電子回路の設計や基板の実装を進めていると、複数の抵抗をひとつの部品としてまとめた抵抗アレイという部品名を目にすることがあります。
抵抗ネットワークや集合抵抗とも呼ばれ、SIPタイプやDIPタイプ、チップタイプなど形状もさまざまです。
プルアップ抵抗やLEDの電流制限抵抗をまとめて実装したい場面では、この部品がとても役立ちます。
とはいえ、通常の単体抵抗と何が違うのか、どのように選べばよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では抵抗アレイとは何かという基本から、特徴、種類、内部構造、使い方、選定時の注意点まで幅広く解説していきます。
基板設計の効率化やコスト削減を検討している方は、ぜひ最後まで読み進めてみてください。
抵抗アレイとは何か(結論)
それでは、まず抵抗アレイとは何かという結論部分から解説していきます。
結論から言うと、抵抗アレイとは複数の抵抗素子をひとつのパッケージに集約した部品のことです。
単体の抵抗を何個も基板上に並べる代わりに、ひとつの部品で複数系統の抵抗機能をまとめて実現できます。
基板上の実装面積を大幅に削減できる点が最大の魅力でしょう。
抵抗アレイの基本的な定義
抵抗アレイは英語ではResistor Arrayと表記されます。
内部には同じ抵抗値、または異なる抵抗値を持つ複数の抵抗素子が並んで配置されています。
それぞれの抵抗素子は独立した端子を持つものもあれば、一部の端子を共有するものもあります。
この構造の違いが、後述する回路パターンの分類につながっていきます。
単純に言えば、抵抗の詰め合わせパッケージとイメージすると分かりやすいでしょう。
抵抗ネットワークとの関係性
抵抗アレイは、しばしば抵抗ネットワークという呼び方でも紹介されます。
基本的には同じ部品を指す言葉として使われることがほとんどです。
ただしメーカーによっては、抵抗ネットワークという用語をより広い意味で使う場合もあります。
たとえば抵抗だけでなく、抵抗とダイオードを組み合わせた複合部品を指すケースも存在します。
用語の細かな違いよりも、複数の受動素子を集約した部品という点を押さえておけば十分でしょう。
集合抵抗と呼ばれる理由
日本国内では抵抗アレイのことを集合抵抗と呼ぶ技術者も多く見られます。
複数の抵抗が集合してひとつの部品になっているという、まさに見た目そのままの呼称です。
データシートや型番検索の際には、抵抗アレイと集合抵抗の両方のキーワードで探すと情報が見つかりやすくなります。
メーカーのカタログでは英語表記のみの場合も多いため、Resistor NetworkやResistor Arrayという単語も覚えておくと便利でしょう。
抵抗アレイの特徴
続いては、抵抗アレイの特徴を確認していきます。
抵抗アレイには単体抵抗を複数個並べる方法と比較して、いくつもの利点があります。
ここでは代表的な三つの特徴に絞って見ていきましょう。
小型化・省スペース化のメリット
抵抗アレイ最大の特徴は、なんといっても実装面積の削減です。
単体抵抗を四個並べる場合と、四回路入りの抵抗アレイを一個使う場合を比較してみましょう。
後者のほうが基板上の専有面積は圧倒的に小さくなります。
スマートフォンやウェアラブル機器のように基板面積が限られる製品では、この差が設計の成否を分けることもあるでしょう。
基板が小さくなれば、その分だけ筐体のコンパクト化にもつながります。
例えば0603サイズの単体抵抗を8個実装する場合と、8回路入りのDIP型抵抗アレイを1個実装する場合を比べてみます。
単体抵抗8個分の専有面積がおよそ8平方ミリメートル前後になるのに対し、抵抗アレイであれば1パッケージで同等の機能を持たせられます。
実装点数が減ることで、はんだ付け箇所も同時に削減できます。
抵抗値のばらつきが少ない
抵抗アレイは同一の製造プロセスで内部の抵抗素子が形成されます。
そのため、複数の抵抗素子間での抵抗値のばらつきが小さいという特性を持っています。
単体抵抗を個別に選んで組み合わせる場合、製造ロットの違いによって微妙な誤差が生じることがあります。
一方、抵抗アレイであれば同じチップ上に形成されているため、素子間の相対誤差が非常に小さく抑えられます。
抵抗分圧回路やマッチング回路など、素子間の精度が重要になる用途に向いているといえるでしょう。
実装コストの削減効果
部品点数が減れば、実装工程にかかる時間やコストも削減できます。
表面実装機による自動実装を行う場合、部品一個あたりのピックアンドプレース工程には一定の時間がかかります。
単体抵抗を何個も個別に実装するより、抵抗アレイでまとめて実装したほうが工程数は減るでしょう。
