透磁率一覧とは、鉄、ニッケル、フェライト、空気、銅、アルミニウムなど、さまざまな材料が磁束をどの程度通しやすいかを比較したものです。
磁性材料を選ぶ場面では、比透磁率の大きさだけでなく、磁気飽和、周波数特性、損失、温度特性なども確認する必要があります。
特に鉄やニッケルなどの強磁性体は高い透磁率を示しますが、その値は一定ではありません。
同じ鉄系材料でも、純鉄、けい素鋼、電磁軟鉄、パーマロイでは特性が大きく異なります。
フェライトにもマンガン亜鉛系やニッケル亜鉛系があり、使用できる周波数帯や透磁率が変わります。
この記事では、材料別の透磁率一覧と磁性体の分類をわかりやすく整理します。
数値を見る際の注意点や、用途に応じた材料選びについても確認していきましょう。
透磁率一覧では強磁性体が大きく常磁性体と反磁性体はほぼ1になる
それではまず、材料別の透磁率を比較したときの結論について解説していきます。
鉄、ニッケル、フェライトなどの強磁性体は、空気や非磁性金属に比べて大きな比透磁率を示します。
一方、常磁性体と反磁性体の比透磁率は、いずれも1に非常に近い値です。
強磁性体の比透磁率は数十から数万以上になる場合がありますが、常磁性体と反磁性体は実用上ほぼ1です。
ただし、強磁性体の透磁率は測定条件によって大きく変化するため、一覧値は目安として扱う必要があります。
材料別の比透磁率の目安
代表的な材料の比透磁率の目安を表にまとめます。
数値は材料の純度、組成、熱処理、磁場、周波数などによって変化します。
そのため、特定の製品を設計する際は、メーカーが提示する実測データを優先してください。
| 材料 | 磁性の分類 | 比透磁率の大まかな傾向 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 真空 | 基準 | 1 | 比透磁率の基準となる |
| 空気 | 常磁性的 | ほぼ1 | 一般的な計算では真空と同等に扱う |
| 銅 | 反磁性体 | 1よりわずかに小さい | 磁束をわずかに弱める |
| ビスマス | 反磁性体 | 1より小さい | 比較的強い反磁性を示す |
| アルミニウム | 常磁性体 | 1よりわずかに大きい | 磁界に弱く引かれる |
| 酸素 | 常磁性体 | 1よりわずかに大きい | 気体としては常磁性を示す |
| ニッケル | 強磁性体 | 数十から数百程度の場合がある | 耐食性や合金用途に優れる |
| 純鉄 | 強磁性体 | 数百から数千以上 | 高い磁束密度を得やすい |
| けい素鋼 | 強磁性体 | 数千程度の場合がある | 変圧器やモーターに使用される |
| パーマロイ | 強磁性体 | 数千から数万以上 | 高透磁率で磁気シールドに適する |
| マンガン亜鉛フェライト | フェリ磁性体 | 数百から数千以上 | 中低周波のトランスやインダクタ向け |
| ニッケル亜鉛フェライト | フェリ磁性体 | 数十から数百程度 | 高周波用途に適する |
一覧からわかるように、材料による差は非常に大きくなります。
しかし、同じ分類の中でも幅があるため、単一の固定値として覚えるのは適切ではありません。
比透磁率が1より大きい材料
比透磁率が1より大きい材料は、外部磁界によって磁束密度が真空中よりも大きくなる材料です。
常磁性体では1よりわずかに大きい程度ですが、強磁性体では大幅に大きくなります。
アルミニウムや白金は常磁性体であり、磁界に弱く引き寄せられます。
ただし、その効果は非常に小さいため、通常の磁石を近づけても明確に感じられないことが多いでしょう。
鉄やニッケルでは磁区の向きが外部磁界によってそろいやすく、大きな磁化が生じます。
この性質が、モーター、変圧器、電磁石、磁気シールドなどに利用されています。
比透磁率が1より小さい材料
反磁性体の比透磁率は1よりわずかに小さくなります。
外部磁界を打ち消す向きに微弱な磁化が生じるためです。
銅、銀、金、水、ビスマス、黒鉛などが代表例となります。
多くの反磁性体では差が非常に小さいため、工学的な磁気回路計算では比透磁率を1と近似する場合があります。
一方、超伝導体では磁束を内部から排除するマイスナー効果が現れ、完全反磁性に近い挙動を示します。
一般的な金属の反磁性とは仕組みや強さが異なる点も押さえておきましょう。
鉄と鉄系材料の透磁率
続いては、鉄と鉄系材料の透磁率について確認していきます。
鉄は代表的な強磁性体ですが、純度や添加元素、結晶組織、加工状態によって磁気特性が変わります。
電磁機器では純鉄だけでなく、けい素鋼や電磁軟鉄などが広く使用されています。
純鉄の透磁率
純鉄は高い透磁率と高い飽和磁束密度を持つ材料です。
磁束を集めやすいため、電磁石、リレー、ソレノイド、磁極などに使用されます。
