)はフィルタ回路において信号の通過帯域と阻止帯域の境界を定義する重要なパラメータであり、RC回路・LC回路・RL回路などの電子回路設計において基本中の基本となる計算です。
本記事では、遮断周波数の定義と意味から始まり、RC回路・LC回路・RL回路での計算公式、ローパスフィルタ・ハイパスフィルタでの求め方、具体的な計算例、フィルタ設計への応用まで詳しく解説します。
遮断周波数とは?定義と意味の結論
それではまず、遮断周波数(カットオフ周波数)の定義と物理的な意味について解説していきます。
遮断周波数(Cutoff Frequency:fc)とは、フィルタ回路において入力信号の電力が半分(−3dB:電圧振幅が1/√2倍)になる周波数であり、通過帯域と阻止帯域の境界を定義する周波数です。
遮断周波数は「カットオフ周波数」「3dB周波数」「半電力点」とも呼ばれます。
−3dBの意味と電圧・電力の関係
【遮断周波数での−3dBの意味】
電力(Power)が半分 → 10×log₁₀(1/2)≒ −3 dB
電圧振幅(Voltage)が1/√2倍(≒0.707倍)→ 20×log₁₀(1/√2)≒ −3 dB
定義:遮断周波数fcでの出力電圧振幅(または電流振幅)が通過帯域の値の1/√2倍になる周波数
|Vout/Vin| = 1/√2 ≒ 0.707 at f = fc
位相シフト(RC一次フィルタ):fcで位相が−45度(ローパス)または+45度(ハイパス)シフト
ローパスフィルタとハイパスフィルタの違い
遮断周波数はローパスフィルタ(LPF)とハイパスフィルタ(HPF)で異なる意味を持ちます。
| フィルタの種類 | 遮断周波数の意味 | fcより低い周波数 | fcより高い周波数 |
|---|---|---|---|
| ローパスフィルタ(LPF) | 通過帯域の上限周波数 | 通過(Pass) | 阻止(Stop) |
| ハイパスフィルタ(HPF) | 通過帯域の下限周波数 | 阻止(Stop) | 通過(Pass) |
| バンドパスフィルタ(BPF) | 下限fc1と上限fc2の2点 | 阻止 | 阻止(中間の帯域が通過) |
| バンドストップフィルタ(BSF) | 下限fc1と上限fc2の2点 | 通過 | 通過(中間の帯域が阻止) |
角周波数ωcと周波数fcの関係
遮断周波数はHz(f:周波数)とrad/s(ω:角周波数)の2つの形式で表現されます。
【fcとωcの換算】
ωc = 2πfc(角周波数)
fc = ωc ÷(2π)(周波数)
RC回路での遮断角周波数:ωc = 1/(RC)
対応するfc = 1/(2πRC)
RC回路の遮断周波数の求め方
続いては、最も基本的なRC回路(抵抗とコンデンサの回路)における遮断周波数の求め方を確認していきます。
RC回路は一次ローパスフィルタ(または一次ハイパスフィルタ)として最もよく使われる基本回路です。
RC一次ローパスフィルタの遮断周波数
【RC一次ローパスフィルタの遮断周波数の公式と計算例】
回路構成:入力端子→抵抗R→コンデンサC→GND(出力はC両端)
遮断周波数の公式
fc = 1 ÷(2πRC)[Hz]
ωc = 1 ÷(RC)[rad/s]
計算例①:R = 1 kΩ(1000Ω)・C = 0.1 μF(0.1×10⁻⁶F)の場合
fc = 1 ÷(2π × 1000 × 0.1×10⁻⁶)
= 1 ÷(2π × 10⁻⁴)≒ 1592 Hz ≒ 1.59 kHz
計算例②:fc = 10 kHz を実現したい場合のC(R = 10kΩ のとき)
C = 1 ÷(2π × 10000 × 10000)= 1 ÷(2π × 10⁸)≒ 1.59 nF
RC回路の遮断周波数は「fc = 1/(2πRC)」という非常にシンプルな公式で求められ、RとCの値を変えることで任意の遮断周波数を実現できることが回路設計の柔軟性を生んでいます。
RC一次ハイパスフィルタの遮断周波数
RC一次ハイパスフィルタはコンデンサと抵抗の順番が逆になった回路(入力→C→R→GND・出力はR両端)であり、遮断周波数の公式はローパスフィルタと同じです。
【RC一次ハイパスフィルタの遮断周波数(公式はLPFと同じ)】
fc = 1 ÷(2πRC)[Hz](LPFと同じ公式)
ただしHPFではfcより高い周波数が通過・低い周波数が阻止
HPFの伝達関数 H(jω) =(jωRC)÷(1+jωRC)
LPFの伝達関数 H(jω) = 1 ÷(1+jωRC)
時定数τとの関係
RC回路では「時定数τ(タウ)= RC」という指標がよく使われます。
時定数τと遮断周波数fcの関係は fc = 1/(2πτ) であり、時定数が大きいほど遮断周波数が低くなります。