結果として、製造コストの低減や生産リードタイムの短縮にもつながります。
部品の発注や在庫管理もシンプルになる点は、地味ながら大きなメリットです。
抵抗アレイの種類(SIP・DIP・チップなど)
続いては、抵抗アレイの種類について確認していきます。
タイトルにもある通り、抵抗アレイにはSIP、DIP、チップタイプなど複数の形状バリエーションが存在します。
それぞれの特徴を理解しておくと、用途に応じた選定がしやすくなるでしょう。
SIPタイプの特徴
SIPとはSingle Inline Packageの略称です。
ピンが一列に並んだ形状をしており、基板に対して垂直に挿入するリード部品として使われます。
ピン間隔は2.54ミリメートルが一般的で、ブレッドボードや実験用の基板でも扱いやすい形状です。
スルーホール実装が前提となるため、試作段階や手作業での組み立てにも向いているでしょう。
ただし基板占有面積の観点では、後述するチップタイプに劣る面もあります。
DIPタイプの特徴
DIPはDual Inline Packageの略で、ピンが二列に並んだ形状をしています。
ICのパッケージ形状としてもおなじみの形なので、イメージしやすい方も多いでしょう。
SIPタイプに比べてピン数を確保しやすく、より多回路の抵抗アレイを実現しやすい形状です。
こちらもスルーホール実装が基本となり、装置の試作やソケットを利用した交換式の設計に適しています。
量産品というより、開発段階での利用頻度が高い形状といえるでしょう。
チップ抵抗アレイの特徴
近年の量産基板で主流となっているのがチップ抵抗アレイです。
表面実装タイプとして、基板に直接はんだ付けする形で使用されます。
2012サイズや1608サイズなど、単体のチップ抵抗と同様に小型パッケージで供給されているのが特徴です。
自動実装機での大量生産に向いており、スマートフォンや家電製品など小型化が求められる機器で多く採用されています。
反面、手はんだでの取り付けや取り外しはやや難易度が高くなる点には注意が必要でしょう。
| 種類 | 実装方法 | ピン間隔の目安 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| SIPタイプ | スルーホール実装 | 2.54mm | 試作・実験・手組み基板 |
| DIPタイプ | スルーホール実装 | 2.54mm(二列) | 試作・ソケット利用・開発機 |
| チップタイプ | 表面実装 | 0.5mm前後〜 | 量産基板・小型機器 |
抵抗アレイの内部構造と回路パターン
続いては、抵抗アレイの内部構造と回路パターンを確認していきます。
抵抗アレイは見た目が似ていても、内部の配線パターンによって使い方が大きく変わります。
選定を誤ると意図した回路が組めなくなるため、この部分は特に重要でしょう。
独立型(アイソレート型)
独立型は、内部の抵抗素子がそれぞれ完全に独立した端子を持つタイプです。
アイソレート型と呼ばれることもあります。
一つのパッケージ内に、まるで単体抵抗が複数個入っているようなイメージで使用できます。
端子同士がつながっていないため、それぞれを独立した回路として自由に配線できる点が魅力です。
汎用性は高い一方、必要なピン数が多くなるという側面もあります。
共通端子型(バスコネクテッド型)
共通端子型は、複数の抵抗素子の片側端子がひとつの共通ピンにまとめられているタイプです。
バスコネクテッド型とも呼ばれます。
共通端子型なら、複数のプルアップ抵抗を一括で電源ラインに接続するといった使い方が簡単に行えます。
ピン数を抑えつつ多回路を実現できるため、小型パッケージとの相性が良いといえるでしょう。
ただし各抵抗素子を完全に独立させて使うことはできない点を理解しておく必要があります。
抵抗アレイを選ぶ際は、独立型と共通端子型のどちらの回路パターンかを必ず確認してください。
データシートの内部結線図を見落としたまま実装してしまうと、想定した回路と異なる動作になってしまいます。
特にプルアップ抵抗とLED電流制限抵抗のように、共通化してよい用途とそうでない用途が混在する設計では要注意です。
その他の回路構成
独立型と共通端子型以外にも、いくつかのバリエーションが存在します。
例えば、複数の抵抗を直列につないだラダー型と呼ばれる構成もあります。
ラダー型はD/Aコンバータの抵抗分圧回路など、特定の用途に特化した設計で使われることが多いでしょう。
また、抵抗値が均一なタイプだけでなく、回路ごとに異なる抵抗値を組み合わせたタイプも存在します。
用途に合わせて最適な回路構成を選ぶことが、設計効率を高める鍵になります。
抵抗アレイの使い方・実装例