ただし、一般に流通する鉄材には炭素や不純物が含まれており、純度の高い電磁用純鉄とは特性が異なります。
炭素量や加工ひずみが増えると、磁壁が移動しにくくなり、透磁率が低下したり保磁力が増加したりする場合があります。
熱処理によって内部応力を除去すると、透磁率が改善されることもあります。
純鉄の比透磁率を示す場合でも、初透磁率なのか最大透磁率なのかによって数値は大きく変わるでしょう。
けい素鋼の透磁率
けい素鋼は、鉄にけい素を添加した電磁材料です。
けい素を加えることで電気抵抗率が高くなり、交流磁界による渦電流損失を抑えられます。
変圧器、発電機、モーターなどの鉄心に広く使われています。
けい素鋼板を薄い板にして積層するのも、渦電流の流れる経路を分断して損失を減らすためです。
方向性けい素鋼は、特定方向に磁化しやすい結晶方位をそろえた材料で、主に変圧器に使用されます。
無方向性けい素鋼は、面内のさまざまな方向に磁束が流れるモーターや発電機に適しています。
透磁率だけでなく、鉄損と飽和磁束密度のバランスを考えて選ばれる材料です。
パーマロイや電磁軟鉄の透磁率
パーマロイは、ニッケルと鉄を主成分とする高透磁率合金です。
弱い磁界でも磁化しやすく、磁気シールド、変流器、センサー、磁気ヘッドなどに使われます。
組成や熱処理条件によっては、非常に高い最大透磁率を示します。
一方で、飽和磁束密度は純鉄やけい素鋼より低い場合があるため、大きな磁束を扱う用途では注意が必要です。
電磁軟鉄は、低炭素化や高純度化によって磁気特性を高めた鉄系材料です。
直流電磁石やリレー部品など、低い保磁力と高い磁束密度が求められる用途に向いています。
鉄系材料は透磁率の高さだけでなく、交流損失、飽和磁束密度、保磁力、加工性を含めて選定することが重要です。
ニッケルとフェライトの透磁率
続いては、ニッケルとフェライトの透磁率を確認していきます。
どちらも磁性材料ですが、金属であるニッケルとセラミックスであるフェライトでは、電気抵抗や周波数特性が大きく異なります。
用途に合った材料を選ぶには、それぞれの長所と短所を理解する必要があります。
ニッケルの透磁率と特徴
ニッケルは室温で強磁性を示す金属です。
鉄ほど高い飽和磁束密度を持つわけではありませんが、耐食性や合金化のしやすさに優れています。
純ニッケル単体よりも、鉄やコバルトなどとの合金として利用されることが多い材料です。
ニッケルを多く含む鉄合金には、高透磁率を示すものがあります。
パーマロイが代表例であり、微弱な磁界を扱うセンサーや磁気シールドに適しています。
ただし、機械加工や曲げによって内部応力が生じると、磁気特性が悪化する場合があります。
高い透磁率を引き出すには、成形後の熱処理や磁場中焼鈍などが必要になることもあるでしょう。
マンガン亜鉛フェライトの透磁率
マンガン亜鉛フェライトは、酸化鉄を主成分とするセラミックス系磁性材料です。
金属材料より電気抵抗率が高いため、渦電流損失を抑えやすい特徴があります。
比較的高い透磁率を得やすく、スイッチング電源のトランス、チョークコイル、ノイズフィルターなどに使われます。
一般には、ニッケル亜鉛フェライトより透磁率が高い傾向です。
一方、電気抵抗率はニッケル亜鉛系より低く、非常に高い周波数では損失が増えやすくなります。
数十kHzから数MHz程度までの幅広い用途がありますが、最適な周波数範囲は材質グレードごとに異なります。
ニッケル亜鉛フェライトの透磁率
ニッケル亜鉛フェライトは、高い電気抵抗率を持つフェライトです。
マンガン亜鉛系より比透磁率が低いものの、高周波で渦電流損失が生じにくい利点があります。
高周波トランス、アンテナコア、EMI対策用フェライトビーズ、クランプフィルターなどに利用されます。
ノイズ対策部品では、単純に透磁率が高いことよりも、対象周波数で適切なインピーダンスと損失を得られることが重要です。
フェライトビーズでは、高周波ノイズのエネルギーを損失として吸収し、熱へ変換する働きも利用されています。
| 材料 | 透磁率の傾向 | 電気抵抗率 | 適した用途 |
|---|---|---|---|
| 純鉄 | 高い | 低い | 直流電磁石、磁極、リレー |
| けい素鋼 | 高い | 金属としては比較的高い | 商用周波数の変圧器、モーター |
| パーマロイ | 非常に高い場合がある | 低い | 磁気シールド、センサー |
| マンガン亜鉛フェライト | 比較的高い | 高い | 電源トランス、チョーク |
| ニッケル亜鉛フェライト | 中程度から低め | 非常に高い | 高周波コア、ノイズ対策 |
強磁性体・常磁性体・反磁性体の違い
続いては、磁性体の分類ごとの違いを確認していきます。