時定数τはRC回路でコンデンサが充電を始めて電圧が最終値の約63.2%(1−1/e)に達するまでの時間であり、時間領域(パルス応答)と周波数領域(周波数特性)の両方の設計で重要なパラメータです。
LC回路とRL回路の遮断周波数の求め方
続いては、LC回路とRL回路における遮断周波数の求め方を確認していきます。
LC回路(LCフィルタ)の共振周波数と遮断周波数
LC回路(インダクタLとコンデンサCの回路)では「共振周波数(Resonant Frequency:f₀)」が重要なパラメータです。
【LC回路の共振周波数の公式と計算例】
共振周波数(遮断周波数に相当):f₀ = 1 ÷(2π√(LC))[Hz]
または ω₀ = 1 ÷ √(LC)[rad/s]
L:インダクタンス(H:ヘンリー)
C:静電容量(F:ファラド)
計算例:L = 10 mH(0.01 H)・C = 100 pF(10⁻¹⁰ F)のLC共振回路
f₀ = 1 ÷(2π × √(0.01 × 10⁻¹⁰))
= 1 ÷(2π × √(10⁻¹²))
= 1 ÷(2π × 10⁻⁶)≒ 159155 Hz ≒ 159 kHz
RL回路の遮断周波数
【RL回路の遮断周波数の公式】
RL一次ローパスフィルタ(出力はR両端)
fc = R ÷(2πL)[Hz]
ωc = R ÷ L [rad/s]
R:抵抗(Ω)・L:インダクタンス(H)
計算例:R = 100 Ω・L = 1 mH(0.001 H)のRL LPFの遮断周波数
fc = 100 ÷(2π × 0.001)= 100 ÷ 0.00628 ≒ 15915 Hz ≒ 15.9 kHz
各フィルタ回路の遮断周波数公式まとめ
| 回路の種類 | 遮断周波数の公式 | 関係する素子 |
|---|---|---|
| RC一次フィルタ(LPF・HPF) | fc = 1/(2πRC) | R(抵抗)・C(コンデンサ) |
| RL一次フィルタ(LPF・HPF) | fc = R/(2πL) | R(抵抗)・L(インダクタ) |
| LC二次フィルタ(共振周波数) | f₀ = 1/(2π√(LC)) | L(インダクタ)・C(コンデンサ) |
| RLC二次フィルタ(遮断周波数) | f₀ = 1/(2π√(LC))・Q = (1/R)√(L/C)で形状決定 | R・L・C(3素子) |
実際のフィルタ設計への遮断周波数の応用
続いては、実際の電子回路・フィルタ設計における遮断周波数の活用方法を確認していきます。
アクティブフィルタ(オペアンプフィルタ)での遮断周波数
オペアンプ(演算増幅器)を使ったアクティブフィルタでは、RCフィルタの受動回路に加えてオペアンプの増幅機能を組み合わせることで、鋭い遮断特性・バンドパスフィルタ・任意のゲインを実現できます。
サレン・キー型(Sallen-Key)二次バターワースフィルタの遮断周波数は fc = 1/(2π√(R1R2C1C2)) で計算され、Q値によって遮断特性の鋭さが決まります。
バターワースフィルタは「最大限フラットな通過帯域特性」・チェビシェフフィルタは「急峻な遮断特性(通過帯域にリップルあり)」・ベッセルフィルタは「最良の位相特性」という設計上のトレードオフがあります。
デジタルフィルタでの遮断周波数
デジタル信号処理(DSP)での遮断周波数は、サンプリング周波数(fs)に対する正規化周波数(fc/fs)として設計されることが多くあります。
ナイキスト周波数(fs/2)が最大の処理周波数であり、デジタルフィルタの遮断周波数はナイキスト周波数以下に設定する必要があります。
オーディオ・音響設計での遮断周波数の設定例
オーディオ機器の設計では遮断周波数が音質に直接影響します。
スピーカーのクロスオーバーネットワーク(ウーファーとツイーターへの周波数分配)では、ウーファー用LPFのfcとツイーター用HPFのfcを同じ値(例:3kHz)に設定してクロスオーバー周波数を決定します。
クロスオーバー周波数は−3dBの基準周波数として設計されますが、実際には2つのフィルタの合成特性とスピーカーの指向性を考慮したより複雑な設計が必要です。
まとめ
本記事では、遮断周波数(カットオフ周波数)の定義(−3dB点)と意味、ローパス・ハイパス・バンドパスフィルタでの役割、RC回路(fc = 1/2πRC)・RL回路(fc = R/2πL)・LC回路(f₀ = 1/2π√(LC))の遮断周波数公式と計算例、アクティブフィルタ・デジタルフィルタ・オーディオ設計への応用まで幅広く解説しました。
遮断周波数の計算は「使っている素子の種類(RC・RL・LC)に対応した公式を選択し、単位(Hz・kHz・MHzとΩ・H・F)を統一して計算する」ことが正確な結果を得るための基本です。
遮断周波数の概念とその計算方法を確実に身につけることで、電子回路設計・信号処理・音響設計のすべての場面でより的確な判断ができるようになります。