続いては、抵抗アレイの具体的な使い方や実装例を確認していきます。
実際の回路設計でどのように活用されているのか、代表的な例を三つ紹介します。
プルアップ・プルダウン抵抗としての活用
デジタル回路では、入力端子の電位を安定させるためにプルアップ抵抗やプルダウン抵抗がよく使われます。
マイコンの複数の入力ピンに同じ抵抗値のプルアップ抵抗を接続したい場面は少なくありません。
このようなとき、共通端子型の抵抗アレイを使えば、一つの部品で複数ピン分のプルアップ処理をまとめて行えます。
配線もシンプルになり、基板のパターン設計も楽になるでしょう。
特にバス配線を多用するデジタル回路との相性は抜群です。
LEDの電流制限抵抗としての活用
複数のLEDを同時に点灯させる回路では、それぞれのLEDに対して電流制限抵抗が必要になります。
ここで独立型の抵抗アレイを使うと、各LED回路を電気的に独立させたまま部品点数を減らせます。
七セグメントLEDや複数のインジケータLEDをまとめて駆動する回路では、定番の使い方といえるでしょう。
実装スペースの削減だけでなく、基板の見た目もすっきりと整理された印象になります。
LED一個あたりの電流制限抵抗値は、電源電圧からLEDの順方向電圧を引いた値を、流したい電流値で割ることで求められます。
抵抗値をR、電源電圧をV、LEDの順方向電圧をVf、目標電流をIとすると、R=(V-Vf)÷Iという式で計算できます。
複数のLEDを同一条件で駆動する場合、この計算結果と同じ抵抗値を持つ独立型の抵抗アレイを選定すれば効率的です。
選定時に確認すべきポイント
抵抗アレイを選ぶ際は、まず必要な回路数とピン配置を確認しましょう。
次に、独立型か共通端子型かという内部結線パターンをデータシートで必ずチェックしてください。
抵抗値の許容差、いわゆる誤差の範囲も重要な確認項目です。
用途によっては、素子間の相対誤差の小ささが求められる場合もあるため、その点も見落とさないようにしましょう。
最後にパッケージ形状が、自社の実装ラインや試作環境に適合するかどうかも確認しておくと安心です。
抵抗アレイ選定時の注意点
続いては、抵抗アレイを実際に選定・実装する際の注意点を確認していきます。
便利な部品である一方、いくつか気をつけたいポイントも存在します。
定格電力の確認
抵抗アレイは複数の抵抗素子を一つの小さなパッケージに詰め込んでいます。
そのため、単体抵抗と比べて一素子あたりの定格電力が小さめに設定されているケースが多く見られます。
大きな電流を流す回路にそのまま流用すると、定格を超えて発熱してしまう恐れがあるでしょう。
データシートに記載されている一回路あたりの定格電力と、パッケージ全体としての合計定格電力の両方を確認することが大切です。
温度特性への配慮
抵抗アレイは複数の素子が近接して配置されているため、隣接する素子同士の発熱が互いに影響し合うことがあります。
一部の回路だけ大きな電流が流れる設計になっていると、その熱が周囲の素子にも伝わってしまうでしょう。
結果として、想定より抵抗値がずれてしまう可能性も否定できません。
高精度な回路で使用する場合は、温度係数の低いタイプを選ぶなどの工夫も検討してみてください。
実装時のはんだ付け注意点
チップタイプの抵抗アレイは端子間隔が狭いため、手はんだでの取り付けには慣れが必要です。
はんだブリッジと呼ばれる隣接端子同士の意図しない接続が起きやすい点には注意しましょう。
可能であればリフロー炉やホットエア式のはんだ付け装置を使用すると、失敗が少なく仕上がりも安定します。
試作段階でどうしても手はんだが必要な場合は、フラックスを適量使い、拡大鏡を用いながら丁寧に作業することをおすすめします。
まとめ
今回は抵抗アレイとは何かという基本から、特徴、種類、内部構造、使い方、選定時の注意点まで幅広く解説してきました。
抵抗アレイとは、複数の抵抗素子をひとつのパッケージに集約した部品であり、抵抗ネットワークや集合抵抗とも呼ばれます。
SIP、DIP、チップといったパッケージ形状の違いに加え、独立型と共通端子型という内部結線パターンの違いも押さえておく必要があるでしょう。
実装面積の削減や部品点数の削減、素子間のばらつきの小ささなど、単体抵抗にはない多くのメリットを持っています。
一方で、定格電力や温度特性、はんだ付けのしやすさといった注意点も存在します。
プルアップ抵抗やLEDの電流制限抵抗など、用途に応じて内部結線パターンを見極めながら選定することが、抵抗アレイを効果的に活用するコツといえるでしょう。
基板の小型化やコスト削減を検討している方は、ぜひ今回の内容を参考に抵抗アレイの採用を検討してみてください。