物質の磁気的な応答は、強磁性、常磁性、反磁性などに分類されます。
透磁率一覧を理解するには、それぞれの磁化の仕組みを知ることが役立ちます。
強磁性体の特徴
強磁性体は、外部磁界に対して非常に強く磁化される物質です。
鉄、コバルト、ニッケル、および一部の合金が代表例となります。
材料内部には磁区と呼ばれる領域があり、各磁区では磁気モーメントの向きがそろっています。
外部磁界を加えると、磁界方向を向いた磁区が成長し、材料全体として大きな磁化が生じます。
磁界を取り除いた後も磁化が残る場合があり、これが残留磁化です。
磁化をゼロに戻すために必要な逆向きの磁場が保磁力となります。
軟磁性材料は保磁力が小さく、変圧器や電磁石に向いています。
硬磁性材料は保磁力が大きく、永久磁石に適しています。
常磁性体の特徴
常磁性体は、外部磁界の方向へ弱く磁化される物質です。
アルミニウム、白金、マグネシウム、酸素などが例として挙げられます。
比透磁率は1よりわずかに大きく、磁化率は小さな正の値です。
外部磁界を取り除くと、熱運動によって磁気モーメントの向きが乱れ、磁化はほぼ消失します。
強磁性体のような大きなヒステリシスは通常見られません。
常磁性の強さは温度に依存することがあり、温度が高くなるほど熱運動が強まり、磁化しにくくなる場合があります。
反磁性体の特徴
反磁性体は、外部磁界と反対方向へ弱く磁化される物質です。
銅、銀、金、ビスマス、水、黒鉛などが代表例となります。
比透磁率は1よりわずかに小さく、磁化率は負の値です。
反磁性は原理的にはすべての物質に存在しますが、常磁性や強磁性が強い材料では目立たなくなります。
反磁性体を強い磁場勾配の中に置くと、磁場の弱い方向へ力を受けます。
強力な磁場を使った反磁性浮上の実験では、水を多く含む物体などを浮かせることも可能です。
常磁性体では、μrは1よりわずかに大きくなります。
反磁性体では、μrは1よりわずかに小さくなります。
強磁性体では、μrが1より大幅に大きくなる場合があります。
透磁率一覧を材料選定に活用する方法
続いては、透磁率一覧を実際の材料選定に活用する方法を確認していきます。
一覧表は材料の傾向を比較するうえで便利ですが、透磁率だけを基準に選ぶと設計上の問題が生じることがあります。
用途ごとに必要な磁気特性を整理し、複数の指標を比較しましょう。
低周波の変圧器やモーターで選ぶ場合
商用周波数や比較的低い周波数で使う変圧器、モーター、発電機では、けい素鋼板が広く利用されます。
高い飽和磁束密度を持ち、大きな磁束を扱いやすいためです。
板を薄く積層することで渦電流損失を減らし、効率を高めています。
変圧器では方向性けい素鋼、回転機では無方向性けい素鋼が選ばれることが一般的です。
材料選定では、透磁率、鉄損、板厚、磁歪、飽和磁束密度などを比較します。
高周波回路で選ぶ場合
スイッチング電源や高周波フィルターでは、フェライトコアが有力な選択肢です。
電気抵抗率が高いため、金属コアより渦電流を抑えやすくなります。
比較的低い周波数ではマンガン亜鉛系、高い周波数ではニッケル亜鉛系が使われる傾向です。
ただし、材質グレードによって最適周波数は異なります。
メーカーのコア損失曲線、複素透磁率、温度特性を確認したうえで選ぶことが大切です。
磁気シールドやセンサーで選ぶ場合
微弱な磁界を扱うセンサーや磁気シールドでは、高透磁率のパーマロイなどが使われます。
磁気シールドは磁界を完全に遮断するのではなく、高透磁率材料へ磁束を通して保護空間を迂回させる仕組みです。
そのため、弱い磁界領域で高い透磁率を持つ材料が求められます。
一方、強い磁界では材料が飽和し、シールド性能が低下する可能性があります。
必要に応じて、高飽和磁束密度の材料と高透磁率材料を多層化する方法もあります。
透磁率一覧は候補を絞るために使い、最終選定では実際の周波数、磁束密度、温度、直流バイアスに対応したデータを確認しましょう。
まとめ
透磁率一覧を見ると、鉄、ニッケル、けい素鋼、パーマロイ、フェライトなどの強磁性体やフェリ磁性体は、空気や非磁性材料より大きな比透磁率を持つことがわかります。
常磁性体の比透磁率は1よりわずかに大きく、反磁性体では1よりわずかに小さくなります。
純鉄やけい素鋼は高い飽和磁束密度を得やすく、変圧器、モーター、電磁石などに適しています。
パーマロイは弱い磁界で高い透磁率を示し、磁気シールドやセンサーに向いています。
フェライトは電気抵抗率が高く、交流や高周波で渦電流損失を抑えやすい材料です。
ただし、強磁性材料の透磁率は一定ではなく、磁場、周波数、温度、加工状態によって変化します。
一覧の数値は目安として捉え、実際の設計ではメーカーのデータシートや使用条件に合った測定値を利用しましょう。